マイケル・ジャクソンの思想

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福島原発:週刊朝日のスクープ

飯田哲也さんのツイッターで以下のようなものが流れていた。

iidatetsunari 飯田哲也 tetsu iida@ISEP
【これも必読】週刊朝日「福島第一原発の最高幹部がついに語った~フクシマの真実:この「最高幹部」は吉田所長とのこと。あまりに真に迫る、絶望的状況: 前編7/22 → http://p.tl/AdwH 後編7/29 → http://p.tl/NJhO

週刊朝日の記事は下のようなもので、読んだときに「こりゃ凄いな」と思ったのだが、吉田所長だったとは。。。。

それが嘘かホントかわからないけれど、もう一度、そういう目で読んでみたい。

============

福島第一原発の最高幹部がついに語った【フクシマの真実:前編】
独占スクープ!!
週刊朝日2011年7月22日号配信

福島第一原発が「循環注水冷却システム」に完全移行した。しかし一方で、玄海原発の再稼働問題を巡って政治は迷走するばかり。こんなことで、原発事故は本当に収束できるのか。この1カ月余り、本誌の取材に応じてきた第一原発"最高幹部"の一人が語った「すべて」をお届けしよう。(本誌取材班)


 いまこの国が抱える喫緊の課題は原発問題のはずである。ところが、東日本大震災から4カ月がたったいまも、司令塔であるべき政治は権力闘争に明け暮れ、迷走している。その"無様さ"は、玄海原発の再稼働問題でも露呈した。

 「いずれ時期が来ましたら、私も責任を取らせていただきます」

 海江田万里経済産業相(62)は7月7日、国会答弁で辞任を示唆した。それはそうだろう。海江田氏は、菅直人首相(64)の"思いつき"と"いいとこ取り"に振り回され続けてきた。

 5月初旬の浜岡原発の停止要請では、海江田氏が中部電力などに根回ししながら環境整備を進め、いざ記者会見しようというところで、菅首相が突然、横取りして発表した。5月下旬のG8サミット(主要国首脳会議)では、海江田氏に知らせることなく、菅首相がいきなり「太陽光パネル1千万戸構想」をぶち上げた。

 そして今回の玄海原発再稼働問題では、菅首相は6月中旬に再稼働容認を明言したのにもかかわらず、その意を受けて地元自治体との調整を進めてきた海江田氏を尻目に、自身は「脱原発」の姿勢を強め、揚げ句の果てに、新たな安全性評価(ストレステスト)の実施を持ち出して、すべてをひっくり返したのだ。

 菅首相自身は「脱原発」の闘士気取りで、周囲に「(浜岡原発の停止以降)経産省の抵抗がすごい」などと漏らしているそうだが、これまでの言動に照らせば、その"信念"は大いに疑わしい。そもそも、ストレステストもしていないのに「安全」だと宣言した判断の根拠は何だったのか。

 結局、この政治のゴタゴタで玄海原発の再稼働は遠のいた。そして政府は7月19日にも、福島第一原発の事故収束に向けた新たな「工程表」を発表するとしている。果たして本当に「安全」だといえるときは来るのだろうか--3月11日の事故以降、現場に詰めて作業にあたってきた福島第一原発の「最高幹部」に、本誌は6月以降、幾度となく取材を繰り返してきた。いわば原発のすべてを知るこの人物が、こう語るのだ。
   ◇   ◇
 いま玄海原発の再稼働問題が取りざたされていますが、フクイチ(福島第一原発)の事故を経験した私に言わせれば、そんなバカなことはやめたほうがいい。玄海原発1号機の操業開始は1975年で、老朽化が心配。それに、現地はフクイチよりも地盤がやわらかいようです。正直、再稼働して大丈夫なのかと感じる。

 私が、こう言うのには理由があります。フクイチが地震と津波、どちらでやられたのかといえば、まず地震で建屋や配管、電気系統など、施設にかなりの被害を受けたのは事実です。地震直後、「配管がだめだ」「落下物がある」などと緊急連絡が殺到しました。制御室からも「配管や電気系統がきかなくなった」などと、すさまじい状況で、多くの作業員が逃げ出した。耐震性に問題があったのは否めません。

