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マイケル・ジャクソンの思想

福島原発:海水ポンプが復旧へ

福島の原子炉は、熱くなった炉心に水を流して蒸気にし、それでタービンを回し、その蒸気を海水で冷やして水に戻し、それでまた炉心を冷やす、という構造になっている。今回、復旧したのは、その海水を取り込むポンプである。これがないと、炉心を冷やす水を冷やせないのである。

これは重要な進展である。しかし、問題は炉心を冷やす水の循環回路ができていないことである。

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東電は「原子炉に水を入れているだけの現状から、冷却システムを動かすことで、5、6号機のように早く安全な状態に持ち込みたい」と話す。
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となっているが、これは変な話である。まず、5号機、6号機は、爆発しなかったので、プールを冷やす回路が壊れていなかったと思われる。それゆえ、海水で冷却するシステムを復旧すれば、プールを冷やす水を冷やすことができて、冷温状態に持ち込めている。

しかし、1~4号機は炉心やプールを冷やす水の循環回路はおろか、圧力容器やプール自体がかなり損傷している。ここをなんとかしないことには、海水の冷却システムが復旧しても、冷やすものがない。「冷却システムを動かすことで」の「冷却システム」とは、

【炉心やプールを冷やす水を循環させる回路】+【海水でその水を冷やす回路】

の二重回路のことであるはずだが、肝心の前者の修理は、全く進んでいない。なぜなら、タービン室の下部に高濃度の汚染水が溢れているからである。その上、たとえ回路が修復されたとしても、圧力容器の底が抜けているなら、水はそこからダラダラ流れていくので、まともに循環などしない。

「原子炉冷却本格化へ」

という異常に楽観的な見出しを毎日新聞が付けた理由が、私にはわからない。


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福島第1原発:海水ポンプ復旧にめど 原子炉冷却本格化へ

 東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発で31日、原子炉の冷却システムを支える海水ポンプの復旧にめどが立った。今後、ポンプと外部電源をつなぐ作業に入る。正常に働けば、原子炉の冷却に向けた対策が本格化する。

 海水ポンプは、炉内から出てきた高温の水を冷ます熱交換器に、常に冷たい海水を供給するための機器。津波ですべてが電源とともに動かなくなり、1~4号機では原子炉や使用済み核燃料プールの冷却ができず水素爆発などが起きた。一方、5、6号機では仮設の海水ポンプを動かすことで燃料プールを冷やし、制御可能な「冷温停止」にすることに成功している。

 東電はすでに2、3号機で仮設海水ポンプの設置を完了。1、4号機にも設置の見通しが立った。中央制御室まで来ている外部電源に接続し、海水ポンプによる冷却システムの復旧を急いでおり、東電は「原子炉に水を入れているだけの現状から、冷却システムを動かすことで、5、6号機のように早く安全な状態に持ち込みたい」と話す。

 一方、1~4号機のタービン建屋地下やトレンチ(立て坑)内の汚染水について東電は、その水位を無人カメラで常時監視することを決めた。2日までにカメラを設置する。2号機では水表面の放射線量が毎時1000ミリシーベルト超と高く、作業員が近づくことが難しいため。どこに設置するかは検討中という。【関東晋慈、松本惇、酒造唯】

毎日新聞 2011年3月31日 22時50分
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  1. 2011/03/31(木) 23:36:53|
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福島原発:非常電源の喪失のシミュレーション

ここで出ているシミュレーションは、別に専門家でなくとも、多少とも原発のことを知っていれば、適当なデータを集めて、鉛筆舐め舐めできるような話である。

この緊急時の電源喪失という問題は、原発のアキレス腱なのだ。あのチェルノブイリの事故も、この問題と関係している。電源が失われたときに非常用ディーゼル発電機が起動するまでに多少の時間が掛かる。場合によってはうまく起動しない可能性もある。それが極めて危険なので、その間を、タービン発電機のローターの慣性回転を利用して、短期的に発電してしのぐというシステムがあった。ところが、このシステムのテストができない以前に開業してしまい、やむを得ず、原子炉が動いているときにこのテストを無理矢理やったのだ。それが失敗してあの大事故を起こしてしまった。

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原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用(1/2ページ)

2011年3月31日16時39分 朝日新聞

 東京電力福島第一原子力発電所と同型の原子炉について、米研究機関が1981~82年、全ての電源が失われた場合のシミュレーションを実施、報告書を米原子力規制委員会(NRC)に提出していたことがわかった。計算で得られた燃料の露出、水素の発生、燃料の溶融などのシナリオは今回の事故の経過とよく似ている。NRCはこれを安全規制に活用したが、日本は送電線などが早期に復旧するなどとして想定しなかった。

 このシミュレーションは、ブラウンズフェリー原発1号機をモデルに、米オークリッジ国立研究所が実施した。出力約110万キロワットで、福島第一原発1~5号機と同じ米ゼネラル・エレクトリック(GE)の沸騰水型「マークI」炉だ。

 今回の福島第一原発と同様、「外部からの交流電源と非常用ディーゼル発電機が喪失し、非常用バッテリーが作動する」ことを前提とし、バッテリーの持ち時間、緊急時の冷却系統の稼働状況などいくつかの場合に分けて計算した。

 バッテリーが4時間使用可能な場合は、停電開始後5時間で「燃料が露出」、5時間半後に「燃料は485度に達し、水素も発生」、6時間後に「燃料の溶融(メルトダウン)開始」、7時間後に「圧力容器下部が損傷」、8時間半後に「格納容器損傷」という結果が出た。

 6時間使用可能とした同研究所の別の計算では、8時間後に「燃料が露出」、10時間後に「メルトダウン開始」、13時間半後に「格納容器損傷」だった。

 一方、福島第一では、地震発生時に外部電源からの電力供給が失われ、非常用のディーゼル発電機に切り替わったが、津波により約1時間後に発電機が止まり、電源は非常用の直流バッテリーだけに。この時点からシミュレーションの条件とほぼ同じ状態になった。

バッテリーは8時間使用可能で、シミュレーションと違いはあるが、起きた事象の順序はほぼ同じ。また、計算を当てはめれば、福島第一原発の格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。

 GEの関連会社で沸騰水型の維持管理に長年携わってきた原子力コンサルタントの佐藤暁さんは「このシミュレーションは現時点でも十分に有効だ。ただ電力会社でこうした過去の知見が受け継がれているかどうかはわからない」と話す。

