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マイケル・ジャクソンの思想

久々に、池田信夫氏の東大話法を見たので解説。


「細川護煕」で検索していたら、以下のブログの記事が出ていた。
あまりに日本語が変なので、誰かと思ったら、池田信夫氏だった。

あほくさいけれど、面白いので解説しておく。

まず、「細川護煕氏のよくある錯覚」というタイトルがすごい。このタイトルのままだと「細川氏がよくやる錯覚」という意味にしかならないが、そういうことではないらしい。「細川護煕氏が犯した、他の人にもよく見られる錯覚」という意味だろう。誰が錯覚しているかは、既に明らかだと思う。

まず大島堅一氏の本についての言及があるが、これは池田氏による書評がリンクしてある。

http://agora-web.jp/archives/1416848.html

ここに出ているやつなのだが、これがとんでもないハチャメチャ書評なのだ。大島氏は、

池田信夫先生の書評を読みました。当方の社会的費用論、発電コスト論に関して、誤解されているようです。また、原子力損害賠償の基本を誤認しています。このような理解で意見を披露していることに驚きました。安冨歩先生の東大話法の本を読むと、池田先生の論法が理解できるようになると思います。https://twitter.com/kenichioshima/status/151471388794949632

とツイートしている。何度もやりとりしたらしいのだが、一切、変化しないので、大島氏は、あっけにとられておられた。
 ここでも大島氏を槍玉に挙げているように、自分の誤解を一切、訂正する気がないらしい。厚顔無恥にも程がある。
 このブログの記事で東大話法の練習問題として注目に値するのは、

========
問題は、確率的に計算できないテールリスクがあることだ。これも細川氏が錯覚しているように「国の存亡に関わる」問題ではなく、福島事故の健康被害は無視できるが、今後のリスクはゼロではない。これについてはGEPRにちょっと経済学的な説明をしたので、興味のある人は読んでほしいが、結論としては大型軽水炉の新設は望ましくない、というのが世界の専門家のコンセンサスである。

しかし既存の原発を止める合理的な理由はない。そのコストは1~2円/kWhと化石燃料に比べて圧倒的に安く、法的にも技術的にも今すぐすべて運転できる。大島氏も認めたように、すでに10兆円近い天文学的なコストに見合うメリットは何もないのだ。
========

この部分である。何を言っているのか、わからないと思うが、それはここでいろいろとごまかしているからである。何をごまかしているか解剖してみよう。

池田氏は、「確率的に計算できないテールリスク」があることを認めている。ということは、原発のコストを正確に計算することはできないことを認めている、ということである。なぜなら、

  予測される総コスト = ∑(事象 i の想定されるコスト ✕ 事象 i の確率)

で決まるのだが、確率が計算できない事象があるなら、総コストがわからず、全体としてどのくらいの規模のリスクを背負うのか、判断できないのである。これが原発の一番いやなところである。

 そこで池田氏は、

  「結論としては大型軽水炉の新設は望ましくない、というのが世界の専門家のコンセンサスである。」

と、「世界の専門家」を引っ張り出してくる。

世界の専門家って誰なんだ?

とツッコミをいれたくなる。きっと池田氏も、誰か知らないに違いない。こういうところで「権威」を引っ張りだして誤魔化すのが彼らの常套手段である。
 そして畳み掛けるように、「しかし既存の原発を止める合理的な理由はない。」という。ここがうまいところで、世界の専門家は「大型軽水炉の新設は望ましくない」と言っているらしいのだが、「既存の原発を運転すべきだ」とは言っていないのである。だが、こういう風に畳み掛けると、世界の専門家がそう言っているように聞こえる。ところがその根拠は、

 「合理的な理由はない。」

だけなのである。これは誰が「合理的」と判断しているかというと、世界の専門家より偉いらしい池田氏なのである。彼らが「合理的」と呼ぶのは「私が合理的だと思っている」という意味でしかない。そして実際のところ、その根拠となりうるのは

 「そのコストは1~2円/kWhと化石燃料に比べて圧倒的に安く、法的にも技術的にも今すぐすべて運転できる。」

という文章だけである。しかし、池田氏が認めているように、確率的に計算できないリスクがあるので、コスト計算は正確にはできない。ここで完全に矛盾している。この矛盾をごまかすために、池田氏は、変な日本語を使ったのである。