 こうした事態に対応している間に「津波がくるらしい」という話が入り、とにかく避難が優先だと施設内に放送を流し、情報収集を進めているうちに津波が襲ってきた。これで、街灯やトイレなど、地震後もかろうじて通じていた一部の電源もほぼ通じなくなった。完全なブラックアウト(停電)です。

 そのとき頭に浮かんだのは、どうやって冷却を続けるか、です。すぐに人を招集して、とにかく電源回復を急ぐようにと指示した。何とか電源を回復できないかと、(東京電力)本社に電源車を要請するなど、もう大声で叫ぶばかりでした。

 津波の破壊力を実感したのは、電源確保のために状況を見に行った作業員から「行く手をはばまれた」「瓦礫(がれき)で前へ進めない」などと報告を受け、携帯写真を見たときです。本当にとんでもないことになっていた。本社に電源車を頼んでいるような悠長なことではとても無理。自分たちで何でもやれることはやらなきゃ、もう爆発だと覚悟しました。すぐに車のバッテリーなど、原発内でとにかく使えそうなものを探させました。

 日が暮れ、周囲は真っ暗で作業がはかどらない。携帯電話の画面を懐中電灯代わりにしている--現場からは、こんな報告が次々と上がってきました。

 このあたりから「最悪のケースもありうる。海水も早い時期に決断せねば」と覚悟しました。メルトダウン(炉心溶融)も、ありうると思っていた。

 ただ、これがもしも地震だけだったら、要請した電源車なども早く到着したはずですし、非常用電源なども回復できた可能性が高い。爆発は防げたと思います。

 ここまで事故が深刻化した原因について、津波対策がおろそかだった、非常用電源の設置場所が悪かったなどと言われますが、私は何よりも、操業開始から40年という"古さ"が、地震・津波に負けてしまったと感じています。いくらメンテナンスで部品を新しくしたところで、建物は同じ。原発自体の耐用年数だけでなく、建物や構造など全体的にみて、40年は長すぎた。

 実際、免震棟ができる2年ほど前までは事務本館しかなかった。それが、地震だけでメチャメチャになり、使えない。これは、玄海を始め、全国の原発に当てはまることだと思いますね。

   ◇   ◇

 いまだ予断を許さない状況が続く福島第一原発だが、7月2日になって、最大の課題だった原子炉の安定冷却と、放射能汚染水の浄化を実現する「循環システム」がようやく完成した。

「これは、原子炉建屋などの地下にたまった汚染水を装置に通して浄化し、循環させて原子炉の冷却水として再び使うシステムです。当初、6月27日に稼働が始まりましたが、わずか1時間半あまりで停止。原因は、原子炉に再注入する配管から処理水が漏れるというお粗末なものでした。その後もトラブルが相次ぎ、不安定な状態が続いていましたが、ようやく動き始めたのです」(東電関係者)

 総延長約4キロに及ぶこの循環システムは、まず東芝の装置で「油を分離」し、次に米キュリオン社製の装置が「放射性セシウムを吸着」、それを仏アレバ社製の装置が「薬品で除染」し、最後に日立の装置が処理水から塩分を取り除いて「淡水化」する。1日1200トンを処理し、たまりにたまった計12万トンの高濃度汚染水をゼロに近づける予定だ。

 東京電力が4月17日に発表した「工程表」では、7月中旬までに「原子炉の安定的な冷却」を完成させるとしているが、このスケジュールどおり事故処理は進むのだろうか。

◆無理があった「3カ国連合」◆

 注水をしている限り、汚染水が増えるばかりで安定はありません。フクイチの1~4号機ともに循環システムがうまく機能して初めて冷却、安定となります。とにかくまず冷却して安定させなければ、先が見えません。ペースは遅いかもしれないが、一歩ずつ確実に近づきつつある。

 もちろん、現場ではもうこれ以上、汚染水を海に放出することは許されないと認識しています。ただ、なぜか本社は海に流すことをいとわない雰囲気があって、温度差を感じます。

