泉山氏も大西氏も、なぜか "hold on" という合いの手を地の文として訳すという誤りを犯している。これはどういうことかというと、たとえば「炭坑節」という民謡で、
月が 出た出た~ 月がぁ 出た~、ぁヨイヨイ
というフレーズの「ぁヨイヨイ」の部分が「合いの手」である。Cry の
Somebody's missing a friend, hold on
というフレーズでは、"Somebody's missing a friend" が「月が出た出た月が出た」に相当し、"hold on" は「ぁヨイヨイ」に相当する。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/7211/popularsong/tanko.html に炭坑節の英語訳が出ているが、
The moon has come out, come out the moon (a yoi yoi)
とカッコに入れて、a yoi yoi と訳さずにそのままにしている。これが合いの手の正しい処理である。
それゆえ、マイケルの歌詞を訳すときも、正しくは、訳さないで、「ホードーン」あるいは "hold on"とそのままにするのが良い。他にも、"baby" とかそういうのも同じで、訳さないのが良い。
それでも、yoi yoi には、「良い良い」とか、そういう「意味」とも呼べないようなニュアンスがあるので、それを伝えようと余計なサービス精神を出してしまって、私は、「やめないで」とか「お前よ」とか訳しているのだが、地の文には入らないように意味不明に訳して工夫している(つもりである)。
ところが泉山氏に至っては、この区別が全くついておらず、
Somebody's missing a friend, hold on
この瞬間に友達と死に別れた人がいるかもしれない。そんな時は、しっかりしなくちゃダメだよ。
と、完全に地の文だと思って訳している。どうもこの方は、コンテキストというものがうまく把握できないようだ。
「hold on を『そんな時は、しっかりしなくちゃダメだとよ』と訳すとは。。。あなたの翻訳はお見事ですねぇ。マイケルを寅さんにするなんて、あまりにも独創的ですよ。」と言わざるを得ない。
一方、大西訳は、
友達もいない人がいるんだ。でも負けないで。(注1) 注1:「hold on」は基本的に「そのまま」という意味です。ですから、「(そのまま)待って」という意味や、「(そのまま)持ちこたえて」という使われ方をします。ですから、ここでは後者のニュアンスを少し意訳して、「頑張って、負けないで」としています。 と書いている。さすがに泉山氏ほどあからさまではないのだが、「友達がいなくても、負けないで頑張ってね!」という意味に解しているので、やはり、地の文として訳していることになる。
ただ、大西氏の場合は、Cry の全ての場合について「hold on = でも負けないで」と訳しているので、私と同様にサービス精神を発揮して、「合いの手」であることを理解しつつ、地の文ともニュアンスを接続して、という高度な工夫をしてるのかもしれない。しかし恐らくそれは、誤解を招くので、やめたほうが良かったと思う。
今後は炭坑節の英訳に学んで、合いの手は訳さない、という方針を明確にしたいと思う。
(了)
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2011/02/06(日) 20:00:00 |
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