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マイケル・ジャクソンの思想

吉永小百合さん「原子力発電所がなくなってほしい」

さあ、どうする。
ヤラセ原発おやじども。
それでもまだ、放射能が好きか?

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吉永小百合さん「原発なくなって」 原爆詩朗読で発言
asahi.com 2011年7月31日16時36分

写真:子どもや母親らと合唱する吉永小百合さん=31日、広島市中区、日本母親大会提供拡大子どもや母親らと合唱する吉永小百合さん=31日、広島市中区、日本母親大会提供

 女優の吉永小百合さんが31日、広島市中区の広島国際会議場で原爆詩を朗読し、その前のあいさつで福島第一原発の事故に触れ、「原子力発電所がなくなってほしい」と訴えた。原爆詩の朗読は、この日あった日本母親大会の特別企画で、約1500人が聴き入った。

 吉永さんは朗読に先立ち、「『原子力の平和利用』という言葉を、今まであいまいに受け止めてしまっていた。普通の原子力についてもっともっと知っておくべきだった。世の中から核兵器がなくなってほしい。原子力発電所がなくなってほしい」と語った。

 その後、吉永さんは峠三吉の原爆詩集「序」や栗原貞子の「生ましめんかな」など9編を朗読。広島市内の子どもらと一緒に平和の尊さをうたう「折り鶴」を合唱した。
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  1. 2011/07/31(日) 17:25:38|
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玄海原発のヤラセ説明会



詳しく知れば知るほど、感心してしまう。上の腐れシンポは、本当に真まで腐っていたのである。しかしまぁ、小出さんは、九電と知事と保安院とがグルになってこれだけの徹底的なヤラセ布陣を張り巡らし、更に大橋教授のような、徹底的に詭弁を弄する人物が待ち構えているところに、堂々乗り込んで、よくぞ正常な精神を維持して帰って来られたものである。

私のような小人では、絶対に、頭がおかしくなるか、暴れまわってしまったと思う。

人不知而不慍 不亦君子乎
人しらずして、慍らず、また君子ならずや。

この論語冒頭の言葉を私は、

「わかっとらん奴を見ても、怒らない。まったく君子ではないか。」

と解釈しているのだが、まさに、小出さんは君子である。


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九電、原発説明会6回に1300人動員 発言要請も
2011/7/29 17:45 日経新聞
 九州電力は29日、原子力発電所の増設などを巡り2005~10年に国や同社などが主催した6回の説明会全てで社内や協力会社の社員らを動員し、計1323人が参加していたと発表した。出席者全体のほぼ半数を九電関係者が占めた説明会もあった。全説明会で社員や地元自治会に意見を述べるよう依頼。「具体的な発言内容は指示しなかった」としているが、事実上、増設などへの賛成意見の表明を求めたとみられる。

 九電はどの説明会でも、経済産業省原子力安全・保安院から動員や発言の要請はなかったと説明。ただ、このうち10年5月に経産省が主催した川内原発(鹿児島県薩摩川内市)3号機増設に関する説明会を巡っては「経産省資源エネルギー庁の担当者から『なるべく会場の座席が埋まっていた方が望ましい』と言われた、と社内で聞いた」との社員の証言を得ているとした。ただ「記憶が曖昧で詳細は分からない」としている。

 九電は29日、同省資源エネルギー庁に報告書を提出した。

 九電によると、6回の説明会のうち、出席者数全体に占める九電関係者の割合が最も大きかったのは、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマル発電の玄海原発(佐賀県玄海町)への導入を巡る05年12月の佐賀県主催の説明会。出席者782人のうち、九電関係者が47%の366人を占めた。

 10年5月の川内原発3号機増設を巡る経産省主催の説明会では、意見陳述できる20人の枠に応募するよう、地元町内会長や自治会などに依頼。結果的に15人が陳述人に選ばれ、全員が発言した。傍聴人としての参加も社員や協力会社に依頼し、全体の出席者903人の4割近くにあたる337人が九電関係者だった。

 九電はこうした動員などの詳しい実態について、「やらせメール」問題と合わせ、27日に設置した社外有識者の第三者委員会に解明を要請。第三者委は9月末までに最終報告書をまとめる。
  1. 2011/07/30(土) 21:43:41|
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玄海原発やらせメールを知事が提案

佐賀県の東大法学部出身九州電力職員の息子、古賀知事が、「やらせメールを番組に送ってくれ」ということを含意する発言を九電にしていたことが明らかになった。

古賀知事⇒九電⇒職員・関係会社⇒テレビへのやらせメール

という仕組みになっていたというのである。保安院も知事もヤラセを指示するのであるから、日本のヤラセ国家ぶりは、大変なものである。

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佐賀知事「原発再開容認の声を出す機会」 国の番組前

asahi.com 記事2011年7月30日16時27分

九州電力原子力発電所
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開を巡る「やらせメール」問題で、佐賀県の古川康知事は30日、記者会見し、国のテレビ番組へのやらせメール投稿につながった九電元副社長、元常務、佐賀支社長の3者会談が佐賀市内であった6月21日の朝、知事公舎で3人と会い「この機会に経済界も再開容認の声を出すべきだ」と発言していたことを明らかにした。

 番組は6月26日放送で国が同原発の安全性を説明した。九電は番組に再開賛成メールを送るよう社員や関係会社に働きかけていた。

 古川知事によると、6月21日に九電の段上守副社長(当時)らと会い、玄海原発2、3号機の運転再開問題について意見交換。その際、国の番組に触れ「再稼働の議論を深めるには、賛成、反対双方の立場から幅広い意見を寄せてもらうことが必要だ。自分の所に来るのは反対意見ばかりだが、電力の安定供給の面から再稼働を容認する意見も経済界にあると聞く。こうした機会に、その声を出していくことも必要」などの趣旨で発言したという。

 古川知事は会見で「当事者である九電に対し、経済界も声を出すべきだと発言したことは軽率だったと反省している」と話した。
  1. 2011/07/30(土) 18:18:06|
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保安院のヤラセシンポのヤラセアンケート

玄海原発のプルサーマルシンポは、例の大橋弘忠東大教授がプルトニウムを飲んでも大丈夫と言い、格納容器は一億年に一回しかこわれないとほざいたもので、小出さんとの、学問水準の違いが歴然としており、そればかりか人間として最悪の人格が露呈していて、その違いが明確に出ていた。

それゆえ、あれを見たら、どう考えてもプルトニウムが安全とは誰も思わないに違いない。ところがアンケートの結果を見ると、六割が理解が進んだ、とか回答している結果を見て、「こりゃひどいヤラセだな」と思っていたのであった。だれだってそう思うだろう。

その上、「終了後、参加者から回収したアンケートによると、約65%の方が安全性について理解が深まったと答えています。県では、これまでの議論で、安全性に関する論点はある意味出尽くしたと考えており、玄海3号機プルサーマル計画の安全性について県の考えを整理することとしています。」などと書いてあるので、県もグルなのであろう。
http://megalodon.jp/2011-0730-1638-52/saga-genshiryoku.jp/plu/plu-koukai/shinbun-1.html


更に、知事のインタビューでは、

○古川知事
 県としての判断は、ちょっと今日まだ直後の段階なので、もう少しいろいろ整理しなくちゃいけないこともあろうかと思いますけれども、ただ、今申し上げたのは、公開討論会を終わったばかりで、私の印象として、公開討論会をやる前と今とを比べると、プルサーマルの安全性ということについて言えば、理解が深まったという印象を受けているということです。


ということで、まったく同じ言葉遣いであるから、知事もグルだったと見るべきだろう。まぁ、そもそも、父親が九電で、玄海原子力発電所のPR館の館長をやっていて、自分もその社宅で育ったというのであるから、当然ではある。一番下に貼った毎日新聞の記事の示すように、そもそも選挙も、九電関係の強力なバックアップがあったのだろう。http://www.saga-chiji.jp/profile/を見ると、こいつも東大法学部だ。

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「6割がプルサーマル理解」経産省、やらせシンポ後公表
asahi.com 記事2011年7月30日15時1分

プルサーマルの必要性
 経済産業省原子力安全・保安院が四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)と中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)のシンポジウムで両社に参加者の動員と発言を指示していた問題で、経産省がシンポの後、約6割の人がプルサーマル発電の必要性を理解できたとするアンケート結果を公表していた。経産省内で、原発を評価する「世論」が自作で演出されていたことになる。

 両社によると、伊方原発のシンポは2006年6月に伊方町で、浜岡原発のシンポは07年8月に御前崎市で開かれた。いずれもウランとプルトニウムを混ぜた燃料を使うプルサーマル発電をめぐる経産省主催の説明会で、当時は地元が了解していない時期だった。

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九州電力:佐賀知事に玄海原発所長ら幹部が献金

毎日新聞 2011年7月9日 15時50分 更新:7月9日 20時14分


古川康後援会の08年分の政治資金収支報告書に記載されている個人寄付。下から2、3番目が九電幹部。交代後も毎年3万円が寄付されている(一部画像を処理しています)=2011年7月9日撮影
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の所長ら九電幹部が佐賀県の古川康知事の政治団体に対し05年以降、毎年3万円を個人献金していたことが分かった。献金は玄海原発や地元佐賀支店の要職に就いている時期だけ行われ、金額は一律3万円。政治資金規正法は政党以外への企業献金を禁止しているが、専門家は「個人献金の形を取った事実上の企業献金だ」と指摘している。

 古川知事の政治団体「古川康後援会」の政治資金収支報告書によると、九電幹部による個人献金は知事就任2年後の05年から始まり毎年、玄海原発所長、佐賀支店長がそれぞれ3万円を寄付。所長は07年、支店長は07年と09年に交代しているが、交代後も寄付額は3万円と変わらず、時期も毎年10~12月に集中している。このほか3、4号機担当の玄海原発第2所長も05~07年に毎年1万5000円を寄付。古川知事の資金管理団体「康友会」にも現副社長(元佐賀支店長)が07~09年に5万円ずつ献金しており、2団体への寄付額は05~09年で計49万5000円に上る。

 個人献金した元支店長は毎日新聞の取材に「プルサーマル発電を推進したいという気持ちがあったので献金した。金額は自分で決め、他の人の献金状況についてはわからない」と組織ぐるみの献金を否定。九電も「個人がそれぞれの考え方で行っているもので、会社として関知していない」と話している。

 玄海原発を巡っては06年、専門家から危険性が指摘されたMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を使用するプルサーマル発電について、古川知事が「安全性は確保される」として同意。09年に3号機で全国初のプルサーマル発電が始まった。

 一方、福島第1原発事故を受けて定期検査後も停止したままの2、3号機の再稼働問題が浮上。古川知事はいったんは「安全性の確認はクリアできた」と容認姿勢を示したが、その後に国が打ち出した全原発での耐性試験実施方針や、九電の「やらせメール」問題発覚を受けての最終判断が注目されている。

 電力各社は大幅な電気料金の値上げを断行した74年に「公益企業として不適切」として、政治資金規正法で認められている政党や、政党が指定する政治資金団体への企業献金も自粛している。

 九電幹部らから古川知事の政治団体に対する献金について、神戸学院大法科大学院の上脇博之教授(憲法学)は「特定のポストから退いたら献金していない状況をみれば、個人の意思でやっているとは思えない」と指摘。「組織的に行われているのであれば本来は受け取ってはいけないお金だ。原発に権限を持っている知事ならなおさら辞退すべきではないか」と話している。

 古川康後援会は「個人として寄付されたもので、企業献金の認識はない。原発と結びつけて考えるところは何もない」と話している。【関谷俊介、三木陽介】
  1. 2011/07/30(土) 16:29:43|
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保安院のヤラセ問題

以下のようなことは、こうやって見ると異常な行動のようであるが、しかし、日本社会の公的機関に関わる部分は全体が、だいたい、こういうヤラセでできていることは、周知の事実なのではあるまいか。たとえば、原子力にかんしていえば、学界全体がヤラセである。

それゆえ、「ほあんいんぜんいんあほ」だけ徹底的に叩いたとしても、公的社会全体がヤラセでできている以上、如何なる対策をしたとしても、いずれまた、元の状態になるであろう。ヤラセ国家からの離脱を実現しない以上、無意味である。

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保安院やらせ指示、四国電も 原子力関連シンポ
2011年7月29日22時54 朝日新聞

 中部電力と四国電力は29日、原子力関連の国主催シンポジウムで、経済産業省原子力安全・保安院から、推進側の参加者動員や発言を指示されていたことを明らかにした。九州電力に端を発した原発のやらせ問題は、原発を規制する立場の保安院まで関与していたことが発覚。原子力を取り巻く不透明な癒着の構図が浮き彫りになってきた。

 経産省は九電の「やらせメール」の問題を受け、過去5年、計35回の国主催の原子力関連シンポジウムについて、電力7社に調査を指示。29日に各社が報告した。海江田万里経産相は、記者会見で「極めて深刻な事態。徹底解明したい」と述べ、第三者委員会による調査を指示した。8月末までに結果を出す方針だ。

 保安院がやらせを指示したのは、2006年6月に四電伊方原発のある愛媛県伊方町、07年8月に中部電浜岡原発のある静岡県御前崎市であったシンポジウム。使用済み核燃料をリサイクルして使う「プルサーマル発電」の是非をめぐる重要な説明会だった。

 四電によると、保安院から「多くの参加者を募り、質問や意見が多く出るように」と要請され、四電や関連会社の社員ら計364人に参加を依頼。地元住民ら29人には、例文を示しながら発言を頼んだ。

 四電は来場者の半数程度の約300人を動員。住民らが「プルサーマルを導入してもガスの発生などウランと変わらないと聞いてちょっと安心した」など、例文に沿って発言をした。

 四電は「誤解を招く行為で申し訳ない。質問の内容は強制しておらず、やらせ行為にはあたらないと思う」(広報担当)と話す。

 中部電は、保安院の指示で社員や下請け業者、町内会長などにも参加を求めた。住民向けに「自然エネルギーは原発に比べてコストが高いのでは」といった質問例もつくったが、最終的には住民に頼まなかった。社内の議論で「法令順守の面で問題」と判断した。シンポでの発言は、すべて原発やプルサーマルに慎重な意見だったという。

 中部電の水野明久社長は、記者会見で「深く反省している。今後は公正さに疑いが持たれることがないよう責任を持って指導していく」と強調した。

 九州電力は、報告には盛り込んでいないが、資源エネルギー庁職員から「なるべく空席がない方がいいよね」と依頼され、シンポの動員をかけた。10年5月に鹿児島県であった原発増設の公開ヒアリングでは、陳述人20人のうち15人が同社の要請で意見を述べていた。
  1. 2011/07/30(土) 12:30:50|
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福島原発:児玉龍彦東大教授の発言と質疑





児玉教授の発言と質疑である。どちらも必見。

ついでに、プルトニウム大丈夫系の発言を集めたビデオがあったので、こちらも必見。


  1. 2011/07/29(金) 13:54:37|
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福島原発:児玉龍彦東大教授の発言の文字おこし

http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8f7f0d5f9d925ebfe7c57aa544efd862

こちらで児玉教授の国会での発言が文字おこしされている。非常に重要なので、お読みいただきたい。

*****************************

衆議院厚生労働委員会 「放射線の健康への影響について」
児玉龍彦教授発言 7月27日
http://www.youtube.com/watch?v=O9sTLQSZfwo

私は東京大学アイソトープ総合センター長の児玉です。
3月15日に、大変に驚愕しました。私ども東京大学には27箇所の
アイソトープセンターがあり、放射線の防護とその除染などの責任
を負っております。

私自身は内科の医者でして、東大病院の放射線の除染などに数十
年関わっております。まず3月15日の午前9時ごろ、東海村で5マイ
クロシーベルトという線量を経験(観測)しまして、それを文科省
に第10条通報ということで直ちに通報いたしました。

その後東京で0.5マイクロシーベルトを超える線量を検出しま
した。これは一過性に下がりまして、そのあと3月21日に東京で雨
が降り0.2マイクロシーベルト等の線量が降下し、これが今日ま
での高い線量の原因になっていると思っております。このときに
枝野官房長官が、さしあたり健康にあまり問題がないということを
おっしゃいましたが、私はじっさいにこのときにこれは大変なこと
になると思いました。なぜなら現行の放射線の障害防止法というの
は、高い線量の放射線が少しあることを前提にしています。このと
きは総量はあまり問題ではなくて、個々の濃度が問題になります。

ところが今回の福島原発の事故というのは、100キロ圏で5マイクロ
シーベルト、200キロ圏で0.5マイクロシーベルト、さらにそれを越
えて、足柄から静岡のお茶にまで汚染が及んでいることは、今日、
すべてのみなさんがご存じの通りであります。

われわれが放射線障害をみるときには総量を見ます。それでは政府
と東京電力はいったい今回の福島原発事故の総量がどれぐらいであ
るかはっきりとした報告はまったくしていません。

そこで私どもはアイソトープセンターの知識をもとに計算してみま
すと、まず熱量からの計算では広島原爆の29.6個分に相当するもの
が露出しております。ウラン換算では20個分のものが露出していま
す。

さらにおそるべきことにはこれまでの知見で、原爆による放射能の
残存量と、原発から放出されたものの残存量は1年経って、原爆が
1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は
10分の1程度にしかならない。

つまり今回の福島原発の問題はチェルノブイリ事故と同様、原爆数
十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと大量の残存物を放出
したということが、まず考える前提になります。

そうしますと、われわれはシステム生物学というシステム論的にも
のをみるやり方でやっているのですが、総量が少ない場合には、あ
る人にかかる濃度だけを見ればいいです。しかしながら総量が非常
に膨大にありますと、これは粒子の問題です。

粒子の拡散というのは、非線形という科学になりまして、われわれ
の流体力学の計算ではもっとも難しいことになりますが、核燃料と
いうものは、砂粒のようなものが、合成樹脂のようなものの中に埋
め込まれております。

これがメルトダウンして放出されるとなると、細かい粒子がたくさ
ん放出されるようになります。そうしたものが出てまいりますと、
どういうことがおこるかというのが今回の稲藁の問題です。例えば
岩手の藤原町では、稲藁5万7千ベクレルプロキログラム、宮城県の
大崎1万7千ベクレルプロキログラム、南相馬市10万6千プロキログラ
ム、白河市9万7千プロキログラム、岩手6万4千プロキログラムと
いうことで、この数値はけして同心円上にはいかない。どこでどう
落ちているかということは、その時の天候、また例えばその物質が
水を吸い上げたかどうか、にかかります。

今回の場合も、私は南相馬に毎週行っています。東大のアイソトー
プセンターは現在までに7回の除染を行っていますが、南相馬に最初
にいったときには1台のNAIカウンターしかありません。農林省が
通達を出した3月19日には、食料も水もガソリンもつきようとして、
南相馬市長が痛切な訴えをWEBに流したのは広く知られていると
ころであります。

そのような中で通達1枚を出しても誰も見ることができないし、誰
も知ることができません。稲藁がそのような危険な状態にあるとい
うことは、まったく農家は認識されていない。農家は資料を外国か
ら買って、何十万という負担を負って、さらに牛にやる水は実際に
自分たちが飲む地下水にその日から代えています。

