2012年1月15日に放送されたNHKスペシャル「知られざる放射能汚染、海からの緊急報告」のなかで、鯉渕幸生准教授(東京大学大学院・新領域創成科学研究科;当時は講師)の東京湾周辺の河川におけるセシウムなどの放射性物質の挙動についての研究が紹介されていた。それは、江戸川の場合、河口から8キロ程度遡ったところにセシウムが堆積しており、そこから少しづつ東京湾に流れ込むだろう、というものであった。
その番組では、彼の研究の紹介の直後に、京都大学のグループのシミュレーションが紹介されていて、事故から3年目あたりに東京湾の汚染にピークが来る、とされていた。しかし、私にはそのシミュレーションの示す放射性物質の挙動は、あまりにも単純であって、鯉渕氏の研究成果を取り入れたとは思えなかったので、奇妙な感じがした。
そこで、鯉渕准教授にメールして、質問してみたところ、すぐに回答を頂いた。ブログに掲載しても問題ない、ということだったので、以下でご紹介する。
食物の汚染状況に詳しい泥酔割烹・柾の真崎庸氏(@doroyoimasaki)のお話でも、東京湾はだいたい大丈夫、と聞いていたので、よく一致している。ついでに真崎氏に伺ったところでは、海の魚はカリウムを排出機能があり、それがセシウムをも排出するので、かなり短期で安全になる、とのことである。ネットで調べてみると、これは金子豊二教授 (東京大学大学院農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻)らのグループによって解明されたようである。
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120327-1.html===================
お問い合わせいただき、どうもありがとうございます。
私は10年ほど前から、堆積物の年代推定に、
セシウム等を利用しておりましたので、
事故後より、江戸川、荒川、隅田川では3か月ごと、各河川およそ10地点、
東京湾内では5地点で1か月ごとに観測をしています。
調査結果は学会等で発表していますが、広く知られていません。
ほかに環境省や文部科学省、東京都や千葉県などの測定があり、
これらはホームページで公表されていますが、わかりやすい資料にはなっていません。
私の観測では、河口から上流におよそ10㎞ほどの地点の、
河床の30㎝位の深さのところにピークがあり、それらの堆積物のセシウムは900Bq/kg程度あります。しかしその上に、およそ30㎝ほど、ほとんど汚染されていない土砂が積もっており、東京湾への移動は少ないです。
ただし、これらの汚染度合いの低い土砂が、降雨時に、若干ではありますが東京湾に移動しています。
その結果は、湾内では高いところで50Bq/kg程度、低いと検出限界1Bq/kg以下となっております。高い地点は毎回変化しますので、ごく細かい土砂がふわふわ移動しているとお考えください。
大量に東京湾に流入している状況は、毎月の観測からは出てきません。
同様に、生物(ハゼ、海藻、貝類)についても調査していますが、今までのところ、いずれも検出限界の1Bq/kg以下となっております。
一部、江戸川河口のウナギで数百Bq/kgが検出されています。これは、河口部に生息する雑食性のウナギが、河口部のゴカイ等を食べたためと考えています。ゴカイは体長よりも深い巣穴を掘るため、先ほどのセシウムの高濃度のところにまで到達したものと考えています。
また同じようにウナギをとっても、検出限界以下のものも半数以上に上るため、かなり特異的な現象と考えておりますが、江戸川のウナギは出荷制限されております。
NHKの報道は京都大学の山敷さんの計算に基づいていますが、
まったくの誤報とは言えないまでも、
現状とはかなり乖離しており、これを見て東京湾の魚介類を敬遠した人が多いと思いますので、たいへん問題に思います。
ご不明のところがありましたら、
いつでもお尋ねください。
鯉渕幸生
スポンサーサイト
- 2013/08/28(水) 18:51:36|
- ブログ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0