東京新聞は比較的厳しい態度をとっているが、それでも以下のようなところが、限界のようだ。もっときちんとした言葉をマスコミが最初から使っていれば、ここまでにはならなかっただろうに。
====================
【社説】東京新聞
福島第一原発 情報隠しは許されない
2011年4月6日
放射能汚染水が福島第一原発から海へ放出された。海洋汚染が今後、どう広がるか心配だ。空中へ放出された放射性物質の拡散予測の公表が滞る政府の姿勢にも憤りを覚える。迅速な公開を求める。
今回の原発事故で、意図的に放射能汚染水を海に流したのは初めてだ。数日かけて一万トン以上が放出される。「止める」「冷やす」「封じ込める」の三鉄則のうち、最後の砦(とりで)である「封じ込める」方策を東京電力が放棄したわけで、重大な事態だ。
東電の狙いは、原子炉の冷却システムの復旧だが、タービン建屋内などに高濃度の汚染水がたまって、作業員が中に入れない。そのため、高濃度汚染水を集中廃棄物処理施設に移す予定だった。
だが、処理施設は津波で水没し、たまった水も原子炉建屋の爆発などで汚染されていた。放出されたのは、その水だ。
原子炉等規制法に基づいた応急措置であり、比較的低濃度とはいうものの、同法で放出が認められる濃度限度の最大五百倍に達する。しかも、2号機の取水口付近からは高濃度の汚染水も垂れ流し状態だ。周辺海域の汚染はどうなるのか、不安は募るばかりだ。
小魚のコウナゴから放射性ヨウ素や同セシウムが検出された。漁業関係者から「漁ができない」「風評被害が避けられない」と悲鳴が上がっている。隣国の韓国政府からも「国際法的に問題」と懸念が表明された。なぜ非常手段を採らざるを得なかったのか、説明が足りない。今後、海洋でのモニタリング調査など監視を徹底し、素早く情報公開すべきだ。
空中に放出された放射性物質の拡散予測がいっこうに公表されないのも、言語道断である。
文部科学省の拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」の情報が公開されたのは三月二十三日の一回だけというおそまつさだ。原子力安全委員会は「精度が低いため」と弁明するが、放射性物質がどこまで、どの程度、飛散していくかという予測は、国境を超えて、世界が共有せねばならない重要なデータであるはずだ。
海外の専門機関は、気象庁の観測データに基づき、独自の拡散予測を公表している。これまで積算された放射線量も示されないと、かえって国民は不安だ。政府はスピーディーに対応すべきだ。
「直ちに人体に影響がない」などと語るよりも、正直な数字こそ、安心できる尺度になる。
スポンサーサイト
- 2011/04/08(金) 00:10:15|
- ブログ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0