 一方、日本では全電源が失われる想定自体、軽視されてきた。

 原子力安全委員会は90年、原発の安全設計審査指針を決定した際、「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又(また)は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする考え方を示した。だが現実には、送電線も非常用のディーゼル発電機も地震や津波で使えなくなった。

 原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)は「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解があった。隕石(いんせき)の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、それは無理だ」と話す。(松尾一郎、小宮山亮磨)
  1. 2011/03/31(木) 20:58:27|
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福島原発:ロイターの記事の追記

さきほどの記事でIAEAの考えに、希望的観測は入っているだろうが、と書いた。どういう希望的観測が入っているのか、あのあと考えた。本当は、もう考えたくないのだが、どうしても考えてしまう。考えた結果、やはり疲れた。

どういう希望的観測かというと、事故の連鎖的拡大が起きない、という前提で話がなされているのだ。

(1)たとえば、局所的だが、決して小さくはない再臨界が1号機で起きたとしよう。
(2)爆発は起きない。
(3)しかし、放射性物質の放出が急激に増える。
(4)たとえば圧力容器の破損が拡大する、ということは十分ありうる。

ここまではIAEAの言うとおりである。話はここから先が、気分が悪くなる。

(5)すると、大量の放射性物質が周辺に散布される。
(6)1号機周辺の放射線量が高くなる。
(7)作業を中断せざるを得なくなる。
(8)格納容器やプールへの注水が中断する。
(9)長時間、接近できない状態が続く。
(10)炉心がむき出しになる。
(11)溶解が進む。
(12)また再臨界が起きる。→(3)に戻る。

ということになって、

(13)そのうち1号機は、暴走する。
(14)放射線量が極めて高くなって、発電所全体から、全員撤退することになる。
(15)全ての格納容器、プールへの注水が中断する。
(16)全ての原子炉が暴走する。

となってしまうのだ。

マッチポンプの冷却が安定に継続できる、という前提を置いて話をするのはやはり問題である。この連鎖的拡大が起きる可能性を考えて、小規模の再臨界が起きても、どこかで止める体制を急速に確立しなければダメなのだ。

なぜそれをやらないで、プラスチックで固めるとか、シートを被せるとか、被害の補償だとかいう、あたかも危機が過ぎ去ったかのような話が先に出てくるのか、私には理解できない。これもまた、安心安全の雰囲気を創りだすための策動なのであろうか。
  1. 2011/03/31(木) 17:02:03|
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福島原発:ロイターの記事

昨日の IAEA の記者会見のロイターの記事を見てみた。

http://www.reuters.com/article/2011/03/30/us-japan-radiation-idUSTRE72T78120110330

要点の第一は飯舘村の高い放射線量のことである。40キロ離れたこのあたりで、IAEAの基準を遥かに上回る放射線量が観測されているということは、その範囲は既にかなり危険ということである。放射性物質は、そこにじっとしている訳ではなく、風やら水やらでまた拡散するので、汚染の範囲はジワジワ広がっていく。前にも書いたが、薄まっても安全にはならない。命中率が下がるだけで、標的となる人間は増えるので、半減期の長いセシウムなどの放射性物質の場合、被害総量は一定率で増え続ける。

第二の論点は、再臨界の可能性についてである。重要なので訳しておく。

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In a potentially negative development, Flory said the agency had heard there might be "recriticality" at the plant, in which a nuclear chain reaction would resume, even though the reactors were automatically shut down at the time of the quake.

That could lead to more radiation releases, but it would not be "the end of the world," Flory said. "Recriticality does not mean that the reactor is going to blow up. It may be something really local. We might not even see it if it happens."

潜在的な悪い事態の展開について、フローリー氏は以下のように述べた。IAEAは「再臨界」がこの発電所であるかもしれない、と聞いている。その状態では、原子炉は自動的に停止されているにもかかわらず、核連鎖反応が再開することになる。

そうなると、更なる放射性物質が放出されるが、とはいえそれは「この世の終わり」ではにあ、とフローリー氏は述べた。「再臨界は、原子炉が吹き飛ぶだろう、ということは意味しない。それはもっと局所的なものである。たとえ起こっても、気づかないこともある。」
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つまり、現状では、IAEAは、再臨界が起きても局所的なもので、放射能の放出が増大するにとどまり、大規模な爆発につながる全面的なものは起きないだろう、と見ている。

但しこれは、発電所内の放射能汚染がさほど進展せず、作業員が冷却作業を続けられる、ということが前提になっている。この作業は、このマッチポンプでは、どのくらいかかるかわからない。その間、放射能は流出し続ける。問題は、その濃度と範囲とに移ってきているようだ。

希望的観測も含まれているのかもしれないが、一応、本当と見て良いと思う。
  1. 2011/03/31(木) 15:47:05|
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福島原発:週刊朝日の小出裕章氏、上澤千尋氏のインタビュー

お二人が言っておられることは、大げさな話ではない。

但し、瀬尾モデルによる小出氏の予測は確か、チェルノブイリ型の事故を想定している、と私は理解している。今回は既に一旦、停止しているので、1号機と3号機とが水蒸気爆発を起こしても、そこまでの範囲には広がらないかもしれない。とはいえ、3号機はMOXであり、更に、2号機も爆発するおそれが十分にある。それに既に述べたように、どれかひとつが破局に至ると、他の原子炉にも接近できなくなるので、暴走する。その場合には、1~6号機の使用済み燃料も無事では済まない。そこまでいくと、福島第二原発まで汚染のために接近できなくなりかねず、最悪の最悪を想定すれば、10機の放射性物質が溢れ出す。この場合には、チェルノブイリを遥かに上回る汚染が生じることは、言うまでもない。

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放射能 見えない恐怖と知っておくべき「本当の話」
小出裕章氏インタビュー
週刊朝日2011年03月25日号配信

建物から勢いよく噴き上げる灰色の噴煙。福島第一原子力発電所で1号機に続き、3号機でも水素爆発が起こった。心臓部である格納容器は無事だったと言われているが、まだ予断を許さない状況に変わりはない。『隠される原子力・核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)などの著書もある京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏(61)はこう警告する。「もし、格納容器が爆発すればチェルノブイリになる」。東京は、日本は、そのときどうなってしまうのか──。


