マイケル・ジャクソンの思想

放射線被曝の計算の仕方について

池田氏は、私を犯罪者呼ばわりした記事で、

=======
暫定規制値(野菜の場合セシウム137が500Bq/kg)は実効線量係数(1.3×10-8)をかけると6.5μSv/kgだから、人体に危険とされる100mSvの放射線を浴びるには1年に15t食わなければならない。さらに先日のニコ生でも松田裕之氏が批判していたように、農水省は4月から規制値を100Bq/kgに引き下げる。これによって救済されるのは、1年間に野菜だけで75t以上食う人だけである。
=======

という計算をしているが、これは間違っている。何が間違っているかというと、放射線被曝の閾値の存在が立証されない限りは、線形閾値無し仮説で計算せねばならない。そうなると、

総被爆量=人×1人の被爆量

で計算しないといけない。何人シーベルトで1人死ぬか、という係数をαとすれば、総被爆量/α で死者の期待値が出る。ゴフマンの係数では、2.68人シーベルで、1件の癌死が起きる一人が死ぬ。もちろん、これが正しいかどうか、私は知らない。(注:上の赤字の箇所は、fujiwara 氏の指摘で修正。)

池田氏の計算では、15トンで 100mSv だから、これなら 1500トンで 10Sv になるから、四人弱が死ぬ、と期待される。日本人は、年間、ざっと100キロの野菜を食べるから、15000人で1500トンである。ということは、15千人で4人死ぬ、と期待されるわけである。もちろん、誰が放射性物質のせいで死んだのか、わからない。ゴフマンの係数が厳しいとしても、その四分の一に値切っても、このレベルの野菜を一年間食べれば、15千人に1人は死の宝くじに当たる。15百万人が食べれば、100人である。この数値をどう解釈するかは、そこから先の問題であるが、私は、政府や東京電力が、「どうせそのくらい死ぬだろうから、関係ねー」と開き直るのは卑怯だ、と言っている。

池田氏は、頭から、閾値仮説を勝手に前提しているので、上のような荒唐無稽な計算をしてみせるのであるが、それは彼が勝手に想定していることである。線形閾値なし仮説はICRPの基本原則であり、例の「ニコニコしている人には放射能は来ない」で有名な山下俊一教授でさえ支持しており、池田氏の大好きな中川恵一准教授だって、時には支持している。

影浦峡東京大学教育学研究科教授の指摘するように、どこかの親父が「少量のアルコールを子どもが飲めば健康に良い(あるいは、影響はない)」と勝手に信じて、自分の子供や近所の子供にアルコールを飲ませたら、犯罪である。そういう冊子を作って配ってもいけない。

池田氏がやっているのは、そういう行為である。
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  1. 2012/01/23(月) 20:41:56|
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デマ収集にみる東大話法

いつも面白く拝見しています。
原発震災に関しては、「デマ収集」と呼ばれる行動が随所にみられましたが、そのデマの内容が非常に偏っており、原発村や物理学者の安全デマは一切含まれないという、興味ぶかい現象がみられます。
例えば以下のようなものが典型です。
ttp://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110312/p1
これも一種の東大話法と考えてさしつかえないでしょうか?
  1. 2012/01/24(火) 11:00:53 |
  2. URL |
  3. 中島 #qx6UTKxA
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集団線量の癌死予測への演繹方法について

はじめましてブログやツイッターを楽しく拝見し、かつ勉強させてもらってます。

togetterで「集団線量の癌死予測への演繹方法について」というまとめがありましたのでなにかの参考になればお使いください。
http://togetter.com/li/238814

ICRPの集団線量についての考え方の解説が書いてあります。
  1. 2012/01/25(水) 04:08:24 |
  2. URL |
  3. かわもと #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

単位

安富さん

>何人シーベルトで1人死ぬか、という係数をαとすれば、総被爆量/α で死者の期待値が出る。ゴフマンの係数では、2.68人シーベルで、一人が死ぬ。もちろん、これが正しいかどうか、私は知らない。

単位が間違っています。

誤 2.68人シーベル
正 2.68シーベル/人
  1. 2012/01/26(木) 20:58:59 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

Re: 単位

人シーベルト、です。
  1. 2012/01/26(木) 21:14:12 |
  2. URL |
  3. 安冨歩 #-
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単位

安富さんの誤記ではなく、「人シーベルト」だと信じているわけですか?