 システムの管理は、東芝が中心でやっています。米キュリオンと仏アレバの機器を組み合わせ、日立が塩分を取り除く装置を担当している。

 システムの構成については、現場からも提案しました。でも、本社から、
 「もう決まった。これでやりなさい」
 と日米仏の装置を一つにまとめる方式になったのです。現場としては、日本だけで十分やれると考えていました。しかし、政府同士で商取引の約束でも交わしたのでしょうか、本社のある幹部は政府や経産省との絡みも暗ににおわせて、「勘弁してくれ。こちらでもどうにもならない」ということでした。

 てこずったのはアレバの装置です。仕様書などはフランス語だけでなく、一部がイタリア語で書かれていて大混乱でした。原発関連の言葉をイタリア語で読みこなすのは難しく、アレバに問い合わせても、肝心なところは「国家機密で言えない」と拒絶されるのです。

 結局、循環システムが稼働するまでに、バルブの開閉トラブルやフィルターの目詰まり、装置の接点で想定外の放射線量が出るなど問題が起き、何度も止まりました。統括した東芝も「オールジャパンでやっていれば......」と言っていた。

 とはいえ、アレバの装置の威力はさすがにすごい。放射性物質はきれいに除去されています。

 ようやく動き始めたといっても、水回りの作業はトラブルがつきものです。現場で「ぞうさん」「シマウマ」などと呼ばれている注水車もポンプの調子が悪く、よく中断しますから。

 それに、まだまだ瓦礫などの線量が高く、作業がはかどりません。1号機では、原子炉建屋の1階と2階にある配管で循環システムを接続するつもりでしたが、線量が高すぎるため、別の配管を使わざるをえなかった。無人ロボットも、瓦礫を片付けられずに入れないところがたくさんあります。

   ◇   ◇

 事故以降、現場で陣頭指揮を執ってきたのが、原発を統括する吉田昌郎所長である。「所長こそがフクイチをいちばん理解し、把握している」(現場社員)と信頼が厚い。今後の事故処理の行方は、彼の手腕にかかっているといっても過言ではないだろう。

 その吉田所長がにわかにクローズアップされたのが、5月20日に発覚した、菅首相による1号機の海水注入「停止命令」問題だ。

 きっかけは安倍晋三元首相のメールマガジンだった。

「(3月)12日19時04分に海水注入を開始。同時に官邸に報告したところ、菅総理が『俺は聞いていない!』と激怒。官邸から東電への電話で、19時25分海水注入を中断。実務者、識者の説得で20時20分注入再開」
 と記されていたのだ。

 それまでに官邸や東電が発表した資料では、菅首相の指示で中断していた注水が再開されたことになっていた。これでは話がまったく逆である。

 首相の大失態が原発事故を悪化させた--この問題は、谷垣禎一・自民党総裁も国会で追及するに至り、「菅おろし」を巡る政局は一気に緊迫した。

 しかし、現実には、「中断」はなかった。事態収拾に動く東電は5月26日、海水注入は「所長判断」で継続していた、と発表したのだ。

 この「55分間の注水中断」について、吉田所長は、
 「こんなに騒がれて、本社にまで呼び出され、大変なことになるとは思ってもいなかった」
 と漏らしていたという。

◆悪者になった吉田所長◆

 それほど、現場と本社の間には明らかな温度差、認識の違いがあるのです。

 実際は「55分間の注水中断」がなかったことは、一部の幹部たちは前から知っていたはずです。確かに資料上は政府に配慮して、「(注水を)菅総理の指示で再開した」ということにするため、20分程度で注水を中断したことになっていました。でも、この問題が国会にまで持ち込まれ、いまさら政府に報告した内容をひっくり返して「中断してなかった」などとは言いだせない状態だったのです。

 だから、最終的に「吉田所長が独断で中断しなかった」という話で落ち着きましたが、実は違う。

 そもそも、あの時点で注水を中断するなどという選択肢はなかった。原子炉を冷やし続けなければ、爆発は時間の問題。私たちや作業員はもとより、周辺住民も被曝(ひばく)するかもしれない。「死」につながることになるかもしれない。原子力を少しでも学んでいる人間ならば、誰でもわかることです。そんなバカなことをするわけがありません。