──福島第一原発の1号機と3号機で、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故と同様に炉心が溶融して大爆発が起きたら、どうなるのでしょうか。

 おしまいですよ。放射能による被害の大きさは原子炉の電気出力に比例します。旧ソ連のチェルノブイリ原発は100万キロワットでした。福島第一原発1号機の46万キロワットと3号機の78・4万キロワットを合わせるとチェルノブイリ以上の規模になる。チェルノブイリ原発事故では、日本であれば、法令で放射線管理区域にあたる1平方キロあたり1キュリー以上の汚染を受けた土地は原発から700キロ先まで広がりました。これは、東京をはじめ、名古屋、大阪まで入るほどの広さに匹敵します。

 原発の事故災害評価をしてきた京都大学原子炉実験所の故・瀬尾健氏の研究をもとに、私が福島第一原発で110万キロワットレベルの原子炉が爆発した場合をシミュレーションしたところ、原発から10キロ圏内の急性死亡率は99%を超えることがわかりました。南西方向に風速4メートルの風が吹いていた場合、ある程度の時間がたって発症する放射能の「晩発性影響」によるがん死者は、東京でも200万人を超えるという結論が出ました。

◆本州は関東まで居住が不可能に◆

 さらに、放射線の強さが半減するまでの時間を意味する「半減期」が30年の「セシウム137」などの放射性物質が大量に放出され、飛散する範囲は半径320キロにも及びます。北は岩手から南は神奈川、山梨まで、本州の関東以北は事故後、数十年にわたって土壌が放射能に汚染され、人間が住むことができなくなってしまう地域が出る可能性があります。

──枝野幸男官房長官は、記者会見で、1号機と3号機は水素爆発を起こしたものの、「格納容器は健全である」と言っています。いったい、内部では何が起きていたのでしょうか。

 通常であれば、原子炉圧力容器をおさめた格納容器のなかは、窒素で満たされており、決して爆発を起こさないようになっています。限られた情報から推定するしかありませんが、今回、炉心溶融によって発生した水素や酸素が逃し弁から格納容器内に放出され、格納容器内の冷却用プールの水も炉心の温度が高くなりすぎたために水蒸気となった。その結果、最大4気圧程度までしか想定されていなかった格納容器内が8気圧まで上昇してしまった。

 しかし、格納容器が爆発してしまっては、もろに放射性物質が飛び出すことになる。そこで、ベントという弁を開けて格納容器内の圧を下げることにしたわけです。放出された水素が建屋の上部にたまり、爆発した可能性が高い。こんなことが起きるなんて、私の記憶にある限り、世界でも初めてのことです。

──爆発の結果、福島第一原発から100キロ以上離れた女川原発(宮城)の敷地内でも一時、放射線量が通常の4倍以上の数値を記録しました。福島第一から流れたとも言われています。

 もともと、格納容器の弁の先には放射性物質を捕まえるフィルターがついています。フィルターは完全な気体である「クリプトン」や「キセノン」などの希ガスは捕まえられないため、弁を開けた時点で、ある程度の放射性物質は外に出ることになるのですが、今回はそのフィルターが多量の水分で目詰まりを起こして、吹き飛んでしまった可能性が考えられます。そのため、ヨウ素など本来なら外に出るはずのない放射性物質も飛び出しているのではないでしょうか。今回、周辺で被曝した人たちのなかには、体や衣服に付着した放射性物質を落とす「除染」を受けた人もいましたが、長年、原発の現場で研究をしてきた私も除染を受けるほどの被曝をしたことはありません。すでに放射性物質は体内にも入っていると考えられます。

◆これからのこと予想もつかない◆

──1号機はウラン燃料、3号機は昨年9月からMOX燃料を使っています。

 MOX燃料はウランの酸化物とプルトニウムの酸化物を混合したものです。プルトニウムの生物毒性はウランの20万倍とも言われています。実際に爆発した場合の毒性は単純に20万倍というわけではありませんが、ウランだけの燃料に比べ毒性が高まるのは間違いありません。

 さらに、プルトニウムは本来、高速増殖炉で使用すべきものであり、福島第一原発にある沸騰水型炉で使用すべき燃料ではない。家庭用の石油ストーブにガソリンを混ぜた灯油を入れているようなものです。平常時であっても、軽水炉でMOX燃料を使用するということ自体が、非常に危険なことなのです。

 それでも、日本の原発がMOX燃料を使用しているのは、日本が世界有数のプルトニウム保有国だからです。第2次世界大戦中に長崎に投下された原爆はプルトニウム爆弾ですが、現在、日本はプルトニウム原爆を4千個も作れるほど保有しているのです。そのため、世界から早急にプルトニウムを消費することを求められている。だが、国内にある高速増殖炉「もんじゅ」は、1995年に起きたナトリウム漏れ事故などで操業停止になっています。そこで、国から泣きつかれた東京電力など電力各社は、軽水炉でMOX燃料を使うことにしたわけです。

──1号機と3号機はとりあえず、危機を脱したと見てよいのでしょうか。

 わかりません。冷却水の水位が下がったことで、炉心が露出してしまい、炉心溶融が起きたのは間違いありませんし、これからどうなるのかも予想がつかない。私は、これまで、再三にわたって警告してきましたが、地震や津波などの非常事態に備えてあったはずの非常用電源も電源車も、何の役にも立たないことがハッキリしました。

 これは、チェルノブイリや米国スリーマイル島の事故に匹敵するようなシビア・アクシデントなのです。 (本誌・大貫聡子)


◆原子炉爆発すれば十数時間で放射能は首都圏へ◆

「死の灰」と呼ばれる放射能の健康被害は、計り知れない。

 1986年に起こったチェルノブイリ原発事故では、広島と長崎の原爆を合わせた放射能の約200倍もの放射能が放出された。福島第一原発の1、3号機を足した原子炉の電気出力は、チェルノブイリ原発の100万キロワットを超える。京都大学原子炉実験所助教の今中哲二氏は、チェルノブイリは将来分も含め"死者"は、10万~20万人と指摘しており、万が一、日本でも首都圏に飛散すれば、大量の被害者が出る可能性がある。

 原子力資料情報室の上澤千尋氏は言う。

「放射性物質は、全体的に一定の速度で広がるのではなく、風向きによって扇状に飛散していきます。『ホットスポット』と言って、雨雲などに乗って、飛び地で雨と一緒に『黒い雨』として降ることもあります」