もう一度言いますが「人シーベルト」ではなく、「シーベル/人」です。

  1. 2012/01/26(木) 21:29:30 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

単位の間違いについて

安富さん


安富さんの主張を採用すると、総被爆量/αの単位は
(シーベルト)/(人シーベルト)=(/人)となって意味不明です。

私の指摘に従えば、
(シーベルト)/(シーベルト/人)=(人)となって安富さんの仰りたい死者数になります。

正確に言い直すとαの単位が(シーベルト/人)で、安富さんの本文は
誤 2.68人シーベルで、一人が死ぬ。
正 2.68シーベルで、一人が死ぬ。
と訂正するべきでしょう。


PS:池田信夫氏が安富さん文章を引用した部分を良く見てください。

>で計算しないといけない。何人シーベルトで1人死ぬか、という係数をαとすれば、総被爆(ママ)量/α で死者の期待値が出る。ゴフマンの係数では、2.68人シーベル(ママ)で、一人が死ぬ。もちろん、これが正しいかどうか、私は知らない。<


「2.68人シーベル(ママ)」と(ママ)が付記されています。これは誤記をそのまま引用しているという意味でしょ。
池田さんも私と同様に単位の間違いに気づかれていたと思いますよ。
  1. 2012/01/26(木) 22:29:35 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

たかが単位と侮るなかれ。

私は大学も大学院も物理ですが、単位を間違うのはその物理現象を正しく理解し把握していない現われと考えます。

安富さんは「私は、物理学者でもある」と自認しているようですので、当然ご理解いただけるかと。
  1. 2012/01/26(木) 23:06:37 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
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Re: 単位の間違いについて

ああ、その箇所ですか。

確かにそうですね。

私は総被曝量を、{人×ひとりあたり被曝量}というように考えて、人シーベルト単位と看做して、係数も人シーベルトにして、比率をとるように考えていました。しかし、総被曝量は{Aさんの被曝量+Bさんの被曝量+・・・}なわけですから、単位はシーベルトですね。ということは、係数をシーベルトにして比率を計算するか、ご指摘のように{シーベルト/人}にして人単位にするか、しかありません。ゴフマンの本はシーベルト単位ですね。

どうもありがとうございます。また、上で失礼な返事をしたことをお詫びいたします。
  1. 2012/01/26(木) 23:55:19 |
  2. URL |
  3. yasutomiayumu #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> たかが単位と侮るなかれ。

ごもっともです。

それで、ゴフマンの本を詳しく確認したら、総被曝量を「人・ラド」、係数を「人・ラド」として、割っていました。それで、出た数を、癌死者数ではなくて、癌死件数として数えていました。ちょっと不自然な感じがしますが、これに従っておきたいと思います。

しかし、これは確かに、スッキリしない考え方ですね。私としては、総被曝量を「シーベルト」、係数を「シーベルト/人」とするご提案に従ったほうが、スッキリすると思います。
  1. 2012/01/26(木) 23:57:54 |
  2. URL |
  3. yasutomiayumu #-
  4. [ 編集 ]

間違いのルーツはゴフマンの本なのですか?

そうだとしたら、そんな本は信頼できません。ゴフマン自身が物理現象を正しく理解、把握していなかったことになる。
ゴフマン係数とやらも、どういう計算で求めたのか大変怪しい。というか全く意味不明ですから、それを使った計算も無意味になります。
  1. 2012/01/27(金) 08:12:01 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

「人シーベルト」という概念が奇妙なのは、同意しますが、それだけで以下のように言うのは、大げさです。

「人シーベルト」/「人シーベルト」 で頻度を出すという、集団被曝を計算するときの慣習は、確かに変ですが、一人の被曝量を見積もって、人数で掛ける、というのは、操作としては自然な流れです。それを、同じく、人シーベルトで割ってしまえば、無次元の数値になるので、確率を計算する上では、問題ないでしょう。

