3号機でも1号機でも、高濃度の放射性物質によって汚染された水が見つかっている。また、放水口から少し離れた海から、うんざりするような濃度の放射性物質が検出された。
原子力安全欺瞞言語を使う人びとの認識はこうだった。
(1)原子炉から出る配管は丈夫だから割れないはず。
(2)すべての配管は自動的に弁が閉まっているから漏れないはず。
(3)だから周辺の水はさほど汚染されていないはず。
しかし実際には、とんでもない濃度の放射性物質を含む水が発生し、海にダラダラ流され続けた。
普通の考えでは、これだけの異常事態が起きているのだから、どこかで配管が壊れて水が漏れるのではないか、と考えるはずだ。最初に掲げておいた読売新聞の記事に、地震直後に「やばい水」が漏れてきたという作業員の証言があるくらいだから、私はそう思っていた。私の判断力が優れているというのではなく、それが普通の判断というものである。
それができなくなる原子力安全欺瞞言語を使用し続ける限り、事態は収拾されないだろう。こと原子炉に関する限り、収拾されないということは、最悪の事態になる、ということである。なぜなら炉心は放っておくとドンドン熱くなり、崩壊していくのだから。
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ずれた配管、やばい水!…原発作業員の恐怖証言
福島原発
強い横揺れで天井のパイプがずれ、大量の水が漏れてきた――。
東日本巨大地震が発生した11日、東京電力福島第一原子力発電所で、稼働中だった1号機棟内にいた男性作業員の証言から、建物内が激しく損壊した様子が初めて明らかになった。
この作業員は、同原発の整備などを請け負う会社に勤務。昨夏からたびたび同原発で作業しており、地震があった11日は、稼働していた1号機の建物内のうち、放射能汚染の恐れがなく防護服を着用する必要がないエリアで、同僚数人と電機関係の作業をしていた。
「立っていられないほどの強い揺れ。横向きに振り回されている感じだった」。地震発生の午後2時46分。上階で作業用クレーンや照明などの機器がガチャンガチャンと激しくぶつかり合う音も聞こえた。「これは普通じゃない揺れだと直感した」
建物内の電気が消え、非常灯に切り替わった。「その場を動かないように」という指示が聞こえたが、天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきた。「これはやばい水かもしれない。逃げよう」。誰かが言うのと同時に、同僚と出口がある1階に向けて階段を駆け降りた。
建物内で漏水を発見したら、手で触ったりせず必ず報告するのがルール。だが、この時は余震が続いており、放射能に汚染されているかもしれない水の怖さより、このまま原子炉といっしょに、ここに閉じこめられてしまうのでは、という恐怖の方が強かった。
1階は作業員でごった返していた。外に出るには、作業服を着替え、被曝
ひばく
量のチェックを受けなければならないが、測定する機器は一つだけ。細い廊下は長い行列ができていた。
激しい余震はその後もさらに続き、「早くしろ」とあちこちで怒声が上がった。被曝はしていなかったが、「水素爆発した後の1号機の建物の映像をテレビで見た。あそこに閉じ込められていたかもしれないと思うと今でも足がすくむ」。(影本菜穂子)
(2011年3月16日14時37分 読売新聞)
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汚染水除去を最優先 福島原発、破損場所の特定急ぐ
2011/3/26 15:41 日経新聞
東京電力福島第1原子力発電所では1、3号機タービン建屋地下の水たまりで高濃度の放射性物質が検出され、1号機で水を取り除く作業を急いでいる。原子炉とタービン建屋をつなぐ配管が損傷して水が漏れた可能性が指摘されており、破損場所の特定も必要。今後漏水が拡大する恐れもあり、復旧作業は厳しい状況が続いている。
1、3号機の水で検出された放射性物質は、通常運転時の炉心の水の1万倍という高い濃度で、復旧作業の妨げになる。このため1号機では汚染された水をポンプでくみ上げ、とりあえず復水器にためておく排水作業を進めている。復水器は本来、タービンを回した水蒸気を冷やして水に戻す設備。2、3号機タービン建屋の水は量が多すぎて排水方法を検討中という。
たまっていた水について東電は放射性物質の種類と濃度を25日に分析、3号機ではセリウム144とヨウ素131の濃度が特に高かった。1号機も同様にヨウ素131などが高かった。
経済産業省原子力安全・保安院は、原子炉内の水が漏れ出た可能性が高いとの見解を示している。使用済み核燃料プールの水では高濃度の放射性物質は想定しにくいからだ。