そうするとわれわれが何をやらなければいけないのかというと、ま
ず汚染地で徹底的な測定ができるように保障しなければいけません。
われわれが5月下旬に行ったときに1台しか南相馬になかったという
けれど、実際には米軍から20台の個人線量計が来ていました。しか
しその英文の解説書を市役所の教育委員会で分からなくて、われわ
れが行って、教えてあげて実際に使いだしてはじめて20個での測定
ができるようになった。それが現地の状況です。

それから先程から食品検査と言われていますが、ゲルマニウムカウ
ンターというのではなしに、今日ではもっとイメージングベースの
測定器が、はるかにたくさん半導体で開発されています。なぜ政府
はそれを全面的に応用してやろうとして、全国に作るためにお金を
使わないのか。3カ月経ってそのようなことが全く行われていないこ
とに私は満身の怒りを表明します。

第二番目です。私の専門は、小渕総理のときから内閣の抗体薬品の
責任者でして今日では最先端研究支援ということで、30億円をかけ
て、抗体医薬品にアイソトープをつけて癌の治療をやる、すなわち
人間の身体の中にアイソトープを打ち込むのが私の仕事ですから、
内部被曝問題に関して、一番必死に研究しております。

そこで内部被曝がどのように起きるかということを説明させていた
だきます。内部被曝の一番大きな問題は癌です。癌がなぜ起きるか
というと、DNAの切断を行います。ただしご存知のように、
DNAというのは二重らせんですから、二重のときは非常に安定的
です。

それが細胞分裂するときは、二重らせんが1本になって2倍になり、
4本になります。この過程のところがもの凄く危険です。そのために
妊婦の胎児、それから幼い子ども、成長期の増殖の盛んな細胞に対
しては、放射線障害は非常な危険性を持ちます。

さらに大人においても、増殖の盛んな細胞、例えば放射性物質を与
えると、髪の毛に影響したり、貧血になったり、それから腸管上皮
に影響しますが、これらはいずれも増殖の盛んな細胞でして、そう
いうところが放射線障害のイロハになります。

それで私たちが内部に与えた場合のことで知っている事例を挙げま
す。これは実際には一つの遺伝子の変異では癌はおこりません。
最初の放射線のヒットが起こったあとにもう一個の別の要因で、癌
への変異が起こるということ、これはドライバーミューテーション
とか、パッセンジャーミューテーションとか、細かいことになりま
すが、それは参考の文献をつけてありますので、後で、チェルノ
ブイリの場合や、セシウムの場合を挙げていますので、それを見て
いただきますが、まず一番有名なのはα線です。

プルトニウムを飲んでも大丈夫という東大教授がいると聞いて、
私はびっくりしましたが、α線は最も危険な物質であります。それ
はトロトラスト肝障害というところで、私ども肝臓医は、すごくよ
く知っております。

要するに内部被曝というのは、さきほどから何ミリシーベルトと
いう形で言われていますが、そういうのは全く意味がありません。
I131(ヨウ素131)は甲状腺に集まります。トロトラストは
肝臓に集まります。セシウムは尿管上皮、膀胱に集まります。
これらの体内の集積点をみなければ全身をいくらホールボディ
スキャンしても、まったく意味がありません。

トロトラストの場合、これは造影剤でして、1890年からドイツで用
いられ、1930年頃から日本でも用いられましたが、その後、20から
30年経つと肝臓がんが25%から30%起こるということが分かってま
いりました。最初のが出て来るまで20年というのが何故かと言うと、
トロトラストはα線核種なのですが、α線は近隣の細胞を障害しま
す。そのときに一番やられるのは、P53という遺伝子です。

われわれは今、ゲノム科学ということで人の遺伝子の配列を知って
いますが、一人の人間と別の人間はだいたい三百万箇所違います。
ですから人間を同じとして扱うような処理は今日ではまったく意味
がありません。いわゆるパーソナライズドメディスンと言われるよ
うなやり方で、放射線の内部障害を見るときにも、どの遺伝子がや
られて、どのような変化が起こっているかということをみることが、
原則的な考え方として大事です。

トロトラストの場合は、第一の段階でP53の遺伝子がやられて、それ
に続く第二、第三の変異が起こるのが20年から30年かかり、そこで
肝臓癌や白血病が起こってくることが証明されています。

次にヨウ素131、ご存知のように甲状腺に集まりますが、成長期の
集積がもっとも特徴的であり、小児に起こります。しかしながら1991
年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、
日本やアメリカの学者は、ネイチャーに、これは因果関係が分から
ないということを投稿しております。なぜかというと1986年以前の
データがないから統計学的に有意だということが言えないということ
です。

しかし統計学的に有意だということが分かったのは、20年後です。
20年後に何が分かったかというと、86年から起こったピークが消えた
ために、過去のデータがなくても因果関係があるということがエビ
デンスになった。ですから疫学的な証明というのは非常に難しくて、
全部の症例が終わるまでだいたい証明できないです。

ですから今、われわれに求められている子どもを守るという観点から
はまったく違った方法が求められます。そこで今、行われているのは
国立のバイオアッセ―研究センターという化学物質の効果を見る、
福島昭治先生という方がチェルノブイリの尿路系に集まるものを検討
されていまして、福島先生たちが、ウクライナの医師と相談して500
例以上のある症例を集めています。

前立腺肥大のときに手術をしますと膀胱もとれてきます。これを見まし
て検索したところ、高濃度の汚染地区、尿中に6ベクレルパーリットル
と微量ですが、その地域ではP53の変異が非常に増えていて、しかも
増殖性の前癌状態、われわれからみますと、P38というMAPキナーゼと、
NFカッパーBというシグナルが活性化されているのですが、それに
よる増殖性の膀胱炎というのが必発性でありまして、かなりの率で
上皮内の癌ができているということが、報告されています。

それでこの量に愕然といたしましたのは、福島の母親の母乳から2から
13ベクレル、7名から検出されているというがすでに報告されていること
であります。われわれアイソトープ総合センターでは、現在まで毎週
だいたい4人ぐらいの所員を派遣しまして、南相馬市の除染に協力して
おります。

南相馬でも起こっていることはまったくそうでして、20キロ、30キロ
という分け方はぜんぜん意味が無くて、幼稚園ごとに測っていかないと
全然ダメです。それで現在、20キロから30キロ圏にバスをたてて、
1700人の子どもが行っていますが、実際には南相馬で中心地区は海側で、
学校の7割は比較的線量は低いです。

ところが30キロ以遠の飯館村に近い方の学校にスクールバスで毎日100
万円かけて、子どもが強制的に移動させられています。このような事態
は一刻も早くやめさせてください。今、一番その障害になっているのは、
強制避難でないと補償しないということ。参議院のこの前の委員会で
当時の東電の清水社長と海江田経済産業大臣がそのような答弁を行って
いますが、これは分けて下さい。補償問題と線引の問題と、子どもの
問題は、ただちに分けて下さい。子どもを守るために全力を尽くすこと
をぜひお願いします。

それからもう一つは現地でやっていて思いますが、緊急避難的除染と
恒久的除染をはっきりわけていただきたい。緊急避難的除染をわれわれ
もかなりやっております。例えば図表にでています滑り台の下、ここは
小さい子どもが手をつくところですが、滑り台から雨水が落ちて来ると
毎回ここに濃縮します。右側と左側にずれがあって、片側に集まって
いますと、平均線量1マイクロのところですと、10マイクロの線量が
出てきます。こういうところの除染は緊急にどんどんやらなくては
なりません。

またコケが生えているような雨どいの下、これも実際に子どもが手を
ついたりしているところなのですが、そういうところは、高圧洗浄機を
持って行ってコケをはらうと2マイクロシーベルトが0.5マイクロ
シーベルトにまでなります。

だけれども、0.5マイクロシーベルト以下にするのは非常に難しいです。
それは建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染されていますと、
一か所だけを洗っても全体を下げることは非常に難しいです。

ですから除染を本当にやるときに、一体どれぐらいの問題がかかり、
どれぐらいのコストがかかるかといことをイタイイタイ病の一例であげ
ますと、カドミウム汚染地域、だいたい3000ヘクタールなのですが、
そのうち1500ヘクタールまで現在、除染の国費が8000億円投入されて
います。もしこの1000倍ということになれば一体どれだけの国費が必要
になるのか。

ですから私は4つのことを緊急に提案したいと思います。
第一に国策として、食品、土壌、水を、測定していく。日本がもってい
る最新鋭のイメージングなどを用いた機器を使って、半導体のイメージ
ング化は簡単です。イメージング化して流れ作業にしていくという意味
での最新鋭の機器を投入して、抜本的に改善してください。これは今の
日本の科学技術でまったく可能です。

二番目。緊急に子どもの被曝を減少させるために、新しい法律を制定
してください。私の現在やっていることはすべて法律違反です。現在
の障害防止法では、核施設で扱える放射線量、核種などは決められて
います。東大の27のいろいろなセンターを動員して南相馬の支援を行っ
ていますが、多くの施設はセシウム使用権限など得ていません。

車で運搬するのも違反です。しかしお母さんや先生たちに高線量のも
のを渡してくるわけにはいきませんから、今の東大の除染では、すべ
てのものをドラム缶に詰めて東京にもって帰ってきています。受け入
れも法律違反、すべて法律違反です。このような状態を放置している
のは国会の責任であります。

全国の国立大学のアイソトープセンターには、ゲルマニウムをはじめ
最新鋭の機種を持っているところはたくさんあります。そういうとこ
ろが手足を縛られたままで、どうやって、国民の総力をあげて子ども
を守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります。

第三番目、国策として土壌汚染を除染する技術に、民間の力を結集して
下さい。これは例えば東レとかクリタだとかさまざまな化学メーカー。
千代田テクノルとかアトックスというような放射線除去メーカー、竹中
工務店などは、放射線の除染に対してさまざまなノウハウを持っていま
す。こういうものを結集して、ただちに現地に除染研究センターを作っ
て、実際に何十兆円という国費をかかるのを、今のままだと利権がらみ
の公共事業になりかねないいう危惧を私は強くもっています。
国の財政事情を考えたら、そんな余裕は一瞬もありません。どうやって
本当に除染をやるか。七万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに
国会は一体何をやっているのですか。

以上です。

(なお文中の障害防止法とは、「放射線同位元素等による放射線障害の
防止に関する法律」のことと思われます。)
  1. 2011/07/29(金) 13:27:40|
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玄海原発:プルサーマル討論会のヤラセ



大橋弘忠東大教授が小出裕章先生を前に醜態を晒した玄海原発のプルサーマル討論会であるが、参加者の半数が九電のヤラセ動員であることがわかった。

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【玄海】プルサーマル討論会、参加者半数が九電の動員

 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)3号機のプルサーマル発電計画について、佐賀県が2005年12月に公開討論会を主催した際、九電が動員した社員や関連会社員らは、参加者全体(782人)の半数近い三百数十人に上っていたことが28日、九電関係者の証言でわかった。

 さらに、会場で行われた参加者アンケートに積極的に回答するよう九電が指示していたことも判明した。

 アンケート結果は原発の安全性に肯定的な意見が約65%を占め、古川康知事はこの結果などを参考に、06年3月に計画への同意を表明した。九電による“作られた世論”が、全国初となるプルサーマル発電計画を後押しした可能性が出てきた。九電は29日、この討論会を含め、過去、組織的な動員が常態化していたことを経済産業省に報告する。

 討論会は05年12月25日、県民が計画の是非を判断する最後の議論の場として、唐津市のホテルで開かれた。玄海町など地元3市町住民が優先され、他の地域の住民は抽選となった。

(2011年7月29日 読売新聞)
  1. 2011/07/29(金) 13:14:05|
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福島原発:週刊朝日のスクープ

飯田哲也さんのツイッターで以下のようなものが流れていた。

iidatetsunari 飯田哲也 tetsu iida@ISEP
【これも必読】週刊朝日「福島第一原発の最高幹部がついに語った~フクシマの真実:この「最高幹部」は吉田所長とのこと。あまりに真に迫る、絶望的状況: 前編7/22 → http://p.tl/AdwH 後編7/29 → http://p.tl/NJhO

週刊朝日の記事は下のようなもので、読んだときに「こりゃ凄いな」と思ったのだが、吉田所長だったとは。。。。

それが嘘かホントかわからないけれど、もう一度、そういう目で読んでみたい。

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福島第一原発の最高幹部がついに語った【フクシマの真実:前編】
独占スクープ!!
週刊朝日2011年7月22日号配信

福島第一原発が「循環注水冷却システム」に完全移行した。しかし一方で、玄海原発の再稼働問題を巡って政治は迷走するばかり。こんなことで、原発事故は本当に収束できるのか。この1カ月余り、本誌の取材に応じてきた第一原発"最高幹部"の一人が語った「すべて」をお届けしよう。(本誌取材班)


 いまこの国が抱える喫緊の課題は原発問題のはずである。ところが、東日本大震災から4カ月がたったいまも、司令塔であるべき政治は権力闘争に明け暮れ、迷走している。その"無様さ"は、玄海原発の再稼働問題でも露呈した。

 「いずれ時期が来ましたら、私も責任を取らせていただきます」

 海江田万里経済産業相(62)は7月7日、国会答弁で辞任を示唆した。それはそうだろう。海江田氏は、菅直人首相(64)の"思いつき"と"いいとこ取り"に振り回され続けてきた。

 5月初旬の浜岡原発の停止要請では、海江田氏が中部電力などに根回ししながら環境整備を進め、いざ記者会見しようというところで、菅首相が突然、横取りして発表した。5月下旬のG8サミット(主要国首脳会議)では、海江田氏に知らせることなく、菅首相がいきなり「太陽光パネル1千万戸構想」をぶち上げた。

 そして今回の玄海原発再稼働問題では、菅首相は6月中旬に再稼働容認を明言したのにもかかわらず、その意を受けて地元自治体との調整を進めてきた海江田氏を尻目に、自身は「脱原発」の姿勢を強め、揚げ句の果てに、新たな安全性評価(ストレステスト)の実施を持ち出して、すべてをひっくり返したのだ。

 菅首相自身は「脱原発」の闘士気取りで、周囲に「(浜岡原発の停止以降)経産省の抵抗がすごい」などと漏らしているそうだが、これまでの言動に照らせば、その"信念"は大いに疑わしい。そもそも、ストレステストもしていないのに「安全」だと宣言した判断の根拠は何だったのか。

 結局、この政治のゴタゴタで玄海原発の再稼働は遠のいた。そして政府は7月19日にも、福島第一原発の事故収束に向けた新たな「工程表」を発表するとしている。果たして本当に「安全」だといえるときは来るのだろうか--3月11日の事故以降、現場に詰めて作業にあたってきた福島第一原発の「最高幹部」に、本誌は6月以降、幾度となく取材を繰り返してきた。いわば原発のすべてを知るこの人物が、こう語るのだ。
   ◇   ◇
 いま玄海原発の再稼働問題が取りざたされていますが、フクイチ(福島第一原発)の事故を経験した私に言わせれば、そんなバカなことはやめたほうがいい。玄海原発1号機の操業開始は1975年で、老朽化が心配。それに、現地はフクイチよりも地盤がやわらかいようです。正直、再稼働して大丈夫なのかと感じる。

 私が、こう言うのには理由があります。フクイチが地震と津波、どちらでやられたのかといえば、まず地震で建屋や配管、電気系統など、施設にかなりの被害を受けたのは事実です。地震直後、「配管がだめだ」「落下物がある」などと緊急連絡が殺到しました。制御室からも「配管や電気系統がきかなくなった」などと、すさまじい状況で、多くの作業員が逃げ出した。耐震性に問題があったのは否めません。

 こうした事態に対応している間に「津波がくるらしい」という話が入り、とにかく避難が優先だと施設内に放送を流し、情報収集を進めているうちに津波が襲ってきた。これで、街灯やトイレなど、地震後もかろうじて通じていた一部の電源もほぼ通じなくなった。完全なブラックアウト(停電)です。

 そのとき頭に浮かんだのは、どうやって冷却を続けるか、です。すぐに人を招集して、とにかく電源回復を急ぐようにと指示した。何とか電源を回復できないかと、(東京電力)本社に電源車を要請するなど、もう大声で叫ぶばかりでした。

 津波の破壊力を実感したのは、電源確保のために状況を見に行った作業員から「行く手をはばまれた」「瓦礫(がれき)で前へ進めない」などと報告を受け、携帯写真を見たときです。本当にとんでもないことになっていた。本社に電源車を頼んでいるような悠長なことではとても無理。自分たちで何でもやれることはやらなきゃ、もう爆発だと覚悟しました。すぐに車のバッテリーなど、原発内でとにかく使えそうなものを探させました。

 日が暮れ、周囲は真っ暗で作業がはかどらない。携帯電話の画面を懐中電灯代わりにしている--現場からは、こんな報告が次々と上がってきました。

 このあたりから「最悪のケースもありうる。海水も早い時期に決断せねば」と覚悟しました。メルトダウン(炉心溶融)も、ありうると思っていた。

 ただ、これがもしも地震だけだったら、要請した電源車なども早く到着したはずですし、非常用電源なども回復できた可能性が高い。爆発は防げたと思います。

 ここまで事故が深刻化した原因について、津波対策がおろそかだった、非常用電源の設置場所が悪かったなどと言われますが、私は何よりも、操業開始から40年という"古さ"が、地震・津波に負けてしまったと感じています。いくらメンテナンスで部品を新しくしたところで、建物は同じ。原発自体の耐用年数だけでなく、建物や構造など全体的にみて、40年は長すぎた。

 実際、免震棟ができる2年ほど前までは事務本館しかなかった。それが、地震だけでメチャメチャになり、使えない。これは、玄海を始め、全国の原発に当てはまることだと思いますね。

   ◇   ◇

 いまだ予断を許さない状況が続く福島第一原発だが、7月2日になって、最大の課題だった原子炉の安定冷却と、放射能汚染水の浄化を実現する「循環システム」がようやく完成した。

「これは、原子炉建屋などの地下にたまった汚染水を装置に通して浄化し、循環させて原子炉の冷却水として再び使うシステムです。当初、6月27日に稼働が始まりましたが、わずか1時間半あまりで停止。原因は、原子炉に再注入する配管から処理水が漏れるというお粗末なものでした。その後もトラブルが相次ぎ、不安定な状態が続いていましたが、ようやく動き始めたのです」(東電関係者)

 総延長約4キロに及ぶこの循環システムは、まず東芝の装置で「油を分離」し、次に米キュリオン社製の装置が「放射性セシウムを吸着」、それを仏アレバ社製の装置が「薬品で除染」し、最後に日立の装置が処理水から塩分を取り除いて「淡水化」する。1日1200トンを処理し、たまりにたまった計12万トンの高濃度汚染水をゼロに近づける予定だ。

 東京電力が4月17日に発表した「工程表」では、7月中旬までに「原子炉の安定的な冷却」を完成させるとしているが、このスケジュールどおり事故処理は進むのだろうか。

◆無理があった「3カ国連合」◆

 注水をしている限り、汚染水が増えるばかりで安定はありません。フクイチの1~4号機ともに循環システムがうまく機能して初めて冷却、安定となります。とにかくまず冷却して安定させなければ、先が見えません。ペースは遅いかもしれないが、一歩ずつ確実に近づきつつある。