最後に、

 「大島氏も認めたように、すでに10兆円近い天文学的なコストに見合うメリットは何もないのだ。 」

とキメの言葉を言っているつもりであるが、この文がまた意味がわからない。
 ます大島氏は、池田氏は全てを誤解している、と言っていて、何も認めていない。
 また、「すでに10兆円近い天文学的なコストに見合うメリットは何もない」と言うが、この部分は明らかに変である。何のコストに何のメリットが対比されているのだろうか。多分、「原発に対して既に10兆円近いコストが投入されている。原発を即時停止にすると、このコストを放棄することになるが、得られる危険回避のメリットはそれを下回っている」ということだと思うが、池田氏も認めたように、確率計算できない事象があるので、メリットの上限が確定できない。原発を即時停止にする理由は、「コストの上限が計算出来ない」からなのだ。無限大のコストは当然、十兆円を上回る。
 更に、大島氏の本に書いてあることは、電力会社や政府の認めている原発の維持コストだけで、そのメリットを上回っている、ということなのである。

 本当に呆れ返ってしまうが、欺瞞論法のサンプルとして、池田氏は相変わらずとても面白い。




=======東大話法のサンプル==========

http://blogos.com/article/78548/

細川護煕氏のよくある錯覚


*

*


言論アリーナでは7.6%の支持しかなかった細川氏だが、きのうの出馬会見も予想どおり支離滅裂だった。BLOGOSの記事によれば「脱原発」以外の具体的な政策はほとんど出てこなかったが、彼が何を誤解しているかはわかった。これは小泉氏と同じ、よくある錯覚だ。現在、燃料費などで、海外に相当なコストを払っているわけですが、今まで原発事故の無責任体制のために、実は天文学的なコストがかかっているわけです。それが見えない形、税金の形で投入され、コストは安いという誤魔化しと嘘がまかり通ってきました。原発の安全性の問題や、核のゴミのことを考えたら、これがいかに割に合わないかは明確であります。この「天文学的なコスト」とは何のことかわからないが、おそらく大島堅一氏のいうような電源交付金などの固定費だろう。それは「税金」ではなく電力会社が負担しているので、「誤魔化し」はない(ここは大島氏は正しく認識している)。こうした交付金はサンクコストであり、これから原発の新規建設はありえないので、過去のコストがいかに「天文学的」だろうと、今後の原発の採算性には関係ないのだ(大島氏はこれを錯覚している)。

「核のゴミ」のコストも民主党政権が計算した。JBpressにも書いたように、バックエンドも事故の賠償コストも含めて原子力が最低だ。原発に「天文学的なコストがかかる」というのは、小泉氏と同じく数字に弱い文科系の政治家が陥りがちな錯覚である。固定費の金額は大きいが、何十年にもわたって償却されるので、図のようにkWh単価は小さいのだ。


発電コスト(円/kWh)出所:エネルギー・環境会議

原発事故のコストも大きいようにみえるが、大事故の確率は低いので、その期待値は小さい。たとえば福島事故の賠償額が10兆円とし、これと同じ事故が100年に1度起こるとしてもkWhあたり0.4 円。これは損害保険で十分カバーできる。コストで考える限り、バックエンドも含めて原発は十分競争力がある。少なくとも全世界で毎年1万人以上を殺している石炭火力より安全だ。

問題は、確率的に計算できないテールリスクがあることだ。これも細川氏が錯覚しているように「国の存亡に関わる」問題ではなく、福島事故の健康被害は無視できるが、今後のリスクはゼロではない。これについてはGEPRにちょっと経済学的な説明をしたので、興味のある人は読んでほしいが、結論としては大型軽水炉の新設は望ましくない、というのが世界の専門家のコンセンサスである。

しかし既存の原発を止める合理的な理由はない。そのコストは1~2円/kWhと化石燃料に比べて圧倒的に安く、法的にも技術的にも今すぐすべて運転できる。大島氏も認めたように、すでに10兆円近い天文学的なコストに見合うメリットは何もないのだ。
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  1. 2014/01/25(土) 11:13:55|
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