「
福島第一原発:全体的な見通し。名を正すべし。」という記事で、
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【(3)なんとかなるのか?】
これもわからないが、
(1)自衛隊のヘリコプターと機動隊の放水車による注水が成功する→使用済み燃料が安定化。
(2)現在行われている電源回復工事が成功。
(3)緊急冷却装置などの設備が運良く動いてくれる。
という幸運が重なれば、少なくとも事態の悪化を止められる。
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と書いた。しかし(1)は、あえなく失敗した。というより、最初から目のない話だったのである。大の大人が大真面目にやっていて、マスコミも持ち上げており、しかも多くの自衛隊員、警察官、東電職員にかなりの被曝を強いるのであるから、多少は効果のある案なのかと思っていた。しかしそれは、単なるショーだったのである。被曝した人々に何と説明する気なのであろうか。
本気でやるなら、ヘリコプターは100台は必要だっただろう。それなら一機で2トンくらいしか掛からなくとも、200トンくらいになり、1200トンのプールも底の方には水が入った。これだと、つなぎにはなっただろう。
(2)についてであるが、最後につけた朝日新聞の記事は期待を持たせる。しかし、下の毎日新聞の記事の抜粋を見れば、事態はそう簡単ではないことがわかる。まず、原子力欺瞞言語の「(電源復旧の)実現性はかなり高い」は、「多分ダメ」の言い換えではないか不安である。
最大の問題は、たとえ電源が復活しても、2号機以外は多分無理だ、ということだ。それでも、2号機が大人しくしてくれれば、放射線レベルが下がり、人間側の活動領域が拡大される可能性がある。なんとかなってほしいものである。
しかし、冷静に考えてみて、もしそんなに簡単に復旧するものなら、どうして最初からやらなかったのか、という問題がある。理由を考えてみたが、以下が考えられる。
(1)津波でひどい状態だったので、全部駄目だと思い込んでいたが、調べたら2号機は浸水していないことがわかったのでやり始めた。
(2)どうせ駄目だと思っていたが、万策尽きたのでやってみることにした。
(3)人員不足で目の前の給水や蒸気抜きに追われていた。放射線レベルが上がって活動できなくなってきたので、電源に手をつけた。
上層部が、上の自衛隊と機動隊とを愚弄するショーを演出するような連中であることを考えると、(2)の可能性が高いように感じる。もしそうだとすると、上の「(電源復旧の)実現性はかなり高い」は、原子力欺瞞用語だということになる。
下の毎日新聞の記事と、朝日新聞の記事の違いは、なぜ2号機から始めるかの理由の説明の違いにある。毎日は、
「唯一配電盤が水没しなかった2号機の電気系統回復が頼みの綱」
と書いている。合理的説明である。これに対して朝日は、
「放水が始まった3、4号機より先に、まず2号機で始める。」
と誤魔化している。これでは戦時期の大本営発表の「転進」と全く同じやり方である。大本営は、ガダルカナル島で敗北した日本軍が撤退したことを、
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ソロモン群島のガダルカナル島に作戦中の部隊は昨年8月以降、激戦敢闘克く敵戦力を撃摧しつつありが、その目的を達成せるにより、2月上旬同島を撤し、他に転進せしめられたり
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と伝えた。朝日新聞の報道は、
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ヘリコプターと放水車による3号機、4号機の使用済燃料への注水作戦を推進し、その目的を達成せるにより、部隊は両機を撤し、第2号機の電源復旧作戦へと転進せしめられたり
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と言っているようなものである。それゆえ朝日の記事を読むと読者は、
「なるほど!自衛隊と機動隊との奮戦によって、3、4号機は制圧されたので、次に2号機へと進むわけだ。皇軍ガンバレ!負けるなニッポン!」
という白白とした明るい気分になるのである。
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毎日新聞 2011年3月17日 20時55分
一方、2号機の電源復旧作業は17日午前から、東電職員ら30人の手で始まった。被ばく人数を抑えるため、平時より少ない態勢だ。
非常用電源が失われた1~4号機のうち、唯一配電盤が水没しなかった2号機の電気系統回復が頼みの綱。作業では放射線量の比較的低い海側に変電盤を仮設し、建屋の各機器などと接続していった。担当者は「少ない工事量で復帰するよう計画している。(電源復旧の)実現性はかなり高い」と強調する。
ただし、電源復旧は原子炉冷却のための入り口に過ぎない。まずは海水を送り込むポンプの作動試験をする必要があるが、16日夕には東京・内幸町の本店との連絡回線を切断するミスも起きた。7時間後の復旧までの間、水位計などのデータのやり取りは衛星携帯での通話でしのいだ。
東電は2号機との間の回線が生きている1号機も、近く電源復旧が可能とみる。しかし、3、4号機は新たな外部電源をひく必要があり、復旧には時間がかかる見通し。また、使用済み核燃料プールの水温が上昇している5、6号機では、5号機の非常用電源が機能していない。6号機の電源を5号機につないでいるものの、東電は「この状態が長く続けば1~4号機のように温度が上昇する」と焦燥感を募らせる。
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福島第一の電源、18日復旧か 冷却装置稼働の可能性も
2011年3月17日22時5分 朝日新聞
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた東京電力福島第一原発の電源が、18日にも復旧しそうだ。電源の喪失は復旧を阻む最大の障害だった。原発を運転するには大量の水をポンプで循環させ、核燃料から出る熱を冷やす必要があるが、地震で送電が止まり、非常用電源も動かなかった。水の循環や給水が可能になれば、危機的な状況に光がさす。
復旧に向けた作業は17日早朝に始まった。東電によると、原発の敷地内で約320人の作業員が参加した。
福島県内に電気を供給している東北電力の送電線を補修して電気を引き込む。作業に10~15時間ほどかかる。放水が始まった3、4号機より先に、まず2号機で始める。
送電が再開できれば、事故時などに原子炉を冷却する緊急炉心冷却システム(ECCS)を動かすポンプを起動できる可能性もある。ECCSが動けば、原子炉の下部にある巨大プール、圧力抑制室の大量の水を原子炉格納容器や圧力容器に送り込める。
さらに、圧力容器や使用済み核燃料のプールにも水を循環させ、核燃料からしばらく出続ける余熱を冷やす。プールの温度が上昇し、燃料が露出して破損するなどの事態の拡大を防ぐ。
ただ、地震や津波、その後の火災や爆発の影響で、ポンプや変圧器などの設備が壊れている可能性もある。設備が壊れていれば、送電しても作動しない。正常に作動するか逐一確かめながらの作業となる。
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- 2011/03/17(木) 22:29:40|
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