現時点では、以下で述べられているように、危険性はさほど高くないと思われる。しかし同時に、以下の結果は、もしも今後、原子炉が水蒸気爆発を起こすという最悪のケースが発生すれば、
栃木県、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山形、新潟
といった非常に広い範囲で放射性物質が降り注ぐことを事前に立証してくれている。もちろんこれは風向き次第であり、風向きや風の強さが違えば状況は全く変わってくる。また、水蒸気と共に空に登った放射性物質が、最初の雨によって落ちてくる場所が最も危険である。それがどこになるのか、事前には全くわからない。
チェルノブイリでは、中性子の減速材として使われていた炭素が激しく燃え上がり、とんでもない火事を起こしたことが被害を大きくした。今回の軽水炉では、減速材として水を用いているので、こういうことにはならない。しかし、3つの原子炉でチェルノブイリの2倍の核燃料を燃やしている上に、ひとつはMOXというプルトニウムを用いた危険な燃料を使っている。それ以外に数千本の使用済み核燃料が貯蔵されている。そんなこんなで考えると、可能な被害の最大規模は、チェルノブイリを超えるおそれがある。
このことを認識せねばならない。しかし同時に、そこから生じる被害が、ハルマゲドンのようなものでもないことを理解しておく必要がある。何度も述べたように、問題は若い世代を如何に守るかにあり、高齢者に及ぶ影響は遥かに小さい。幸か不幸か、日本は世界最高水準の高齢化社会であるから、被害は相対的に小さくなる。
怯える必要はないが、ハイパーレスキュー隊の総隊長が指摘したように、放射能の恐ろしさを十分に熟知し、どういう被害が生じうるかを考えて、おそれる必要がある。その上で、冷静に、自分と自分の子孫の身を守る最善の方法を講じなければならない。それが勇気ある行動というものである。
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1都8県の空中で放射性ヨウ素など検出
福島第一原子力発電所の事故の影響を調べている文部科学省は20日、首都圏を中心に1都8県で、ほこりや雨水などの空中降下物から放射性ヨウ素や同セシウムを検出したと発表した。
専門家は、直ちに健康に影響を及ぼす数値ではないとしている。同時期の水道水調査で規制値を下回る放射性ヨウ素が出ており、今回の検出は、原発から放出された放射性物質が水道水に溶け込んだ裏付けとなる。
各都道府県で19日午前9時~20日同9時の間に採取した。放射性ヨウ素は、栃木県で1平方キロ・メートルあたり540メガ・ベクレル(1平方メートルあたり540ベクレル)のほか群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山形、新潟で検出。セシウムは群馬で63メガ・ベクレル(同63ベクレル)のほか栃木、山形、千葉、岩手で検出された。宮城、福島、茨城、奈良のデータはなく、ほかの道府県では検出されなかった。18日午前9時からの24時間では、栃木で1300メガ・ベクレル(同1300ベクレル)の放射性ヨウ素を観測するなどしたが、翌24時間は数値が低下した場所が多い。事故後、空中降下物の放射性物質量が公表されたのは初めてで、観測は今後も続けられる。
松原純子・元原子力安全委員会委員長代理は「チェルノブイリ原発事故が周辺の国や地域に及ぼした汚染レベルの1000分の1以下と言え、直ちに健康に影響を及ぼすものではないが、環境中や、野菜、牛乳などの放射能レベルを継続して観察していくことが重要だ」と話している。
(2011年3月20日22時09分 読売新聞)
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- 2011/03/20(日) 23:43:50|
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