それよりも、集団の被爆総量を、各人の被曝量の和、と見なしたほうが、合理的なのはその通りで、その場合には、係数もシーベルトにして、「シーベルト」/「シーベルト」 で無次元にします。

しかしいずれにしても、無次元数で確率を見るので、致命的だとは考えません。本全体を見て、無意味かどうか、検討してみてください。

ジョン W・ゴフマン 『新装版 人間と放射線―医療用X線から原発まで― 』明石書店

です。
> 間違いのルーツはゴフマンの本なのですか?
>
> そうだとしたら、そんな本は信頼できません。ゴフマン自身が物理現象を正しく理解、把握していなかったことになる。
> ゴフマン係数とやらも、どういう計算で求めたのか大変怪しい。というか全く意味不明ですから、それを使った計算も無意味になります。
  1. 2012/01/27(金) 11:31:22 |
  2. URL |
  3. yasutomiayumu #-
  4. [ 編集 ]

単位は重要です

誤解なさらないでください。
安富さんの解説が正しいと「仮定」すれば、 間違いのルーツはゴフマンになると言う意味です。

仮定の上に立って結論を導けば、おかしな結論になるという話はいっぱいあります。
安富さん自身も、LNT仮説を原点まで誤差のない一直線だと仮定して計算しています。


>「人シーベルト」/「人シーベルト」 で頻度を出すという、集団被曝を計算するときの慣習は、確かに変ですが、一人の被曝量を見積もって、人数で掛ける、というのは、操作としては自然な流れです。それを、同じく、人シーベルトで割ってしまえば、無次元の数値になるので、確率を計算する上では、問題ないでしょう。

途中の計算で単位に「人」が入っている以上、つまり「人数」を意識している以上、得られた値の単位が「人」でないのならば、それは癌死する「人数」の確率的な予測値にはなり得ません。
  1. 2012/01/28(土) 12:28:31 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

指摘内容の訂正

さすがにゴフマンさんの本の根本的誤りの可能性は低いと思い、よく考えてみると

>総被爆量=人×1人当たり被爆量

がそもそもおかしいことに気づきました。被曝と被爆の変換ミス以外の点で。

「総被爆量」は放射線のエネルギー(J)総量を指していると思われますが
シーベルトは重さ1kgあたりの放射線エネルギー(J)(補正係数がかかっている)の値ですから総被曝量をもし計算するのであれば

総被曝量(Sv・Kg=J)=Σ(各人の体重(Kg)×各人の線量当量(Sv=J/Kg))

となります。近似的には

総被曝量=(Σ体重)×平均線量当量
あるいは
総被曝量=人数×平均体重×平均線量当量

ただし、個人の癌死の確率は、全身に浴びる放射線量ではなく体重あたりの放射線量に
依存すると考えるほうが合理的かと思います。
そうすると「Σ体重」が「人数」に置き換わり

線量当量合算値(人Sv)=Σ線量当量(Sv)=人数×平均線量当量(Sv)

で癌死が推計できるでしょう。
この計算であれば、両辺の単位が「人Sv」になります。
そうすると係数αの単位は「Sv」です。

実際、ゴフマンがどういう計算したのか知りませんが、おそらくこの意味で立式しているのでしょう(そうでなければ「人Sv」なる単位が出てきそうにない)
  1. 2012/01/28(土) 12:35:01 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

阪上雅昭教授のコメント

物理学者の阪上教授にこの問題について、メールでコメントをいただいた。
人・シーベルトの「人」と「人数」とを区別して、無次元数で死者の期待値を求める、という阪上教授のお考えが、合理的な気がする。

=======ここから========

安冨さん

阪上です.だんだん,何が議論になっているのか判ってきました.

結論からいうと人・シーベルト(あるいは人・グレイ,人・ラド)での
安冨さんや元祖のゴフマンの計算は正しいです.
(若干気になるところはありますが,それは最後に述べることにします)


まずシーベルトは 1kg あたりの被爆量ですから,総被曝量の単位ではありません.
全身被爆だと仮定すれば,体重をかけたものが総被曝量です.