 もちろん、現場ではもうこれ以上、汚染水を海に放出することは許されないと認識しています。ただ、なぜか本社は海に流すことをいとわない雰囲気があって、温度差を感じます。

 システムの管理は、東芝が中心でやっています。米キュリオンと仏アレバの機器を組み合わせ、日立が塩分を取り除く装置を担当している。

 システムの構成については、現場からも提案しました。でも、本社から、
 「もう決まった。これでやりなさい」
 と日米仏の装置を一つにまとめる方式になったのです。現場としては、日本だけで十分やれると考えていました。しかし、政府同士で商取引の約束でも交わしたのでしょうか、本社のある幹部は政府や経産省との絡みも暗ににおわせて、「勘弁してくれ。こちらでもどうにもならない」ということでした。

 てこずったのはアレバの装置です。仕様書などはフランス語だけでなく、一部がイタリア語で書かれていて大混乱でした。原発関連の言葉をイタリア語で読みこなすのは難しく、アレバに問い合わせても、肝心なところは「国家機密で言えない」と拒絶されるのです。

 結局、循環システムが稼働するまでに、バルブの開閉トラブルやフィルターの目詰まり、装置の接点で想定外の放射線量が出るなど問題が起き、何度も止まりました。統括した東芝も「オールジャパンでやっていれば......」と言っていた。

 とはいえ、アレバの装置の威力はさすがにすごい。放射性物質はきれいに除去されています。

 ようやく動き始めたといっても、水回りの作業はトラブルがつきものです。現場で「ぞうさん」「シマウマ」などと呼ばれている注水車もポンプの調子が悪く、よく中断しますから。

 それに、まだまだ瓦礫などの線量が高く、作業がはかどりません。1号機では、原子炉建屋の1階と2階にある配管で循環システムを接続するつもりでしたが、線量が高すぎるため、別の配管を使わざるをえなかった。無人ロボットも、瓦礫を片付けられずに入れないところがたくさんあります。

   ◇   ◇

 事故以降、現場で陣頭指揮を執ってきたのが、原発を統括する吉田昌郎所長である。「所長こそがフクイチをいちばん理解し、把握している」(現場社員)と信頼が厚い。今後の事故処理の行方は、彼の手腕にかかっているといっても過言ではないだろう。

 その吉田所長がにわかにクローズアップされたのが、5月20日に発覚した、菅首相による1号機の海水注入「停止命令」問題だ。

 きっかけは安倍晋三元首相のメールマガジンだった。

「(3月)12日19時04分に海水注入を開始。同時に官邸に報告したところ、菅総理が『俺は聞いていない!』と激怒。官邸から東電への電話で、19時25分海水注入を中断。実務者、識者の説得で20時20分注入再開」
 と記されていたのだ。

 それまでに官邸や東電が発表した資料では、菅首相の指示で中断していた注水が再開されたことになっていた。これでは話がまったく逆である。

 首相の大失態が原発事故を悪化させた--この問題は、谷垣禎一・自民党総裁も国会で追及するに至り、「菅おろし」を巡る政局は一気に緊迫した。

 しかし、現実には、「中断」はなかった。事態収拾に動く東電は5月26日、海水注入は「所長判断」で継続していた、と発表したのだ。

 この「55分間の注水中断」について、吉田所長は、
 「こんなに騒がれて、本社にまで呼び出され、大変なことになるとは思ってもいなかった」
 と漏らしていたという。

◆悪者になった吉田所長◆

 それほど、現場と本社の間には明らかな温度差、認識の違いがあるのです。

 実際は「55分間の注水中断」がなかったことは、一部の幹部たちは前から知っていたはずです。確かに資料上は政府に配慮して、「(注水を)菅総理の指示で再開した」ということにするため、20分程度で注水を中断したことになっていました。でも、この問題が国会にまで持ち込まれ、いまさら政府に報告した内容をひっくり返して「中断してなかった」などとは言いだせない状態だったのです。

 だから、最終的に「吉田所長が独断で中断しなかった」という話で落ち着きましたが、実は違う。

 そもそも、あの時点で注水を中断するなどという選択肢はなかった。原子炉を冷やし続けなければ、爆発は時間の問題。私たちや作業員はもとより、周辺住民も被曝(ひばく)するかもしれない。「死」につながることになるかもしれない。原子力を少しでも学んでいる人間ならば、誰でもわかることです。そんなバカなことをするわけがありません。

 当時、現場の意思は、
「『総理が了承していない』なんて言っている場合じゃない。こっちは生きるか死ぬかだ。なりふり構っていられない」
 ということでした。

 とはいえ、あれだけ問題になってしまったので、皆、「今回は、吉田所長が悪者になるしかない」と言ってましたね。

   ◇   ◇

 この「55分間の中断」について吉田所長は、東電の調査に対し、「事故の進展を防止するためには、原子炉への注水の継続が何よりも重要と判断して継続した」と説明している。

 一方の東電は武藤栄副社長が、問題発覚を受けて開いた5月26日の緊急記者会見でこう答えている。

「(3月12日の)19時25分ごろ、官邸に詰めていた者から、海水の注入について首相の了承が得られてないと連絡があった。首相の判断がない中でできないという空気を伝え、(テレビ会議で)いったん中断しようと本店と(吉田)所長が協議の上、合意した」

 結果的に、吉田所長は「合意」などしていなかったのだが、東電が「首相官邸の空気」を忖度(そんたく)して、危険な判断に踏み出そうとしていたのは事実である。一連の原発事故の処理を巡って、官邸と東電がいかに「いびつ」な関係になっていたかを表していよう。現場にとって、本社のこうした"姿勢"は許しがたいものだったに違いない。

 そのフクイチの現場では、いまも決死の作業が続いている。それでも、危機的状況は脱した--とは決して言えないのが偽らざる現状だ。今後の作業はどうなっていくのか。

◆大晦日も正月もずっといる覚悟◆

「建屋カバー」は、なんとか台風の時期の前には設置したかったが、ちょっと難しい。作業は天候に大きく左右される。大きなクレーンで設置するので、少しの風でも作業に支障をきたしてしまうのです。それに、かぶせると言っても、爆発で建屋は左右対称ではなくなっているので、技術的にもなかなか難しい。

 ちなみに、このカバー設置も本社の主導でした。ある幹部曰(いわ)く、「覆いをすれば、グーグルなどで原発の衛星写真が世界中に広がるのを隠せる」ということで、この案に政府も同意したそうです。カバー設置で放射線量の数値が劇的に下がることはないと思います。

 設置は、大手ゼネコン数社が受注しましたが、いまだ契約で話し合いが続いています。工事が必ず成功するとは限らないからです。

 最終的に、チェルノブイリのように原子炉をコンクリートで固める「石棺」にするかどうかという議論があります。実際にシミュレーションもありますが、これは、安定したときの状況次第ですね。

 安定したら、何とか核燃料を外に取り出したい。しかし、その燃料がどんな状況なのか、すでにメルトダウン、さらにはメルトスルー(原子炉貫通)もないとはいえない。飛び散っていることも考えられる。それを把握してからですが、いまのところは「石棺」は考えていません。

 いずれにしても、いま一番の課題は「人」ですね。現場で作業するのは、作業員たちです。暑さと雨の中で仕事ができるのかどうか。これまで、うち(東電)は作業員や協力会社に正直、十分なことをしてこなかった。うちの人間は現場にはあまり出ず、作業員任せというシステムが問題であることはわかっていましたが、現場レベルではどうすることもできなかった。それが事故の重大さを把握できなかった一因でもある。

 現場ではいまも、寝るとき以外は仕事です。食事も最近まで1日2回とれたらいいところだった。本社では休んでいることになっていますが、実際はろくに休んでいません。吉田所長は、こう言っています。

「恐らく今後、年内に安定化できるかどうかが焦点になるだろうが、それは正直、厳しい。クリスマス、大晦日(おおみそか)、正月、ずっとフクイチで過ごす覚悟でいる。私は最後の最後まで、事故が収束するまで、ここを離れない決意です。作業員や協力会社の方々にも申し訳ないが、ご協力を頂きたい」

 その思いで、皆が一丸となって事態に当たっているのです。 (以下次号)

福島第一原発の最高幹部が語る「フクシマの真実」 後編
新工程表はデタラメ
週刊朝日2011年7月29日号配信

いよいよ「脱原発」の姿勢を強める菅直人首相だが、その足元に横たわる原発事故は、本当に収束に向かっているのだろうか。「工程表」の妥当性は、原発の現状は、そして政府・経済産業省・東京電力の協力関係は--先週号に引き続き、福島第一原発"最高幹部"の一人が語る「フクシマの真実」第2弾!! (本誌取材班)


 菅直人首相は7月13日夕、首相官邸で開いた会見で、今後の国のエネルギー政策について「脱原発依存」を進める考えを示し、力を込めてこう語った。

「この大きな事故を踏まえて原子力政策の見直しを提起するのは、その時代の総理の責務だ」

 いまこそ日本は原発に頼った社会構造を改め、自然エネルギーをはじめとする"安全"な代替エネルギーにシフトすべきだ--そう主張する方向性そのものに異論は少ないだろう。しかし、あまりにもいまさらである。

 時事通信の世論調査(7月7~10日に実施)では、菅政権の支持率は、前月から9・4ポイント急落して12・5%。これは2009年9月に民主党政権が誕生して以来、最低の数字であり、あの森喜朗政権末期(01年4月)の支持率10・8%に迫る勢いだ。

 菅首相から人心が離れていく、その理由は簡単だ。就任以来、繰り返されてきた"思いつき"と"自己都合"の言葉の軽さに辟易としているのが、この数字から読み取れるではないか。その首相の口から発せられる「脱原発」路線に対し、かえって反発が生まれているとしたら、まったく皮肉な話だ。

 福島第一原発の事故収束に向け、政府は7月19日、「新工程表」を発表する。

 東京電力が4月17日に発表した"旧"工程表では、最初の3カ月程度が、確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少に向かわせる第1段階(ステップ1)、そしてさらに3~6カ月かけて、原子炉を100度未満の安定状態に保つ「冷温停止」にし、放射性物質の漏出を大幅に抑える第2段階(ステップ2)に至る、としている。

 いま、ちょうどステップ1の目標期限を迎えたところだ。しかし、政府と東電が掲げるこの工程表は、果たして信用に値するものなのだろうか。実は、現場の意識とは大きな乖離があるという。これまで継続的に本誌の取材に応じてきた福島第一原発の「最高幹部」が、こう語るのだ。

     ◇   ◇

 この"旧"工程表については、4月の本社発表に先立って、実はフクイチ(福島第一原発)の現場からは「(収束までに)約1年半」というスケジュールを想定したものを出しました。これでも、熟練の作業員をフル動員することを前提にして、ようやく達成できるレベルです。

 ところが本社からは、
 「こんなのでは遅すぎる。菅総理が納得しない。(5月下旬の)サミットでどう説明するんだ」
 と言われました。結局、本社がいろいろと継ぎはぎして「9カ月」の工程を作ったのです。

 工程表では3カ月+3~6カ月の「2ステップ」などと謳(うた)っています。ステップ1は何とかなるかもしれないが、問題はステップ2。このスケジュールどおりなんて到底、無理な話ですよ。放射線量の限度を超え、どんどん熟練作業員の人数が減っていく中で、どうすればできるのですか。

 無人ロボットが導入されましたが、あんなのが何台あっても最後の最後は「人手」が必要です。その「人手」の作業を阻むのが、建屋の地下にたまった汚染水なのです。

     ◇   ◇

 実際、工程表を進めれば進めるほど、その見通しが甘かったことが明らかになっている。すでに東電は5月17日、「新しい工程表」を発表した。4月の発表から、わずか1カ月での「修正」である。

 最大の修正は、原子炉の冷却方法だった。もともとは、1~3号機の格納容器を水で満たして核燃料を原子炉圧力容器ごと冷やす「格納容器冠水」方式を予定していたが、これを断念。というのも、格納容器に穴が開いているようで、注水しても一向に水がたまらないことがわかったためだ。

 そこで新たな方策として打ち出されたのが、いまようやく動き始めた「循環注水冷却システム」だった。

◆1~4号機はどれも危ない◆

 この「冠水」方式にしても、現場は当初から「メルトダウン(炉心溶融)で格納容器に穴が開いている可能性があるので難しい」と指摘していた。しかし、「実際に穴が開いているのを見たのか」という変な話になり、この方式が政府に上がってしまった。

 一方の「循環注水」方式は早い段階から候補に挙がっていたが、装置を準備するのに時間がかかるからと却下された。それが、いきなり復活したのです。

 工程表には、細かい工事内容も書かれていますが、実際には予定されていたよりも1・5~2倍の時間がかかっている。「循環システム」設置だって、予定の1・5倍の時間がかかりました。本社の作った工程表は、あくまでも理想で、現実性は乏しい。

 さらに今後、この暑さの中で作業は困難になります。作業員たちの健康のため、いま工事は朝6時ごろから始め、午後2時ごろには終わらせている。こんな環境の中で、工程表どおりに実現させるのは難しい。それに、1~4号機はそれぞれ状況が違うので、予想できない事態もあり得ます。

 19日に発表される新工程表でも、期日の修正はあまりないようです。というのも、期日については政府の意向が強く、政治的な責任問題が発生するとかで、なかなかいじれないらしい。結局、理想論を前提に、結論ありきでスケジュールをはめ込んでいるだけ。現場としては、国民に本当のことを知らせるべきだと思っています。

     ◇   ◇

 驚愕の証言である。いま発表されている工程表は、まったくの"デタラメ"だというのだ。

 実際、現場は事故収束に向けて着々と工事を進めつつも、決して事態を楽観していない。作業を妨げるいちばんの要因は、やはり「汚染水」だった。

     ◇   ◇

 ずっと「水」に苦しめられてきました。原子炉を冷やせば冷やすほど汚染水が増え、それが建屋の地下、トレンチ(タービン建屋外にある地下の作業用トンネル)に大量に流入していくという悪循環です。大雨が降ると敷地内に流れ出す可能性もあり、作業員が近寄れなくなる。海に流れ込む恐れもある。いま、ようやく「循環注水冷却システム」が動き始めましたが、まだ安定したとはいえない。

 しかも、もしも核燃料がメルトスルー(原子炉貫通)しているならば、たまった汚染水は非常に高濃度になっている。チェルノブイリ事故の際は、すぐに地下水対策をしましたが、それは日本の技術だった。地下にトンネルを通し、セメント、ベントナイト(粘土鉱物)などを注入して固めてしまう方式です。これをフクイチでも実施すべきではないかと思う。国土交通省はこうしたプランを数多く持っていますが、所管の経産省との連携がうまくいっていないのか、適切と思われる対応策が講じられていないのが現状です。現場からも本社にプランを上げているんですが、何の動きもない。

 また、4号機が危ない、1号機がダメらしい--などといろいろ言われますが、私から言わせれば、どれも危ない。工程表では汚染水の流出源についても、詳しく触れられていません。

 たとえば、1号機は格納容器から漏れているようです。しかし、その場所が特定できない。穴の大きさもわからない。つまり、何もできない。安易にどれくらいで収束すると断言できないのです。

 3号機では、1、2号機に続いて水素爆発を防ぐための窒素注入がようやく始まった。しかし、地下に大量の汚染水がたまって苦しい状況には変わりない。建屋内に入ることはできましたが、内部は飛散した瓦礫で埋もれていて、燃料プールの確認も大変な状況です。

 3号機、4号機に共通していえるのは、建屋の強度に不安があることです。かなり崩れていて、作業中に上からコンクリート片が落ちてくることもあり、作業員も怖がっている。

 特に4号機の燃料プールは、早急に手だてを講じないと危ない。4月の最大余震の際は「倒壊を覚悟した」と言う作業員もいたほど。すでに建屋の補強工事に着手し、作業は順調に進んでいますが、本格的な台風の季節の前に何とか対応したいところです。

 2号機も、ひどい状況です。作業の間、汚染水があふれたり、漏れたりしないかとヒヤヒヤの連続でした。ただ、少なくとも配管などは爆発でやられていないので、1号機、3号機とはちょっと状況が違いますね。とりあえずは最悪の危機は脱出したと考えています。

 最近でも、1~4号機の映像を中継している「ふくいちライブカメラ」を見て、「白い煙」が出ているとの指摘がありますが、あれは燃料プールの使用済み燃料が熱を持っているため、湯気みたいなものが出てそう見えるのです。プールから水が漏れているので十分に冷やせず、熱が下がらない。それで水蒸気が出る。もっとも、その「湯気」には放射性物質も含まれています。

     ◇   ◇

 現場は事故から4カ月たったいまでも、本社の"事なかれ主義"、そして官邸のパフォーマンスじみた言動に振り回され続けている。その矢面に立たされてきたのが、現場で陣頭指揮を執る吉田昌郎所長だ。

 震災翌日の3月12日早朝に、菅首相が断行した「現地視察」も、現場にとっては大きな"弊害"だった。

 11日、原発事故の状況が刻一刻と深刻化する中、深夜になって菅首相は突然、第一原発の現場を視察すると言いだす。格納容器内の圧力が上限を大きく超え、一刻も早くベント(排気)の必要があるとされていたころだ。菅首相は「一向にベントをしない現場に活を入れるためだった」などと説明しているが、この視察が結果的に、現場を混乱させることになったという。

     ◇   ◇

 12日早朝(午前7時すぎ)に菅さんがこちら(フクイチ)に乗り込んできたときは、本当に驚きました。確かに事前に「総理が来る」との連絡はありました。しかし、そんな急に、本当に来るとは思いもしなかった。しかも、ヘリコプターで来て免震棟で会うなり、
「何をやっている。ベントはどうなっている。早くするんだ!」
 などと怒鳴り散らすのです。総理にそこまで言われると、さすがに皆、引いてましたね。吉田所長は、
「とにかく、どんなことをしてでもやります。決死の作業で、命かけてでも絶対に何とかします」
 と答えてました。

 1号機が水素爆発を起こしたのは、ベントが遅れたせいだと指摘されていますが、現場としては、近隣住民のことが気になっていました。ベントをすれば放射能がまき散らされる。近隣住民の避難状況はどうなのか、放出される範囲は広範囲にわたるので、現場としては、かなり深刻に考えていました。

 それに、自動でベントを開閉する装置がダメになっていたため、手動で動かさなくてはならない状況だった。当時、1号機のリアクター(原子炉)建屋はかなりの放射線量が予想されていました。そんな危険な場所に誰を行かせるのか。本当に決死の作業なのです。

◆もうフクイチで死んでゆくのか◆

 この「早朝視察」について、吉田所長は周囲に、無念そうにこう言ったという。

「言い訳になるかもしれないけど、菅総理がフクイチの現場に来たことで、そちらにばかり目がいってしまい、2時間ほど『ベント』などの指示が出せなかった。当時は、すべて私が指示して動いていた。それが止まったことで、周りも動けなくなってしまった」