また、ヨウ素131の濃度が高かったことも理由。使用済み核燃料プールだとしたら半減期が8日と短いヨウ素131はすでにほとんどなくなっているはずで、地震発生直前まで運転していた原子炉の水とみるのが自然なためだ。
原子炉内の水が漏出した原因は定かではないが、保安院は「圧力が保たれているので、原子炉にひびが入っていることはない」とし、配管や弁から漏れた可能性が高いとみている。原子炉からタービン建屋には水蒸気を送る管などがあり、これらの一部で破損し、水が漏れた可能性がある。
通常、原子炉でつくられた水蒸気は「主蒸気管」と呼ぶ配管を通ってタービンに送られる。冷やされた水は復水器から「復水管」という配管を通って原子炉に戻る。これら2つが主要な配管だが、ほかの配管の可能性もある。
ただ、本来、配管は地震対策が施され「非常に頑丈で壊れるとは考えにくい」(東京工業大学の沢田哲生助教)ものだという。
北海道大学の奈良林直教授は配管の破損のほかに、「格納容器のどこかに破損があってそこから漏水し、なんらかの原因でタービン建屋へ水が流れ込んだ可能性もある」とみている。格納容器の本体と圧力抑制室をつなぐ接続部は以前から弱いと指摘されており、そこが壊れたかもしれないという。格納容器の破損で漏水しているなら「現段階では放射線量が高いので、すぐに直して水漏れを止めるのは不可能」とみる。
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原子力発電の配管とは
2011/3/26 15:41 日経新聞
▼原子力発電の配管 原子炉が入っている原子炉建屋の機器と、水蒸気から電気をつくるタービン建屋の機器をつなぐ様々な配管がある。原子炉で発生した蒸気をタービンに運ぶ主蒸気管と、水に戻してから再び原子炉に届ける復水管が主体。
このほか、ごみを除去したり、余分な熱を取り除いたりする管など複数種類のものが建屋の中を網目状に走っている。
通常の運転時、配管を通る水蒸気や水には、核分裂反応で生じた特定の放射性物質がわずかに含まれているものの、核燃料棒の中にあるコバルトやテクネチウム、セリウムなどの放射性物質は含まれていない。
管には弁やポンプがついており、流れる量などを細かく調節できる。地震などで原子炉が緊急停止すると、弁を自動的に閉める設計になっているため、放射性物質を含んだ水や蒸気が外部に漏れることはないとされている。
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福島第1原発:海水から1250倍のヨウ素 放水口付近
2011年3月26日 11時44分 更新:3月26日 14時54分 毎日新聞
海水を採取した場所
体に影響する被ばく線量の目安
経済産業省原子力安全・保安院は26日、東京電力福島第1原発の放水口から南へ330メートル離れた場所で25日午前8時半に採取した海水から、放射性物質のヨウ素131が法律で定められている値の1250.8倍の放射能濃度で検出されたと発表した。東電は「放射性物質を含んだ水が海水に漏れ出している可能性が高い。(1~3号機のタービン建屋地下で見つかった)水たまりから出ている可能性も否定できない」とし、海水の調査を1日1回から2回に増やす。
保安院によると、同濃度の水を500ミリリットル飲むと、一般人の1年間の人工的な被ばく限度と同等の1ミリシーベルトになる水準。ほかにセシウム134については117.3倍、セシウム137は79.6倍だった。24日午前に同じ場所で実施した調査結果(ヨウ素131で基準の103.9倍)と比べると、10倍以上に上昇している。
保安院は「潮流に流されて拡散するので、海洋生物に取り込まれるまでには相当程度薄まる。周辺は避難区域に指定されており、住民への直接の影響はない」として、人体への直接的な影響を否定した。
一方、海、魚と放射性物質の関係について詳しい水口憲哉・東京海洋大名誉教授(資源維持論)は「1250倍とは非常に大きな値だ。海では希釈されるが、10~100倍に薄まったとしても懸念の残る濃度ではないか。現状では、放射性物質を多く含む水を海に捨てるなということは言えないが、千葉県沖などを含めた広い範囲の海水の調査をする必要がある」と話す。【八田浩輔、日野行介、大場あい】
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- 2011/03/26(土) 16:47:31|
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