>しかし、これは確かに、スッキリしない考え方ですね。私としては、
>総被曝量を「シーベルト」、係数を「シーベルト/人」とするご提案に従ったほうが、
>スッキリすると思います。

と言う意味で上は間違っています.


それで人・シーベルトですが,線量当量(シーベルト,1kg あたりの被曝量)に
その人の体重をかけたものだと思います.たとえて言うならば発電で使う

KW に対して KWh (キロワット・時)

のようなものでしょうか.ただし,正直言えばその人の体重をかけるのではなく
標準体重(例えば 50Kg) をかけたものとした方が単位としてはすっきりすると
思います.この定義では人は一人あたりの体重をかけていることにご注意下さい.

こうやって人・シーベルトを定義すると,総被曝量(吸収した総エネルギー量)の
単位になります.これは示量変数なので足し合わせできます.
シーベルトは1kg あたりの密度量なので足し合わせは危険です.


>>私の考えでは、便宜的に、1人の被ばく量を推定して、人で掛けて、人・ラドにして、
>>それを、「人・ラド」で割って、頻度を求めても、何ら問題ではない、と思うのですが、
>>どうでしょうか?

この計算は正しいと思います.被曝量の単位はあくまで人・シーベルトです.

ゴフマンの係数も2.68人・シーベルと単位は被曝量あるいは総エネルギー量です.
死者の期待値の計算は

総被曝量/ゴフマン係数 で単位は無次元です.このときは上の人とは
意味が違って人数(個数)なので次元はありません.



というのが,ぼくの意見です.ゴフマンの考えは基本的に正しいと思います.
ただ,被曝量である人・シーベルトの見積については,

1シーベルトの強度の放射線の全身被爆で総被曝量は1人・シーベルト
と計算しているようです.細かいけれどその人が標準体重の2倍なら
2人・シーベルトにした方がいいと思います.体重が大きいと吸収量も増えるので
リスクも増えるという意味です.

_____________________________________________________________________
阪上雅昭
Masa-aki 'Booska' SAKAGAMI
京都大学大学院 人間・環境学研究科
自然環境動態論講座
宇宙論・重力グループ
  1. 2012/01/28(土) 16:19:36 |
  2. URL |
  3. 安冨歩 #-
  4. [ 編集 ]

Re: 指摘内容の訂正

ご指摘、ありがとうございます。体重を明示的に入れずに議論していたのは、軽率でした。

> この計算であれば、両辺の単位が「人Sv」になります。
> そうすると係数αの単位は「Sv」です。

これと、阪上教授の解釈と、どれほど違うのかというと、私にはもうよくわからないのですが、感じとすれば、無次元数にしたい、という気がします。
  1. 2012/01/28(土) 16:23:58 |
  2. URL |
  3. yasutomiayumu #-
  4. [ 編集 ]

感想

皆さんの議論、大変勉強になりました。ありがとうございます。コメント欄では勿体無いので本記事にあげていただきたいくらいです。
阪上教授のコメントの最後、体重差によるリスクの大小は前から気になっていたのですが、よくわからないままでした。他の要因に較べて小さな話なのか気になるところです。
  1. 2012/01/28(土) 20:12:35 |
  2. URL |
  3. 野本望 #-
  4. [ 編集 ]

Re: 感想

まとめて、記事にしておきたいと思います。不勉強を、痛感いたしました。池田さんを、笑えません。
  1. 2012/01/28(土) 20:16:21 |
  2. URL |
  3. yasutomiayumu #-
  4. [ 編集 ]

大切なこと

いいえ。池田さんの場合とはやっぱり質が違うと私は思います。知識だけでなく、すごく大切なことを学ばせてもらっています。
  1. 2012/01/28(土) 20:47:59 |
  2. URL |
  3. 野本望 #-
  4. [ 編集 ]

Re: 阪上雅昭教授のコメント

阪上雅昭教授のコメントは私の指摘と似ていますが、3点大変気になる点があります。


>それで人・シーベルトですが,線量当量(シーベルト,1kg あたりの被曝量)に
その人の体重をかけたものだと思います.

