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マイケル・ジャクソンの思想

翻訳について(3) 合いの手

泉山氏も大西氏も、なぜか "hold on" という合いの手を地の文として訳すという誤りを犯している。これはどういうことかというと、たとえば「炭坑節」という民謡で、

月が 出た出た~ 月がぁ 出た~、ぁヨイヨイ

というフレーズの「ぁヨイヨイ」の部分が「合いの手」である。Cry の

Somebody's missing a friend, hold on

というフレーズでは、"Somebody's missing a friend" が「月が出た出た月が出た」に相当し、"hold on" は「ぁヨイヨイ」に相当する。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/7211/popularsong/tanko.html

に炭坑節の英語訳が出ているが、

The moon has come out, come out the moon (a yoi yoi)

とカッコに入れて、a yoi yoi と訳さずにそのままにしている。これが合いの手の正しい処理である。

それゆえ、マイケルの歌詞を訳すときも、正しくは、訳さないで、「ホードーン」あるいは "hold on"とそのままにするのが良い。他にも、"baby" とかそういうのも同じで、訳さないのが良い。

それでも、yoi yoi には、「良い良い」とか、そういう「意味」とも呼べないようなニュアンスがあるので、それを伝えようと余計なサービス精神を出してしまって、私は、「やめないで」とか「お前よ」とか訳しているのだが、地の文には入らないように意味不明に訳して工夫している(つもりである)。

ところが泉山氏に至っては、この区別が全くついておらず、

Somebody's missing a friend, hold on
この瞬間に友達と死に別れた人がいるかもしれない。そんな時は、しっかりしなくちゃダメだよ。

と、完全に地の文だと思って訳している。どうもこの方は、コンテキストというものがうまく把握できないようだ。

「hold on を『そんな時は、しっかりしなくちゃダメだとよ』と訳すとは。。。あなたの翻訳はお見事ですねぇ。マイケルを寅さんにするなんて、あまりにも独創的ですよ。」


と言わざるを得ない。

一方、大西訳は、

友達もいない人がいるんだ。でも負けないで。(注1)

注1:「hold on」は基本的に「そのまま」という意味です。ですから、「(そのまま)待って」という意味や、「(そのまま)持ちこたえて」という使われ方をします。ですから、ここでは後者のニュアンスを少し意訳して、「頑張って、負けないで」としています。

と書いている。さすがに泉山氏ほどあからさまではないのだが、「友達がいなくても、負けないで頑張ってね!」という意味に解しているので、やはり、地の文として訳していることになる。

ただ、大西氏の場合は、Cry の全ての場合について「hold on = でも負けないで」と訳しているので、私と同様にサービス精神を発揮して、「合いの手」であることを理解しつつ、地の文ともニュアンスを接続して、という高度な工夫をしてるのかもしれない。しかし恐らくそれは、誤解を招くので、やめたほうが良かったと思う。

今後は炭坑節の英訳に学んで、合いの手は訳さない、という方針を明確にしたいと思う。

(了)
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  1. 2011/02/06(日) 20:00:00|
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