福島の原子炉は、熱くなった炉心に水を流して蒸気にし、それでタービンを回し、その蒸気を海水で冷やして水に戻し、それでまた炉心を冷やす、という構造になっている。今回、復旧したのは、その海水を取り込むポンプである。これがないと、炉心を冷やす水を冷やせないのである。
これは重要な進展である。しかし、問題は炉心を冷やす水の循環回路ができていないことである。
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東電は「原子炉に水を入れているだけの現状から、冷却システムを動かすことで、5、6号機のように早く安全な状態に持ち込みたい」と話す。
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となっているが、これは変な話である。まず、5号機、6号機は、爆発しなかったので、プールを冷やす回路が壊れていなかったと思われる。それゆえ、海水で冷却するシステムを復旧すれば、プールを冷やす水を冷やすことができて、冷温状態に持ち込めている。
しかし、1~4号機は炉心やプールを冷やす水の循環回路はおろか、圧力容器やプール自体がかなり損傷している。ここをなんとかしないことには、海水の冷却システムが復旧しても、冷やすものがない。「冷却システムを動かすことで」の「冷却システム」とは、
【炉心やプールを冷やす水を循環させる回路】+【海水でその水を冷やす回路】
の二重回路のことであるはずだが、肝心の前者の修理は、全く進んでいない。なぜなら、タービン室の下部に高濃度の汚染水が溢れているからである。その上、たとえ回路が修復されたとしても、圧力容器の底が抜けているなら、水はそこからダラダラ流れていくので、まともに循環などしない。
「原子炉冷却本格化へ」
という異常に楽観的な見出しを毎日新聞が付けた理由が、私にはわからない。
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福島第1原発:海水ポンプ復旧にめど 原子炉冷却本格化へ
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発で31日、原子炉の冷却システムを支える海水ポンプの復旧にめどが立った。今後、ポンプと外部電源をつなぐ作業に入る。正常に働けば、原子炉の冷却に向けた対策が本格化する。
海水ポンプは、炉内から出てきた高温の水を冷ます熱交換器に、常に冷たい海水を供給するための機器。津波ですべてが電源とともに動かなくなり、1~4号機では原子炉や使用済み核燃料プールの冷却ができず水素爆発などが起きた。一方、5、6号機では仮設の海水ポンプを動かすことで燃料プールを冷やし、制御可能な「冷温停止」にすることに成功している。
東電はすでに2、3号機で仮設海水ポンプの設置を完了。1、4号機にも設置の見通しが立った。中央制御室まで来ている外部電源に接続し、海水ポンプによる冷却システムの復旧を急いでおり、東電は「原子炉に水を入れているだけの現状から、冷却システムを動かすことで、5、6号機のように早く安全な状態に持ち込みたい」と話す。
一方、1~4号機のタービン建屋地下やトレンチ(立て坑)内の汚染水について東電は、その水位を無人カメラで常時監視することを決めた。2日までにカメラを設置する。2号機では水表面の放射線量が毎時1000ミリシーベルト超と高く、作業員が近づくことが難しいため。どこに設置するかは検討中という。【関東晋慈、松本惇、酒造唯】
毎日新聞 2011年3月31日 22時50分
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- 2011/03/31(木) 23:36:53|
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