体重をかけたのに「人・シーベルト」と表現するのは不自然すぎます。
普通に 「Kg・シーベルト」とすべきです。


>総被曝量/ゴフマン係数 で単位は無次元です.このときは上の人とは
意味が違って人数(個数)なので次元はありません.

その理解では、癌死の人数をもとめたことになりません。
安富さんの本文で「何人シーベルトで1人死ぬか、という係数をαとすれば、」と言っていますが、
これを言い換えると「一人当たり(一人癌死当たり)の人シーベルト」であり、「一人当たり」とは「/人」ですから、αの単位は 人シーベルト/人=シーベルト です。
ですから
「総被曝量/ゴフマン係数」の単位は人シーベルト/シーベルトト=人
とちゃんと人数が求まることになるのです。(ここでいう総被曝量は私の先のコメントで示したように線量当量合算値(人Sv)とでも表現したほうがいいと思います)


>1シーベルトの強度の放射線の全身被爆で総被曝量は1人・シーベルト
と計算しているようです.細かいけれどその人が標準体重の2倍なら
2人・シーベルトにした方がいいと思います.体重が大きいと吸収量も増えるので
リスクも増えるという意味です.

私の先のコメントでは、リスクは体重あたりの放射線量に依存するとして「人Sv」という単位を導出していますので、体重が大きいとリスクが増えるという阪上さんの意見とは相容れません。
  1. 2012/01/28(土) 21:13:20 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

リスクの評価について

みなさま

阪上です.回りくどいようですが fujiwaraさんの

>ただし、個人の癌死の確率は、全身に浴びる放射線量ではなく
>体重あたりの放射線量に依存すると考えるほうが
>合理的かと思います。

について考えたいです.今の議論で,癌死のリスクが全身に浴びる総被曝量で決まるのか,体重あたりの被曝量で決まるのかは重要だと思うので話し合っておきたいです.

実はこの問題については私も納得しているわけではありません.議論していただけるとありがたいです.まずは,全身の総被曝量でリスク(確率)が決まると考える理由を説明します.少し長いですがおつきあいください.

ここではガンマ線の被曝に限定します.ガンマ線は透過性が高く,小さな確率で身体の中で反応を起こします.従って,身体のどの部分でも同じ確率で反応が起こるので,シーベルトのように1kg あたりの放射線エネルギー吸収量を用いてリスクを表すのは合理的です.

もう少し具体的に話すと,低い確率ですがガンマ線が体内の電子と衝突します.はじかれた電子は周囲の電子と次々と衝突しなだれ(カスケード)を生じさせます.ちなみにゴフマンはこれをヒットと呼んでいます.このなだれは充分なエネルギーをもっているので,染色体に当たれば染色体を切断します.このなだれが染色体に当たり切断する確率も全身で一定と考えられます.多くの場合,染色体は修復されますが,一定の割合でミスが起こります.さらに殆どの場合はその細胞は増殖できずに死にますが,やはり一定の割合で異常な(コントロールされない)分裂をするようになります.この1個の細胞の染色体異常が癌につながると考えています.ここまでがぼくが理解したと思っているゴフマンの放射線による癌化のシナリオです.

このように考えると一定の線量例えば1シーベルトの放射線の全身被曝では身体の総ての部分(細胞)が低いとはいえ同じ癌化の確率(リスク)にさらされると考えるのが自然な気がします.そうすると,体重が大きい,つまり的がでかい人の方が癌化の確率が体重に比例して大きくなるという結論に至ります.

いかがでしょうか.ご意見をお聞かせ下さい.

阪上
  1. 2012/01/29(日) 00:51:19 |
  2. URL |
  3. 阪上 #-
  4. [ 編集 ]

Re:リスクの評価について

生命科学は詳しくないので、私の素人理解という前提でお読みください。

阪上さんがおっしゃるように、ガンマ線がなだれをおこし、それが遺伝子を直接傷つけるという確率も0ではないのでしょうけど、実際には活性酸素ができ、それが遺伝子を傷つけるという間接的なメカニズムのようです。
体の主成分は水ですから、ガンマ線およびなだれのほとんどは水分子にあたり、活性酸素を作り出す。一方体内の遺伝子の量はごく微量ですから直接衝突する確率は非常に低いわけです。

活性酸素は体とって有害な面と有益な面との両方があり、前者は癌などの病気の原因になりますし、後者はがん治療に放射線が使われている理由だそうです。放射線ホルミシスも後者から説明できる。

この理解に立てばLNT仮説はすでに否定されたものとなります。


>体重が大きい,つまり的がでかい人の方が癌化の確率が体重に比例して大きくなるという結論に至ります.