 福島原発の場合、例えば、茨城県の上空を通過して、東京が被爆する可能性もある、ということだ。

 上澤氏によると、被曝した時の症状は大きく分けて二つある。

(1)急性障害 100~250ミリシーベルト超の被曝をすると、直後から数カ月以内に、めまいや嘔吐、脱毛などの症状が現れる。重篤な場合は、内臓が機能障害を起こしたり、皮膚がただれて全身ヤケドのような症状を起こしたりして、死にいたることもある。
1999年の「JCO臨界事故」では、ステンレスのバケツでウラン粉末を溶かして沈殿槽に注入したさい、核分裂が連鎖的に続く臨界状態となり、作業員2人が急性障害で死亡した。

(2)晩発性障害 数年~数十年後にがんや白血病などを発症する。一般人の年間被曝線量の限度である1ミリシーベルトでは、がん罹患率は1万人中500~1千人と言われている。それが、2ミリシーベルトになると、がん罹患率も比例して2倍になると言われている。

 このほか、被曝すると、免疫機能が下がるため、他の病気を引き起こす可能性も高くなるほか、遺伝子に傷がつき子孫への影響も懸念される。

 では、万が一、放射性物質が飛散してきたら、どう対応したらいいのか。

「とにかく、放射性物質にふれないことが重要です」(上澤氏)

 原子力安全・保安院などはこう注意を促している。

(1)屋内退避。換気扇や冷暖房を止め、窓を閉めて、外気が室内に入らないようにする。特に、雨は大気中の放射性物質を地上に降らせるため、当たらないようにする。

(2)外出する場合は、長袖、長ズボン、ゴーグル、フード付きのコートなどを着て、外気に触れないようにする。防塵用のマスクや、濡らしたタオルで口や鼻を覆う。室内に入る前に、コートなどは袋に入れて密閉し、室内に放射性物質を持ち込まないようにする。

(3)万が一、肌に付着したら、洗い流す。

(4)ヨウ素剤を服用する。

 しかし、これらのことをしたとしても、被曝しないかといえば、そうではない。

「大気中に放射性物質が蔓延しているので、ドアを開閉しても室内に入ってくるし、スーパーなどの商品に放射性物質が付着している場合もある。物理的に考えて、完全に被曝を防ぐことはできない。気休めにしかなりません」(同)

 福島第一原発の爆発で避難した人のうち、40歳未満全員が甲状腺がんを防ぐ「ヨウ化カリウム」を服用した。事前に放射性のないヨウ素剤を服用することで、放射性ヨウ素を吸い込んでも甲状腺が飽和されているため、甲状腺がんの予防になるという。「ヨウ化カリウム丸」(日医工)などがあるが、購入するには、原則、医師の処方箋が必要となる。

 しかし、上澤氏はこう言う。

「甲状腺が活発な若い人は飲んだほうがいいが、放射能は何十種類もあるので、ヨウ素剤では、ヨウ素以外の放射能は防げません」

 さらに注意しないといけないのは、身近に放射能が飛散しなくても、被曝した地域の農産物や畜産物などを口にしたら、そこから体内被曝をすることもあるし、水源地が被曝していれば水道から被曝してしまうことにもなる。

 放射能が飛散すればするほど、被曝を防ぐことは難しいのだという。確実なのは、爆発してから身近に放射性物質が到達するまでに避難することだ。

「例えば、東京なら、単純に、福島─東京間約200キロを風速で計算して、時間を測ります」(上澤氏)

 もし、南西方面に風速4メートルであれば、わずか約14時間で到達する。

「とはいえ、仮に逃げのびたとしても、汚染の程度によっては、いつ東京に戻れるかわかりません」(同)

 人間に牙をむいた放射能は、まさに「死の灰」なのだ。 (本誌・神田知子)
  1. 2011/03/31(木) 14:27:40|
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福島原発:週刊朝日の記事二つ

なぜか週刊誌にはこういう記事が沢山出ている。
なぜ、テレビや新聞は無視するのだろう。

本当の話は「デマ」扱いされ、危険な嘘が「正しい情報」とされる。

あべこべワールドの恐怖である。

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佐藤栄佐久・前福島県知事が告発 「国民を欺いた国の責任をただせ」
週刊朝日 3月30日(水)17時56分配信

福島第一原子力発電所の事故は周辺の土壌や海水からも大量の放射能が検出され、世界を震撼させる事態となっている。原発の安全性に疑問を持ち、一時は東京電力の原子炉17基をすべて運転停止に追い込んだこともある佐藤栄佐久・前福島県知事(71)はこう憤る。「諸悪の根源」は経済産業省であり国だ──。

 今回の事故の報道を見るたびに、怒りがこみ上げてきます。一部の識者は「想定外の事態だ。これは天災だ」というような発言をしていましたが、だまされてはいけません。これは、起こるべくして起こった事故、すなわち“人災”なのです。

 私は福島県知事時代、再三にわたって情報を改ざん・隠蔽する東電と、本来はそれを監視・指導しなければならない立場にありながら一体となっていた経済産業省に対し、「事故情報を含む透明性の確保」と「原発立地県の権限確保」を求めて闘ってきました。しかし、報道を見る限り、その体質は今もまったく変わっていないように思います。

 端然とした表情で語る佐藤氏の自宅は福島県郡山市内にある。地震から2週間以上経過した今も石塀は倒れたままになっているなど、爪痕が生々しく残る。もともとは原発推進論者だったという佐藤氏が日本の原子力政策に疑問を抱き始めたのは、知事に就任した翌年の1989年のことだった。

 この年の1月6日、福島第二原発の3号機で原子炉の再循環ポンプ内に部品が脱落するという事故が起きていたことが発覚しました。しかし、東電は前年暮れから、異常発生を知らせる警報が鳴っていたにもかかわらず運転を続けていたうえに、その事実を隠していました。県や地元市町村に情報が入ったのはいちばん最後だったのです。

 いち早く情報が必要なのは地元のはずなのに、なぜこのようなことがまかり通るのか。私は副知事を通じ、経産省(当時は通商産業省)に猛抗議をしましたが、まったく反応しませんでした。