 当時、現場の意思は、
「『総理が了承していない』なんて言っている場合じゃない。こっちは生きるか死ぬかだ。なりふり構っていられない」
 ということでした。

 とはいえ、あれだけ問題になってしまったので、皆、「今回は、吉田所長が悪者になるしかない」と言ってましたね。

   ◇   ◇

 この「55分間の中断」について吉田所長は、東電の調査に対し、「事故の進展を防止するためには、原子炉への注水の継続が何よりも重要と判断して継続した」と説明している。

 一方の東電は武藤栄副社長が、問題発覚を受けて開いた5月26日の緊急記者会見でこう答えている。

「(3月12日の)19時25分ごろ、官邸に詰めていた者から、海水の注入について首相の了承が得られてないと連絡があった。首相の判断がない中でできないという空気を伝え、(テレビ会議で)いったん中断しようと本店と(吉田)所長が協議の上、合意した」

 結果的に、吉田所長は「合意」などしていなかったのだが、東電が「首相官邸の空気」を忖度(そんたく)して、危険な判断に踏み出そうとしていたのは事実である。一連の原発事故の処理を巡って、官邸と東電がいかに「いびつ」な関係になっていたかを表していよう。現場にとって、本社のこうした"姿勢"は許しがたいものだったに違いない。

 そのフクイチの現場では、いまも決死の作業が続いている。それでも、危機的状況は脱した--とは決して言えないのが偽らざる現状だ。今後の作業はどうなっていくのか。

◆大晦日も正月もずっといる覚悟◆

「建屋カバー」は、なんとか台風の時期の前には設置したかったが、ちょっと難しい。作業は天候に大きく左右される。大きなクレーンで設置するので、少しの風でも作業に支障をきたしてしまうのです。それに、かぶせると言っても、爆発で建屋は左右対称ではなくなっているので、技術的にもなかなか難しい。

 ちなみに、このカバー設置も本社の主導でした。ある幹部曰(いわ)く、「覆いをすれば、グーグルなどで原発の衛星写真が世界中に広がるのを隠せる」ということで、この案に政府も同意したそうです。カバー設置で放射線量の数値が劇的に下がることはないと思います。

 設置は、大手ゼネコン数社が受注しましたが、いまだ契約で話し合いが続いています。工事が必ず成功するとは限らないからです。

 最終的に、チェルノブイリのように原子炉をコンクリートで固める「石棺」にするかどうかという議論があります。実際にシミュレーションもありますが、これは、安定したときの状況次第ですね。

 安定したら、何とか核燃料を外に取り出したい。しかし、その燃料がどんな状況なのか、すでにメルトダウン、さらにはメルトスルー(原子炉貫通)もないとはいえない。飛び散っていることも考えられる。それを把握してからですが、いまのところは「石棺」は考えていません。

 いずれにしても、いま一番の課題は「人」ですね。現場で作業するのは、作業員たちです。暑さと雨の中で仕事ができるのかどうか。これまで、うち(東電)は作業員や協力会社に正直、十分なことをしてこなかった。うちの人間は現場にはあまり出ず、作業員任せというシステムが問題であることはわかっていましたが、現場レベルではどうすることもできなかった。それが事故の重大さを把握できなかった一因でもある。

 現場ではいまも、寝るとき以外は仕事です。食事も最近まで1日2回とれたらいいところだった。本社では休んでいることになっていますが、実際はろくに休んでいません。吉田所長は、こう言っています。

「恐らく今後、年内に安定化できるかどうかが焦点になるだろうが、それは正直、厳しい。クリスマス、大晦日(おおみそか)、正月、ずっとフクイチで過ごす覚悟でいる。私は最後の最後まで、事故が収束するまで、ここを離れない決意です。作業員や協力会社の方々にも申し訳ないが、ご協力を頂きたい」

 その思いで、皆が一丸となって事態に当たっているのです。 (以下次号)

福島第一原発の最高幹部が語る「フクシマの真実」 後編
新工程表はデタラメ
週刊朝日2011年7月29日号配信

いよいよ「脱原発」の姿勢を強める菅直人首相だが、その足元に横たわる原発事故は、本当に収束に向かっているのだろうか。「工程表」の妥当性は、原発の現状は、そして政府・経済産業省・東京電力の協力関係は--先週号に引き続き、福島第一原発"最高幹部"の一人が語る「フクシマの真実」第2弾!! (本誌取材班)