 東電が6月に公表した報告書によると、吉田所長がベントの準備を指示したのが12日午前0時6分のこと。そして東電が、ベント実施を菅首相、海江田万里経産相、そして原子力安全・保安院に申し入れ、了承される。ところが、午前2時24分には、現場の放射線量から作業可能時間は17分と報告され、午前4時半ごろには、余震による津波の可能性から現場操作の禁止が指示された。ベントに向けた状況が、いかに困難だったかがわかる。

 さらに、午前8時27分になって、原発立地町である大熊町の一部住民が、まだ避難できていないとの情報が入る。避難終了を待って、ようやく作業員が現場に向かったのが午前9時4分。格納容器圧力の低下を確認できたのは午後2時半になってからのことだった。

 そして午後3時36分、1号機で水素爆発が起きた--。

     ◇   ◇

 1号機が水素爆発を起こしたときは、もう目の前が真っ暗でした。ベントをしたのに、いきなりの爆発でしょう。最悪の事態です。免震棟内もパニック状態で、「帰らせてくれ」と言う作業員、社員も出てきました。私たちには、それをとめることはできません。とにかく残った人間でやるしかない。もうフクイチで被曝(ひばく)して死んでゆくのか、これまで原発で過ごしてきた何年もの日々が一瞬、頭をよぎりました。

 当時は知らなかったのですが、政府は震災当日の11日午後9時23分に、原発から「半径3キロ圏内」の住民に避難指示を出し、その後、翌12日午前5時44分に「10キロ圏内」、午後6時25分に「20キロ圏内」--と次第に範囲を拡大していった。

 でも、現場ではもっと広い範囲、少なくとも半径50キロは避難していると思った。なんといっても、あれだけの爆発だったんですから。結局、避難範囲が半径3キロ圏内と聞いたときも、「大丈夫か?」と思ったのが正直な印象ですね。

 米政府は当時、半径50マイル(約80キロ)圏内の自国民に対して避難勧告を出しました。チェルノブイリ事故では、国際原子力機関(IAEA)の報告によると、旧ソ連の汚染地域は約14万5千平方キロメートルで、約300キロ離れた地域でも高いレベルの汚染があったことがわかっている。爆発が相次ぐ中、当時は私自身、半径30キロどころか、青森から関東まで住めなくなるのではないかと思ったほどです。

 本社と政府の話し合いで決まったんだろうけど、余震の危険性などを考えれば、最低でも半径50キロ、できれば半径70キロ、万全を期すならば半径100キロでも不思議はなかった。最初は広範囲にして、それから「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)」の予測などをもとに狭めていけばよかったのではないでしょうか。

 いま原発は何とか安定していますが、放射性物質がかなり飛散しているのが実態です。避難地域の見直しが必要だと思います。実際、もう半径20キロ圏内は戻れないと、そろそろ発表してもいいんじゃないか。子どもたちが学校に通うのは無理です。最初からもっと広範囲で避難させていればと悔やまれます。

     ◇   ◇

 菅政権は6月27日、首相補佐官だった細野豪志・衆院議員を新設の「原発担当大臣」に据えた。原発事故対応に特化した新ポストだが、海江田経産相との役割分担ははっきりしない。果たして今後、事故収束に向けて政府・経産省・東電の歯車は、うまく回っていくのだろうか。

◆「私の立場はどうなるんだ」◆

 細野さんが原発担当大臣になって歓迎ムードがあるようですが、現場としては、うーんという感じ。期待はしていたんですが、正直いって彼は経産官僚と変わりない。現場が望むのは、意思決定のスピードとリーダーシップ。でも、細野さんと話しても、どちらも兼ね備えていない。経産官僚が言っていたことを、数日後に細野さんの口から聞くという感じです。経産官僚の言うがままの「操り人形」と我々は呼んでいます。

 政府の原発に関する決定は本当に遅い。菅総理は「細野に任せてある」と言うのに、細野さんは「決めるのは総理」と言うばかり。菅さんが責任を細野さんに押しつけているのは誰の目にも明らかで、細野さんは、それには乗らないと牽制(けんせい)しているんです。堂々巡りで、一向に前に進みません。

 東電本社も経産省の言うがままで、こんなにノンビリでいいのかと思うほど意思決定が遅い。この状況を喜んでいるのは、経産省をはじめとする官僚たちです。

 現場と本社には、明らかに認識のズレがあります。フクイチから本社には毎日、膨大な量の情報が上がりますが、いま国民に公表されているのはその10%、いや1%くらいかもしれません。実際、現場は当初から「メルトダウン、メルトスルーの可能性がある」と報告していますが、本社は発表しませんでした。

 一連の発表を見ていると、派閥や上司との人間関係など、社内でしか理解できない力学が働いているように思えます。

 というのも、うち(東電)は、とにかく風通しが悪い組織なんですよ。いろんな人間が口を出してくる。

 現場と本社は、衝突ばかりです。ある本社幹部は、情報公開を巡ってこんなことを言っていました。

 「そんな情報が保安院や政府にわかると、大変なことになる。(問題が)ますます拡大するじゃないか」

 そして最後には、
 「私の立場や出世はどうなるんだ。キミはわかってるのか!」
 と言うんだから呆(あき)れてしまいます。的確な情報が適切なタイミングで届かないから、トップが最終決断しなければならないときに、十分な情報がないということが起こるのです。本当に、どこを見て仕事しているんでしょうかね。

 今回の事故は我々の責任が重大で、おわびするしかありません。いま、フクイチには日本、いや世界の存亡がかかっている--私たち現場の人間はそういう覚悟でやっています。でも、残念ながらこれが、いまの本社の状況なのです。
  1. 2011/07/29(金) 00:03:50|
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福島第一原発:柏のマンションが売れ行き絶好調

http://sumai.nikkei.co.jp/edit/mercury/detail/MMSUc3000021072011/

日経新聞のサイトの不動産情報の記事を見ていて、驚いた。

また、福島第一原発からの放射能汚染で意外な高濃度汚染地域として名前が挙がった柏市でも「オーベルグランディオ柏(総戸数213戸)」60戸が即日完売している。

とのことである。こりゃ本当に、みんな、全然、気にしていないのであろうか?

それとも、首都圏の不動産が暴落したりすると、担保割れが生じて不良債権だらけになって、壊滅的打撃を受ける銀行が、子会社やら、関係の不動産会社やらを経由して、あの手この手で売ってしまったのだろうか?60戸くらいなら、直感的には、なんとかなりそうな数字である。単純計算で、

一戸2500万円×60=15億円

だから、実需を引けば数億円の話である。銀行や不動産会社にとっては、どうにでもなる数字である。まぁ、なんだかんだで大幅値引きをしたのかもしれない。

一番下に貼った毎日新聞の7月1日に記事には、

一方、市場の先行きにも震災と福島第1原発事故が暗い影を落とす。ニッセイ基礎研究所が4月、不動産分野の実務家ら1051人に行ったアンケートによると、不動産市場で重視するリスクについて「電力不足・停電」が37.5%、「原発・放射能汚染」が28.4%にのぼった。

と書いてあるので、あまりにも市場動向と動きが違いすぎるように思うのである。


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月例マンション動向(首都圏)
不動産情報サービスのマーキュリーによる、1都3県のマンション供給予想・実績データと分析。

震災後、供給が少なかった千葉県が絶好調・2011年6月の実績

 不動産情報サービスのマーキュリーの調べでは、2011年6月の首都圏新築マンション供給戸数は4184戸となった。前年同月比で380戸、10%増となっており、3カ月ぶりに前年同月を上回った。

 地域別供給戸数は、東京23区1750戸(当月シェア42%)、横浜・川崎774戸(19%)、千葉県635戸(15%)、埼玉県602戸(14%)、東京都下218戸(5%)、神奈川県下205戸(5%)。前月比・前年同月比で供給戸数が下回ったのは東京23区と都下。一方で千葉県・埼玉県が大幅増加となったため、23区のシェアが42%と3カ月ぶりに過半数割れとなった。

 首都圏の初月申込率は78.7%と、5カ月連続で70%を上回った。地域別では、千葉県97.1%、神奈川県下91.2%、東京都下87.2%、埼玉県74.6%、東京23区74.6%、横浜・川崎72.1%と、すべてのエリアで70%を上回った。

 平均坪単価は1都3県全体で213.1万円と前月比13.1%下落、平均グロス価格も4561万円と5.4%下落、平均面積は70.76平方メートルで8.9%上昇。これらの数値からも、東京23区のシェアが下がり、千葉県・埼玉県のシェアが高かったことが伺える。

 2011年6月の特徴は、千葉県で供給大幅増と驚異的な初月申込率を出したことである。

 千葉県では、昨年10月に530戸の供給があって以来、低水準の供給が続いていた。特に震災後は、3月:166戸、4月:97戸、5月:170戸と、首都圏で最も供給が少ないエリアとなっていた。浦安市や千葉市の沿岸部に液状化が発生したことが、供給に急ブレーキがかかった要因となった。

 ところが6月は、湾岸エリア物件である「プラウドシティ稲毛海岸レジデンス(総戸数432戸)」267戸が連続即日完売、超高層タワーである「グランドターミナルタワー本八幡(総戸数465戸)」160戸が月内完売。また、福島第一原発からの放射能汚染で意外な高濃度汚染地域として名前が挙がった柏市でも「オーベルグランディオ柏(総戸数213戸)」60戸が即日完売している。

 震災後、特に敬遠されてきた湾岸エリアや、超高層物件が絶好調なのだ。これらの物件が他の大規模物件と違うのは、広域での集客よりも、地元集客が圧倒的に多いことだ。そのため、特に稲毛海岸と柏の2物件は地元民力に合わせた価格戦略が徹底されており、2000万円台~3000万円台前半までのボリュームが多く、一次取得層の取り込みに成功している。本八幡は駅徒歩1分の希少性に加え、2008年以降新規販売が無かった供給空白エリアであったため、地元顧客のニーズを吸い上げやすい環境にあったと言えよう。

 しかし、これらの物件が売れた要因として忘れてはならないのが、地盤や建物構造に関するリスクを調査し、事前に十分な対策を講じたうえで、丁寧に顧客に説明する姿勢が出来ていることが挙げられる。

 震災を経て、顧客が住宅に求める志向が変化してきている。利便性、眺望、ステータス感から、安心、安全、人や地域との繋がりにシフトしている。供給サイドが顧客の志向変化をしっかりキャッチし、上手な対応をすることが出来た好事例であったと言えよう。

※集計の数字は2011年7月20日時点のもの


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路線価:震災で市場環境が一変…下落縮小も取引激減

 国税庁が1日発表した11年分の路線価(1月1日現在)は平均で前年比3.1%下落となり、下落幅が10年分(同4.4%下落)より縮小、地価の復調傾向を示した。しかし、3月11日の東日本大震災以降、不動産市場の環境は一変。被災地だけでなく東京圏でも取引が激減、地価復調の動きが断ち切られた形。先行きも電力不足などによる経済への悪影響が懸念されており、商業地を中心に下落傾向が再び強まる可能性が指摘されている。

 震災後の取引減少は、東京都心部で顕著だ。マーケティング会社「リーシング・マネジメント・コンサルティング」(東京)が東京23区の賃貸不動産を主に扱う仲介店290店を対象に5~6月に行ったアンケートでは、震災後、本来繁忙期の3月の客足が「例年に比べて減少した」との回答が87%にのぼった。

 特に、浜松町などを営業地域とする港区沿岸部は4~5月も「減少した」が60%と高止まりしたままで、取引低迷に歯止めがかかっていない。近年、高層マンションが林立する人気エリアだったが、震災後に液状化問題への不安が広がったことや、停電時のエレベーター停止問題が逆風となった。

 取引低迷は、大きな地価下落圧力となっている。日本不動産研究所が半年に1回、全国約2000地点を対象に調査する「市街地価格指数」によると、関東地方は前回調査(昨年9月末)までは3回連続で宅地・商業地を含む全用途平均で下落率が縮小していた。しかし、直近(今年3月末)の調査では下落率が1.4%と横ばいとなり、地価復調傾向がストップした。同研究所の高岡英生鑑定役は「震災がなければ価格が上昇に転じてもおかしくない地点もあった。下落率縮小の流れが、震災でいったん途切れた」と分析する。

 一方、市場の先行きにも震災と福島第1原発事故が暗い影を落とす。ニッセイ基礎研究所が4月、不動産分野の実務家ら1051人に行ったアンケートによると、不動産市場で重視するリスクについて「電力不足・停電」が37.5%、「原発・放射能汚染」が28.4%にのぼった。また、日本不動産研究所は東京や大阪など6大都市について、最高価格地と商業地で半年後、地価の下落率が拡大すると予測する。みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは「震災から日本経済が立ち直るカギは電力供給の安定と物流拠点の整備。対応が遅れれば製造拠点の海外流出などで地価の長期下落を招きかねない」と指摘する。【三島健二】

 ◇路線価◇
 相続税や贈与税額の指標となる、主要道路に面した土地1平方メートル当たりの1月1日時点の評価額。国土交通省が3月に公表する公示地価を基にするが、12月末までの相続や贈与による土地取得に適用されるため、年末までに土地価格が下落した場合を想定し、納税者に不公平が生じないようあらかじめ低めに設定され、公示地価の8割を目安とする。その上で、売買実例などを考慮して国税庁が算出する。

毎日新聞 2011年7月1日 22時25分(最終更新 7月1日 23時19分)
  1. 2011/07/25(月) 22:48:20|
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福島原発:銀行の極めて愚かな決断(2)

だいぶ前に「福島原発:銀行の極めて愚かな決断」という記事を書いたが、予想通りの展開になっている。貯金を沢山している人は、こういった大銀行からお金を引き上げたほうがいいだろう。

オススメは前にも書いたが、地元の信用金庫などである。

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ついに東電“融資”から逃げ始めた最初の銀行とはどこか?
2011.07.24 07:00


 ようやく国会審議がスタートした原子力損害賠償支援機構法案だが、現時点ではその成立の見通しがほとんど立っていないのが実情だ。東電と並んで、その審議の行方を固唾を呑んで見守っているのが、他ならぬ東電の取引銀行団だ。ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
 * * *
「もし廃案ということにでもなったら、銀行の東電に対する債務者区分は、現状の『正常先』から『要注意先』に落とさざるを得なくなる。そうなった時点で東電はアウトだろう」(東電の主力取引銀行幹部)
 現状の東電の経営状態を考えると、いまだに「正常先」に区分されていること自体驚きだが、「一口に正常先といっても、その中で細分化されている。東電の場合は、要注意先一歩手前の正常先だ」(前出の銀行幹部)とのこと。
 つまり、東電はいつ要注意先に転落してもおかしくない状況にあると言えよう。
「もし仮に要注意先に転落ということになったら、新規融資に応じられないことは言うまでもないが、既存融資分のロールオーバー(借り換え)にも応じられなくなる」(メガバンク役員)
 その資金繰りに不安を抱える東電は、これまで全取引金融機関に対して融資のロールオーバーを強く要請、金融機関サイドも積極的にこれに応じてきた。しかしここへきて、金融機関サイドの融資対応に異変が生じつつあるというのだ。
「6月末に主力取引行の一角を占める三菱東京UFJ銀行からの融資の一部が返済期日を迎えたのです。これまでだったら期間6か月の借り換えに応じてくれたのですが、今回に限っては期間1か月という条件になってしまいました」(東電関係者)
 こうした三菱東京UFJ銀行の動きは、何を意味するのだろうか?
「三菱東京UFJとしては、他金融機関が借り換えに対してどのような動きをしてくるのか、その辺りを見極めたいということなのでしょう」(他の大手銀行役員)
 だとするならば、取引銀行サイドも東電に対して徐々にではあるが確実に腰が引け始めたと言っていい。
 こうした状況を考えても、前述の法案審議の行方には要注目だ。
※SAPIO 2011年8月3日号
  1. 2011/07/24(日) 20:06:23|
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大阪大学での講演会:「頼れる仲間、プルト君」と「原子力ヘラヘラ笑い」

http://ameblo.jp/anmintei/entry-10954999622.html が無事に終了。非常に充実した研究会と懇親会でした。



昨日の阪大豊中での下田正教授の講演で、上記のプルト君を見せていただいた。まさしく、「洗脳」というにふさわしい。例の、大橋弘忠教授がこのビデオと同じことを言っていた

下田教授が強調しておられたのは、「安全神話」を繰り返し繰り返し繰り返しやっているうちに、原子力をやっている人々自身が、原子力を安全だと確信していることだという。自分でついた嘘を、自分で信じてしまった。

懇親会で、原子力関係の部局に紛れ込んでしまった外部の人と議論していて、彼らが如何に思考停止に陥っているかを確認した。それは、本当に想像を絶するレベルである。何よりも、原子力の全体を理解しないように全力を挙げている。おそらく、全体について考えると、「反原発」にならざるを得ないので、思考停止の練習をしているのである。

それで、自分のごく狭い領域以外は、政府や電力会社の宣伝をそのまま受け入れて、そのまましゃべる。彼らが、こうした話になると、一様に、ヘラヘラ笑いながらしゃべるのは、自分でもおかしいことはわかっていて、それでも、受け入れないと立場をうしないので、「エヘヘ、そこを聞くのは、ヤボというものですぜ、旦那。」という気分なのだと考えられる。

下田教授は昨日以下のビデオを見せて下さった。寺坂信昭は例によって東京大学の出身だ。経済学部だが。2分過ぎたところでヘラヘラ笑っている。アナウンスは「余裕の笑み」と見当違いのことを言っているが、これは

「原子力名物・ヘラヘラ笑い」

なのだ。

  1. 2011/07/24(日) 10:53:43|
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『東電OL殺人事件』の著者・佐野眞一氏のコメント

以下のような記事をツイッターで知った。

=============
隠蔽体質の最たるものは泰子が夜の商売をしていることを、東電の連中がみんな知っていたことだよ。それでいて社員が身体を売っているなんて認めるわけにいかないから処分するでもなく、ロクに寝てないから会議中にウトウトする泰子を、同僚はみんなでバカにして笑っていた。どれだけ陰険な会社かわかるだろ。
=============

というのが強烈である。私は東京電力ではなく住友銀行で二年半ほど働いていたのだが、もし、そういうことがあったとしたら、同じような感じだっただろう、と想像がつく。銀行というところはおカタイところなのだが、後で知ったら、オフィス不倫だとかそういうのがワンサカあったのだ。

私の直接知っているところでは、既婚男性と窓口の女性とが恋仲になって、男性が離婚して、女性が退職して後に結婚した。これなどは、別に隠すような話とも思えないのだが、完全秘密であった。あるいは、既婚女性が新人男性社員を誘惑してメロメロにしてしまい、その男性が女性の両親に電話して結婚させて欲しい、と言ったものだから、女性は別の店に転勤になるということもあった。あるいは、ハイミスの美人女性を支店長が愛人にしていた、という話もある。これらは全て、退職してから聞いた。

こういうことは、まあ、人間というものはアホだから、常にあるのだろうが、とにかく、表に出てこないのである。しかし、実は、みんな(私みたいな空気よめない君を除くと)知っているのである。みんな知っているのに知らないフリをして表に出さないのである。実にヘンチクリンな世界であった。大企業とか官庁とか大学とかは、だいたい、そういう感じである。

