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官房長官 原子力緊急事態宣言
3月11日 20時20分
枝野官房長官は、11日午後7時半すぎに記者会見し、午後4時36分、東京電力福島第一原子力発電所において、原子力災害特別措置法の第15条1項2号に該当する事象が発生し、原子力災害の拡大の防止をはかるための応急の対策を実施する必要があると認められるため、原子力緊急事態宣言を発したことを明らかにしました。これに関連し、枝野官房長官は「現在のところ、放射性物質による施設の外部への影響は確認されていません。したがって、対象区域内の居住者、滞在者は、現時点では直ちに特別な行動を起こす必要はありません。あわてて避難を始めることなく、それぞれの自宅や現在の居場所で待機し、防災行政無線、テレビ、ラジオなどで最新の情報を得てください」と呼びかけました。
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上は、NHKニュースです。非常に重要なニュースですので、注意しておいてください。この宣言とは、
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原子力緊急事態宣言
原子力災害対策特別措置法第15条に定める下記の原子力緊急事態に至った場合、内閣総理大臣による原子力緊急事態宣言が発出される。この宣言により、国は原子力災害対策本部(本部長:内閣総理大臣)の設置、原子力事業者、国の各機関、関係自治体等に対する必要な指示等を行うとともに、原子力災害現地対策本部(本部長:副大臣)をオフサイトセンターに設置し、原子力災害合同対策協議会が組織される。
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ということです。そこで、この宣言を発動するための基準を見ますと、
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緊急事態判断基準(15条事態)
国は、原子力災害対策特別措置法第10条にもとづく原子力事業所からの通報後、引続き原子力事業所の状況、放射線量などに関する情報を入手し、原子力災害対策特別措置法第15条に該当するかどうかの判断を行う。また、該当すると判断した場合には、緊急事態宣言を発出し原子力災害対策本部を立ち上げる。
緊急事態判断基準(15条事態)は以下に示すとおりである。
・原子力事業所または関係都道府県の放射線測定設備により、事業所境界付近で500μSv/hを検出した場合
・排気筒など通常放出場所、管理区域以外の場所、輸送容器から1m離れた地点で、それぞれ通報事象の100倍の数値を検出した場合
・臨界事故の発生
・原子炉の運転中に非常用炉心冷却装置の作動を必要とする原子炉冷却材の喪失が発生した場合において、すべての非常用炉心冷却装置の作動に失敗すること、等
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となっております。このいずれもが、極めて重大な事故の発生を意味しております。500μSv/hの放射線というのは、
http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/anshin_level.htmlによりますと「疫学的に遺伝的影響が出ない範囲」となっていますから、これを上回ると、そういう影響の出る事態です。二番目は通常は放射線が漏出するとは思えないような場所で、放射線が観測されていることを意味するのだと思います。三番目はかつてJCOで起きたような事故です。四番目は「原子炉を止めないといけない事態なのに、止めるのに失敗した場合」です。
さて、今回の政府の説明は、いずれにも該当していません。該当しないのに、宣言を出した理由は、「予防的措置」だと説明されています。しかし、予防的措置のためにこの宣言を発動して良い、とはどこにも書かれていません。最後の「等」を拡大解釈すれば可能ですが、それは、こういった事態に匹敵するような深刻な事態であることを意味します。
念の為に、法令を見ました。原子力災害特別措置法の第15条1項2号とは、
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第十五条 主務大臣は、次のいずれかに該当する場合において、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その状況に関する必要な情報の報告を行うとともに、次項の規定による公示及び第三項の規定による指示の案を提出しなければならない。
一 第十条第一項前段の規定により主務大臣が受けた通報に係る検出された放射線量又は政令で定める放射線測定設備及び測定方法により検出された放射線量が、異常な水準の放射線量の基準として政令で定めるもの以上である場合
二 前号に掲げるもののほか、原子力緊急事態の発生を示す事象として政令で定めるものが生じた場合
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のことです。その政令とは、
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4 法第十五条第一項第二号 の原子力緊急事態の発生を示す事象として政令で定めるものは、次の各号のいずれかに掲げるものとする。
一 第四条第四項第二号に規定する場所において、当該原子力事業所の区域の境界付近に達した場合におけるその放射能水準が前項第一号に定める放射線量に相当するものとして主務省令で定める基準以上の放射性物質が主務省令で定めるところにより検出されたこと。
二 第四条第四項第三号に規定する場所において、当該場所におけるその放射能水準が一時間当たり五百マイクロシーベルトの放射線量に相当するものとして主務省令で定める基準以上の放射性物質が主務省令で定めるところにより検出されたこと。
三 原子炉の運転等のための施設の内部(原子炉の本体の内部を除く。)において、核燃料物質が臨界状態(原子核分裂の連鎖反応が継続している状態をいう。)にあること。
四 前三号に掲げるもののほか、実用発電用原子炉の運転を非常用の中性子吸収材の注入によっても停止することができないことその他の原子炉の運転等のための施設又は事業所外運搬に使用する容器の特性ごとに原子力緊急事態の発生を示す事象として主務省令で定めるもの
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です。一は施設内部の深刻な放射能漏れ、二は広範囲の放射能漏洩です。三は、原子炉外部で核反応が起きている、ということです。四は原子炉を止められない、ということです。
こちらには「等」はついていませんから、予防措置でこの宣言をすることは、考えられません。それをすると、法令違反だと思います。
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- 2011/03/11(金) 20:55:07|
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