 日本の原子力政策は、大多数の国会議員には触れることのできない内閣の専権事項となっています。担当大臣すら実質的には役所にコントロールされている。つまり、経産省や内閣府の原子力委員会など“原子力村の人々”が政策の方向性を事実上すべて決め、政治家だけではなく原発を抱える地方自治体には何の権限も与えられていないのです。

 国や電力会社は原発に関して、地元自治体を「蚊帳の外」にしただけではないという。佐藤氏が「8・29」と呼ぶ事件がある。2002年8月29日、原子力安全・保安院から福島県庁に「福島第一原発と第二原発で、原子炉の故障やひび割れを隠すため、東電が点検記録を長年にわたってごまかしていた」という恐るべき内容が書かれた内部告発のファクスが届いたのだ。

 私はすぐに、部下に調査を命じました。だが、後になって、保安院がこの告発を2年も前に受けていながら何の調査もしなかったうえに、告発の内容を当事者である東電に横流ししていたことがわかったのです。

 私の怒りは頂点に達しました。これでは警察と泥棒が一緒にいるようなものではないか。それまで、東電と国は「同じ穴のムジナ」だと思っていましたが、本当の「ムジナ」は電力会社の奥に隠れて、決して表に出てこない経産省であり、国だったのです。

 この事件で、東電は当時の社長以下、幹部5人が責任をとって辞任し、03年4月には、東電が持つすべての原子炉(福島県内10基、新潟県内7基)で運転の停止を余儀なくされました。

 しかし、保安院、経産省ともに何の処分も受けず、責任をとることもありませんでした。

 それどころか、福島第一原発の所在地である双葉郡に経産省の課長がやってきて、「原発は絶対安全です」というパンフレットを全戸に配り、原発の安全性を訴えたのです。なんという厚顔さでしょうか。

 今回の事故でも、記者会見に出て頭を下げるのは東電や、事情がよくわかっていないように見える保安院の審議官だけ。あれほど、「安全だ」と原発を推進してきた“本丸”は、またも顔を出さずに逃げ回っています。

 さらに、佐藤氏は3月14日に水素爆発を起こした福島第一原発3号機で、「プルサーマル」が行われていたことに対し、大きな危機感を持っているという。

 なぜメディアはこの問題を大きく報じないのでしょうか。「プルサーマル」とは、使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使う原子力発電の方法で、ウラン資源を輸入に頼る日本にとって、核燃料サイクル計画の柱となっています。

 これに対して私は98年、MOX燃料の品質管理の徹底をはじめ四つの条件をつけて一度は了解しました。

 しかし、判断を変え、3年後に受け入れ拒否を表明することになりました。

 福島第一とともにプルサーマルの導入が決まっていた福井県の高浜原発で、使用予定のMOX燃料にデータ改ざんがあったと明らかになったからです。

 そして、核燃料サイクル計画には大きな欠陥があります。青森県六ケ所村にある使用済み燃料の再処理工場は、これまでに故障と完成延期を繰り返しており、本格運転のメドがたっていません。この工場が操業しない限り、福島は行き場のない使用済み燃料を原子炉内のプールに抱えたままになってしまう。今回の事故でも、3号機でプールが損傷した疑いがあります。これからも、この危険が残り続けるのです。

 昨年8月、佐藤雄平・現福島県知事はプルサーマルの受け入れを表明し、30日には県議会もこの判断を尊重するとの見解をまとめました。このニュースは県内でも大きく報じられましたが、その直後、まるで見計らったかのように、六ケ所村の再処理工場が2年間という長期にわたる18回目の完成延期を表明したことは、どれだけ知られているでしょうか。

 福島第一原発の事故で、首都圏は計画停電を強いられる事態となっています。石原慎太郎・東京都知事は00年4月、日本原子力産業会議の年次大会で、「東京湾に原発をつくってもらっても構わない」と発言しましたが、この事態を見ても、同じことを言うのでしょうか。

 私は06年に県発注のダム工事をめぐり、収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。控訴審では「収賄額はゼロ」という不思議な判決が出され、現在も冤罪を訴えて闘っている最中です。その経験から言うと、特捜部と原子力村の人々は非常に似ています。特捜部は、自らのつくった事件の構図をメディアにリークすることで、私が犯罪者であるという印象を世の中に与え続けました。

 今回の事故も重要な情報を隠蔽、管理することで国民を欺いてきたと言えるでしょう。今こそ国の責任をただすべきときです。 (構成 本誌・大貫聡子)

さとう・えいさく 1939年、福島県郡山市生まれ。東京大学法学部卒業後、88年に福島県知事に初当選。06年、収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。09年、一審に続き、控訴審でも懲役2年(執行猶予4年)の有罪判決が出されたが、「収賄額はゼロ」と認定され、実質上の無罪判決となった。現在、上告中。著書に『知事抹殺』(平凡社)がある

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「福島原発は欠陥工事だらけ」
担当施工管理者が仰天告白
週刊朝日2002年9月20日号配信

資源エネルギー庁の原発推進PR費だけで、年間70億円もの税金が使われている。一方で次から次へと明るみに出る東京電力の損傷隠しに、「もっと大きなものを隠しているのではないか」という声さえも漏れるほどだ。福島原発で実際に建設に取り組んだ元技術者たちが、驚くべき現場のずさんな実態を本誌に語った。(編集部注:本誌2002年9月20日に掲載。年齢、肩書き等は当時のものです。ご注意ください)


 福島第一、第二、柏崎刈羽原子力発電所で起きた東京電力の損傷隠しは、日本の原発への信頼性を大きく揺さぶった。東電のうそつき体質が明らかになり、チェックもできず判で押したように「安全宣言」を出してしまう経済産業省の原子力安全・保安院の無能さが世間に知れ渡ってしまったのだ。

 だが、原発にまつわる「不正」「ずさんさ」はじつは、これだけにとどまらない。

 鹿児島大学非常勤講師の菊地洋一さん(61)は、厳しい口調でこう語るのだ。

 「国はすぐに『安全だ。安全だ』と言うが、原子炉メーカーや現場の実態も知らずに、複雑で巨大なシステムの原発を簡単に安全などとは言ってほしくない。保安院も東電も原発の基本的な仕組みしかわからないから、原発推進の御用学者たちの言うことに振り回されているのだろう。だが、今回のシュラウドのひび割れだって大変なことで、地震が起きたらどうするのか、そういう危機感を持たない保安院や東電の意識は非常におかしい。すべてが現場を知らない机上の空論で成り立っている。そもそも、『安全』と言う前提には、建設工事のときから完璧な材料を使って、かつ完璧な施工がされたというのが絶対条件だろうが、建設現場ではそれはあり得ないこと。現場は試行錯誤の中で手探りで仕事をしているんです」