そうやってバブルが起きて崩壊したし、原発ができて爆発したのである。

====================
『東電OL殺人事件』著者 表題の“東電”外すよう工作された
2011.06.25 07:00

 ノンフィクション作家・佐野眞一氏が東日本大震災のルポルタージュ『津波と原発』を上梓した。数多の被災地や事故現場を取材してきた佐野氏が、東北を歩くなかで感じたこと、そして東電の隠蔽体質について語った。
 * * *
 実は震災を取材するなかで、特に福島を歩く俺の脳裏から離れなかったのが、かつて『東電OL殺人事件』(2000年)に書いた渡辺泰子のことだった。慶応から東電に入り、通産大臣の渡辺美智雄ら政界との連絡役も務めた泰子は、娼婦として街角に立つ夜の顔を持ち、そして殺された。
 当時、俺はせめて表題から“東電”の二文字を外させようとする広報担当者からやけに豪奢な鯛釣り旅行に誘われたり、慇懃で狡猾な懐柔工作の標的になったから、その隠蔽体質はイヤになるほど肌で痛感しているけどね。
 隠蔽体質の最たるものは泰子が夜の商売をしていることを、東電の連中がみんな知っていたことだよ。それでいて社員が身体を売っているなんて認めるわけにいかないから処分するでもなく、ロクに寝てないから会議中にウトウトする泰子を、同僚はみんなでバカにして笑っていた。どれだけ陰険な会社かわかるだろ。
 つまり今回露呈した東電の隠蔽体質は昨日今日始まった話じゃない。底意地が悪くてどこか他人事な無責任体質の化けの皮が、多少剥がれたってだけなんだ。
※週刊ポスト2011年7月1日号
  1. 2011/07/22(金) 11:01:22|
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東電OL殺人事件の冤罪

この事件が起きたとき、私はイギリスにいたので全然知らなかった。数年経って、無罪判決が出たときに、はじめて事件の内容を知って非常に驚いた。

被害者は、父親が東大⇒東電、母親が有名な女子大出身という典型的エリート家族で、本人も慶応大学経済学部⇒東電の39歳の女性であり、拒食症で痩せほそった肉体で1日4人以上をノルマとして毎晩売春してそれを克明に記録し、終電で帰宅するという生活をしていて殺された、というのであるから。その上、家族(母親と妹)や、東電の社員が知っていた、というのである。しかも犯人とされたネパール人は、冤罪の可能性が高いというのであるから、十重二十重の闇である。

そのあと、まったく意識から消えていたので、下の記事で、逆転有罪になっていたことに驚いた上で、更に別の人物がいた証拠まで出てきて驚いた。まことに、驚くことの多い事件である。

この記事が出て思い出したのだが、

「東大」
「東電」
「冤罪」

という三題噺は、ちょうど今回の原発について私がブログで書いてきたことと被っている。おそらくこれは偶然ではなかろう。これが日本社会の中枢部分の核心なのであり、その暗部が、このあわれな女性を通じて噴出したのが、この殺人事件だったのであろう。

ちなみに、拒食症と売春癖とは共に、何らかの虐待被害と関連しているケースが多いと私は認識している。この女性がこのような事態に至った社会的・家族的背景の解明は、日本社会が、今回の事故を乗り越える上でも、意義が大きいと私は感じる。

東京電力という組織の周辺には、「対社会的には、それなりに機能していて、表面的には内情が分からない」タイプの「機能不全家庭」が渦巻いていて、それが組織のこれほどの機能不全と相互強化している、と私は推測するのである。この事件の遺族や関係者が、そのような勇気を持ってくだされば、ありがたいのだが。。。。

尚、赤城高原ホスピタルというところのHPに、摂食障害について以下のように書かれている。
===============
背景としての機能不全家庭-トラウマ ] 

摂食障害患者が、機能不全家庭の女子に多く発症することは経験的事実です。「機能不全」とはいっても、対社会的には、それなりに機能していて、表面的には内情が分からない場合も少なくありません。

 単に機能不全というばかりではなくて、中等度以上の摂食障害患者は、性的被害を受けていることが少なくありません。時には、これが発病契機や原因的要因になっています。幼児期の性虐待のほか、レイプ被害も多く、時には学校の先生や、治療者、カウンセラーからの性的被害もあります。このことは、男性摂食障害者についてもあてはまります。摂食障害と性的被害の関係を否定する専門家もいるようです。軽症患者では両者の関係が必ずしも強くないこと、性的被害が自由に発言できるような治療環境(情報量、集団療法、自助グループなど)かどうか、などの要因が関係していると思います。
 また摂食障害者は、家庭環境に加えて、学校環境からもストレスを受けていることがあります。たとえば、いじめ、受験競争、海外でのストレス体験などです。
===============

それから売春をする人には性依存症が多く、それもまた、性的虐待が原因になっている場合が多い。たとえば、週刊誌だが、週刊ポストで和田秀樹氏が次のように述べている。

===============
 単に「性的に放縦な人間」と見られることも少なくない「セックス依存症」だが、ギャンブルやアルコール、薬物など他の依存症と同じく、自らの空虚感を強迫観念に基づく性的行為でしか埋められないという非常に厄介な精神疾患なのである。精神科医で国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)の和田秀樹氏がいう。
「セックス依存症に悩む女性たちの多くは、過去の恋愛がトラウマになっていたり、幼い頃に肉親からの愛情に恵まれなかったり、虐待にあっていたりという辛い体験を持っています。彼女たちは“本当に自分が心から愛された経験がない”などと、満たされない思いを感じている場合が多く、セックスの快楽が一時的に恐怖や不安からの避難所となっている。
 そのため、目の前の快楽を我慢しようという欲望を抑える精神のメカニズムがうまく機能していないのです。まず男性には、依存症が本人にとってとても深刻な病気であることをぜひ知ってほしい」
 国内には複数の自助グループがあり、定期的にミーティングが開催されている。しかし、依存症から克服できたと笑顔で脱退する女性は、およそ2割だという。この精神の悩みはメスではどうにもできない。本人の継続的な治療の意志はもとより、パートナーや周囲の理解が不可欠である。
※週刊ポスト2011年5月20日号
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東電OL事件、再審の可能性…別人DNA検出
読売新聞 7月21日(木)3時1分配信

 東京都渋谷区で1997年に起きた東京電力女性社員殺害事件で、強盗殺人罪により無期懲役が確定したネパール国籍の元飲食店員ゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)が裁判のやり直しを求めた再審請求審で、東京高検が、被害者の体から採取された精液などのDNA鑑定を行った結果、精液は同受刑者以外の男性のもので、そのDNA型が殺害現場に残された体毛と一致したことがわかった。

 「(マイナリ受刑者以外の)第三者が被害者と現場の部屋に入ったとは考えがたい」とした確定判決に誤りがあった可能性を示す新たな事実で、再審開始の公算が出てきた。

 この事件でマイナリ受刑者は捜査段階から一貫して犯行を否認。同受刑者が犯人であることを直接示す証拠はなく、検察側は状況証拠を積み上げて起訴した。

 2000年4月の1審・東京地裁判決は「被害者が第三者と現場にいた可能性も否定できない」として無罪としたが、同年12月の2審・東京高裁判決は逆転有罪とし、最高裁で03年11月に確定した。

 マイナリ受刑者は05年3月、東京高裁に再審を請求した。

 同高裁は今年1月、弁護側からの要請を受け、現場から採取された物証についてDNA鑑定の実施を検討するよう検察側に求めた。これを受け、東京高検が精液などのDNA鑑定を専門家に依頼していた。
最終更新:7月21日(木)3時1分
  1. 2011/07/21(木) 11:00:22|
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劣化ウランのぶらぶら病



前にも書いたが、日本に続いてヒバクシャの多い国は、アメリカと旧ソ連だ。なぜなら核兵器を維持管理し、開発するために、国土を汚染し続けているからである。上の映像にある劣化ウランを用いた兵器は、核分裂を用いた兵器に勝るとも劣らぬくらい、悪魔の兵器だと思う。

やられた中東の国々の被害もすさまじいものがあるが、それと同時に兵士として使い捨てにされるアメリカ国民もひどい目にあっている。
  1. 2011/07/20(水) 13:58:12|
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【拡散希望】阪大豊中発:放射性物質大量拡散をどう生きるのか? 7月23日(土) 下田教授の指摘

下田教授は阪大で文系向けに原発を理解するための授業を行っておられる。そのなかの非常に重要な指摘が、原子力用語に関するものである。

原子力に関する特有の言い換え

 <公式表現>
原子炉の高経年化
原子力安全委員会
原子炉安全専門委員会
プルサーマル
MOX燃料
サイクル機構
使用済み燃料
高レベル廃棄物
特定放射性廃棄物最終処分
原子力発電環境整備機構

というのが公式の表現なのだが、これらは実は下記の言葉の隠蔽的な言い換えだと下田教授は指摘する。

<公式表現>        <正しい表現>
原子炉の高経年化     ←  原子炉の老朽化
原子力安全委員会     ← 原子力危険性審査委員会
原子炉安全専門委員会   ← 原子炉危険性専門審査会
プルサーマル       ← プルトニウム燃焼
MOX燃料         ← プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料
サイクル機構       ← 核燃料サイクル機構
使用済み燃料       ← 使用済み核燃料
高レベル廃棄物      ← 高レベル放射性廃棄物
特定放射性廃棄物最終処分 ← 高レベル放射性廃棄物最終処分
原子力発電環境整備機構  ← 高レベル放射性廃棄物最終処分事業者


こういう姑息な言い換えをしておいた上に、連中は、「原子炉の高経年化と老朽化とは違うのです」とか言って、「老朽化」と言う人を、素人扱いして見下す、というようなことまでやるのである。トコトン、精神が腐っている。

このブログでも繰り返し、「名を正す」ということを指摘してきたが、下田教授ははるか以前から、この問題の本質を明らかにしてこられたのである。

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阪大豊中発・放射性物質大量拡散時代をどう生きるのか?知識と知恵を蓄える!

日時:2011年7月23日(土)1時すぎから
場所:大阪大学豊中キャンパス大阪大学会館1階アセンブリー(旧浪花高校のイ号館で、阪大80周年を記念して今年度リニューアルしたホールです)

https://55099zzwd.coop.osaka-u.ac.jp/daigaku-hall/
1時:開場 第一部講演会

講師:下田正(大阪大学大学院理学研究科教授)
講演「核物理屋が解説する原子力発電のしくみと放射線の影響」

対話者:深尾葉子(大阪大学経済学研究科准教授)

質疑応答

3時30分:休憩

4時:第二部ワークショップ

講師:福本敬夫(大阪大学大学院理学研究科助教)
内容:「ガイガーカウンターのしくみと使い方―ガイガーカウンターは何をどうやって測るのか―」


6時:阪大カフェ坂(大阪大学博物館MOU一階)にて懇親会(ビアパーティ)
   会費1500円(事前申し込み要・ globalmanagement@mail.goo.ne.jp まで。簡単な自己紹介とともにお申込みください)

主催:大阪大学経済学研究科深尾研究室・コミュニケーションマネジメント研究会
  1. 2011/07/16(土) 16:30:23|
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福島原発:東電は何を考えているのか?

東電は自分で自分の頚を締めたいらしい。
経産省は支払を命令しないのだろうか?

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福島第1原発:東電が仮払い拒否 幼稚園など「対象外」

 東京電力福島第1原発事故で被害を受けている事業者に対する損害賠償を巡り、東電が幼稚園や老人ホーム、診療所への仮払金の支払いを拒否していることが、毎日新聞の入手した文書などで分かった。支払い対象の事業者を中小企業に限定し「学校法人や社会福祉法人、医療法人は法律上、中小企業に該当しないため」と説明。将来の賠償も「分からない」としており、全被害者への賠償責任を定めた原子力損害賠償法に反した姿勢に厳しい批判が出ている。【清水憲司、松谷譲二】

 東電広報部は毎日新聞の取材に対し「学校法人などにも仮払いする必要性が高いことは十分認識しており、対象範囲の見直しを進めている」と回答した。

 原発から約9キロの福島県浪江町で私立浪江幼稚園を経営する学校法人「大谷(おおや)学園」が、中小企業に1社当たり最高250万円の仮払いが始まったことを知り、6月14日、仮払いを請求した。

 その後、東電・福島補償相談センター(福島市)が同22日付でこの文書を出した。文書には「学校法人は(法律上)財団法人で、中小企業ではないので対象外。(今後の補償も)分からない」と記載されている。

 原賠法は文部科学省の「原子力損害賠償紛争審査会」が損害の範囲を判定する指針を策定すると規定。審査会は4月の1次指針で、救済対象の事業者を「営業被害などを受けた多数の事業者ら」と幅広く定めており、中小企業に限る法的根拠はない。

 毎日新聞の取材では、他に南相馬市の幼稚園を経営する学校法人▽同市で特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人▽富岡町で診療所を経営する医療法人--が仮払いを拒否された。福島県によると、福島第1原発から半径30キロ以内には▽6学校法人▽22医療法人▽15社会福祉法人--がある。

 浪江幼稚園の大谷清子(せいこ)園長は「園児約160人が皆いなくなり収入はゼロなのに人件費などで月100万円の支出がある。仮払金がもらえず、将来も賠償されないのではと思うと不安で眠れない」と訴えている。

毎日新聞 2011年7月16日 2時35分
  1. 2011/07/16(土) 09:14:20|
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【拡散希望】阪大豊中発:放射性物質大量拡散をどう生きるのか? 7月23日(土)

23日に大阪大学で以下のイベントが行われます。

下田先生は、原発がどういうもので、何がおかしいのか、極めて詳細かつ懇切丁寧におしえてくださいます。関西近辺の方は、ぜひ、このブログのオフ会気分でお越しください。私も参加します。終わってからビア・パーティがありあます

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(コミュニケーション・マネジメント研究会)

阪大豊中発:放射性物質大量拡散をどう生きるのか?

3・11の大震災およびそれとともに発生した福島原子力発電所の事故は文字通り未曽有の危機を引き起こし、また現在もその事故の対応および被曝という長い脅威との闘いが現在も多くの人々を苦しめ、人生を変え、精神と身体に影響を与え続けています。こうした中、阪大豊中キャンパスでも、何か市民に開かれたセミナーを発信してゆくことはできないか、と考え、その一連の活動の一環として本セミナーを企画いたしました。

前半は、理学部原子核物理学の下田正教授に、原子力発電所の発電のシステム、放射線とはなにか、生物や身体にどのような影響があるのか、をわかりやすくお教えいただきます。下田先生は、大阪大学共通教育で文系の学生に理学的知識を持ってもらうための講座を行っておられ、その中でも国の原子力政策は、「原子力安全言語」ともいうべき実態と乖離した特殊な業界言語を使用しているために、放射能や原子力といった言葉が正しく用いられないばかりか、原子力技術に従事する当事者の認識をもゆがめてゆく、、、という重要な指摘をしておられます。学内のニュースレターでこの発言を読んだことがあり、いろいろな人に尋ねてようやく下田先生の発言であったことがわかり、お尋ねし、今回のセミナーをお願いすることに。

後半は、ワークショップで、同じく大阪大学理学研究科化学専攻助教の福本敬夫助教に、ガイガーカウンターのしくみと使い方について、講習していただきます。3・11以降、各地で放射線測定の必要性を感じ、自衛的に購入する方も増加していますが、一方ガイガーカウンターは何を、どんなしくみで測っているのか、を知る機会は少なく、やみくもに、数値をみて驚いたり、不安になったりするケースも少なからずあります。長年阪大で放射化学の実験の指導を担ってこられ、3.11以降は、阪大豊中キャンパス内の線量の計測ならびに福島の土壌サンプルの計測などを行っておられる福本先生に、ガイガーカウンターは、何を明らかにしてくれるのか、を実際に現場で測りながら指導していただきます。また、手持ちのガイガーカウンターがある方は、較正済のガイガーカウンターと同じ位置で同じ線源を測ることにより、それぞれのガイガーカウンターの示す値がどのくらいの誤差を持つものかを確認していただくこともできます。

講演およびワークショップは無料です。

また、終了後、阪大坂のカフェ坂にて、ビールを囲んで簡単な懇親会も企画しております。質問の時間もできるだけ、設けたいと思いますので、放射線について関心や危機感をもっているけれど、よくわからない、という方、もっと知りたい、という方どうぞ積極的にご参加ください。なお懇親会は有料で、事前申し込みが必要です。(軽食込で1500円程度。申し込み先はglobalmagagement@mail.goo.ne.jpまで。お名前、所属など簡単な自己紹介文付きでお申込みください)

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阪大豊中発・放射性物質大量拡散時代をどう生きるのか?知識と知恵を蓄える!

