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マイケル・ジャクソンの思想

近刊!『香港バリケード――若者はなぜ立ち上がったのか』

香港バリケード


香港バリケード――若者はなぜ立ち上がったのか


2015/3/12刊行
遠藤誉 (著), 深尾葉子・安冨歩 (共著)

2014年は、

2月に『ジャパン・イズ・バック』明石書店(ながたひろゆき氏の執筆協力)、
6月に『ドラッカーと論語』東洋経済新報社(窪田順生氏の執筆協力)
8月に『誰が星の王子さまを殺したのか―ハラスメントの罠』明石書店

を刊行した。2013年は、『超訳論語』、『合理的な神秘主義』、『親鸞ルネサンス』(共著)、『学歴エリートは暴走する』(執筆協力)、『原発ゼロをあきらめない』(対談集)と5冊出したが、私自身の執筆の負荷を考えると同水準だった気もする。そういえば、去年は新しい表現様式として、ライブを3回もやって、テレビに一度出たので、それを加算すると、負荷は大きかったかもしれない。

2015年は、テレビに3度出て、ライブ1回やったり、歴史文化工学会(http://rekibunkou.org/index.html)を設立したりなどして、走り回っていたため、本を書いている暇がなかった。なかったのだが、なぜかそれでも共著の本を出すことになった。

遠藤誉 (著), 深尾葉子・安冨歩 (共著)

という変わった表示になっているのは、本全体の過半を遠藤氏が、残りを私たちのグループが書いたからである。グループには、
編集者・ジャーナリストの刈部謙一氏、獨協大学の学部生の伯川星矢氏が参加している。

これはもともと、遠藤氏が香港雨傘革命についてリアルタイムでさまざまの背景や情報を調べあげ、本を書く用意をしており、一方で、我々の研究グループが、中国社会の語りの構造を通じた秩序形成という観点からこの運動に注目し、香港の関係者への取材を通じて、現場の声を届ける調査を行っており、報告書を作ろうとしていたことに、端を発する。深尾と遠藤とがたまたま連絡をとり、両者が同じテーマの本の、相互補完する内容を企画していたことがわかり、合流することになったわけである。とはいえ分量としては遠藤が過半を占めているので、上記のような表示となった。

このような経緯を反映して本書は、

序章 雨傘革命を解剖する―香港新世代のメンタリティ(遠藤誉)
第I部 バリケードはなぜ出現したのか(遠藤 誉)
第II部 バリケードの中で人々は何を考えたのか(深尾・安冨グループ)
終 章 雨傘世代―バリケードは崩壊しない(遠藤 誉)

という構成になっている。

この本に至る研究の過程で、私は多くのことを学んだ。

物理学者である遠藤氏の徹底して論理的・実証主義的な研究によって描き出されるのは、中国の圧倒的な力と、人類の運命を左右するその深刻な危機とである。香港の若者たちは、単に香港のために立ち上がったのではなく、この人類の運命のためにバリケードを築いたのである。その戦いは、終わったのではなく、始まったばかりである。

一方、深尾・安冨グループは、遠藤氏が最も注目する「アップル・デイリー」のオーナー・黎智英(ジミー・ライ)と最年少の指導者・黄之鋒(ジョシュア・ウォン)へのインタビューに刈部が成功し、同じルートで、最も過激な立法会議員・長毛へのインタビューを行った。また、銅鑼湾のバリケード撤去を見つめる参加者との接触に成功し、その切実な声を拾った。広東語と日本語とのバイリンガルである伯川は、これらのインタビューの通訳・翻訳を行うとともに、多くの学生の声を収集した。

こうして我々は、歴史的奥行きと実証的厳密さを備えた論考と、現場の生の声とを立体的に組み合わせることができたと信じる。調査に行ったのが12月であり、それから二ヶ月で本を作り上げることができたのは、まさに奇蹟のように思えた。