 じつは、菊地さんは今回問題になっているGEIIの前身のGETSCOの元技術者で、東海第二(78年運転開始)と福島第一の6号機(同79年)の心臓部分である第一格納容器内の建設に深くかかわっている。GETSCOは沸騰水型炉を開発したGEの子会社で、GEがこの二つの原子炉を受注したのだ。

 菊地さんの当時の立場は企画工程管理者といい、すべての工事の流れを把握して工程のスケジュールを作成する電力会社と下請けとの調整役だったという。現場では、自分の作業内容しか知り得ない技術者がほとんどだが、第一格納容器の隅々までをつぶさに知る数少ない人物の一人だ。

 「建設中に工事の不具合はいくらでも出てくる。数えたらキリがない。当然のことですが、ちゃんと直すものもあります。でも信じられないことでしょうが、工期や工事費の都合で、メーカーや電力会社が判断して直さないこともあるんです。私が経験した中では、福島第一の6号機に今も心配なことがある。じつは、第一格納容器内のほとんどの配管が欠陥なのです。配管破断は重大な事故に結びつく可能性があるだけに、とても心配ですが......」

 ほとんどの配管が欠陥とは、穏やかな話ではないが、どういうことなのだろうか。

 主要な配管の溶接部分についてはガンマ線検査があるため、溶接部分近くに穴があいており、検査が終わると、外からその穴にガンマプラグという栓をはめていくのだそうだ。ところが6号機の第一格納容器内では、プラグの先が配管の内側へ飛び出してしまっている。仕様書では「誤差プラスマイナス0ミリ」となっているのに、最大で18ミリというものまであった。

 原因は、度重なる設計変更だ。当初の計画では肉厚の配管を使う予定が、いつのまにか薄い配管になってしまっていたのだった。

 担当外だった菊地さんが気づいてすぐに担当部署に相談したが、最終的には配管工事を請け負った業者の判断に一任され、結局、直されることはなかった。

 菊地さんが続ける。

 「確かに配管を直したら、プラグの発注から始まり検査や通産省立ち会いの耐圧試験も含め、半年や1年は工事が延びたと思う。工事が1日延びれば、東電側に1億円の罰金を支払わなければならないというきまりもあった。GE側は業者の判断によっては違約金の支払いも覚悟していたが、最終的には業者側の直さないという判断を尊重した形になった。でもこの配管を放置しておけば、流れる流体がプラグの突起物のためにスムーズに流れなくなり乱流が生じ、配管の一部が徐々に削られていき、将来に破断する可能性だってある。それが原因で、何十年後かにドカンといくかもしれないのです」

 今回の損傷隠しで、6号機はジェットポンプの配管のひび割れが未修理のまま運転されていることが明らかになっている。このずさんな工事と関係があるのだろうか。
 
◆大型のジャッキで圧力容器を矯正◆

 菊地さんは、6号機を東電に引き渡した後、退社したが、その後も第一格納容器内の配管が破断し、暴走する夢を見たという。

 実際、86年には米バージニア州のサリー原発で、直径45センチの配管が破断する事故が起きた。それまで「配管の破断前には水漏れ状態が続くため、完全破断する前に対策をとれる」ということが「定説」になっていたが、サリー原発では瞬間的に真っ二つに断ち切れる「ギロチン破断」と呼ばれる状態になった。定説を覆す、予期できないことが原発には起きるのだ。

 福島第二原発の3号機のポンプ事故(89年)後、菊地さんは、6号機の配管も、「全部めちゃくちゃだから直すように」と東電本社に直訴した。東電からは一部主要な配管は替えたものの「ほかはちゃんと見ているから、安全です」という答えが返ってきたという。

 「東電はこの配管の問題性をちゃんと認識しているのか。通産省(当時)に報告しているのか。報告しているのなら、通産省がどんな調査をし、どう判断したのか。そのうえで東電は安全だと言っているのか、はなはだ疑問だ」(菊地さん)

 では工事をチェックする立場の国は、何をしていたのだろうか。菊地さんがこう説明する。

 「まったくあてになりませんね。通産省の検査のときに、養蚕が専門の農水省出身の検査官が来たという話も聞いたことがあるほどです。現場では国の検査に間に合わなくて、ダミー部品をつけておいて、検査が終わってから、正規の部品に取り換えるということもやった。もちろん、検査官は気がつきませんよ」

 こんなこともあった。

 東海第二の試運転を前に国の検査があった。だがその前日、電気系統がトラブルを起こし、使えなくなってしまったという。試験当日は国の検査官を前に、作業員が機械の前で手旗信号で合図し、電気が通って機械が作動しているように見せかけた。それでもしっかりと「合格」をいただいたというのだ。まるでマンガのような話だ。本当に、おかしなことを挙げていけばキリがないようだ。

 「いかに国の検査が形式的でいい加減なものかということがわかるでしょう。何よりも問題なのは、いい加減な検査を受けた原発が、いま現在も動いていて、国が安全だとお墨付きを与えているということなのです」

 菊地さんは次々に起きた浜岡原発の事故や今回の損傷隠しを契機に50ccバイクで全国をまわり、自らの体験を生かし反原発を訴えていくことを計画しているという。

 今回の損傷隠しのきっかけは、2年前のGEIIの元技師による内部告発だった。原発に関する内部告発は、じつは14年前にもあった。

 現在、科学ジャーナリストの田中三彦さん(59)がメーカーの不正な工事過程を告発したのだ。

 内容は、田中さんが日立製作所の関連会社のバブコック日立の設計技師だった74年に起こった出来事だった。

 同社は日立製作所が受注した福島第一原発4号機(78年運転開始)の原子炉圧力容器を製造していたが、製造の最終過程でトラブルが起こった。高さ約21メートル、直径約6メートルの円筒形で厚さ約14センチの合金鋼製の圧力容器の断面が、真円にならず、基準を超えてゆがんだ形になってしまったというのだ。

