この講演を聞いて、本当にあきれてしまった。
まず、彼が冒頭で言及している、マグニチュードの上方修正についての、島村英紀氏の記事である。一番下に引用しておいたので、ちゃんと読んで欲しい。広瀬隆がケーブルテレビで「上方修正は怪しい」と言っていたときは、「さすがにそこまでするかなぁ」と思っていたのだが、下の記事を見ると、「さもありなん」という感じがする。確かに、明治三陸沖地震のときの津波は38メートルだったのであり、今回は最大でも20メートルいくかいかないかであるから、「千年に一度」というのはおかしい。
http://shima3.fc2web.com/kyousei-atogaki.htmで、こりゃすごいなぁ、どんな人なんだろう、と思い、島村氏のHPを見ていて、ショックを受けた。彼は、わけのわからない理由で逮捕され、半年も拘留されるという理不尽な目にあい、詐欺にあったとされる被害者が、「詐欺にあってなどいません」と証言したにも拘わらず、四年の有罪判決を受けたのだ。明らかに、学会の欺瞞言語を使う連中を、普通の言葉で批判したために、陥れられたのだ。なんという恐ろしいことだ。
http://www5.pf-x.net/~sapshima/taihorenkougeki.htmhttp://homepage2.nifty.com/lite/hard_column/no_nippon_1079.html
島村さんは
次のように述べている。
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私は今後、国から与えられた「前科一犯」の肩書を誇りとして生きていこうと思います。
しかしまた世界に通用した地震学者としての誇りも失っていないつもりです。今後も私は、地球科学や地球環境問題への発言を続けていきたいと考えています。「それでも地震予知は不可能だ」と。
日本が推し進めてきた地震予知研究が、じつは地震予知の見通しのないまま、「地震予知が出来る」を前提にして法律や防災の仕組みが作られてきたことを私は真正面から批判してきました。地震予知に膨大な予算を費やす人たちにとっては、私は邪魔な存在であったのかもしれません。
私が主張してきた「地震予知は不可能を前提として対策を講じるべきだ」ということは、ようやく政府や地方自治体の政策にも反映されはじめました。これからも、地球物理学者として、地震の被害を最小限に食い止め、国民の命や財産を守るために、いままで以上に、地震予知批判や、地震の正しい理解のための啓蒙活動を続けるつもりです。
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本当に恐ろしい。嫌な国に生まれたものである。
この調子では、私もありもしない「公金横領」か「セクハラ」か何かで、早晩、逮捕されかねないなぁ。
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【2011年3月21日に追記1。東日本を襲った巨大地震(東日本大震災。東北地方太平洋沖地震)で】
この本の後書きに書いてあるように、阪神淡路大震災が起き、その後に引きつづいて福井県にあるプルトニウム高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」で大量のナトリウム漏れが起きたときに、私は何人もの欧州人に同じことを言われたことがある。
天災が少なく、責任観念が発達している欧州人にとっては、政府や動燃事業団がとった対策を静観しているだけの日本人の対応はかなり奇妙に見えた。かって欧州でも同様の事故が起きたのをきっかけに廃炉にした国が続出したからである。日本人は、すべての事故を天災のように避けられないものと考えているのではないか、というのが私が知っている欧州人の反応だった。
そして、今回の大震災でも、その日本人の習性を利用すべく、大震災に引きつづいての福島原子力発電所の原発震災についても、「想定外の大きさの地震と津波に襲われた、人災を超えるもの」という心理に日本人を誘導しようとしている企てが透けて見える。
今回の大地震(東北地方太平洋沖地震)で気象庁が発表したマグニチュード9というのは、気象庁がそもそも「マグニチュードのものさし」を勝手に変えてしまったから、こんな「前代未聞」の数字になったものだ。(下の追記にあるように、気象庁の最初の発表は7.9、それが8.4、ついで8.8、そして9.0に増やされていった)。
いままで気象庁が長年、採用してきていて、たとえば「来るべき東海地震の予想マグニチュードは8.4」といったときに使われてきた「気象庁マグニチュード」だと、いくら大きくても8.3か8.4どまり。それを私たち学者しか使っていなかった別のマグニチュード、「モーメント・マグニチュード」のスケールで「9.0」として発表したのである。
すべてのことを「想定外」に持っていこうという企み(あるいは高級な心理作戦)の一環なのではないだろうか。
【2011年3月21日に追記2(3月29日に追加)。東日本を襲った巨大地震(東日本大震災。東北地方太平洋沖地震)で】
今回の気象庁によるマグニチュードの数値の変更(増大)の経過は、こうなっている。
●3月11日の地震直後にNHKテレビで放送された緊急地震速報では、震源の位置は画面に表示されていたが、マグニチュードは表示されていなかった。
●地震から数分~10分くらいたってから、気象庁から数値が来て、テレビ画面にはマグニチュード7.9が表示された。この値は緊急地震速報のデータ処理過程で求めた数値である。これは、従来からの「気象庁マグニチュード」による数値だ。
今回の大地震では地震断層が破壊していった時間は全部で約150秒と長かった。他方、緊急地震速報でははじめの数十秒間のデータだけを使ってデータ処理をしているので、今回のような地震では、マグニチュードや震度を正しく予測して表示することができなかった。