日本人にとってこの事件は、対岸の火事ではなく、東アジアという同じ地域の内部の出来事であり、我々の将来に直接関わってくる出来事である。ゲラを読みながら私は、これは現代東アジアを理解する上での必読の書だ、とつくづく思った次第である。


=============

2014年9月、香港のトップである行政長官を選ぶ「普通選挙」が実施されないことを知った若者たちは、真の民主主義を求めて抗議活動を展開した。授業ボイコットから始まり、やがて広場や幹線道路を占拠。一時は市民も加わり、巨大な運動へと発展していった抗議活動は「雨傘革命」と呼ばれるようになる。だが、ある時期から市民の支持を失い、12月15日に幕を閉じた。雨傘革命とはいったいなんだったのか。第一部では雨傘革命の背景にある社会状況、政治状況を鋭い中国分析で著名な遠藤誉が分析、第二部は深尾葉子、安冨歩が現地に出向いて集めた人々への声をもとに雨傘革命の意味を考察する。

目次

序章 雨傘革命を解剖する―香港新世代のメンタリティ(遠藤誉)

第I部 バリケードはなぜ出現したのか(遠藤 誉)
第1章 「鉄の女」サッチャーと「鋼の男」鄧小平の一騎打ち―イギリス植民地から中国返還へ
1 アヘンを使って香港を奪ったイギリス/2 新中国の誕生とイギリスの対中政策/3 米中が接近するならイギリスも―/4 中英共同声明―地にひれ伏した美しい金髪

第2章 香港特別行政区基本法に潜む爆薬――成立過程とからくり
1 香港特別行政区基本法起草委員会/2 香港人という塊の「正体」は何か?/3 基本法はいかなる爆薬を含んでいるのか? /4 2003年、基本法第23条―爆発した50万人抗議デモ

第3章 チャイナ・マネーからオキュパイ論台頭まで―反愛国教育勝利の中で何が起きたのか?
1 CEPAと「9プラス2」汎珠江デルタ大開発―チャイナ・マネーが「民心」を買う /2 愛国論争と愛国教育導入への抗議デモ/3 チャイナ・マネーが買った選挙委員会と長官選挙/4 用意されていたオキュパイ論

第4章 雨傘革命がつきつけたもの
1 立ち上がった学生たち―デモの時系列/2 市民がついていかなかった、もう一つの理由―チャイナ・マネーが民主を買う/3 中国中央はどう対処したのか? /4 世界金融界のセンターを狙う中国/5 アジア情勢を揺さぶる新世代の本土化意識――新しいメンタリティ/6 ジミー・ライの根性と意地

第II部 バリケードの中で人々は何を考えたのか
第5章 香港が香港であり続けるために―香港と日本人のハーフが見た雨傘革命(伯川星矢)
第6章 最前線に立った66歳の起業家と17歳の学生(刈部謙一)
第7章 香港のゲバラに会いに行く(安冨歩)
第8章 It was not a dream―占拠79日を支えた想い(深尾葉子)

終 章 雨傘世代―バリケードは崩壊しない(遠藤 誉)
著者について
遠藤誉
1941 年中国吉林省長春市生まれ。1953 年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP 社)など多数。


深尾葉子
1963 年大阪府生まれ。大阪外国語大学中国語専攻卒業。大阪市立大学大学院前期修了。大阪大学大学院経済学研究科准教授。修士(文学)。主な編著に『現代中国の底流』(行路社)、『満洲の成立』(名古屋大学出版会)、『黄土高原・緑を紡ぎだす人々』(風響社)、著書に『黄土高原の村――音・空間・社会』(古今書院)、『魂の脱植民地化とは何か』(青灯社)、『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(以上、講談社α新書)、翻訳書に『蝕まれた大地』(行路社)など。
安冨 歩
1963 年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。東京大学東洋文化研究所教授。博士(経済学)。主な著書に『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』『ジャパン・イズ・バック』(以上、明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社α新書)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『経済学の船出』(NTT 出版)、『生きるための経済学』(NHK ブックス)、『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)など多数。
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