 これも冗談のような話なのだが、容器内部に3本の大型ジャッキを入れ、610度の炉の中に3時間入れてゆがみを直したというのだ。田中さんは当時、原子力設計部門から別部門に異動していたが、急遽呼び戻され、どれだけの時間をかけて、何度の熱処理をすべきか解析作業を担当させられた。作業は国にも東電側にも秘密裏で行われ、ゆがみを直した後、東電に納入されたのだという。

◆国と業界一体で「安全」ゴリ押し◆

 田中さんはその後退職し、88年に都内で開かれた原発シンポジウムで、
 「ジャッキで無理に形を整えた圧力容器が実際に運転しており安全性を心配している」
 と"告発"したのだ。

 田中さんが懸念したのは、ジャッキで力を加えた熱処理による材料の性質の変化などで、それによる原子炉の安全性の問題だった。

 しかし、告発からわずか数日後、東電と日立製作所、そして通産省までもが、
 「問題ない処置だった」
 と口をそろえ、またもや得意の"安全宣言"を出した。

 田中さんはこの経過を90年に出版した『原発はなぜ危険か―元設計技師の証言―』(岩波新書)に詳細にまとめている。田中さんはこう話す。

 「ゆがみの矯正は明らかに違法行為であり、日立側は私との話し合いで、最後まで当時の生データも出さなかった。また告発後、通産省も東電も日立から事情聴取することもなく、すぐに安全宣言を出した。今回の東電の損傷隠しでもこれが繰り返されている」

 なぜ、こうも国はちゃんと調べずに安全宣言を出してしまうのか。そして何よりも恐ろしいのは、この福島第一原発4号機も、その後も十分な検証が行われないまま、今も稼働しているということだ。

 「根本的な問題は、電力業界の体質そのものです。彼らには罪の意識はまったくなく、逆に合理的な判断の上に成り立っていると思っている。それは給電の計画変更などのコストの問題、同じ構造の原子炉を持つほかの電力会社への影響など、結局は電力会社サイドの勝手な都合で決められている。国も『あうんの呼吸』でそれを見守ってきた。国も電力会社も原発が壊れるまで『安全だ』と言うのでしょう。いつかはわからないが、大事故は必ず起きる。早急に脱原発の方向に切り替えるべきだが、その前に、せめて国の技術的なレベルを上げ、原発に対する管理能力をきちんとすべきです」(田中さん)

 最近、70年代半ばに通産省の検査官が逆に東電に損傷隠しを指示した疑惑も報道されている。まさに「あうんの呼吸」を持つ官業もたれ合いの原子力行政そのものであり、「原発は安全だ」と喧伝する中で、官業一体となって「損傷隠し」までしてきてしまったというわけだ。

 いずれにしろ、欠陥だらけの原発が稼働し続けているという、この恐ろしい状態を脱するには、保安院でも東電でもない第三者機関にきちんと調べてもらうしかない。  (本誌取材班)
  1. 2011/03/31(木) 14:18:26|
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福島原発:補償額

ここに挙げられているのは、最小限のものである。

セシウムが降り注いで水道水を赤ちゃんのミルクに使えなくなり、その上、ペットボトルの水も、宮崎駿監督が、

「風評被害や乳幼児への水の問題には配慮しなければいけない。だけど、僕と同じ年齢の人たちが行列を作って水を買うのはもってほか。人民の愚かさもマスコミは糾弾してほしい」

と批判するような事情で買えなくなり、悶え苦しんだ若い母親が受けた多大な被害などは参入されていない。

原発がそもそも経済的合理性を欠いていることは、多くの人が指摘してきたところである。エコロジーでもエコノミーでもない。そんなものをエコロジーでエコノミーとほざく原子力安全経済環境欺瞞言語を振り回してきた連中の罪は重い。

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補償額は数兆円規模に…東電、巨額の費用負担

 東京電力が福島第一原発の1~4号機の廃炉を決断した。

 今後、東電は廃炉にかかる巨額の費用を負担しながら、原発周辺の住民への損害賠償にも対応しなくてはならない。さらに、社債の償還や火力発電所の増設費用なども東電に資金負担が重くのしかかる。被災者への賠償を確実に行うために政府は東電の経営を支え続けざるを得ない。賠償額の規模次第では、国有化を視野に入れた再建策を検討せざるを得ないとの見方も浮上している。

 ◆膨らむ額

 東電は廃炉を決めたが、必要な資金は巨額だ。中部電力は浜岡原発1、2号機の廃炉を決めているが、1基あたり約1000億円の費用を見込んでいる。これをそのまま当てはめれば、福島第一の廃炉費は4000億円だが、浜岡原発は普通に稼働しており、「福島第一は事故で、放射性物質も外部に漏れており、廃炉にかかる費用はさらに膨らむ」(大手アナリスト)との見方がある。

 5000億円を超える損失になる可能性もあり、過去に積んでいる引当金を超えることは確実だ。

 ◆緊急融資 

 さらに、原発が稼働できない分、火力発電所を再稼働させるなどの対策費も必要になる。発電のための燃料として、石油や液化天然ガス(LNG)を調達する必要があり、年間4000億円から1兆円程度のコスト増になるとの見方もある。また、2011年度だけで、社債の償還や借入金の返済などで7000億円規模の費用も必要だ。

 東電の10年12月末の手持ち資金は4320億円。3メガバンクを含む大手銀行7行が31日までに1兆8500億円の緊急融資を行うため、当面の資金繰りには問題はない。今後について、勝俣恒久会長は「政府と協議しながら資金不足に陥らないように努力する」と述べている。

 財務面をみても、東電の単体ベース(10年3月期)の自己資本比率は17・1%と国内電力10社平均(22・3%)を下回っている。財務体質の悪化を食い止めるため、資産売却などを進める必要が出てきそうだ。勝俣会長も「民間企業として最大限のコストダウン、スリム化を図っていく」と大規模リストラを行う方針だ。

 ◆原子力賠償法 

 最大の懸念材料は賠償金の負担額だ。1999年9月に茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故では、住民の健康被害や出荷できなくなった農産物の補償などにJCOが約150億円を支払った。

 JCOでは避難対象が半径350メートルだったが、福島第一原発では半径20キロ・メートルと桁外れに広い範囲に避難指示が出ている。放射性物質による農作物への風評被害も補償対象となる見通しだ。計画停電についても補償を求める声が出る可能性もあり、「補償額は数兆円規模になるのでは」(経済官庁幹部)との見方もある。

