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マイケル・ジャクソンの思想

国立競技場を壊さない10の理由:森まゆみさんのメール

頼みとする皆さま、bccで失礼致します。なんどもすみません。

「手わたす会」では新しい運動用チラシを作ります。一面は今まで通りですが、裏面用に現情勢をふまえ、今言いたいことを批判や攻撃ではなく、ポジティブに表現してみました。
ちょっと加圧的躁状態ですが、6月15日の緊急シンポへ向けた私の思いです。まだ修整の余地があるとおもいますが、ご意見お聞かせ下さい。今天王山ですので、おひろめくださればうれしいです。森まゆみ

国立競技場を壊さない10の理由
ーー1964年東京オリンピクのレガシーを守れ

1、IOCのアジェンダ21を遵守する
IOCは開催都市に、リオの環境サミットをふまえ、「オリンピックムーブメンツ・アジェンダ21」(1999)を遵守することを求めています。
そこには、「既存施設を修理しても使用できない場合に限り、新しくスポーツ施設を建造することができる」(3.2.3)とあります。JSCが久米設計に依頼した改修計画は777億円で可能という報告が出ています。これを活用して改修しましょう。トイレ、エレベーター、レストラン、バリアフリー施設なども加えられます。

2 都心の緑を守る
アジェンダ21は「新規施設は・・廻りの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない」(3.2.2)とも述べています。神宮外苑の緑は、明治天皇の葬儀が行われた場所に、なくなった後も天から人々がスポーツを楽しむ姿を見たい、という趣旨で、1926年に作られたスポーツの森と洋風庭園です。まさに「sports for all」。本多静六など林学者らが協力討議し人工林ながら現在の森が育っています。

3、文化財のバッファゾーンを守る
上記「廻りの自然や景観を損なわない」条項に応じ、重要文化財聖徳絵画記念館を正面に見るバロック的景観、歴史的文脈を守るのは当然のことです。文化財のバッファゾーンはイギリス、ドイツ、フランスなどの先進国では保護されています。アジェンダ21は、施設は「地域にある制限条項に従わなければならない」ともいっており、オリンピック招致時の15メートルの風致地区、20メートルの高度地区の制限条項を守らねばなりません。さしたる論議もないまま、高さ制限を緩和し追認した都計審は自らの過ちを反省し、制限を元に戻すべきです。

4、市民生活を楽しく
毎日、神宮外苑でジョギングや散歩、おしゃべりや憩いのひとときを過ごす人々の幸福権、隣接する都営霞ヶ丘団地の人々の居住権は日本国憲法が保証しています。「すべての個人が、尊厳を持って生活し、それぞれが属する社会で積極的に役割を果たすためには欠かせない文化的、物質的なニーズが満たされなければ、持続可能な発展は考えられない」というアジェンダ21の精神も遵守すべきです(3・1)
また「宿命的少数派や社会で最も恵まれないメンバーに、特に注意を払わなければならない」(同)と述べていますので、オリンピックを口実に路上生活者その他を排除しないということも、当然のことです。

5、われわれのレガシーを大事にする
1958年のアジア大会のために建てられ、64年の東京オリンピックに改修された現在のスタジアムは、聖火台、壁画、織田ポールも含め、戦後の復興を果たした日本国民のシンボルであり、その後もサッカーの数々の名勝負が行われました。ベルリンで1936年完成のオリンピックスタジアムを大事に継承しているように、レガシーとして継承するのは国民の義務です。形状も似た初代の競技場の学徒動員の記憶もそれには重なってくるでしょう。改修してオリンピックに使ったのちは、しかるべき文化財指定と活用が望まれます。外苑全体を開園当時の思想に復元し、同時に高齢者や障がい者、親子連れが静謐な中で憩える環境を整える交通計画その他も考えていきましょう。

6、環境に配慮する
アジェンダ21は競技場の素材、廃棄物、エネルギーなどについても環境保護を優先させています。
屋根材には禁じられた化学物質による膜を使うことはできません。また自然エネルギー由来ではない電気仕掛けの可動椅子、開閉屋根、屋根があるために必要な空調、雪に耐えられないための融雪装置などを装備して電気を多用するのは、原発事故を起した国として慎まねばなりません。

7、持続可能な開発を
アジェンダ21が掲げる「持続可能な発展」のためには、巨額な建設費(現行1800億円)、維持費(43億円/年)、改修費は避けなければなりません。未来の世代に対してツケとなります。ライフサイクルコスト、ファシリティマネジメントの観点からも精査しなましょう。そうしないと、北京の鳥の巣はじめたくさんのスタジアムがたどったと同じ運命、「ホワイトエレファント」、未来の世代に対してツケとなります。

8、使い道をよく考えよう
現行案では365日のうち40日しか使うアテがありません。国税で大イヴェント会場を作るのは論外です。サッカー、ラグビー、陸上、その観客数、使用料、近隣スタとの競合なども精査し、一番効果的な道を探りましょう。ラグビーの試合はガラガラ、陸上には高くて借りられないなどのことがないように。IOCはおおむね6万以上を要求しており、8万のスタは招致都市が勝手に公約し、国会で決議しただけのまやかしの数字です。ロンドンのように仮設にしてダウンサイズする、仮設部分は後で外して東北の津波避難タワーにするなどの知恵を絞りましょう。

9、環境アセスをしっかりやろう
都はIOCの求めにより、環境アセスが義務づけられています。都の「2020年東京オリンピック・パラリンピック環境ガイドライン」では「環境負荷の最小化、自然と共生する都市計画、スポーツを通じた持続可能な環境づくり」というすばらしい目標を掲げています。そのまま実現してもらいましょう。これが形骸化した「環境アワスメント」にならないよう、委員会だけでなく市民が監視する必要があります。

10、ステークホルダーはパートナーである
ガイドラインでは「NGO、地域団体、公的機関、有識者、民間セクターとの協力・対話を行い・・レガシーにつながる戦略の実施」を呼びかけています。今までの秘密主義を改め、ステークホルダーをパートナーとして位置づけ、協力協働してこそ、2020年のオリンピック・パラリンピックは祝福されるでしょう。

3万5千人の人がさよならイヴェントに入場したこと自体、まさにこの競技場がレガシーであることを示しています。日経新聞の調査でも7割以上の人が新国立競技場計画は費用が高すぎる、といい、6割以上が新築でなく改修を望んでいます。朝日、毎日、日経などの社説も、「立ち止まり論議し直せ」「一体いくらかかるのか」「気がついたら日本橋の上を高速道が覆っていた、その愚は繰り返せない」と書いています。こうした世論を無視して解体を強行することはできません。

縮小時代、成熟社会にふさわしいオリンピックを。

運動用とは別に、きれいなシンポのチラシもできました。
バーナムの森が動き出したようだ。


kankyo.jpg
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  1. 2014/06/04(水) 12:55:49|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

阿呆な人々

 イベントがあれば、環境破壊が行われる、と云う法則は、未だにこの土建国家の定理ですね。
オリンピックのようなどうでも良い御遊びに大金を投じて、今では瀕死の土木建設業に最後のカンフル薬を与えるのです。 
 万博やオリンピックのたびに、日本の山野は荒廃し、土木屋と建設屋がゼニ儲けを繰り返しました。 美しい日本を賛美する国粋主義者が、己が生を受けた山野を荒廃させる逆転した論理に気づかない皮肉。 阿呆としか言いようがありません。 
  1. 2014/06/07(土) 20:40:15 |
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  3. とら猫イーチ #mSWjQtqs
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