やはり、圧力容器は損傷していた。当たり前である。あれだけ爆発したのだし、あれだけ、炉心の露出が続いているのだから、そうならない方がおかしい。普通に考えればそうなのに、なぜ、東電も政府も、「圧力容器の健全性は保たれている」という幻想を抱き続けたのだろうか。
これまた日本軍とそっくりである。たとえば1945年の夏、「満洲国」の国境を守る関東軍は、「ソ連軍は当分、侵入してこない」という観測に固執していた。ところが、シベリア鉄道を国境から見ていた観測者は、多数の貨物車が西から東へと向かっていることを報告していた。それは、ドイツを降服させたソ連軍が、ソ満国境に続々と送られてきたからであった。関東軍はしかし、日ソ不可侵条約をソ連が遵守するという極めてありそうにもない想定をおいていた。なぜかというと、夏に攻めて来られたのでは、自分の防衛準備が整わないからであった。こういう希望的観測に固執して正常な判断力を失うことが、日本軍には多々あった。
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福島原発1~3号機「圧力容器に損傷」 原子力安全委
2011/3/30 22:33 日経新聞
原子力安全委員会は30日午後の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所の1~3号機について「圧力容器が損傷しているのは事実だろう」との見解を示した。1~3号機は原子炉に真水を注入するが、不安定な状態が続いている。タービン建屋などにたまった高い濃度の放射性物質を含む汚染水の排水作業も難航している。
圧力容器は核燃料を入れた原子炉の中心部分で、高圧に耐えるため厚い鋼鉄でできている。安全委の代谷誠治委員は「圧力容器と格納容器の圧力差が小さく、圧力容器が健全に保たれているとは思えない」と説明。具体的な損傷箇所は言及しなかったが、何らかの損傷があることを示唆した。
圧力容器は簡単にひびが入ったり、割れたりすることはないとされている。ただ燃料棒の真下の部分には核反応を抑える制御棒を出し入れするための穴があり、溶接部は弱い。経済産業省原子力安全・保安院は30日の会見で「制御棒の部分が温度や圧力の変化で弱くなり、圧力容器から(水などが)漏れていることも考えられる」との見解を示した。
圧力容器自体が損傷すれば、冷却のための水を入れても水位が上がらず十分に燃料を冷やしきれないうえ、タービン建屋地下の汚染水を取り除いて、本来の冷却装置を動かすことができても、十分に冷却水が循環しない恐れもある。
福島第1原発では原子炉の温度が高い状態が続く。1号機の圧力容器の温度は30日午後2時にセ氏270度。水の注入量を増やした結果、29日より同約52度下がったものの、設計の上限(同302度)に近く依然として高い。2号機も30日午前6時で同170度と前日に比べて17度上昇した。
熱交換器など本格的な冷却装置の稼働に向けた作業を急ぐが、1~3号機とも冷却装置を動かすポンプがあるタービン建屋や屋外の坑道(トレンチ)には汚染水がある。抜き出す作業を一部で始めたものの、思うように進んでいない。
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- 2011/03/30(水) 22:48:59|
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