http://francemedia.over-blog.com/m/article-70296514.html本家アメリカを除くと、日本と双璧の原発大国であるフランスのル・モンド紙の記事がネット上で翻訳されている。ここで指摘される「原子力ロビー」の情報統制にあっさり洗脳されるほど、愚かなことはない。
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福島原発 「東電の罪」と「原子力ロビー」(仏ル・モンド紙報道)
3月26日 23時45分(日本時間27日7時45分)
仏日刊紙ル・モンドは26、27日版紙面で福島原発の状況と東京電力に関する特集記事を掲載している。「日本人は原子力災害を意識し始めているものの、未だ事故の重大性には気づいていないようだ」と冒頭で同紙の東京特派員は語る。特派員によれば、「新聞、民放テレビ局、インターネットのブログなどで語られる原子力専門家の話を聞いていると、この一連の悲劇の背景に「原子力業界のロビー活動」が見え隠れしている」という。
日本の「原子力ロビー」
この「原子力ロビー」には原子力事業を総括する経済産業省と同省の管轄である原子力安全・保安院、電力各社、電気事業連合会(電事連)、そして発電所を建設する東芝や日立といった産業界の大企業が関与し、「非常に大きな資産と影響力」を誇っているという。また、原子力関連の官庁からの天下り社員が送られることにより、完全な「情報統制」を行うだけでなく、出版やテレビ局を通じて大規模な広告キャンペーンを繰り広げ「原子力は100%安全である」という神話を築いて来た。さらに、現在の与党民主党は原子力エネルギー業界出身の組合員が多い労働組合「連合」を支持層にしているため、2009年の政権交代後もこの状況に変化はなかった。同紙は、「この行政、監督官庁、原発建設企業そして電力会社間の緊密な関係が原発反対派を黙殺し、さらに原子力に関するあらゆる疑問を回避してきた」と指摘。電力各社は「1970年代以降から度重なる原発事象を隠蔽、改ざんし続けて来た。当時最も批判が集中したのは東京電力である」と付け加える。
安全よりもコスト削減
ル・モンド紙は未確認の情報とした上で、「電力各社は長期的な原発の安全性よりも短期の利益勘定を優先し、世界で最も地震と津波が多い日本国土の危険性を考慮していない」という東電元社員の証言を紹介。福島原発は1956年に発生したチリ地震をモデルにして5,5メートルまでの波にしか耐えられるように設計されていなかったたため、地震発生時原子炉は自動停止したものの、冷却システムは津波の影響で完全に機能を失ってしまった。東京新聞では福島原発の建設に関わった当時の東芝の技師が「設計時の耐震基準が低すぎた」と告白している。
経済産業省は「この危機が落ち着いた段階で東京電力の処遇を決める」としているが、「それまでの間、一体何人の被害者が出るのだろうか?」と同紙は問う。
「日本が直面しているのは自然災害ではなく、人的災害である」という東芝元社員の証言、「福島原発は異常事象と作業員の被曝が日本で最も多い発電所」という共産党吉井英勝議員の告発、さらに原発保全作業は下請会社の経験乏しい作業員が行い、今現在大災害の現場で戦っているのもその作業員達である事実も判明している。事故後の対応の遅さに加え、地震と津波が発生してから2日間、周辺住民への被害よりも設備の保全を優先させていた経緯も厳しい批判を受けて当然だ。実際、地震の際に福島原発に派遣されていたフランス原子力企業アレバ社の8名は危険性をすぐに察知して真っ先に退避している。
過信した大企業 東京電力
今日3月26日は東京電力が福島原発1号機の操業を開始して丁度40周年を迎える。
原子力エネルギーに着手して40年目の今日、東京電力は重大な原子力災害を引き起こす直前の状態にまで追いつめられている。さらに、事故後の対応が批判に晒されているにも拘らず、ガス価格の値上げを理由に4月の電気料金を値上げすることを発表。事故発生から29時間後に行われた記者会見以降公式の場に姿を現さない清水正孝社長にも批判が集中している。
東京電力は従業員3万8千人と(2009年度)売上げ5兆円と1337億円の純利益を誇る世界4位の大電力企業である。
「原子力安全・保安院と経産省を始めとする原子力推進ロビーに支えられ「奢り高ぶった」企業の体質が、原発内の事象や技術報告の隠蔽を生み出した温床ではないか」と同紙は問う。
しかし今回の事故により東電グループは解体の危機にあり、同社の原子力計画も中止を余儀なくされるだろう。ましては2012年に予定されていた新規原子炉2機の工事着工などは夢の話だ。
参考記事
"Silences coupables", Le Monde, 26-27/03/2011
"La compagnie d'électricité Tepco, arrogante et dissimulatrice", Le Monde, 26-27/03/2011
- 2011/03/28(月) 23:14:02|
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「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」というものがある。
http://kkheisa.blog117.fc2.com/そもそも私はこの会のことを知らず、更には、柏崎原発の事故が、これほどの重大なものであったということを、全く認識していなかった。不明を恥じざるを得ない。この事故を例によって隠蔽と強圧によって無視したことが、今回の悲劇を招いたのである。このことを日本国民は、はっきりと認識しなければならない。
同会が3月23日に福島原発事故についての見解を公表していた。重要なので読むべきだと思う。
http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf
- 2011/03/28(月) 23:09:06|
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山口県立大学国際文化学部教員の
安渓遊地(あんけい・ゆうじ)という方のHPに、原発に関する重要な情報が沢山出ているのを発見した。特に以下の記事は重要である。
http://ankei.jp/yuji/?n=1051================
毎日新聞福島版から引用
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20100618ddlk07040183000c.html
福島第1原発:2号機トラブル 原子炉水位が低下 11年半ぶり自動停止 /福島
運転中の福島第1原発2号機(大熊町)が17日、発電機の故障で自動停止したトラブルは、原発を安全に停止するために必要な外部からの代替電力の供給が行えず、原子炉の水位が約2メートル低下する深刻な事態だった。東京電力は同日、県と原子力安全・保安院にトラブルを報告したが、復旧のめどは立っていない。
東電によると、同日午後2時50分ごろ、タービン建屋内の主発電機を制御する「界磁遮断機」が故障し、発電機とタービンが停止。タービンを回す蒸気の発生を止めるため、原子炉も停止した。原子炉本体に問題はなく、放射能漏れなど外部への影響はないという。同原発の自動停止は98年11月の3号機以来、約11年半ぶりだった。
原子炉が止まった場合、外部の送電線から発電所内の電力を供給するが、切り替え装置が機能せず、2号機全体が停電。このため、原子炉内に冷却水を給水するポンプが動かなくなった。十数分後に非常用のディーゼル発電機が起動し、代替ポンプで水位を回復させた。
水位の低下は炉心の燃料棒を露出させ、原発にとって最も危険な空だき状態を引き起こす恐れがある。原子炉は停止しても、停止直後の燃料棒には熱が残っているため、重大な事故になる可能性がある。今回も水位の低下が止まらなければ、緊急炉心冷却装置が作動していた。【関雄輔】
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この記事について安渓氏は次のようにコメントしている。
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・発電機が止まった後、外部電源への切り替えに失敗したのはなぜか?