 菅直人首相は7月13日夕、首相官邸で開いた会見で、今後の国のエネルギー政策について「脱原発依存」を進める考えを示し、力を込めてこう語った。

「この大きな事故を踏まえて原子力政策の見直しを提起するのは、その時代の総理の責務だ」

 いまこそ日本は原発に頼った社会構造を改め、自然エネルギーをはじめとする"安全"な代替エネルギーにシフトすべきだ--そう主張する方向性そのものに異論は少ないだろう。しかし、あまりにもいまさらである。

 時事通信の世論調査(7月7~10日に実施)では、菅政権の支持率は、前月から9・4ポイント急落して12・5%。これは2009年9月に民主党政権が誕生して以来、最低の数字であり、あの森喜朗政権末期(01年4月)の支持率10・8%に迫る勢いだ。

 菅首相から人心が離れていく、その理由は簡単だ。就任以来、繰り返されてきた"思いつき"と"自己都合"の言葉の軽さに辟易としているのが、この数字から読み取れるではないか。その首相の口から発せられる「脱原発」路線に対し、かえって反発が生まれているとしたら、まったく皮肉な話だ。

 福島第一原発の事故収束に向け、政府は7月19日、「新工程表」を発表する。

 東京電力が4月17日に発表した"旧"工程表では、最初の3カ月程度が、確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少に向かわせる第1段階(ステップ1)、そしてさらに3~6カ月かけて、原子炉を100度未満の安定状態に保つ「冷温停止」にし、放射性物質の漏出を大幅に抑える第2段階(ステップ2)に至る、としている。

 いま、ちょうどステップ1の目標期限を迎えたところだ。しかし、政府と東電が掲げるこの工程表は、果たして信用に値するものなのだろうか。実は、現場の意識とは大きな乖離があるという。これまで継続的に本誌の取材に応じてきた福島第一原発の「最高幹部」が、こう語るのだ。

     ◇   ◇

 この"旧"工程表については、4月の本社発表に先立って、実はフクイチ(福島第一原発)の現場からは「(収束までに)約1年半」というスケジュールを想定したものを出しました。これでも、熟練の作業員をフル動員することを前提にして、ようやく達成できるレベルです。

 ところが本社からは、
 「こんなのでは遅すぎる。菅総理が納得しない。(5月下旬の)サミットでどう説明するんだ」
 と言われました。結局、本社がいろいろと継ぎはぎして「9カ月」の工程を作ったのです。

 工程表では3カ月+3~6カ月の「2ステップ」などと謳(うた)っています。ステップ1は何とかなるかもしれないが、問題はステップ2。このスケジュールどおりなんて到底、無理な話ですよ。放射線量の限度を超え、どんどん熟練作業員の人数が減っていく中で、どうすればできるのですか。

 無人ロボットが導入されましたが、あんなのが何台あっても最後の最後は「人手」が必要です。その「人手」の作業を阻むのが、建屋の地下にたまった汚染水なのです。

     ◇   ◇

 実際、工程表を進めれば進めるほど、その見通しが甘かったことが明らかになっている。すでに東電は5月17日、「新しい工程表」を発表した。4月の発表から、わずか1カ月での「修正」である。

 最大の修正は、原子炉の冷却方法だった。もともとは、1~3号機の格納容器を水で満たして核燃料を原子炉圧力容器ごと冷やす「格納容器冠水」方式を予定していたが、これを断念。というのも、格納容器に穴が開いているようで、注水しても一向に水がたまらないことがわかったためだ。

 そこで新たな方策として打ち出されたのが、いまようやく動き始めた「循環注水冷却システム」だった。

◆1~4号機はどれも危ない◆

 この「冠水」方式にしても、現場は当初から「メルトダウン(炉心溶融)で格納容器に穴が開いている可能性があるので難しい」と指摘していた。しかし、「実際に穴が開いているのを見たのか」という変な話になり、この方式が政府に上がってしまった。