その結論には、いくつかの暗黙の仮定があるように思われますが、そのひとつに体重と細胞数が比例関係にあるという仮定をおいていらっしゃいませんか?

私も正確なデータは知りませんが、人間の細胞数は概略一定で体重とは相関が無いか低く、細胞の平均重さと体重が比例関係に近いようです。
つまり体重の増加に反比例して遺伝子密度が下がる。放射線による活性酸素量は体重に比例して増えても、それが遺伝子にめぐり合う確率は体重に反比例して減るので、結局放射線の影響は体重によらず概略一定と見なせるのではないかと思います。
  1. 2012/01/29(日) 13:59:02 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

細胞数と体重

>体重と細胞数が比例関係にあるという仮定をおいていらっしゃいませんか?

ご指摘のとおり体重と細胞数は比例すると思っていました.これは自明ではないですね.

>私も正確なデータは知りませんが、人間の細胞数は概略一定で体重とは相関が無いか低く、
>細胞の平均重さと体重が比例関係に近いようです。

こういう丁寧に議論する機会を得たので,可能ならウラを取っておきたいです.(長引かせるつもりはありません.) 私も生物の同僚に聞いてみます.みなさんも,文献なり資料をご存知なら教えて頂けないでしょうか.
細胞数が一定つまりDNAの量が一定なら, fujiwaraさんが言ってらっしゃるように,ゴフマン係数の次元はシーベルトになります.ゴフマンの本では被曝した人の体重について言及がないようなので,彼は細胞数一定で考えているのかもしれません.


それから人・シーベルトという単位について考えたいです.その後で


>活性酸素は体とって有害な面と有益な面との両方があり、前者は癌などの病気の原因になりますし、
>後者はがん治療に放射線が使われている理由だそうです。放射線ホルミシスも後者から説明できる。
>この理解に立てばLNT仮説はすでに否定されたものとなります。

についていくつか質問させて下さい.先に電子のカスケードの話しをしたときは,活性酸素の話しはよく判らないので触れませんでした.

阪上

  1. 2012/01/30(月) 02:30:36 |
  2. URL |
  3. 阪上 #-
  4. [ 編集 ]

細胞数と体重2

>私も正確なデータは知りませんが、人間の細胞数は概略一定で体重とは相関が無いか低く、
>細胞の平均重さと体重が比例関係に近いようです。

同僚に生理学なかでも肥満を研究している人がいたので尋ねてみました.結論から言うと人間の細胞数はほぼ一定のようです.成人の体重の増減は,脂肪細胞に蓄えられる脂肪と筋肉量の変化で生じるそうです.脂肪細胞の数は900億個程度らしいですが,その数は思春期までの食生活で決まり,その後は数は変わらないそうです.

文献等は教えてもらえませんでしたが,その分野ではよく知られているようでした.

ということで,放射線の影響は体重によらず線量当量(シーベルト,1kg あたりの被曝量)に比例することになります.

阪上
  1. 2012/01/30(月) 17:04:46 |
  2. URL |
  3. 阪上 #-
  4. [ 編集 ]

人シーベルトについて

人シーベルトについては,まだ自分でも釈然としないところがあるのですが,書いてみます.

線量当量(単位 シーベルト)は 1kgあたりの被曝エネルギーです.これに体重をかけると総被曝エネルギーが計算できるのですが,細胞の密度が体重に反比例するので(細胞総数が一定)むしろ線量当量が癌のリスクを表しています.

従って,シーベルトでやればいいのですが,単位が J/kg 1kgあたりのエネルギーなので足し算するのに抵抗があります.つまり1シーベルトの全身被曝を2人がしたら,合わせて2シーベルトとは言えなくて,やはり1シーベルトです.その代わりに合算できるようにしたのが人シーベルトだと思いいます.

