国際原子力村の大物16人の声明である。ポイントは以下の部分であるが、笑止千万である。
(1)
しかも事故後の検証から、事前のより詳細な分析によって必要性を特定できる、比較的コストのかからない改善を実施していれば、これらの事故は完全に回避できた可能性があることが判明している。 ⇒たとえば囲碁や将棋を考えてみよう。強い相手と戦えば負ける。しかし、負けた試合を検討すれば、必ず「敗着」があり、「あそこでああやっておけば、負けなかった」という結論が出せる。確かにそういう学習は非常に重要である。
重要であるが、それは何局も何局も打つから意味がある。名人上手を相手に、3局負けたからといって、その3局について詳細に検討し、「比較的コストのかからない改善を実施していれば、これらの敗着は完全に回避できた可能性がある」と言っても無駄である。そんな後知恵は意味がない。この3度の過酷事故から人類が学ぶべきことは、「原子力から手を引こう」だけである。
(2)
福島第一原子力発電所の立地と設計では、確率の低い事象があり得ない形で同時発生すること(史上稀に見る地震に史上稀に見る津波が加わったことによる全電源喪失)に対する考慮が十分でなかったと思われる。⇒福島原発を襲った地震は、「同原発の耐震安全の基準値として認めた数値の4分の3に過ぎない448ガル」であり、ちょっと気の利いた耐震建築なら、一般の建物でも耐えられる水準である。新潟県中越沖地震で原発敷地内で観測された最大の加速度は、680ガルであった。問題は、この程度の地震でも、1号機では冷却系の破断事故が起きた可能性が高いことである。
また、津波にしても、ディーゼルのタンクを海側に置いて持って行かれたり、あるいは、同じところに防水しないで非常用発電機を置いたのは、あまりにも無神経である。更に冷却用の海水の取り込み口が破壊されたが、これは、どうしても海に突っ込んでおく必要があるので、史上稀に見る津波でなくても壊れる可能性を排除し得ない。
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http://www.jaif.or.jp/ja/news/2011/statement_16experts_worldwide.pdf
原子力過酷事故は、すでに歴史の彼方に去ったとみなされていた。それにもかかわらず、再び過酷事故が起こってしまった。なぜか。
満足のいく答えを導くためには、より多くのデータに基づく詳細な分析が必要になるが、一定の予備的な観察は現時点でも意味があろう。2011 年 3 月 11 日に発生した東北太平洋沖地震では、一方において、原子力発電所が他の多くの人工建造物に比べて、破滅的な自然事象にもある程度耐え得ることが示された。他方で、福島第一原子力発電所の立地と設計では、確率の低い事象があり得ない形で同時発生すること(史上稀に見る地震に史上稀に見る津波が加わったことによる全電源喪失)に対する考慮が十分でなかったと思われる。
実際に、上述の過酷事故はすべて、発電所の設計時点では予見されなかった起因事象が複雑に重なって発生したものである。さらに、これらの事故で緊急時要員は、事前に訓練を受け態勢が整った状況の範囲を超えた対応を余儀なくされた。しかも事故後の検証から、事前のより詳細な分析によって必要性を特定できる、比較的コストのかからない改善を実施していれば、これらの事故は完全に回避できた可能性があることが判明している。
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「原発事故、回避できた可能性」世界の専門家16人声明
2011年4月19日19時3分 朝日新聞
福島第一原発の事故をめぐり、国際的な原子力安全の専門家16人が国際原子力機関(IAEA)に再発防止に向けて声明文を提出した。事故について「比較的コストのかからない改善をしていれば、完全に回避できた可能性がある」と指摘している。日本原子力産業協会が19日、翻訳してウェブサイトに掲載した。
声明では、福島第一原発の安全対策について「確率の低い事象が重なることに対する考慮が十分でなかった」と指摘。拘束力や強制検査権のある国際規制機関の創設も提案している。
16人はロ、印、スウェーデンなど11カ国の専門家。米国スリーマイル島原発事故(1979年)の対応に当たったハロルド・デントン元米原子力規制委員会原子炉規制局長や、仏電力公社の元原子力安全監察総監、チェルノブイリ原発の元主任技師ら。
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津波は想定以上、揺れは想定内…福島原発
福島原発
東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所で記録した揺れの最大加速度が、経済産業省原子力安全・保安院が同原発の耐震安全の基準値として認めた数値の4分の3に過ぎない448ガルだったことが18日、わかった。
地震の揺れは想定内だったが、高さ6メートル以上とみられる想定外の津波が、原発の安全の根幹に関わる機能を喪失させた可能性が高い。
同原発の2台の地震計で記録された今回の地震の最大加速度は、448ガルと431ガル。東電は同原発で予想される揺れの最大値を600ガルと想定していた。しかし、東電関係者の証言によると、この揺れによって、送電線を支える原発西側の鉄塔が倒れた。その結果、自動停止した原発に送電できなくなり、1~3号機の冷却機能がストップした。
続いて襲来した津波は海水ポンプを水没させた後、タービン建屋にぶつかり、原子炉建屋の脇を抜けて西側にある小山の麓までを水没させた。緊急炉心冷却装置(ECCS)などを動かす非常用ディーゼル電源も海水に漬かり、6号機を除き使用不能になった。
津波の正確な高さは不明だが、東電は土木学会の研究成果などに基づき、「津波が5~6メートルの高さであれば施設の安全性は保てる」としていたことから、6メートル以上あったとみられる。東電はまた、近海でマグニチュード(M)8・0の地震による津波で水位が上がっても、海水ポンプなどの機器に「影響はない」としていた。
今回の地震の規模はM9・0で、想定した地震の約30倍というけた違いの大きさ。あるベテラン社員は「入社以来、何十年も原子力の安全性を信じてきた。『まさか』という気持ちの連続だ」と肩を落としていた。
(2011年3月19日07時50分 読売新聞)
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- 2011/04/19(火) 23:01:36|
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「学者の本業は、すでに終った事件や決定を跡づけることだ。(中略)何が可能で何が可能ではないかがはっきりした時点で議論するのだから、頭が良さそうにも見えるだろう。だが、その頭の良さは役立たずと表裏の関係にある」(藤原帰一/朝日新聞4月19日夕刊)。
原発にかかわる学者は、後出しジャンケンの特権を捨てて、世のため人のために役に立つことを考え、発言し、行動してほしい。
- 2011/04/20(水) 09:17:08 |
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- まゆまゆ #79D/WHSg
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