 一方の「循環注水」方式は早い段階から候補に挙がっていたが、装置を準備するのに時間がかかるからと却下された。それが、いきなり復活したのです。

 工程表には、細かい工事内容も書かれていますが、実際には予定されていたよりも1・5~2倍の時間がかかっている。「循環システム」設置だって、予定の1・5倍の時間がかかりました。本社の作った工程表は、あくまでも理想で、現実性は乏しい。

 さらに今後、この暑さの中で作業は困難になります。作業員たちの健康のため、いま工事は朝6時ごろから始め、午後2時ごろには終わらせている。こんな環境の中で、工程表どおりに実現させるのは難しい。それに、1~4号機はそれぞれ状況が違うので、予想できない事態もあり得ます。

 19日に発表される新工程表でも、期日の修正はあまりないようです。というのも、期日については政府の意向が強く、政治的な責任問題が発生するとかで、なかなかいじれないらしい。結局、理想論を前提に、結論ありきでスケジュールをはめ込んでいるだけ。現場としては、国民に本当のことを知らせるべきだと思っています。

     ◇   ◇

 驚愕の証言である。いま発表されている工程表は、まったくの"デタラメ"だというのだ。

 実際、現場は事故収束に向けて着々と工事を進めつつも、決して事態を楽観していない。作業を妨げるいちばんの要因は、やはり「汚染水」だった。

     ◇   ◇

 ずっと「水」に苦しめられてきました。原子炉を冷やせば冷やすほど汚染水が増え、それが建屋の地下、トレンチ(タービン建屋外にある地下の作業用トンネル)に大量に流入していくという悪循環です。大雨が降ると敷地内に流れ出す可能性もあり、作業員が近寄れなくなる。海に流れ込む恐れもある。いま、ようやく「循環注水冷却システム」が動き始めましたが、まだ安定したとはいえない。

 しかも、もしも核燃料がメルトスルー(原子炉貫通)しているならば、たまった汚染水は非常に高濃度になっている。チェルノブイリ事故の際は、すぐに地下水対策をしましたが、それは日本の技術だった。地下にトンネルを通し、セメント、ベントナイト(粘土鉱物)などを注入して固めてしまう方式です。これをフクイチでも実施すべきではないかと思う。国土交通省はこうしたプランを数多く持っていますが、所管の経産省との連携がうまくいっていないのか、適切と思われる対応策が講じられていないのが現状です。現場からも本社にプランを上げているんですが、何の動きもない。

 また、4号機が危ない、1号機がダメらしい--などといろいろ言われますが、私から言わせれば、どれも危ない。工程表では汚染水の流出源についても、詳しく触れられていません。

 たとえば、1号機は格納容器から漏れているようです。しかし、その場所が特定できない。穴の大きさもわからない。つまり、何もできない。安易にどれくらいで収束すると断言できないのです。

 3号機では、1、2号機に続いて水素爆発を防ぐための窒素注入がようやく始まった。しかし、地下に大量の汚染水がたまって苦しい状況には変わりない。建屋内に入ることはできましたが、内部は飛散した瓦礫で埋もれていて、燃料プールの確認も大変な状況です。

 3号機、4号機に共通していえるのは、建屋の強度に不安があることです。かなり崩れていて、作業中に上からコンクリート片が落ちてくることもあり、作業員も怖がっている。

 特に4号機の燃料プールは、早急に手だてを講じないと危ない。4月の最大余震の際は「倒壊を覚悟した」と言う作業員もいたほど。すでに建屋の補強工事に着手し、作業は順調に進んでいますが、本格的な台風の季節の前に何とか対応したいところです。

 2号機も、ひどい状況です。作業の間、汚染水があふれたり、漏れたりしないかとヒヤヒヤの連続でした。ただ、少なくとも配管などは爆発でやられていないので、1号機、3号機とはちょっと状況が違いますね。とりあえずは最悪の危機は脱出したと考えています。

 最近でも、1~4号機の映像を中継している「ふくいちライブカメラ」を見て、「白い煙」が出ているとの指摘がありますが、あれは燃料プールの使用済み燃料が熱を持っているため、湯気みたいなものが出てそう見えるのです。プールから水が漏れているので十分に冷やせず、熱が下がらない。それで水蒸気が出る。もっとも、その「湯気」には放射性物質も含まれています。

