定方正毅教授という方が、かつて東京大学工学部におられた。珍しい善人で、正義漢であった。彼は常々、
東京大学の先生方は、学問を出世の道具にしていると憤激しておられた。憤激のあまり定年前に東大を辞めてしまって工学院大学に移られたが、ほどなく急死された。東大で善人は長生きするのが難しい。定方教授が生きておられたら、今回の東大御用学者どものふざけた振る舞いに怒り狂われたことであろう。
さて、定方教授の御専門は燃焼工学であり、特に、石炭の燃焼で大きな業績を挙げられた。晩年は、単なる燃焼ではなく、
社会エコロジー工学という分野を提唱された。定方教授は、世の中で「ゴミ」扱いされているものは、単に、うまい利用法が実用化されていないだけであって、それを見出すのが研究者の最重要の仕事だ、と言っておられた。その思想を突き詰めれば、社会システムは、排出物が何らかの形で人間社会・生態系の投入物になるように構成されねばならず、なんにも使い道のないようなゴミは出してはならない、ということになる。言うまでもないが、放射性廃棄物はその最悪の事例である。
定方教授の最重要の研究は、石炭を燃焼させた場合に発生する「汚染物質」を除去し、それの有効な利用法を発見・実用化することであった。そのなかでも特に重要なものは以下である。
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さらに、中国東北部・北部に広がるアルカリ土壌の問題に対して、大気汚染との同時解決手法の確立を目指して、脱硫の際の副生物である石膏を用いての土壌改良を提案され、実際に大規模圃場での改良効果が継続的に確認されるという画期的な研究成果を残されました。この中国での環境研究については、著書『
中国で環境問題にとりくむ(岩波新書)』にまとめられています。
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石膏というのは硫酸カルシウムであり、塩化ナトリウムと接触すると、
硫酸カルシウム+塩化ナトリウム → 塩化カルシウム+硫酸ナトリウムとなって、共に無害である。
定方教授の研究は塩害の多い中国が舞台であったが、塩害に国境はない。石膏の利用は日本では減っていて、問題になっているらしい。
今こそ、原発を止めて石炭でガンガン発電し、そこから出てくる石膏を、東北地方太平洋岸の津波を浴びた地帯にぶち込む時である。以下のようなやり方もすばらしいとは思うが、量が足りないであろう。田畑に限らず、いかなる場所も塩を浴びたのでは使いものにならない。出来る限り、石膏を撒くべきだと思う。
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よみがえれ水田…塩害地に特殊堆肥、田植え実験
津波被害のあった農地の早期回復実証実験に参加し、特殊な堆肥を使った田んぼで田植えする農家(宮城県石巻市で)=多田貫司撮影
津波の被害を受けた宮城県石巻市南境の水田で20日、塩分に強い微生物が豊富に含まれた堆肥を利用した田植えが行われた。
堆肥は、福島県の環境システム開発会社「福萬産業」が、経済産業省の支援を受けて開発した。
田植えが行われた約20アールの水田には、津波で汚泥が3~4センチ堆積したが、汚泥の除去や塩抜き作業もしないまま、耐塩性がある微生物を含む堆肥を投入。最小限の復旧作業のみでこの日を迎えた。水田には県産ブランド米「ひとめぼれ」の苗が植えられた。同社の小林功一社長は「有効性が確認できれば、データを公開し、復興に役立てたい」と期待する。
(2011年5月20日13時55分 読売新聞)
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- 2011/05/20(金) 20:46:26|
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