マイケル・ジャクソンの思想

ブータン国王の国会演説



前々から私はブータンという国の戦略に興味を持っていた。数年前に京大に留学しておられたT.Powdyel 教授と、修士課程の Tashi Kinga氏とに講演してもらったことがあるのだが、二人とも立派で愉快な方で、楽しく議論をさせていただいた。そしたら帰国後、お二人は文部大臣と上院議員になられたのであった。

それで王様の話も色々と伺っていたので、どのような演説をなさるか期待していたのだが、なんと、テレビでは中継されなかった。やむを得ずネットで見た。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/ugoki/h23/111117.html

実に立派な演説であった。書き起こしが、以下に出ている。

http://getnews.jp/archives/152497

この演説は、「日本を褒めてくださった」というように単純に受け取るべきではないと私は感じている。なぜかというと、ブータンという国は、非常に戦略的に優れたマネジメントを行っており、国王の発言もそういった文脈で考える必要があるからである。

ブータン国王の演説は、日本が進むべき方向を示唆するものなのである。彼が言ったなかで重要な論点は以下である。

(1)日本とブータンとは、深い絆がある。
(2)それは歴史的な関係ばかりではなく、理念的な共通点がある。
(3)伝統を大切にしながら、近代に対応する、という点で共に成功した、という点である。
(4)日本は技術革新や経済活動といった、正面突破で成功した偉大な国である。
(5)ブータンは、全く異なったアプローチで成功しつつある。
(6)日本は、この点に注目し、自分自身の価値がどこにあるかを認識すべきである。
(7)ブータンと日本とが手を結ぶことで、新しい価値観を世界にもたらすことができる。
(8)そうなったときに、日本は現在の苦境から立ち上がり、新たな形で、アジアの、ひいては世界のリーダーとなる。
(9)そのとき、世界は大きな恩恵を受ける。
(10)そのためにも、日本は常任理事国になるべきである。

なぜわざわざ彼がこの時期に来日してこういう演説をしたのか、よく考えるべきである。国王は、単独できたのではなく、議長・首相が既に来日しており、満を持して来たのである。

その理由はおそらく以下である。

(1)ブータンの主たる援助国であったEU諸国が経済的に壊滅状態にあり、これ以上、援助が期待できない。
(2)中国とインドとに挟まれたブータンは、両国の急成長に脅威を感じている。
(3)それに対抗するための「価値観」を生み出し続けることが、自国の存立にとって不可欠。
(4)そうなると、日本に期待する以外にはない。
(5)その日本が地震と原発でやられた。
(6)アメリカ主導のTPPに入れられそうになっている。
(7)この情況を打破するために、日本と密接な関係を構築し、日本に新しい価値観のもとでのリーダーシップをとってほしい。

この強烈なメッセージが込められているからこそ、国王の演説があのように人々の心を揺さぶるのである。国会議員が全員スタンディングオベーションをしていたのには、以上の理由があると考える。

(追記:といっても、国会議員はほぼ全員、意識的には以上のようには認識していないであろう。メッセージというものは、意識を通過して相手の無意識に届けるのが有効であって、国王は、意図的に、意識的には以上のようには理解されないように演説しているのである。無意識にメッセージを送り込まれたので、どんな意識的意見を持っている人でも、感動してスタンディングオベーションすることになる。あの独特のファッションもまた、無意識へのメッセージ送信戦略である。トップにこのクラスの才覚がないと、ブータンのような小国を維持して発展させることはできない。大国でも同じことなのだろうが、潰れるまでの時間が長い。)
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  1. 2011/11/18(金) 17:21:59|
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