     ◇   ◇

 現場は事故から4カ月たったいまでも、本社の"事なかれ主義"、そして官邸のパフォーマンスじみた言動に振り回され続けている。その矢面に立たされてきたのが、現場で陣頭指揮を執る吉田昌郎所長だ。

 震災翌日の3月12日早朝に、菅首相が断行した「現地視察」も、現場にとっては大きな"弊害"だった。

 11日、原発事故の状況が刻一刻と深刻化する中、深夜になって菅首相は突然、第一原発の現場を視察すると言いだす。格納容器内の圧力が上限を大きく超え、一刻も早くベント(排気)の必要があるとされていたころだ。菅首相は「一向にベントをしない現場に活を入れるためだった」などと説明しているが、この視察が結果的に、現場を混乱させることになったという。

     ◇   ◇

 12日早朝(午前7時すぎ)に菅さんがこちら(フクイチ)に乗り込んできたときは、本当に驚きました。確かに事前に「総理が来る」との連絡はありました。しかし、そんな急に、本当に来るとは思いもしなかった。しかも、ヘリコプターで来て免震棟で会うなり、
「何をやっている。ベントはどうなっている。早くするんだ!」
 などと怒鳴り散らすのです。総理にそこまで言われると、さすがに皆、引いてましたね。吉田所長は、
「とにかく、どんなことをしてでもやります。決死の作業で、命かけてでも絶対に何とかします」
 と答えてました。

 1号機が水素爆発を起こしたのは、ベントが遅れたせいだと指摘されていますが、現場としては、近隣住民のことが気になっていました。ベントをすれば放射能がまき散らされる。近隣住民の避難状況はどうなのか、放出される範囲は広範囲にわたるので、現場としては、かなり深刻に考えていました。

 それに、自動でベントを開閉する装置がダメになっていたため、手動で動かさなくてはならない状況だった。当時、1号機のリアクター(原子炉)建屋はかなりの放射線量が予想されていました。そんな危険な場所に誰を行かせるのか。本当に決死の作業なのです。

◆もうフクイチで死んでゆくのか◆

 この「早朝視察」について、吉田所長は周囲に、無念そうにこう言ったという。

「言い訳になるかもしれないけど、菅総理がフクイチの現場に来たことで、そちらにばかり目がいってしまい、2時間ほど『ベント』などの指示が出せなかった。当時は、すべて私が指示して動いていた。それが止まったことで、周りも動けなくなってしまった」

 東電が6月に公表した報告書によると、吉田所長がベントの準備を指示したのが12日午前0時6分のこと。そして東電が、ベント実施を菅首相、海江田万里経産相、そして原子力安全・保安院に申し入れ、了承される。ところが、午前2時24分には、現場の放射線量から作業可能時間は17分と報告され、午前4時半ごろには、余震による津波の可能性から現場操作の禁止が指示された。ベントに向けた状況が、いかに困難だったかがわかる。

 さらに、午前8時27分になって、原発立地町である大熊町の一部住民が、まだ避難できていないとの情報が入る。避難終了を待って、ようやく作業員が現場に向かったのが午前9時4分。格納容器圧力の低下を確認できたのは午後2時半になってからのことだった。

 そして午後3時36分、1号機で水素爆発が起きた--。

     ◇   ◇

 1号機が水素爆発を起こしたときは、もう目の前が真っ暗でした。ベントをしたのに、いきなりの爆発でしょう。最悪の事態です。免震棟内もパニック状態で、「帰らせてくれ」と言う作業員、社員も出てきました。私たちには、それをとめることはできません。とにかく残った人間でやるしかない。もうフクイチで被曝(ひばく)して死んでゆくのか、これまで原発で過ごしてきた何年もの日々が一瞬、頭をよぎりました。

 当時は知らなかったのですが、政府は震災当日の11日午後9時23分に、原発から「半径3キロ圏内」の住民に避難指示を出し、その後、翌12日午前5時44分に「10キロ圏内」、午後6時25分に「20キロ圏内」--と次第に範囲を拡大していった。