日時:2011年7月23日(土)1時すぎから
場所:大阪大学豊中キャンパス大阪大学会館1階アセンブリー(旧浪花高校のイ号館で、阪大80周年を記念して今年度リニューアルしたホールです)

https://55099zzwd.coop.osaka-u.ac.jp/daigaku-hall/
1時:開場 第一部講演会

講師:下田正(大阪大学大学院理学研究科教授)
講演「核物理屋が解説する原子力発電のしくみと放射線の影響」

対話者:深尾葉子(大阪大学経済学研究科准教授)

質疑応答

3時30分:休憩

4時:第二部ワークショップ

講師:福本敬夫(大阪大学大学院理学研究科助教)
内容:「ガイガーカウンターのしくみと使い方―ガイガーカウンターは何をどうやって測るのか―」


6時:阪大カフェ坂(大阪大学博物館MOU一階)にて懇親会(ビアパーティ)
   会費1500円(事前申し込み要・ globalmanagement@mail.goo.ne.jp まで。簡単な自己紹介とともにお申込みください)

主催:大阪大学経済学研究科深尾研究室・コミュニケーションマネジメント研究会
  1. 2011/07/16(土) 08:07:28|
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中曽根康弘の2006年3月の東奥新聞へのインタビュー

中曽根が原子力予算を成立させた経緯を語っている記事がヒットした。

「カリフォルニア州バークレーのローレンス研究所にいた、理化学研究所の嵯峨根遼吉博士と会って相談した」「彼は三原則をぜひ守ってくれ、と言った。一つは、長期的展望に立った国策を確立すること。二つ目は、法律と予算でそれを裏付けること。三つ目は、優秀な学者を集めること。いいかげんな学者が群がって来るが、いい学者を入れないと発展しない-と彼は言っていた。私はいい話を聞いたと思って、それを実行したわけだ」

と言っている。「いいかげんな学者が群がって来るが、いい学者を入れないと発展しない-と彼は言っていた。私はいい話を聞いたと思って、それを実行したわけだ」などと威張っているが、笑止千万である。今日の原子力関係学者の顔を見れば明らかだが、

いいかげんな学者が群がって

いる。とんでもなくいい加減な連中である。

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http://www.toonippo.co.jp/rensai/ren2006/nakasone/index.html

2006年3月19日(日)
■中曽根康弘元首相に聞く

連載INDEX
(上)「むつ」廃船/原船離れ 世界のすう勢

 -一九八三年十二月、中曽根首相(当時)は衆院選の遊説先の青森市で記者会見し、「下北半島は日本有数の原子力基地にしたらいい。原子力船母港、原発、電源開発ATR(新型転換炉)と、新しい型の原子炉をつくる有力な基地になる。下北を日本の原発のメッカにしたら、地元の開発にもなると思う」などと発言したが、どんな背景があったのか。

広大な土地と海

 「原子力は日本のエネルギー、生活力を支える非常に大事な要素になると考えていた。電力一つ取っても石炭・石油から脱却しなければならない時代が来る。中長期の原子力開発計画を頭に描いた場合、日本列島の中で原子力の開発センターになるのは、広大な土地があり、海にも面している下北半島だと考えていたから、そのように話した。大体、そういうふうに展開してきたと思う」

 「原子炉は今後、高速増殖炉の方向に発展していく。核融合も最終目標としてある。それと同時に、再処理の問題が出てきて、再処理から派生する射線科学が生まれ、日本、世界に対する発信地になる。そういう可能性を頭に描いて申し上げた。青森県の皆さんには非常に理解していただき、協力していただいた点は大いに感謝している」

 -電気事業連合会が青森県に再処理工場を含む核燃料サイクル施設の立地を要請するのはメッカ発言の翌年の八四年四月だが、事前に水面下の動きを把握していたのか。

 「もちろん、そうだ。恐らく、原子力の将来を考えている、いろんな事業体が立地問題を考えていたと思う。発電所の立地点は電力需要地との関係もあり、全国に分散しているが、原子力の中心になる再処理事業まで含む中枢センターというのは全国に一カ所程度だ。それはやはり、下北半島だとにらんだし、その通りになったと思う」

 -茨城県東海村に続く第二の原子力センターが必要ということか。

 「東海村は広さに限度がある。東海村は日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)を中心に発展していくべきものであって、実用炉および実用炉から出てくるいろいろなものの処置・研究は東海村だけでは手に負えない。何しろ狭すぎる。そういう点から、実用炉を中心とする次の基地となるのは下北半島だと考えていた」

 -メッカ発言については、青森県関係者からの働き掛けもあったのか。

 「それはない。全然ない。むしろ、あの当時の世論からすると、迷惑な発言だと受け取られる危険性の方が強かったと思う。しかし、安全性については私は確信を持っていた。だから、今後展開していくとみていた。安全性に不安があったら、そんな発言はできない」

地域の理解重要

 -原子力に比較的寛容な土地柄であることも考慮したのか。

 「そうだ。それでも実際問題としては、いろいろな問題で青森県知事の承認を得るのに苦労してきた。地域住民との話し合いによって、施設の安全性を確認してもらうことが推進力になる。科学的に立証された材料を提供しながら説明をし、了解を得ることが大事だ」

 -青森県とのかかわりが深い原子力事業に、原子力船「むつ」がある。「むつ」は放射線漏れトラブルの後、自民党「原子力船を考える会」で廃船論が急激に高まり、自民党科学技術部会は八四年に「開発中断」との結論を出し、国策だと思っていた青森県民を驚かせた。

 「(原子力船にしようと考えていた)砕氷型巡視船『そうや』の実験が必ずしも成功していなかったことが大きい。世界各国の原子力船開発に対する意欲も薄れていた。ソ連が砕氷船を運用していたほかは、潜水艦や航空母艦として導入されていたぐらいだ。費用の問題や、住民の反応を見て各国とも民間用としては手控えてきた。商業用船舶に使われる可能性が世界的に少なくなった。日本も世界的すう勢に従わざるを得なかった」

 -原子力船の誘致による地域振興を願っていた地元関係者には、原子力開発に熱心な中曽根首相(当時)なら廃船論を抑えてくれる、との期待感もあったと思う。

 「軍事用には使われるけれども、一般の商船用には使われない。そういう世界的すう勢を見ていたから。日本は世界的な海運国だから、外国と同じペースで進まないと地位が保てない」

 -下北半島が日本のエネルギー政策に果たしてきた役割をどう評価しているか。

 「日本の原子力発展については一番高い貢献をしてもらっている。今後の原子力開発の将来を見ると、下北半島にはまだ余裕がある。施設立地をお願いする前に、国が責任を持って港湾と高速道路の整備を急ぎ、原子力推進に国として力を入れて取り組むことが大事だと思っている」(聞き手=政経部・福田悟)



2006年3月20日(月)
(下)原子力50年/政治の力で利用に道

 -中曽根氏が、昭和二十八(一九五三)年度予算に突然、修正案という形で原子力関連予算を提出したのは、どういう思いからだったのか。

 「五三年、私は米国ハーバード大学の国際研究セミナーに招待され、終了後に米国の原子力施設を視察した。アイゼンハワー米国大統領の『アトムズ・フォー・ピース』(平和のための原子力)という発言が大いに注目を集めたころで、軍事機密を民間に公開していた。米国では民間の原子力産業会議が発足したことも知り、このままでは日本は遅れてしまうとの危機感を抱いた。そこで、カリフォルニア州バークレーのローレンス研究所にいた、理化学研究所の嵯峨根遼吉博士と会って相談した」

 -博士からは、どんな助言があったのか

 「彼は三原則をぜひ守ってくれ、と言った。一つは、長期的展望に立った国策を確立すること。二つ目は、法律と予算でそれを裏付けること。三つ目は、優秀な学者を集めること。いいかげんな学者が群がって来るが、いい学者を入れないと発展しない-と彼は言っていた。私はいい話を聞いたと思って、それを実行したわけだ」

 -当時の学術界の様子はどうだったのか。

 「日本学術会議の茅誠司会長、伏見康治さん(大阪大学教授)らが原子力研究の承認を得る動議を出しては、ことごとく否決され、動きがとれなかった。そういう状況を見て、政治で壁を破る以外にないと決心した。事前に情報が漏れると反対運動が起きるから、川崎秀次君、桜内義雄君、稲葉修君ら同志にだけ極秘に相談した。私は予算委員会の筆頭理事を務めていたが、党幹部に前日に相談し、予算案が予算委員会を通過する直前に修正案として出した」

党派を超えて

 -修正案提出は各界に衝撃を与え、大騒ぎになったとか。

 「当時、私は改進党に所属していた。予算案を組んでいた自由党は小憎らしいと思っただろうが、反対するわけにもいかない。改進党が賛成しなければ、予算案が通らない状況だったからだ。短時間の仕事だったからうまくいった。成立した原子力関連予算は、原子力平和利用研究費補助金二億三千五百万円とウラニウム資源調査費千五百万円だった」

 -翌五五(昭和三十)年にはジュネーブで第一回原子力平和利用国際会議も開かれた。

 「会議には日本も代表団を送った。工業技術院長の駒形作次博士が団長で、私と自由党の前田正男君、社会党右派の松前重義君、同党左派の志村茂治君の四人が顧問として同行した。議長はインドのバーバー博士。インドの原子力開発がかなり進んでいることが分かったし、世界の原子力情勢も知り、日本も早く取り組まなければいけないと感じた。会議終了後、四人でフランス、ドイツ、イギリス、米国を回って原子力施設を視察したほか、政策を子細に調べて、道中、四人で議論をした。羽田空港に戻る前には日本の原子力政策の要綱を作り上げた」

 「帰国後は、超党派で原子力合同委員会をつくり、私が委員長になり、原子力関連法を制定した。原子力基本法、原子力委員会設置法など八法案を一つの国会で通した。これは超党派で取り組んだ結果だ。与野党とも世界の進運に遅れてはならない、との切迫感があった。それが原子力推進の大きな力になった」

 -原子力基本法の施行から半世紀がたち、国内では五十五基の原発が運転し、電力供給の三割を賄うまでになった。

 「今後もさらに動力炉の改善が進んでいくと思う。プルサーマル(軽水炉でのプルトニウム利用)、高速増殖炉といった技術的進歩に取り組んでいかなければならない。ナトリウム漏れで停止したままの高速増殖炉原型炉『もんじゅ』についても事態を改善して前進させる段階になってきた」

 「米国は原子力開発を一時ストップしていたが最近、ブッシュ政権が日本やフランスに追い付こうとして、再処理まで含めて動きだした。米国では既に百基以上の原子炉が動いているから、追い付くのも早い。ドイツ人は用心深いために遅れているが、フランスはもう十分な発展を遂げ、実績を積んでいる。英国も進んでいる」

地域の理解大事

 -原子力関係者や立地地域に望むことは何か。

 「新型原子炉開発、廃棄物処理、放射線の多目的利用をさらに前進させる段階になってきた。石油が高騰して(資源小国の)日本は原子力開発が一番必要な状況になってきている。米国ですら今、慌てて再開し始めたのだから。原子力推進のためには、やはり(地元住民と)話し合い、理解を得ることが大事な要素だ。分からない分野だから(不安を抱くのも)無理もない。日本の原子力施設は震度6ぐらいでも問題ないような耐震構造にしてあるため、費用はかかるが、それでもやらざるを得ない状況だ」

 -エネルギー政策に関する小泉純一郎首相の発言はあまり聞かない。

 「小泉君は集中主義で、道路公団と郵政の民営化問題から目を離さない。しかし、政治で一番大事なのはエネルギー政策、それと科学技術だ」(聞き手=政経部・福田 悟)
  1. 2011/07/15(金) 15:59:33|
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玄海原発:九州電力のやらせメール例文に学ぶ原子力欺瞞言語

日経新聞で報道された、九電やらせメールの例文が凄い。原子力安全欺瞞言語の簡潔な集大成である。


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「弱者が犠牲に」九電やらせメール、例文も提示
調査報告で明らかに
2011/7/14 18:25 日経新聞

 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡る「やらせメール」問題に関し、九電は経済産業省資源エネルギー庁に14日提出した内部調査報告の中で、同社佐賀支店が意見投稿の事例文を作成し、投稿依頼した取引会社などに示していたことを明らかにした。

 報告で例示された事例文は以下の通り。

 ■将来的には再生可能エネルギーへ転換していくことが望ましいかもしれませんが、現段階においては、安全対策を講じながら原子力発電を運転していくことが必要であると考えます。そのことが九州経済、ひいては日本の経済維持発展に大きく寄与するものと考えます。日本全体のことを考え、九州を含む西日本が元気を出して、生産や経済を回さなければならない中、電力不足は絶対にあってはならないことです。発電所の安全対策を強化し、徹底した監視のもと、早く(九州の)原子力発電を再開すべきと強く要求致します。

 ■電力が不足していては、今までのような文化的生活が営めないですし、夏の「熱中症」も大変に心配であります。犠牲になるのは、弱者である子供や年配者の方であり、そのような事態を防ぐためにも、原子力の運転再開は絶対に必要であると思います。併せて電力会社の方には、万全な安全対策をくれぐれもお願い致します。

 ■太陽光や風力発電を否定するわけではなく、推進することも必要であると考えております。しかし太陽光や風力発電は天候に大きく左右され、利用率が大変に低いと聞いております。また、火力や原子力発電に比べて広大な面積が必要になるなど、現在の技術面・コスト面から考えますと、補助的な電源にはなっても、代替の電源となり得ることは到底無理であると思います。よって、当面は原子力発電に頼らざるを得ないと思います。

 ■科学的データに基づいて、今回の福島原発事故の事象の要因は津波であるとの国からの説明がありました。各電力会社では「緊急安全対策」に加え「シビアアクシデント対策」を実施しているとの新聞報道がありましたが、安全対策については十分に実施されており、発電を再開することについて全く問題はないと思います。国も「発電再開しても問題ない」と示しているにも関わらず、何故発電再開が出来ないのでしょうか。

 ■テレビにて「夏の電力供給力の見通し」の放送があり、電力供給の予備力が約3%しかないとのことでありました。もしも、現在稼働中の火力発電所でのトラブルや、全国的な猛暑などが続いた場合は、電力が不足し最悪の場合は停電が懸念されます。東京電力のお客様は、計画停電の実施により大混乱を招いたと聞いておりますが、そういう事態を招かないためにも、一日も早い原子力発電の再開を強く望んでおります。

 ■トヨタ自動車の豊田章男社長より、電力不足の広がりに対して「日本での物づくりは、限界を超えた」との記者団への発言がありましたが、電力不足が国内産業(生産)の空洞化に益々拍車をかけることが懸念されます。代替電源が直ちに準備できない現状では、原子力発電の再開は不可欠なものであります。
  1. 2011/07/15(金) 15:21:56|
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福島原発:香山リカ氏のブログ(10)

最後に、香山氏はなぜ、あのようなブログを書いてしまったのか、考えたいと思う。

香山氏の当初の考えでは、彼女は「脱原発」であって、その動きを加速させるための議論を書こうとした。ところが、調べる過程で、原発をめぐる知識の体系に魅せられていって、心が動いてしまった。

原子力発電所の爆発という恐るべき事実世界の露呈と、小出裕章という真の仮面ライダーの出現は、このような仮装された人格に、強い衝撃を与えたのであろう。この衝撃を香山氏が正面から受け取っていれば、「大人の世界」を離脱して「事実の世界」と踏み込むスペクタクルが展開するはずであった。

ところが香山氏にはその勇気がなかった。そこで、この心の動きを抑えこむために考え出した答が、

「知的レベルが高く、情報収集に熱心で、いまの世の中の趨勢を注意深く見ている人」、「特に、これまで一般社会にうまく適応できなかった、引きこもりやニートといった人たち」がハマっているような、そういう子どもじみた逃避的感覚なのだ。

と自分に言い聞かせて、そこから離脱する道だったのであろう。このような考えに彼女が至ったのは、

「会社人間としての振る舞いや低俗なオヤジギャグに会話を合わせることに耐えられません。薄汚いごますりや打算、好きでもない商品を売ることに対して、強い欺瞞を感じ」、
「『食っていくためには、嘘もつかなければいけないときもある』大人が発するそんな言い訳めいた言葉に、かえって嫌悪感を強めており」、
「自分がやりたくもないことを、社会をまるでわかっていないような頭の悪い人たちと一緒にやりたくない。劣等感と優越感がない交ぜになったような、一面では純粋な理想主義者」

と描写されるパーソナリティが、まさしく、香山リカ氏本人のそれだからなのだと思う。

香山氏は、そのような傷つきやすい弱い心を押し隠し、

「『自分はどうせ受け入れられない、というのは、自分の思い込みに過ぎない』という思い込み」

の力によって、世間に漕ぎ出して、グイグイと押し進んできた、そういう人物なのではないかと思う。

一連のツイッターで私が、香山氏のことを「愚か」だと言ったのは、いま思えば、彼女が真実と出会いながら、それを奇妙な屁理屈で回避したことを指していたのだ、と思う次第である。これこそ、悲劇である。

(了)
  1. 2011/07/15(金) 12:00:00|
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防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛の「原子力研究の後退で二級国家に」論について

産経新聞に

「原子力研究の後退で二級国家に」

というタイトルで記事が出ていたので、「また馬鹿な事を。。。」と思ったら、ちゃんとした話だった。

つまり、

「原子力は、核兵器に対する牽制であって、発電はおまけ」

ということである。これが原子力の本当の意味だと、佐瀬教授が明確に指摘しているのである。

これは、小出裕章さんや槌田敦さんをはじめとする方々が、口を酸っぱくして言ってきたことである。しかし、私が彼らを受け売りしてそういうことを言うと、「またそんな大げさな」と鼻で笑われ、あるいは「このアカめが!」と言われてレッテル貼りをされるのがオチであったと思う。

しかし、産経新聞「正論」の執筆者で、防衛大学校名誉教授が言うのだから「このアカめが!」とは言えまい。それに書いてあることも、大げさな話ではない。実際、岸信介や佐藤栄作といった、原子力を導入した首相は、明確にそのように発言していたのだから、そもそも間違いなく、そうなのである。今後は大手を振って、産経新聞を引用して言うことが出来るのだから、ありがたい。

原子力発電というのは、準核武装の目的で始まった事業であるが、そういう目的を大っぴらに言うわけにはいかないので、違う目的を持ち出したわけであるが、やっていることは同じである。同じどころか、「もんじゅ」などで出てくるプルトニウムは、完全に原爆級の品質のものであるから、着々と進んでいることになる。ということは、今も間違いなく、本当の目的は「準核武装」に他ならない。佐瀬昌盛防衛大学校名誉教授の下記のコラムは、その点を明確に言語化している。こういう風にハッキリ言ってくれれば、話は早いのである。

では準核武装をする目的は何であろうか。それは核武装国に対抗することである。なんのために対抗するのかというと、核兵器を使わせないためであろう。なぜ核兵器を使ってほしくないのかというと、国土を放射能で汚染され、国民の生命が脅かされるのが嫌だからである。

ところがどうだ。地震が起きたら原発が次々爆発して、国土を汚染し、国民の生命を脅かしてしまった。それも原爆どころではないすさまじい量の放射性核種によって。まったく、ザマはないのである。



それから、上の作品を見れば一目瞭然であるが、アメリカ、ソ連、中国、インド、パキスタンといった核保有国は、自分の国土に原爆を落としまくっているのである。悪影響がないようにやったつもりだったのだが、そうではなくて、すっかり自国を汚染してしまっている。下の映像のように、原爆投下地点に突撃する訓練というような意味のないことのために、多くの兵士を被曝させた。

結局のところ、国土や人民を被曝させない最善の方法は、そんなものから手を引くことである。核兵器を持っていないと、核兵器から身を守れない、あるいは、核兵器や原子力技術を持っていたら、核兵器から身を守れる、というのは幻想である。核兵器などそもそも戦争のための武器として成り立たないのである。

リデル=ハートという20世紀最高の軍事戦略家は、『戦略論』の序文で、核兵器によって起きることは、核戦争ではなく、核混沌(nuclear chaos)だ、と批判した。そして、核兵器で武装した国に正面切って戦争を仕掛ける馬鹿はいないから、今後の戦争は、ゲリラとテロといった、隠蔽された戦争が主となるだろう、と予言した。半世紀以上前の話である。

準核武装していなければ、二級国家になる、などというのは、愚かな幻想である。そもそも、一級国家とか、二級国家という発想が貧困である。大事なことをハッキリ言ってくれて佐瀬教授には感謝するが、ハッキリ言って、この人物の国際政治学や戦略論は、信頼するに値しない。





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防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛 原子力研究の後退で二級国家に
2011.7.14 02:57 産経新聞

 世間中が原発問題で口角泡を飛ばしている。「安全神話」崩壊の今、不思議ではない。「反原発」、「脱原発」、原発と非原発電源の「ベストミックス」、原発技術改良による「路線変更不用」論。その陰で注目を要する現象が出てきた。世間中が「核」の議論を忘れてしまったかに見える。

 「災前」は違った。原発論議は一部にあったが、世間はさほど興味を示さなかった。他面、極東の「核安保」環境を反映して、日本国内の核論議は次第に活発化しつつあった。なぜ、その核論議が止んでしまったのか。

 ◆震災で「核」環境忘れた日本

 大震災、巨大津波、原発事故が極東の「核」環境を変えてしまったからか。否である。3・11は、日本を取り巻く核保有4カ国-米露中および北朝鮮-のここ10年ほどの核政策に変化の兆しすら与えていない。である以上、「災後」日本に核論議が鳴り止んだのは、3・11ショックで日本人自身が極東の「核」環境に対する凝視を止め、問題を忘却し始めたからだ、と解釈される。言うまでもなく、この忘却は日本限りでのものだ。