じつはこのことは、地震直後に出した津波警報(大津波注意報)が「小さく予報しすぎた」ことにつながった。最初の警報発表は14時49分だったから、気象庁は地震後3分で出したことになる。この意味では十分に早かった。しかしそのときの警報は「岩手県と福島県の沿岸は「3メートル以上」だった。その後、15時14分になって、「10メートル以上」と変更になった。この時間は地震後30分近く経っていて、津波が海岸にすでに到達してしまった時間である。
つまり最初に警報した津波の高さは低すぎたのであった。津波警報がオオカミ少年になっていたこともあって、「3メートル以上」という津波警報を聞いた人たちに油断がなかったとはいえなかったのではないだろうか。
つまり緊急地震速報のデータ処理過程で求めた数値では、この種の大地震の姿をとらえられていなかったのである。このマグニチュード7.9は「緊急会話検測による値(速報値)」というもので、いくつかの地点で、その時刻までに観測された地震計の最大振幅から求めたものだ。
しかし、今回のような 巨大な地震では、地震断層の破壊が広い領域に進んでいくのに、かなりの時間(今回は150秒程度)を要するから、このような緊急地震速報によるマグニチュード決め方に使っている、地震計新記録の最初だけの、つまり短い時間の地震波形は、破壊の全体がつかめなかった。こうして速報値のマグニチュードは精度が劣るものになり、その結果、最初の津波警報が小さめのものになってしまったのである。(津波警報の問題点は別頁にある)
●16時直前にマグニチュード7.9からマグニチュード8.4への変更が放送された。このマグニチュード8.4は「気象庁マグニチュード」である。これが気象庁マグニチュードとしての最終的な数値であろう。気象庁マグニチュードは、国内にある「気象庁の地震計が記録した地震の大きさ」から計算しているものだ。
●その後、17時30分にマグニチュード8.4からマグニチュード8.8に変更された。このマグニチュード8.8は「モーメント・マグニチュード」の数値である。モーメント・マグニチュードは気象庁マグニチュードとは違い、「地震の震源で、どのくらい大きな地震断層が、どのくらいの長さで滑ったか」を解析して求めるマグニチュードだ。
モーメントマグニチュードは気象庁マグニチュードとは決定の原理が違う。気象庁マグニチュードではこのような大きな数値は出ない。なお、マグニチュードの決め方はこのほかにもあり、全部で7通りもある。
■気象庁のホームページによれば「地震は地下の岩盤がずれて起こるものです。この岩盤のずれの規模(ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ)をもとにして計算したマグニチュードを、モーメントマグニチュード(Mw)と言います。(中略)その値を求めるには高性能の地震計のデータを使った複雑な計算が必要なため、地震発生直後迅速に計算することや、規模の小さい地震で精度よく計算するのは困難です」とある。つまり、これを楯に、気象庁は気象庁マグニチュードに、ずっと固執してきたのである。
気象庁マグニチュードは、震源から離れた場所にある地震計のデータを含めた多数のデータを使い、周期5秒前後の地震波の最大振幅で計算するものだ。東北地方太平洋沖地震のように、もっと長周期の成分が多い巨大地震では、マグニチュードを十分に表せないことは、かねてから指摘されていた。
さて、この1時間半のあいだに、なにがあったのか、まだ分からない。しかし、気象庁がモーメントマグニチュードを日本に起きた地震のマグニチュードとして発表したのはこれが最初だったし、気象庁は前歴もあることだから、現場の判断とはとうてい思えず、なんらかの外部からの”入力”があったことは十分に考えられる。
ちなみに、福島原子力発電所1号機の冷却装置の注水が不能になったのは11日午後4時36分。地震後2時間ほどのことだ。消防のポンプ車で真水を注入していたが、その真水の供給も途絶え、原子炉格納容器の水位は低下。冷却機能を急速に失って、翌12日午後3時半に1号機は水素爆発を起こした。
●3月13日、つまり地震から2日後の12時22分の気象庁発表で、「データを精査した結果として」、マグニチュード8.8からマグニチュード9.0に変更された。このマグニチュード9.0も「モーメント・マグニチュード」である。フィンランドやオーストラリアなど遠い場所での地震計の記録を参照したら、この値が適当だったと気象庁は言っている。
じつは気象庁では、かねてから、気象庁マグニチュードのほかに、気象庁内部ではモーメント・マグニチュードも計算してきていた。それは、北西太平洋やインド洋で発生する大地震とそれによる津波について、関係国に情報を提供してきたが、このときに、気象庁マグニチュードでは国際的に通用しないし、津波予測に適していなかったからである。
今回はその数値を援用して、モーメント・マグニチュードの数値が国内の一般向けとして、(気象庁としてははじめて)発表されたのであろう。
しかし、もし気象庁がモーメントマグニチュードを大地震に適用するのなら、いままで通用してきたマグニチュードを見直す必要がある。たとえば過去の大地震(西暦869年に起きて、今回のように津波が海岸から5~6キロメートルも入ったことが分かっている貞観地震はマグニチュード8.3とされている)や、マグニチュード8.4(気象庁マグニチュード)に耐える設計になっているはずの浜岡原子力発電所が、「またも想定外の地震」に襲われることになりかねない。
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- 2011/04/02(土) 00:31:57|
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