 でも、現場ではもっと広い範囲、少なくとも半径50キロは避難していると思った。なんといっても、あれだけの爆発だったんですから。結局、避難範囲が半径3キロ圏内と聞いたときも、「大丈夫か?」と思ったのが正直な印象ですね。

 米政府は当時、半径50マイル(約80キロ)圏内の自国民に対して避難勧告を出しました。チェルノブイリ事故では、国際原子力機関(IAEA)の報告によると、旧ソ連の汚染地域は約14万5千平方キロメートルで、約300キロ離れた地域でも高いレベルの汚染があったことがわかっている。爆発が相次ぐ中、当時は私自身、半径30キロどころか、青森から関東まで住めなくなるのではないかと思ったほどです。

 本社と政府の話し合いで決まったんだろうけど、余震の危険性などを考えれば、最低でも半径50キロ、できれば半径70キロ、万全を期すならば半径100キロでも不思議はなかった。最初は広範囲にして、それから「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)」の予測などをもとに狭めていけばよかったのではないでしょうか。

 いま原発は何とか安定していますが、放射性物質がかなり飛散しているのが実態です。避難地域の見直しが必要だと思います。実際、もう半径20キロ圏内は戻れないと、そろそろ発表してもいいんじゃないか。子どもたちが学校に通うのは無理です。最初からもっと広範囲で避難させていればと悔やまれます。

     ◇   ◇

 菅政権は6月27日、首相補佐官だった細野豪志・衆院議員を新設の「原発担当大臣」に据えた。原発事故対応に特化した新ポストだが、海江田経産相との役割分担ははっきりしない。果たして今後、事故収束に向けて政府・経産省・東電の歯車は、うまく回っていくのだろうか。

◆「私の立場はどうなるんだ」◆

 細野さんが原発担当大臣になって歓迎ムードがあるようですが、現場としては、うーんという感じ。期待はしていたんですが、正直いって彼は経産官僚と変わりない。現場が望むのは、意思決定のスピードとリーダーシップ。でも、細野さんと話しても、どちらも兼ね備えていない。経産官僚が言っていたことを、数日後に細野さんの口から聞くという感じです。経産官僚の言うがままの「操り人形」と我々は呼んでいます。

 政府の原発に関する決定は本当に遅い。菅総理は「細野に任せてある」と言うのに、細野さんは「決めるのは総理」と言うばかり。菅さんが責任を細野さんに押しつけているのは誰の目にも明らかで、細野さんは、それには乗らないと牽制(けんせい)しているんです。堂々巡りで、一向に前に進みません。

 東電本社も経産省の言うがままで、こんなにノンビリでいいのかと思うほど意思決定が遅い。この状況を喜んでいるのは、経産省をはじめとする官僚たちです。

 現場と本社には、明らかに認識のズレがあります。フクイチから本社には毎日、膨大な量の情報が上がりますが、いま国民に公表されているのはその10%、いや1%くらいかもしれません。実際、現場は当初から「メルトダウン、メルトスルーの可能性がある」と報告していますが、本社は発表しませんでした。

 一連の発表を見ていると、派閥や上司との人間関係など、社内でしか理解できない力学が働いているように思えます。

 というのも、うち(東電)は、とにかく風通しが悪い組織なんですよ。いろんな人間が口を出してくる。

 現場と本社は、衝突ばかりです。ある本社幹部は、情報公開を巡ってこんなことを言っていました。

 「そんな情報が保安院や政府にわかると、大変なことになる。(問題が)ますます拡大するじゃないか」

 そして最後には、
 「私の立場や出世はどうなるんだ。キミはわかってるのか!」
 と言うんだから呆(あき)れてしまいます。的確な情報が適切なタイミングで届かないから、トップが最終決断しなければならないときに、十分な情報がないということが起こるのです。本当に、どこを見て仕事しているんでしょうかね。

 今回の事故は我々の責任が重大で、おわびするしかありません。いま、フクイチには日本、いや世界の存亡がかかっている--私たち現場の人間はそういう覚悟でやっています。でも、残念ながらこれが、いまの本社の状況なのです。
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  1. 2011/07/29(金) 00:03:50|
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