 大災害に見舞われた日本に多くの国が救援、支援の手を差し伸べてくれた。同盟国・米国の支援は文字通り「格別」だったし、北朝鮮を別にして露中の支援も大きかった。いずれにも感謝しよう。同時に、忘れてはならない事柄がある。被災国、日本への同情や支援と、極東の核保有4カ国の「核」を含む軍事的駆け引きとは別物だという、自明の事実である。

 ◆脱原発は近隣には「鴨の味」

 現代の国際政治はむき出しの弱肉強食の場ではない。が残念ながら、「他家の不幸は鴨の味」の諺を否定しきれるほど穏和でもない。日本が仮に脱原発を目指し、自国の「核」環境も忘却するならば、それは「ご自由に」としつつ、腹の中でほくそ笑む国が日本周辺にあって何の不思議もない。現に3・11後、対日支援の傍ら、周辺海空域で「災前」同様の軍事行動を見せている国が1つならずある。「鴨の味」が漂うからだ。

 3・11後、国際社会にも注目すべき現象が認められる。先進世界の一角に脱原発の道を決めた国々が出てきた。ドイツ、スイス、イタリアがそれで、欧州にはなお追随国が現れるだろう。他方、NPT(核拡散防止条約)に言う5核兵器国(米露英仏中)と、NPTの外で核保有に至ったインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮、さらに核保有途上のイランとは、核保有を続け、追い求める。原発については、北朝鮮は未保有、イスラエルは3・11直前の原発建設計画を以後に急遽(きゅうきょ)、中止したが、核保有国が原発保有を断念するとは、概して考えられない。すると、世界に微妙な2極現象が兆す可能性がほの見える。

 45年ほど昔、日本は今日の欧州の脱原発選択組と「同じボート」に乗っていた。潜在的な「核保有志向国ボート」だ。スウェーデンも含めてこれら先進諸国は科学技術水準、経済力などの点で核開発能力ありとみられ、当時の安全保障環境下で公然たる核武装論さえ展開していた。冷戦下で対立しながらも核拡散は嫌った米英とソ連が主導し、仏中2カ国も同調して、NPTは1970年春に発効した。が、前記「ボート」同船組は条約参加条件として、「奪い得ない」原子力平和利用権と、「核」環境が「自国の至高の利益を危うくしている」と判断する場合の条約離脱権を5核兵器国に認めさせ、核兵器国に「誠実」な核軍縮交渉を約束させた。

 ◆原発だけでなく核をも論じよ

 20年前に冷戦が終わった欧州ではドイツ以下、前記諸国の核保有志向は消えている。3・11後、これら諸国は脱原発を選択、原子力平和利用の大宗たる分野からも撤退する。軍事、平和利用の両面での「脱原子力」だ。ただし、昨秋のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議が「核兵器が存在する限りNATOは核同盟であり続ける」と宣言、脱原発選択国がいずれも原発大国フランスからの電力輸入を自明視していることが物語るように、原発「下車」組は「核も原発も堅持」の同盟国への依存は止めない。電力、安全保障の両面で依存・被依存関係は今後、深まる可能性さえある。

 日本は欧州の脱原発選択国の後を追うべきか。極東の「核」環境は欧州とは余りにも違うのに、核問題を忘却して「鴨の味」を四囲の国々に提供し続けるべきか。両問は辿(たど)ると同根で、NPTに行き着く。非核兵器国は原子力平和利用権を軍事利用権断念の下に確保したが、後者の断念は条約離脱権で分かる通り絶対的、最終的ではなかった。そう想起すべきだ。

 原子力の軍事利用と平和利用は根っこで繋がっており、いずれを断念しても結局、それはその国の原子力研究の後退、衰退を、つまり二級国家への転落をもたらす。日本は、NPTで確保した平和利用権と、背に腹代えられぬ場合のNPT離脱権とを堅持し、かつ内外に向けてその旨を表明してしかるべきである。「他家の不幸は鴨の味」心理を抑止するために。(させ まさもり)
  1. 2011/07/14(木) 21:39:23|
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資源エネルギー庁のネット統制事業の入札

ツイッターで知ったのだが、資源エネルギー庁が以下のような事業を競争入札に掛けている。

これはまさしく言論統制である。こんなものに税金を使うとは、言語道断である。

「速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導く」

というのが恐ろしく気持ちが悪い。信じられない。

=====================

1.件名
平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)

2.事業目的
ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する。

3.事業内容

① ツイッター、ブログなどインターネット上の原子力や放射線等に関する情報を常時モニタリングし、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切な情報を調査・分析すること。モニタリングの対象とする情報媒体及びモニタリングの方法については、具体的な提案をすること。

② 上記①のモニタリングの結果、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切な情報及び当庁から指示する情報に対して、速やかに正確な情報を伝えるためにQ&A集作成し、資源エネルギー庁ホームページやツイッター等に掲載し、当庁に報告する。

③ Q&A集の作成に際して、必要に応じて、原子力関係の専門家や技術者等の専門的知見を有する者(有識者)からアドバイス等を受けること。また、原子力関係の専門家や有識者からアドバイス等を受ける場合には、それらの者について具体的な提案をすること。

④ 事業開始から1ヶ月程度で30問以上、事業終了時までには100問以上のQ&A集を作成すること。

【提案事項】
① モニタリングの対象とする情報媒体(ツイッターは必須)
② モニタリングの具体的な方法と体制
③ Q&A集を作成後、速やかに周知するための具体的な方法
④ 想定される専門家や有識者
⑤ これらを活用した新規提案

【留意事項】
・受託者は、不正確な情報又は不適切と思われる情報媒体や抽出するキーワードについては、資源エネルギー庁担当者と十分に調整すること。
・Q&A集の作成にあたっては、十分な調査・分析を行い、その結果を反映すること。また、Q&A集の最終的な問数については、実態に合わせて資源エネルギー庁担当官と調整すること。
・原則として、正確な情報提供は即座に行うとともに、その結果については、翌営業日以内に資源エネルギー庁担当者に報告すること。
・常時モニタリングするために十分な人員を確保すること。
  1. 2011/07/14(木) 21:27:29|
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福島原発:香山リカ氏のブログ(9)

==============
 実は、まわりの人たちからも同様の話――つまり、あの事故以来、いつもの自分ではいられなくなったということ――をいくつも聞きました。 
==============

これは何を意味するのであろうか。私の考えはこうだ。彼女を含め、香山氏のまわりの人たちは、「大人の世界」に住んでいる。この世界では、本質的な問を避け、それを隠蔽することで、妥協しうる範囲を見付け出し、なんとか凌いでいくことが、生きる常道とされる。ところが原発事故とその後の恐るべき事態は、その大人の世界が大きな亀裂の上にあり、いつ崩壊してもおかしくない状態であることを露呈したのである。

ところがこの発見を香山氏は次のように回避する。

==============
 このあたりはうまく説明する言葉をまだ見つけられずにいるのですが、どうもそれは、現実としての原発事故や脱原発とはまた位相の違う世界で起きている“心の問題”のようにも思われました。
 これは、いったい何なのか。原発問題の恐怖や不安といった現実の問題を超えて存在する、「原発問題がもたらす心の変化」とは何なのか。
==============

ここが決定的である。大人の世界が生み出すハラスメントに満身創痍になって精神安定剤依存で生きる、という状態が「現実の世界」であり、物理的にもコミュニケーション的にも危険性を隠蔽して膨大な電気を起こす原発は、その世界の「王」である。その「王」が爆発して吹き飛んでしまったのを見ることで、この世界の真実を覆っていた隠蔽そのものがが吹き飛んでしまった。

そこに露呈したのは、小出さんら、真実の探求者が住まう「事実の世界」である。香山氏の言葉で言えば、「ファンタジーの世界」であり、あるいは「子供の世界」と言ってもいいだろう。この世界に直面した香山氏は、非常なとまどいを覚えたのである。そして、直ちに、露呈した事実を自分自身の目から背けるための、防衛機構が作動を開始した。そのために香山氏は、この「事実の世界」によって動かされた自分の心は、大人たちにとっての「現実の世界」とは位相の違う「心の問題」に過ぎないのだ、というすり替えに逃避したのである。

「原発問題を含む領域の広さにひとつの小宇宙を感じ」て、「当初の使命感を超えて関心を示している自分の心理は何なのか」という極めて正当な問から出発した香山氏は、その直後に、

「原発問題がもたらす心の変化」とは何なのか

という偽問題を生み出して、当初の問題意識から逃げ出してしまったのである。逃げ出した上で香山氏は次のように言う。

===============
 私はその問題についても、考えてみようと思いました。それは、自分が脱原発を訴えたりアクションを起こしたりする際にも、自分のこころに潜む問題について認識しておく必要があると思ったからです。現実の問題としての原発問題を把握する上で、「原発問題がもたらした心の変化」を意識していないと、誤った判断を招きかねないと思いました。
===============

これはつまり、この「真実の世界」についての探求を心のおもむくままにしてしまうと、香山氏自身が自らの外殻として構成した虚構の人格が崩壊し、自分の真の姿が露呈してしまうことを恐れているのである。それが「誤った判断を招きかねない」という意味のない危惧の本当の意味である。

===============
 とはいえ、まだ問題の本質が自分の中でも十分に分析できておらず、冒頭にお伝えしたように、言葉足らずになってしまったことは否めません。
===============

香山氏はこのように言うが、これは「言葉足らず」という問題ではない。言葉が真実から滑り出てしまい、虚偽の奈落へと落ちていってしまったのである。

===============
 とりわけ、原発事故は私たちの命や未来にかかわる問題をはらんでいます。そのようなテーマにおいて、誤解を招きかねない発言をしたことは、本当に申しわけなく思っています。
===============

これは、仮定の条件が付いていない謝罪であるが、「誤解を招きかねない発言をしたこと」で謝罪する必要などないように私は感じる。

===============
 今後も、この連載内で「私たちの心にとっての原発とは」というテーマで「ビジネスパーソン」「政治家」「推進派学者」「若い女性」など設定を変えながら定期的に続けていくつもりです。私なりにさらに深く考察し、誤解のないような表現で執筆していこうと思います。

 そのときは、読者のみなさまにも納得していただけるよう、またこの認識が脱原発アクションにつながるものになるよう、心して書かせていただきます。
===============

これも、「立場」⇒「議論の内容」という順番でモノを考えている。つまり彼女は、「脱原発アクションに繋がる議論をしたつもりだったのに、逆効果になった」ことを謝っているのである。しかしそれは何か変ではないだろうか。発言がどういう効果を持つかは、そもそもわからないものなのであるから、人間の成しうる誠意とは、自分自身の感覚とズレた言葉を使わない、ということに限定されるのであって、それがどういう結果になったかは、責任のとりようがない。

===============
 よろしければ今後ともお読みいただければ幸いです。皆さまのさまざまなご意見にも、できるかぎりおこたえさせていただきたいと考えております。

 どうぞよろしくお願いいたします。
===============

もしも香山氏が、私のこの議論にも応えていただければ、ありがたいと思う。

尚、この一連のコラムが、香山氏のお仕事の価値を否定する内容に受け取られるものだったとしたら、香山氏ならびに読者のみなさまには本当に申し訳なく、心からおわびいたします。

これで香山氏は必ずお許しくださるに違いない。

(つづく)
  1. 2011/07/14(木) 12:37:13|
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福島原発:香山リカ氏のブログ(8)

さて、謝らないでいて、謝ったフリをしたあとに香山氏は、「とても個人的」という興味ふかい話に移る。この部分が、このブログのハイライトである。


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 とても個人的な話になるので、うまく補足になるか、さらに批判を招くものか、自信がないのですが、よろしければお読みください。
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はい。

=============
 原発事故が発生して以来、放射線医学の専門家でもない私ですが、なんとか精神医学という自分の専門性を生かして、原発の危険性や脱原発の必要性を訴えることができないかと、ずっと考えてきました。
=============

ここが私にはよくわからないところである。私は、原子力のな~んの専門家でもないが、別にこの問題に対して発言することに躊躇はしなかった。もちろん、私なりに色々調べて考え、それ以上に自分を誤魔化していないかどうかはいつも気を付けているが、それ以外には何も制約はない。

「なんとか精神医学という自分の専門性を生かして、原発の危険性や脱原発の必要性を訴えることができないか」

というスタンスは、

(1)「脱原発」 vs 「原発推進」 というようにまず「立場」を設定する。
(2)各々の立場の人の意見を色々聞いて、どれが一番自分のキャラにピッタリか考える。
(3)「立場」を決めたら、その立場にふさわしい意見の人には賛成し、反対の立場の意見には反対する。

という思考パターンに沿って考えると、その先に、

(4)自分の「専門性」を活かして立場に沿った発言をする。

というものがあっても良さそうである。どうも、こういうふうに物事を考えているようである。

===========
 しかし、そう考えて原発について情報を集めたり基礎的な知識を学んだりしようとすればするほど、自分の関心が本質からずれて行ってしまうのを感じていました。つまり、原発問題を純粋に考えていたところ、この原発問題を含む領域の広さにひとつの小宇宙を感じたひとりは、他ならぬ私だったのです。この当初の使命感を超えて関心を示している自分の心理は何なのか。これが出発点でした。
===========

この「自分の関心が本質からずれて行く」というところがポイントである。彼女が「本質」と言おうとしているのは、上の(4)である。つまり、自分の専門に立脚し、立場に応じた発言をするのが、本質なのである。

ところが原発について勉強すると、この(4)から関心がずれていくのである。どこにズレていくのかというと、ここを切掛とした、物理学をはじめとする諸学の絡みあう複雑な知識の体系を学ぶ悦びに目覚めてしまう、というこなのだと思う。これを香山氏は、

「原発問題を含む領域の広さにひとつの小宇宙を感じた」

と表現している。美しい表現だと思う。これが学問というもののもつ、神秘であり、歓喜であり、悦楽である。これこそが、人を、真理の探求に導くものなのである。それゆえ、

「この当初の使命感を超えて関心を示している自分の心理は何なのか。これが出発点でした。」

という香山氏の問はすばらしい。そしてその答えは明らかである。

「それは真理を探求する、という人間の崇高な衝動である。」

私はそう答えたい。

ところが話はここから恐るべき展開を見せる。

(つづく)
  1. 2011/07/13(水) 12:16:29|
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福島原発:香山リカ氏のブログ(7)

さて、漸く、準備が整った。
これで本題に入ることが出来る。最初に書いたが、私がショックを受けたのは、このコラムに対してネット上で激しい反発が生じ、それに対して香山氏が書いた

前回のコラムについて
――お詫びと補足


という文書の方なのである。これは、本文以上に衝撃的な記事である。以下で、逐一、分析していきたい。

===========
 前回のコラムについて多くの方から批判的なご意見をいただき、言いたかったことの真意がうまく伝わっていなかったことに気づきました。私の言葉足らずが招いたことです。
===========

ここで香山氏は
(1)真意が伝わっていない⇒誤解に基づいて批判された。
(2)それは言葉足らずが原因である⇒私は間違ったことは言っていない。
と主張している。しかし既に見たように、香山氏は間違ったことを言っており、誤解されてはいない。

===========
 これまでいくつかの雑誌や集会で表明してきたように、私自身は脱原発の立場にあり、小出裕章氏の著作、ご発言をほぼ全面的に信頼し、これまでのご活動にも深い尊敬の念を抱いています。
===========

これが本当に驚きである。小出さんに対して「深い尊敬の念」を抱きつつ、

小出裕章=「ネオむぎ茶」

という図式を浮かび上がらせるような文章を書くことが出来るというのは、どういう精神構造なのであろうか。

私が気になるのは、「私自身は脱原発の立場」にある、といっている点である。これはよく使われる言い回しではあるのだが、「脱原発」というのは、そもそも立場なのだろうか?

「脱原発」と言っている人には色々な考えの人がいる。私の考えと、小出さんの考えは違うだろうし、香山氏とも全く違っている。それゆえ、「立場=観点」と解釈するなら、それぞれ立場は違うわけである。しかし、

「原発をどうすべきだと考えますか?」

と聞かれれば、「脱原発」と同じ返事をする、ということなのである。どうしてこういう発言を香山氏がするのか、と考えると、以下のような思考パターンが想像される。

(1)「脱原発」 vs 「原発推進」 というようにまず「立場」を設定する。
(2)各々の立場の人の意見を色々聞いて、どれが一番自分のキャラにピッタリか考える。
(3)「立場」を決めたら、その立場にふさわしい意見の人には賛成し、反対の立場の意見には反対する。

こういう思考パターンに沿っている、という仮定のもとに、以下の主張を斟酌してみよう。


===========
前回のコラムが、小出氏のお仕事の価値を否定する内容に受け取られるものだったとしたら、小出氏ならびに読者のみなさまには本当に申し訳なく思います。心からおわびいたします。
===========

これも昨今、多用される言い回しなのだが、これで香山氏は「お詫び」のつもりである。しかし、これはお詫びしていないのである。なぜなら、

「もしも・・・だったのだとしたら、申し訳なく思います。(その場合には)こころからおわびします。」

という文章は、

「もしも命題Aが真であるならば、私は謝罪する。」

という意味である。これはつまり、対偶をとると、

「もしも私が謝罪するとすれば、それは命題Aが真である場合、その場合に限られる。」

ということである。それゆえ、このような発言をしたあとに、

「命題Aは真である。」

という言明があってはじめて、謝罪したことになる。しかるに、香山氏の文章には、どこにもこの発言がない。そしてすぐに、

==========
ここからは謝罪からは少し離れ、私が伝えたかったことを補足させていただきます。
==========

と言って、「謝罪からは少し離れ」てしまう。それゆえ、香山氏は、誰にも謝らないで、謝ったフリだけして逃げてしまっている。

しかも香山氏の記事が問題であったのは、小出さんに対する侮辱である以上に、ネット上で原発問題について論議していた人々に対する、最上級の侮辱であった、という点にある。この点に対する言及はまったくない。

(つづく)
  1. 2011/07/12(火) 11:14:46|
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玄海原発:「プルトニウムは飲んでも大丈夫」で有名な大橋弘忠教授からのお返事



この一連のビデオは見るのがつらい。見るたびに私は、吐き気がして、体調がおかしくなる。そのくらい、大橋弘忠教授の詭弁はすさまじく、他人を見下して馬鹿にする態度がひどい。このひどい発言のおかげで、東大の名声は大きく傷ついている。

そこで私はこのままでは東京大学の権威が失われてしまうと危惧して、大橋弘忠教授に以下のようなメールした。メールアドレスは別に大学内部の人間だから知っているのではなく、彼の所属する部局の HP に出ている。http://www.q.t.u-tokyo.ac.jp/lab/ohashi.html の右上の「メール」というところである。

================
東洋文化研究所の安冨と申します。

今回の福島原発の事故に関してHPを調べていて、:平成17年12月25日に行われた玄海原子力発電所3号機プルサーマル計画に関する「プルサーマル公開討論会」の映像

http://www.saga-genshiryoku.jp/plu/plu-koukai/

を拝見し、大橋さんのご発言を拝聴いたしました。そのなかで、

「今は格納容器破損が起きる確率は極めて小さい。1億年に1回というような評価がされているのに、それが起きると考えたらというような評価がされています。」

というご発言をなさり、対話者に対して非常に失礼な言い方をなさっておられるのを見て、驚愕いたしました。
今回の福島の事故では、格納容器も圧力容器も破損しておりますが、この事態を受けて、
当時のこのご発言をどのように正当化されるのか、お考えをお聞きしたく存じます。
「想定外」という説明はどうぞご勘弁ください。

先日、ある学会に出ていて、東京大学の工学部の名誉教授の先生が、

「東大の原子力関係の体質が改められない限り、問題は解決しない」

と発言しておられました。
会場の聴衆の方々も、マスメディアに登場する東大関係者に対して強い不信の念をいだいておられ、
この発言に大きく賛同しておられました。

大橋さんの発言が、ネットで現在も配信されていることで、
東京大学に対する信頼が大きく傷つけられております。たとえば、

http://onibi.cocolog-nifty.com/alain_leroy_/2011/04/post-0346.html

などのコメントがなされています。
このような事態に対して、説明責任を果たして頂きたく存じます。
=================

しかし、返事はなかった。そこで、

================
先ほど、ツイッターで 「東大 大橋」と入れたら、今も以下のように膨大につぶやかれております。
あなたの発言によって、東京大学のブランドが大きく傷ついています。
なにとぞ、正々堂々と反論するなり、反省するなり、
逃げ隠れしないで意見を言っていただけますよう、お願い申し上げます。

「風評被害」とおっしゃるかもしれませんが、
名声というものは風評でできております。
東京大学が世間から尊敬されているのは、風評のおかげです。

なにとぞこの事態を誠実な行動によって取り返し、
東京大学の名声を守ることに貢献していただきたく、お願い申し上げます。
================

というメールを送った。しかしまたまた返事はなかった。そこでもう一度、

================
いつまでたっても、あなたの名前をツイッターで検索すると、膨大につぶやかれています。
大学に口止めされていると言って、週刊現代の取材を逃れていましたが、あれも嘘ですよね?

