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ネットですべてが完結するという錯覚
現実社会との接点を持つことは避けられない
私たち精神科医は、逃避する彼らと現実との接点を作ることに腐心してきました。
しかしいま、それはインターネット社会の発達によって困難になっています。彼らの知識欲や他人と交信したいという欲求は、すべてネット上で満たされるようになってしまったからです。
彼らはいま、フィクションの世界ではなく現実の世界に起こった原発問題にこころを奪われています。とはいえ、彼らが行動するのはあくまでもネットの世界に限定されてしまいます。熱狂する彼らがネット上で喧々囂々の議論をしても、現実に起こっている原発問題は何も解決しません。むしろ現実世界とネット上の世界に大きな乖離が生じてしまっているように思えてならないのです。
「こういう人たちは、ネットで生活を成り立たせ、ネットで人とコミュニケーションを取ればいいのではないか」
実際に働きに出なくても、インターネットによるFX取引で父親より稼ぐ人も出てきています。私もそんなネットだけの生活が成り立つのではないかと考えた時期もありました。しかし、ホリエモンの収監の様子をテレビで見て、ネット上のバーチャルな世界が発達しても、限界があることをつくづく感じました。
ネット世界の象徴でもあるホリエモンも、現実に身体を拘束される刑務所行きという事態は避けられませんでした。時代が変わっても「ネットで服役」ということは起こり得ないのです。
彼らが原発問題に熱狂して、彼らが何かを変えられるとしても、ネットの中の一つの小さなトレンドに過ぎません。現実に動いている体制には、大きな影響を与えることはできないのです。現実社会との接点こそ、ネット全盛の時代にあっても、ないがしろにできない大切なことではないでしょうか。
小出氏が世間の注目を浴びるようになったことで、奇しくもネットの社会に引きこもった人たちの存在を再発見することになりました。これらの人の力を、いまの社会はうまく活用できていない現実が浮き彫りになったのです。
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これでこのブログの記事はおわりである。この締めくくりの驚くべき部分を読むと、香山氏がとんでもない妄想の世界に暮らしていることがわかる。
>熱狂する彼らがネット上で喧々囂々の議論をしても、現実に起こっている原発問題は何も解決しません。
というのは、本当に驚異的な考えである。彼女の頭の中は、どうなっているのだろうか。ウィキリークスとか、中国の「網民」の影響力とか、そういうものを聴いたことがないのだろうか。
確かに、他の国々と違って、日本ではネットの世界と他の世界との隔絶が大きかった。それはおそらくは意図的なもので、マスコミがネットを完全に無視していたことが原因である。日本社会のショッカー集団にとってネットは非常に不都合なものなので、あたかもそれが存在しないかのように取り扱って、影響力を削減することに躍起だったのである。
http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.htmlそれでも上のリンク先の表のように、新聞の売上は確実に落ちてきていた。それはひとえに、ネットの影響である。
今回の原発事故で事態は一挙に進展したように思う。少なくとも4月の新聞販売部数は大幅に落ち込んでいる。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1105/19/news032.html これは、単に震災の影響ではないように私は感じている。
私は随分前に新聞を取るのをやめて、テレビも見るのをやめた。あまりにもアホ臭いからだ。ニュースはネットで見るが、原発事故まではなるべくそれも最低限にしていた。今回の原発事故で、非常に多くの人が、マスコミの報道がインチキであることを痛いくらいに感じ取っている。それはインターネットへの依存を一挙に高めているに違いない。
社会におけるコミュニケーションの主たる現場は、アメリカや中国ではネットに完全に移っている。大幅に遅れていた日本も、今回の事件で一挙に移行が進んでいる。ネットはバーチャルな世界ではない。ネットは、人間社会のコミュニケーションのあり方を根本から変える、革命的現象なのである。これは、ピーター・ドラッカーがつとに指摘していたところでもある。
小出裕章さんが、マスコミからほぼ完全に黙殺されながら、その影響力を急速に拡大していった現象は、
「小出氏が世間の注目を浴びるようになったことで、奇しくもネットの社会に引きこもった人たちの存在を再発見することになりました。」
などというものでは全くないのだ。それは、社会のコミュニケーション構造が根本的に変化しつつあることの重大な表現なのである。
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私たち精神科医は、逃避する彼らと現実との接点を作ることに腐心してきました。
しかしいま、それはインターネット社会の発達によって困難になっています。彼らの知識欲や他人と交信したいという欲求は、すべてネット上で満たされるようになってしまったからです。
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という、これまたトチ狂った認識は、彼女が精神科医業界という閉じたタコツボの中に逃避していることを明らかにしている。
いわゆる大人の世界のなかで横行するハラスメントを全身にうけながら、何事もなかったかのようなフリをして日常を砂を噛むようにして暮らしている人々は、満身創痍であって、日々、精神科医に駆けんこんでいる。そこで精神安定剤や入眠剤を貰って辛うじて生きているのである。それゆえ精神科医は大はやりである。香山氏にとってはそれこそが「現実」である。
しかしインターネットの発達によって、そういう世界は足元が崩れつつあるのだ。なぜなら、
安冨歩『経済学の船出』で指摘したように、20世紀に隆盛を極めた「関所資本主義」が、インターネットの発達によって機能しなくなりつつあるからだ。日本は特別に関所資本主義時代に成功を収めた国だったので、巨額の国債を発行してまでその維持に努めてきたが、もう限界である。今回の地震と原発事故は、その最後の一突きになった。孫正義氏という、ネット時代の先頭を切ってきた人物が、この問題で大きな存在感を示しているのはそのためである。
東電の処理をめぐる問題は、その行方を決定的に規定するはずである。この既に崩壊している会社に、銀行団が何兆円も貸し込んだことで、事態は更に緊迫の度を高めている。事態は日本全国の関所資本主義を巻き込む規模となってしまった。ここで政府が東電を解体できず、銀行団を見捨てることができなければ、今度は、政府自身が破綻するだろう。
政府も官僚も財界も、その崩壊を食い止めるのに必死である。しかし、大きな構造的変化にいくら抵抗しても無駄というものである。余計なことをすればするほど事態は悪くなり、まもなく、大規模なシステム崩壊が起きる。ソフトランディングのチャンスは過去に何度もあったが、全て封殺された。おそらく今回の原発事故が、もはやソフトとは言えないにしても、緊急着陸の最後のチャンスであろう。ここを逃せば、地面に激突してしまう。香山氏のような認識では、確実に地面に激突する。
(つづく)
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- 2011/07/11(月) 11:52:05|
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