とても単純にいうと全身被爆1シーベルト1人あたり 1人シーベルト でしょうか.

それでこの単位の次元は何ですかと聞かれたら,人数 x J /kg
一方ゴフマン係数の次元は J/kg それで

総被曝量/ゴフマン係数の次元は 人数 というのが fujiwara さんの考えだと理解しています.

それで困らないと言えばそうなんですが,人数(あるいは癌の件数)は個数なんで
無次元量だと思うので,このあたりが釈然としません.

阪上

  1. 2012/01/30(月) 17:45:37 |
  2. URL |
  3. 阪上 #-
  4. [ 編集 ]

Re:人シーベルトについて

阪上さん

>人数(あるいは癌の件数)は個数なんで無次元量だと思うので,このあたりが釈然としません.

個数はm,Kg,sといった物理的な単位とは趣が異なることは確かです。
坂上さんがおっしゃるように、個数は無次元として、計算の最初から最後まで個数を単位に入れないで理論を構築することも可能です。
でも今回の場合は、計算途中に「人シーベルト」という単位が現れており、この場合は計算の最初から最後まで「人(人数)」を単位の中に織り込んで計算するのが筋だと思います。
そして最後の計算結果の単位が「人」になって初めて、癌死する人数を表す数値かもしれないといえるわけです。
今回の場合は 分子(人数 x J /kg )/分母( J/kg)=人数 となっていて 癌死する人数として受け入れることができます。
逆に言うと、単位をチェックするだけで計算ミスがある程度防げます。

個数が一人前の単位として扱われている例としてアボガドロ数があります。
今日まで知らなかったのですが、「mol」がSI単位として正式採用され、その結果、アボガドロ数も(/mol)というSI単位になっていました。
  1. 2012/01/30(月) 20:13:15 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

Re2:人シーベルトについて

fujiwara さん

>個数が一人前の単位として扱われている例としてアボガドロ数があります。
>今日まで知らなかったのですが、「mol」がSI単位として正式採用され、
>その結果、アボガドロ数も(/mol)というSI単位になっていました。

返事が遅くなりすみませんでした.mol が単位になったことは知りませんでした.
それを伺ってすっきりした気がします.

アボガドロ数の代わりに1人分の細胞数である60兆個を使えば良いんですよね.
"mol" に対応するのが "人" になります.従って1人シーベルトは
60兆個の細胞の集まり(つまり1人です)が 1シーベルト(J/kg) の放射線を受けたときの
総被曝量と定義されます.これだと2人(120兆個)が1シーベルトの放射線を受けたときには
ちゃんと2倍になります.

ゴフマン係数の単位は シーベルト なので fujiwara さんがおっしゃっているように

総被曝量/ゴフマン係数 の次元は人になります.

阪上
  1. 2012/02/01(水) 00:54:54 |
  2. URL |
  3. 阪上 #-
  4. [ 編集 ]

ということは、

ということは、

総被曝量=人×シーベルト

ゴフマン係数=シーベルト

総被曝量/ゴフマン係数=人

ということで、よろしいでしょうか。
  1. 2012/02/01(水) 01:12:05 |
  2. URL |
  3. yasutomiayumu #-
  4. [ 編集 ]

なるほど

なるほど、と感じます。

LNT仮説の棄却のところはまだよくわからないのでぜひお伺いしたいです。
  1. 2012/02/01(水) 07:01:06 |
  2. URL |
  3. 野本望 #-
  4. [ 編集 ]

Re:ということは、

安富さん

>総被曝量=人×シーベルト

何度か言っていますが「総被曝量」という表現は不適切というか間違いだと思います。
私の1月28日のコメント

>線量当量合算値(人Sv)=Σ線量当量(Sv)=人数×平均線量当量(Sv)

のように「線量当量」の和であることを表現する言葉がよろしかろうと思います。
  1. 2012/02/01(水) 12:28:45 |
  2. URL |
  3. fujiwara #-
  4. [ 編集 ]

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