いい加減にそういう態度を改めて、紳士として行動なさるよう、お願いします。
東大の名前がどれほどあなたの愚行によって傷つけられていることか。
================

とメールした。そしたらついに、お返事を頂いた。

まず、週刊現代の「大学に口止めされている」問題であるが、私の推測が間違っている、という趣旨のお返事であった。なんと、東京大学大学院工学系研究科では、4月以降、メディア取材は同研究科の広報を通すように、と指示が出ているのであって、嘘なんかついていない、というのである。

これは驚くべき事態である。東大工学部は、教員に、勝手にメディアの取材を受けて、自分の意見を表明してはならぬ、という「箝口令」が公式に出ている、というのであるから。会社なんかではそういうこともあるだろうが、国立大学のような、国民の税金によって研究を行い、その研究成果に関する自分の見解を公に表明することが主たる業務である機関で、このような「箝口令」を出すことは、道徳に反するのではないだろうか。大学当局は調査すべきであると考える。

それからツイッターについてであるが、彼は気にしないで放っている、ということである。ツイッターなどというもは、議論に価するような内容ではない、とお考えだそうである。

しかし私がメールで指摘したように、彼の名誉ばかりではなく、東大の名誉が大きく傷つけられているのである。紳士として、決然とした態度を公にして、謝罪するなり、反論するなりしていただきたいものである。私としては、内容うんぬん以前に、小出さんはじめ討論者のみなさんに、失礼な物言いをしたことを、謝罪していただきたいと思う。
  1. 2011/07/11(月) 19:42:39|
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福島原発:香山リカ氏のブログ(6)

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ネットですべてが完結するという錯覚
現実社会との接点を持つことは避けられない

 私たち精神科医は、逃避する彼らと現実との接点を作ることに腐心してきました。

 しかしいま、それはインターネット社会の発達によって困難になっています。彼らの知識欲や他人と交信したいという欲求は、すべてネット上で満たされるようになってしまったからです。

 彼らはいま、フィクションの世界ではなく現実の世界に起こった原発問題にこころを奪われています。とはいえ、彼らが行動するのはあくまでもネットの世界に限定されてしまいます。熱狂する彼らがネット上で喧々囂々の議論をしても、現実に起こっている原発問題は何も解決しません。むしろ現実世界とネット上の世界に大きな乖離が生じてしまっているように思えてならないのです。

「こういう人たちは、ネットで生活を成り立たせ、ネットで人とコミュニケーションを取ればいいのではないか」

 実際に働きに出なくても、インターネットによるFX取引で父親より稼ぐ人も出てきています。私もそんなネットだけの生活が成り立つのではないかと考えた時期もありました。しかし、ホリエモンの収監の様子をテレビで見て、ネット上のバーチャルな世界が発達しても、限界があることをつくづく感じました。

 ネット世界の象徴でもあるホリエモンも、現実に身体を拘束される刑務所行きという事態は避けられませんでした。時代が変わっても「ネットで服役」ということは起こり得ないのです。

 彼らが原発問題に熱狂して、彼らが何かを変えられるとしても、ネットの中の一つの小さなトレンドに過ぎません。現実に動いている体制には、大きな影響を与えることはできないのです。現実社会との接点こそ、ネット全盛の時代にあっても、ないがしろにできない大切なことではないでしょうか。

 小出氏が世間の注目を浴びるようになったことで、奇しくもネットの社会に引きこもった人たちの存在を再発見することになりました。これらの人の力を、いまの社会はうまく活用できていない現実が浮き彫りになったのです。
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これでこのブログの記事はおわりである。この締めくくりの驚くべき部分を読むと、香山氏がとんでもない妄想の世界に暮らしていることがわかる。

>熱狂する彼らがネット上で喧々囂々の議論をしても、現実に起こっている原発問題は何も解決しません。

というのは、本当に驚異的な考えである。彼女の頭の中は、どうなっているのだろうか。ウィキリークスとか、中国の「網民」の影響力とか、そういうものを聴いたことがないのだろうか。

確かに、他の国々と違って、日本ではネットの世界と他の世界との隔絶が大きかった。それはおそらくは意図的なもので、マスコミがネットを完全に無視していたことが原因である。日本社会のショッカー集団にとってネットは非常に不都合なものなので、あたかもそれが存在しないかのように取り扱って、影響力を削減することに躍起だったのである。

http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.html

それでも上のリンク先の表のように、新聞の売上は確実に落ちてきていた。それはひとえに、ネットの影響である。

今回の原発事故で事態は一挙に進展したように思う。少なくとも4月の新聞販売部数は大幅に落ち込んでいる。http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1105/19/news032.html これは、単に震災の影響ではないように私は感じている。

私は随分前に新聞を取るのをやめて、テレビも見るのをやめた。あまりにもアホ臭いからだ。ニュースはネットで見るが、原発事故まではなるべくそれも最低限にしていた。今回の原発事故で、非常に多くの人が、マスコミの報道がインチキであることを痛いくらいに感じ取っている。それはインターネットへの依存を一挙に高めているに違いない。

社会におけるコミュニケーションの主たる現場は、アメリカや中国ではネットに完全に移っている。大幅に遅れていた日本も、今回の事件で一挙に移行が進んでいる。ネットはバーチャルな世界ではない。ネットは、人間社会のコミュニケーションのあり方を根本から変える、革命的現象なのである。これは、ピーター・ドラッカーがつとに指摘していたところでもある。

小出裕章さんが、マスコミからほぼ完全に黙殺されながら、その影響力を急速に拡大していった現象は、

「小出氏が世間の注目を浴びるようになったことで、奇しくもネットの社会に引きこもった人たちの存在を再発見することになりました。」

などというものでは全くないのだ。それは、社会のコミュニケーション構造が根本的に変化しつつあることの重大な表現なのである。

==========
私たち精神科医は、逃避する彼らと現実との接点を作ることに腐心してきました。

 しかしいま、それはインターネット社会の発達によって困難になっています。彼らの知識欲や他人と交信したいという欲求は、すべてネット上で満たされるようになってしまったからです。
==========

という、これまたトチ狂った認識は、彼女が精神科医業界という閉じたタコツボの中に逃避していることを明らかにしている。

いわゆる大人の世界のなかで横行するハラスメントを全身にうけながら、何事もなかったかのようなフリをして日常を砂を噛むようにして暮らしている人々は、満身創痍であって、日々、精神科医に駆けんこんでいる。そこで精神安定剤や入眠剤を貰って辛うじて生きているのである。それゆえ精神科医は大はやりである。香山氏にとってはそれこそが「現実」である。

しかしインターネットの発達によって、そういう世界は足元が崩れつつあるのだ。なぜなら、

安冨歩『経済学の船出』

で指摘したように、20世紀に隆盛を極めた「関所資本主義」が、インターネットの発達によって機能しなくなりつつあるからだ。日本は特別に関所資本主義時代に成功を収めた国だったので、巨額の国債を発行してまでその維持に努めてきたが、もう限界である。今回の地震と原発事故は、その最後の一突きになった。孫正義氏という、ネット時代の先頭を切ってきた人物が、この問題で大きな存在感を示しているのはそのためである。

東電の処理をめぐる問題は、その行方を決定的に規定するはずである。この既に崩壊している会社に、銀行団が何兆円も貸し込んだことで、事態は更に緊迫の度を高めている。事態は日本全国の関所資本主義を巻き込む規模となってしまった。ここで政府が東電を解体できず、銀行団を見捨てることができなければ、今度は、政府自身が破綻するだろう。

政府も官僚も財界も、その崩壊を食い止めるのに必死である。しかし、大きな構造的変化にいくら抵抗しても無駄というものである。余計なことをすればするほど事態は悪くなり、まもなく、大規模なシステム崩壊が起きる。ソフトランディングのチャンスは過去に何度もあったが、全て封殺された。おそらく今回の原発事故が、もはやソフトとは言えないにしても、緊急着陸の最後のチャンスであろう。ここを逃せば、地面に激突してしまう。香山氏のような認識では、確実に地面に激突する。

(つづく)
  1. 2011/07/11(月) 11:52:05|
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愚かなスペースシャトル計画の終焉〜有人飛行をやめよ〜

スペースシャトルが三十年の愚行の歴史を閉じた。下の毎日新聞の記事のように、ひたすら、コストが高くて意味がなかった。しかも、日本はこの計画にお付き合いして、膨大な金を払っている。その上、いくら払ったのか、公開されていないらしい。さほど重要とも思えない役割を与えられている日本人宇宙飛行士数名を送り出しただけで、こんなに税金を無駄遣いしたことを、どうやって正当化するつもりなのか。JAXAの責任は重い。

ロケットを飛ばす意味はなにか。基本的には、大陸間弾道弾ICBMの技術の発展・維持のためである。スペースシャトルは、軍事的にも大した使い道がなかったようだ。

アメリカが人間を宇宙に送り込みたがったのは、「フロンティア神話」のせいであろう。アメリカは、西へ西へと征服を続け、アメリカ先住民社会と生態系とを破壊し続けて「発展」した。西海岸までそれをやってしまって、行き場がなくなって困ったので、「今度は宇宙だ!」とケネディがぶちあげたのがアポロ計画であった。ついに月面着陸に成功したアームストロング船長は、「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。」と言ったが、その後、人類は大きな飛躍をすることはなかった。そもそも、人間を空気も水もない宇宙に送り出す、というアホなことをやめるべきだと私は考える。人間は宇宙に向いていない。そんなところに人間を送り出す意味はない。すぐにやめて、地球上の生態系や空気や水の問題を考えよう。

それでも、宇宙の探検に意味はある。それは、地球の歴史を明らかにするためだ。地球の歴史を知ることには、自らを理解する、という崇高な意味がある。それには、別に人間を行かせる必要はどこにもない。機械を送り込んで調べれば充分である。その意味で、はやぶさは意義が大きかった。今後は、このタイプの宇宙探検が主体になるべきだ。少なくとも、日本は、有人飛行のアホらしさを学んで、無人ハイテク飛行に徹するべきだと思う。

追記:よく考えると、「再利用の最大の狙いはコスト削減だったが、コロンビア事故後に安全対策の費用がかさみ、1回当たりの運用費は当初想定した約5000万ドルの20倍近い8億~10億ドルに膨らんだ。」という話は、原発にソックリである。それに、日本がアメリカに鼻面引きずり回されている様子も良く似ている。原発もスペースシャトルも、日本の対米従属関係の象徴と見ることもできよう。

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最終飛行へ 宇宙への足、失う米

 81年の初飛行以来30年にわたり、世界の有人宇宙飛行をけん引してきた米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルが、8日打ち上げ予定のアトランティス(クリス・ファーガソン船長ら4人搭乗)を最後に引退する。一度に7人の飛行士と大型貨物を運べる特徴を生かし、国際宇宙ステーション(ISS)建設の中核を担ったが、高コストに悩まされ続けた。厳しい財政事情から引退後の後継機計画が不透明なまま、米国は宇宙への「足」を失うことになる。

 ◇ロシア頼み 財政赤字で後継機不透明
 【ケネディ宇宙センター(米フロリダ州)野田武、ワシントン古本陽荘】アトランティスが打ち上げを待つケネディ宇宙センターには、シャトルの「有終の美」を見ようと全米から宇宙ファンが集結。NASAによると、推定で数十万人が、センター周辺で打ち上げを見守る。

 予定日の8日は悪天候が予想され、NASAは6日、打ち上げを延期する確率を「70%」と発表したが、米国の宇宙開発の歴史を紹介するセンター内の展示館には観光客が詰めかけた。フロリダ州サンライズから家族4人で訪れたチャック・キャプラードさん(56)は「引退はとても悲しい」と惜しみつつ、宇宙開発の行方について「中国やロシアも力を入れており、今後も米国が主導できるか心配だ」と語った。

 「少なくとも、これから半世紀、宇宙における米国のリードは続く」

 今月1日、NASAのボールデン局長はワシントンでの記者会見でこう強調。シャトル引退後の有人宇宙計画を支える大型宇宙ロケット計画がまもなく発表されることを明らかにした。

 オバマ政権は2030年代半ばまでに火星軌道へ人を送る目標を掲げる。使い捨て型の多目的有人宇宙船は公表されたが、ロケット計画は未公表のままで、懸念の声が広がっていた。オバマ大統領は6日、「必要なのは次の技術革新だ」と、新たな挑戦への意気込みを語った。

 だが、専門家の間では新計画の進展に懐疑的な見方が強い。ジョージ・ワシントン大宇宙政策研究所のログスドン名誉教授は「ホワイトハウスと連邦議会は異なる将来像を描いており、これからどうなるかはかなり不透明だ」と警鐘を鳴らす。

 オバマ政権は昨年、計画推進のため5年間で60億ドル(約4800億円)の追加予算を発表した。だが、議会には宇宙開発推進派と、連邦政府予算の削減を目指す財政再建重視派とが混在。膨らむ財政赤字を背景に、財政再建重視派の発言力が強まっている。

 シャトル引退後、ISSへの人の輸送は当面、ロシアのソユーズ宇宙船頼みとなる。オバマ政権はISSへの有人輸送をボーイングなど民間の数社に委託する方針だが、実現には数年かかる見通しで、「次」は不透明なままだ。

 ◆人と物、大量輸送

 ◇ISS建設/日本人7人搭乗
 翼を持った航空機のようなデザインで宇宙船のイメージを塗り替えたスペースシャトルは、「繰り返し使う」ことを実現させた初の宇宙往還機だ。

 胴体部分は直径4・6メートル、長さ18・3メートルの円筒形の大きな貨物室で、最大約30トンの機材を積める。定員は最大7人と、ロシアのソユーズ宇宙船やアポロ宇宙船(3人)の倍以上。

 05年に搭乗した野口聡一飛行士(46)は「シャトルがなければISS建設は不可能だったし、日本人も宇宙に行けなかったかもしれない。人と物を大量輸送し、備え付けのロボットアームでISSを組み立て、宇宙空間での実験もできる高機能な宇宙船」と話す。

 ISS最大の広さを誇り、各国が利用する日本実験棟「きぼう」は、シャトルで機材を3回に分けて運び、軌道上で組み立てた。幻想的な宇宙の姿を多く撮影したハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げや修理も、大型貨物室とロボットアームを備えたシャトルならではの仕事。日本人との縁も深い。92年の毛利衛さん(現・日本科学未来館長)を皮切りに7人の日本人宇宙飛行士が乗り組み、延べ12回、宇宙へ行った。

 ◆再利用型に弱点

 ◇事故2度14人犠牲/対策費増
 一方で、売り物の「再利用型」は最大の弱点でもあった。翼で滑空しながら着陸する方式を選択したことで機体の形状が複雑になった。86年にチャレンジャー、03年にはコロンビアが事故を起こし計14人が犠牲になった。

 再利用の最大の狙いはコスト削減だったが、コロンビア事故後に安全対策の費用がかさみ、1回当たりの運用費は当初想定した約5000万ドルの20倍近い8億~10億ドルに膨らんだ。「年間50回程度」の飛行計画は、実際には85年の9回がピーク。100回の飛行を想定して製造された5機は事故で2機を失い、残る3機で最多のディスカバリーも39回で引退した。

 79年からシャトルにかかわってきた澤岡昭・大同大学長(宇宙利用戦略論)は「最近は地上設備も老朽化し、打ち上げのたび心配だった」と振り返る。

 さらに「安全性もコスト面でもシャトルは失敗だったと言わざるを得ない。しかし、日本はきぼう建設や日本人搭乗で多大な恩恵を受けた。(ISS参加で負担した)安くない授業料に見合う有人宇宙開発戦略が、日本政府には今後求められる」と指摘する。【西川拓】

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 ■ことば

 ◇スペースシャトル
 アポロの後継機として米国が開発。81年4月のコロンビア以来、チャレンジャー、ディスカバリー、アトランティス、エンデバーの計5機が就航した。繰り返し使える機体に、打ち上げ時は外部燃料タンクと補助ロケット2本がつき、約250万以上の部品からなる。135回目の今回を含め、16カ国の356人を延べ848回宇宙に送り、地球を2万周以上回った。シャトル計画全体の費用は約1137億ドル(約9兆円)。シャトルに乗った日本人飛行士は毛利さん(2回)、野口さん、山崎さんのほか向井千秋さん(2回)、若田光一さん(3回)、土井隆雄さん(2回)、星出彰彦さんの計7人。

 2011年7月
  1. 2011/07/11(月) 09:06:29|
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人工放射線の危険性についての市川定夫教授



放射線は人工放射線でも、自然放射線でも同じ。しかし、カリウム40などの放射性物質は、体内に蓄積しない、という形で全ての生命は対応してきたので、生物濃縮も起きない。ところが、人工放射性物質は、これまで進化過程で遭遇してこなかったので、その安定同位体を蓄えて利用する。そこに人工放射性同位体が入ると、同じように体内で蓄積し、生物濃縮が起きる。この点が問題。
  1. 2011/07/10(日) 19:57:41|
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