マイケル・ジャクソンの思想

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「人体に影響のない水準」の放射線量を想定してはならない:ゴフマン博士の考え方

放射線影響研究所という財団がある。これは、原爆の被爆者を長期観察するための機関である。これだけ大量の放射能を、これだけ大量の人が浴びたケースはほかに存在しないので、彼らの長期観察が、人類が知る放射線の影響の信頼に値する唯一のデータである。

この財団から放射線の影響に関する一般向けパンフレットが出ている。

http://www.rerf.or.jp/library/archives/libetc.html

その一部を下にアップしておいた。この右の図が、人体への影響があるかないか、についての基本になっていると考えてよいであろう。

問題は、下の方の、白くなった「明らかな症状なし」という部分である。この部分は、正確には、「明らかな症状が観測されない」というべきである。こういう風になめらかな曲線を描いておいて、ある水準を下回ると、「健康に影響がない」などと考えるのは、普通の考え方ではない。単に観測限界を下回っているだけで、よ~く見れば、同じようになめらかに線が延びていると考えるべきであるのに、低レベル放射線の下方を消しているのは適切ではない。

「低レベル放射線なら人体に影響がない」という「閾値」を想定する考え方の危険性を指摘したのは、ジョン・ゴフマン博士である。この人が書いた『人間と放射能』という数百ページもある分厚い本がある。ここで彼が提唱したのが、この、普通の考え方である。彼は

放射線被曝量×人

という方法で考えるべきだと言っている。どういうことか、具体例で説明しよう。たとえば、首都圏で10マイクロシーベルト/時間という被曝が1時間続いたとしよう。これだと

http://www.atomin.go.jp/atomin/high_sch/reference/radiation/jintai/index_06.html

というような表で言えば明らかに「健康には直ちに影響がない」水準である。これはつまり、被曝量が低い場合は無害だという「閾値」仮説である。

しかし、ゴフマンは放射線の影響は上の式で考えねばならない、という。そうすると、首都圏3千万人をかけて

0.01ミリシーベルト×3千万人=300シーベルト人

となる。下の図を見れば、1シーベルトで、一ヶ月以内に死亡する、ということになる。ということは、300シーベルト人は、300人くらいが一ヶ月以内に死ぬ、ということを意味する。(本当は、長期的な影響を考えねばならないから、こういう計算ではいけないのだが、手元に資料がないので、ご勘弁いただきたい。)こういう考え方をすべきだ、というのがゴフマンの主張である。

既に述べたように、遺伝子にランダムに当たる放射線が癌や白血病を惹起するのであるから、ロシアンルーレットのようなものである。多人数が少しづつロシアンルーレットをやろうが、少人数が頻繁にやろうが、弾が出る確率は同じなのだから、死んだり病気になったりする数に大差はないはずである。それゆえ、「ある水準以下であれば安全」というような閾値を放射線について考えることは難しい。

もちろん、細胞には免疫系や遺伝子修復などのさまざまの機能があり、こんな簡単な理屈でガンが生じるわけではないが、かといって、閾値の存在を明確に支持するような証拠もない。こういう場合には、どっちもどっち、になるかというと、そうはいかない。というのも、

(1)放射線が遺伝子の分子をふっとばして病気を引き起こす原因を作る、ということは間違いがない。
(2)それに対して、それを修復する生物の能力の方は、どのように作動しているのか、理解されていない。

からである。(1)が想定するほど事態が単純ではない、という理由では(2)に飛びついてはならない。なぜなら「閾値」仮説を支持する証拠が乏しいからである。また、政策立案などの過程では、より楽観的な(2)ではなく、悲観的な(1)に基づいて見積もりを立てるべきである。

念のため、

佐渡敏彦,福島昭治,甲斐倫明編著『放射線および環境化学物質による発がん─本当に微量でも危険なのか?─』 、医療科学社、2005年12月20日発行。

という本の、「第四章 放射線による発癌」という箇所を見てみた。いろいろな疫学的データを検討した結果、

===============
さまざまな放射線被ばく集団について疫学調査が行われているが、線量反応が議論できる疫学調査は少ない。調査精度、規模、線量推定の観点から最も信頼されている原爆被爆者調査では、白血病と皮膚がんの線量反応は直線ではなく、低線量域での単位線量あたりのリスクはかなり小さい。固形がんの線量反応は直線関係がよくあてはまっている。低線量域でのしきい値の存在の可能性も否定することはできないが(特に白血病と皮膚がん)、全固形がんで見るとしきい値の存在を示す明白な統計的結果は示されていない。(91頁)
===============

と結論している。何のことかというと、「人体に影響が全くない」という閾値は、白血病や皮膚がんではあるかもしれないが、ほかの癌ではない、ということである。放射線が病気を起こす機序から考えて、閾値の存在を明確な証拠なしに想定するのは危険である。また、こういう場合には、閾値の存在を楽観的に期待して、その上に政策を立案したりするのは間違っている。

それゆえ、ゴフマンの主張するように、「被爆量×人数」で被害者数を想定する必要がある。それをやらずに、勝手に閾値を想定し、

「人体に影響のない水準です」

というのは、

「人体に影響があっても決してバレない水準です」

といっていることになる。

$マイケル・ジャクソンの思想(と私が解釈するもの)著者:安冨歩
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  1. 2011/03/15(火) 16:45:35|
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