 原子力損害賠償法では、事故時には国が原子力発電事業所1か所あたり最大1200億円を支出すると定めているほか、「社会的動乱や異常に巨大な天災地変の場合」に、国が補償するとの規定がある。枝野官房長官は25日午後の記者会見で「安易な免責はあり得ない」と述べている。想定を超える巨大地震と津波による原発事故とはいえ、事故処理の不手際を指摘する声もあり、東電に全面的な免責が認められない可能性もある。(経済部 愛敬珠樹、豊田千秋)

(2011年3月31日11時13分 読売新聞)
  1. 2011/03/31(木) 11:26:10|
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福島原発:基本設計の問題点

人災であることが、ますます明らかとなっている。テレビに出ている御用学者どもは、何らの反省もしていないが、技術者にはもっとマトモな人が多少はいるようである。彼らの言葉を真剣に受け止めることが、正常な思考のための第一歩である。


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設計に弱さ GE元技術者が指摘

 【ロサンゼルス吉富裕倫】東京電力福島第1原発と同型の原子炉を設計した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の元技術者、デール・ブライデンバーさん(79)が毎日新聞の取材に応じ、原子炉格納容器について「設計に特有の脆弱(ぜいじゃく)さがあった」と指摘し、開発後に社内で強度を巡る議論があったことを明らかにした。

 東電によると、福島第1原発はGEが60年代に開発した「マーク1」と呼ばれる沸騰水型軽水炉を6基中5基使っている。

 ◇議論封印「売れなくなる」
 GEでマーク1の安全性を再評価する責任者だったブライデンバーさんは75年ごろ、炉内から冷却水が失われると圧力に耐えられる設計ではないことを知り、操業中の同型炉を停止させる是非の議論を始めた。

 当時、マーク1は米国で16基、福島第1原発を含め約10基が米国外で稼働中。上司は「(電力会社に)操業を続けさせなければGEの原子炉は売れなくなる」と議論を封印。ブライデンバーさんは76年、約24年間勤めたGEを退職した。

 ブライデンバーさんは退職直後、原子炉格納容器の上部が小さく、下部と結合する構造が脆弱で万一の事故の際には危険であることを米議会で証言。マーク1の設計上の問題は、米原子力規制委員会の専門家も指摘し、GEは弁を取り付けて原子炉内の減圧を可能にし、格納容器を下から支える構造物の強度も改善。GEによると、福島第1原発にも反映された。

 しかし福島第1原発の原子炉損傷の可能性が伝えられる今、ブライデンバーさんは「補強しても基本設計は同じ。水素爆発などで生じた力に耐えられる強度がなかった」とみる。また「東京電力が違法に安全を見落としたのではない」としながらも、「電気設備の一部を原子炉格納容器の地下に置くなど、複数の重大なミスも重なった」と分析した。

 ブライデンバーさんはGE退職後、カリフォルニア州政府に安全対策について助言する原発コンサルタントとして約20年間働き、現在は引退している。

毎日新聞 2011年3月30日 10時49分(最終更新 3月30日 12時32分)

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2011年3月23日 中日朝刊

 東日本大震災で世界有数の事故を起こした東京電力福島第1原発(福島県双葉町、大熊町)。その設計などを担当した東芝の元社員2人が本紙の取材に応じ、「設計時は、これほどの大津波は想定しなかった」と証言した。東電が想定していた津波は最高5・5メートル。実際には14メートルを上回る大津波が押し寄せており、2人は設計に甘さがあったと口をそろえた。

 元社員の男性(69)は大学で機械工学を学び1967年、東芝入社。商業用の沸騰水型軽水炉の建設が始まろうとしていた時期。71年から順次稼働した福島第1原発1~3号機と、5~6号機の設計に参加。原子炉周りの残留熱を除く熱交換器や海水ポンプなどを設計した。

 今回、津波が非常用ディーゼル発電機などの故障を引き起こし、原子炉の冷却機能がマヒしたことに衝撃を受けた。「当時は『マグニチュード(M)8・0以上の地震は起きない』といわれ、(10メートルを超えるような)大津波は設計条件に与えられていなかった」

 東電は土木学会の津波評価に基づいて、福島第1原発を襲う津波を最高5・5メートルと想定していた。国の耐震指針に基づく評価に合格している。

 当時の設計の甘さについて、福島第1原発が日本で初期の施設だったことを挙げる。「当時の日本で原発は未経験分野。1、2号機を受注した東芝も担当したのは部品設計。プラント全体の設計は米ゼネラル・エレクトリック社(GE)が受注していた」と明かす。

 GEの設計には、地震多発国特有の条件が十分に反映されていなかった。「日本のメーカーは原発設計の経験がなく、改善することもできなかった」

 3号機からはGEに頼らない「原発の国産化」が目標に。東芝と日立が受注するが、実態はGEとライセンス契約を結び、規格を踏襲。「電力会社から『3号機以降も慎重に同じものをつくれ』と言われていた」と振り返る。

 「女川や柏崎刈羽などの原発でも非常用発電などは同じ弱点がある」と指摘する。

 事故後、男性は原子力発電所を抱える全事業所の社長に宛て「稼働中の原発を止めてほしい」とファクスを送った。「原発は人間が扱いきれるものではない。一人でも多くの人が気づいてほしい」

 福島原発のタービンの安全性を検証する作業にかかわった元東芝社員の男性(63)も「今回のような大津波やM9は当時は想像もできなかった」と振り返った。

 70~80年代に東芝に勤務。事故や地震で原発のタービンが壊れて飛び、原子炉を直撃する事故などによる安全性を検証した。M9の地震や、航空機が落ちて原子炉を直撃する可能性も想定した。すると上司から「原発が数10年しか稼働しないのに1000年に一度とか1万年に一度とか、そんな想定をしてどうする」と一笑に付された。

 今回、原子炉は地震の揺れそのものには耐えたが、津波で非常用電源や冷却機能がダウンした。「もしM9でも原発が大丈夫だったとなれば日本の技術は称賛されていた。非難とは紙一重だった」と話す。

 国も東電も「原発は安全」と強調してきたが、絶対に安全なんてことはないと感じていた。「どんなことが起こる可能性があるのか情報を徹底公開し、原発が本当にいるのかどうかを国民みんなで考えるべきだ」
  1. 2011/03/31(木) 01:25:14|
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