下の記事は
日経新聞の「三つの可能性」という様式に従った解説記事である。ここでは可能性を以下の三つに分類している。
■可能性(1)消防ポンプ継続
■可能性(2)冷却機能が回復
■可能性(3)燃料棒溶け出す
しかし、これはおかしいのではないだろうか。というのも、消防ポンプによる循環だけでは、炉心の燃料棒を完全に水に浸すことはできないからである。圧力容器のなかの、熱くなった燃料棒に水をかけると、直ちに蒸発してしまう。すると、容器内の圧力は非常に高くなり、水を入れようとしても入らなくなる。それゆえ、どんなに頑張ろうとも、消防用ポンプでは、燃料棒のかなりの部分が露出する。露出すると、燃料棒は溶解する。それゆえ、
可能性(1)=可能性(3)
のはずである。
ところが、下の記事を読むと、消防ポンプで頑張っている限りは燃料棒が溶けず、それが止まると溶け出して大変なことになる、という印象を受ける。正確に言うなら、消防ポンプが止まると、燃料棒の全体が露出して、急激に溶ける、ということだと思う。それゆえ、三つの可能性とは、
■可能性(1)消防ポンプ継続=燃料棒の溶解が徐々に進む=その間、放射能汚染が広がり続ける
その1=幸運にも徐々に冷えて安定する。(1ヶ月以上掛かる)
その2=不運にも燃料棒の溶解によって圧力容器・格納容器が破損する
■可能性(2)冷却機能が回復=燃料棒の溶解が止まる
■可能性(3)燃料棒が急激に溶けて圧力容器・格納容器が破損する
ということになる。
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汚染水が状況好転阻む 福島原発、3つの可能性
2011/3/27 4:00 日経新聞
東日本大震災で甚大な被害を受けた東京電力福島第1原子力発電所では、冷却に使っていた海水を真水に代え、外部電源の復旧作業も少しずつ進んでいる。ただ、タービン建屋内に放射性物質に汚染された水がたまるなど作業環境は過酷さを増しており、計画通りに作業できず関係者にはいらだちも募る。膠着状態は続くのか、打開のきっかけはつかめないのか。今後の展開を考える。
■可能性(1)消防ポンプ継続
2号機で26日、原子炉冷却用の海水を真水に切り替え、25日から真水を注入している1、3号機と併せ、緊急停止した1~3号機すべてが本来の冷却の姿に近づいた。原子炉が備える多重の冷却系の稼働へわずかに前進したが、放射線量は依然として高い。これらの冷却系に電源を通じさせる作業は好転せず、燃料棒の過熱をかろうじて抑える現在の状況が当面、続きそうだ。
冷却水を真水にした点は不安材料の一つをなくせる。海水だと蒸発後に塩が残り弁や配管に詰まったり電気配線をさび付かせて電気を通した際にショートを起こしたりする心配があった。出光一哉・九州大学教授は真水への切り替えは「海水による悪影響を抑える望ましい対策」と解説する。
だが、ほかの作業が滞っている。外部電源を受ける体制は1~3号機で整い中央制御室の照明もついたが、その先へ電気を通す作業は進んでいない。特に冷却水を循環させるポンプの再稼働が遅れている。3号機のタービン建屋でその作業を進めようとした矢先に、たまった水から高い放射線量が検出され、除去する必要が生じた。
■可能性(2)冷却機能が回復
排水作業はいつまでに終えられるのか見通しが立たない。しばらく消防ポンプで冷却するぎりぎりの状態が続きそうだ。
期待される次の段階は、外部電源とつながった冷却用のポンプが復帰し、圧力容器内の温度を下げる体制が整うことだ。原子炉内の水は膨大な熱量をもつため、消防ポンプで水を送り込むだけでは簡単に冷えない。まず、強力な冷却系の回復を関係者は望んでいる。
さらに外部電源が復活し様々な計器類が動作すれば、事態の好転に弾みがつく。一部の計器で炉の状況がつかめるだけでも大きい。「どこが壊れているのかを明確にできれば、次の戦略を立てる際にも有効」(出光九大教授)という。このためにも建屋内にたまった水の除去が不可欠だ。
■可能性(3)燃料棒溶け出す
最も懸念される事態の可能性もまだ残る。燃料棒が溶けて放射性物質が外部に漏れ出すことだ。京都大学原子炉実験所の宇根崎博信教授は「消防ポンプの停止などのトラブルが起きれば圧力容器の温度が急に上がる恐れもある」と指摘する。その場合は格納容器の温度も高まり、水蒸気を逃がさなければならず、放射性物質を大気中に放出する事態を避けられない。
厚い金属製の圧力容器は頑丈なので溶けた核燃料が外部に漏れる恐れは極めて低い。だが、これまで経験したことのない事故の連鎖で、厳しい局面を迎える可能性も否定できない。
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- 2011/03/27(日) 09:36:28|
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