・非常用ディーゼル発電機の起動に時間がかかったのはなぜか?
・水位が2メートル下がったというが、正確に把握できているのか?
・緊急の炉心冷却は今回で3度目だが、炉の急冷による影響はどうなっているのか?
・隣の福島第一原発3号機をはじめ同型炉にも同じ問題があるのではないか?
・東電のプレスリリースでは事故の深刻さは伝わらないのではないか?県や国にはきちんと伝わっていたのか?
福島第一原発のような沸騰水型原発では炉内の水位の把握が難しく、水位計の信頼性については前から議論がありました。緊急炉心冷却系の作動は設計では、生涯で3回以内だったように思います。もちろん、同型炉の3号機でのプルサーマル実施などもってのほかです!!!
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二号機の圧力容器や格納容器が早々と壊れたのには、十分な理由があったのだ。
- 2011/03/28(月) 21:48:02|
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ロイターのHPを見たら、二年ほど前の東電の清水社長の記事がよく読まれていた。面白いので引用しておいた。
http://president.jp.reuters.com/article/2009/07/07/4DD780F0-6524-11DE-B9B8-AF183F99CD51.php
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嵐になれば現場にみんな駆けつける。パブリックユーティリティであるという点が会社のDNAです。その組織の原動力となる人材には高い倫理観や社会的使命感が求められます。
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もし東電が、本当に「高い倫理観や社会的使命感」を持っていれば、決してこんな事態を惹起しなかっただろう。現場にみんな駆けつけているようにも見えない。社長は本社で寝込んでいた。
ぜひ、今こそ、高い倫理観と社会的使命感を発揮して、現場にみんなで駆けつけて欲しい。東電のみならず、世界と人類の未来まで掛かっている。
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安定志向はノー。チェンジ、チャレンジ|東京電力社長
「いる社員、いらない社員」有名社長のわが本音
プレジデント 2009年3.16号
変革期には「3Cの精神」が大切。チェンジ、チャレンジ、そしてコミュニケーションです。
小山唯史=構成 的野弘路=撮影
発電のための燃料となる原油の価格は昨年前半に暴騰。2007年夏の地震以来、柏崎刈羽原発は停止したまま……厳しい状況のなか、昨年6月就任したのが清水正孝社長だ。従来のトップたちの経歴とは異なる異色ぶりが注目を浴びた。
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東京電力 清水正孝社長●1968年、東京電力入社。資材部長、常務、副社長を経て、2008年6月より社長。「組織が大きくなると、縦割りの弊害が出てくる。その際、組織を横断する『串刺し』の考え方が大事になります。人の交流や組織の運営で『串刺し』を徹底的に行えば、全体最適が生まれるのです」
――現在の経済状況をどう見ますか。御社の業績に与える影響は?
電力の需要という窓口から世の中を見てみますと、昨年12月は異常なほどの落ち込みです。産業用大口電力の需要は、日本の全電力会社の合計で対前年比10%以上も減っています。とくに鉄鋼や機械の落ち込みが顕著です。
過去にも減少期は第一次石油危機、第二次石油危機、円高不況、バブル崩壊、金融危機とありましたが、減少から回復まで12~18カ月かかっています。その経験則に当てはめれば、現在の状況は最低1年は続くと思わざるをえません。
しかも、今回の落ち込みは、過去の減少期に比べ異常なほど大幅です。「100年に一度」という表現が、あながち誇張とは言えないほど。当社の業績を左右する最大の要因は電力の需要動向なので、非常に厳しいです。一方、原油価格は昨年秋口から下落に転じましたが、燃料代の上下は、長期的に見れば業績への影響はニュートラルです。タイムラグはあっても電力料金に反映されるからです。
――こういう時期に、経営者やビジネスパーソンにとって大切な心構えや資質は何だとお考えですか?
私は以前から「看脚下」という禅の言葉が好きで、社員にも折に触れ話してきました。暗闇でも足元をしっかり見ろ、ジタバタするな、原点を見失うなというほどの意味です。この言葉を今こそ噛みしめたい。社員たちにも、そうあってほしいと思っています。
――社長自身、出向も経験され、人材としては異色だと評されてきました。
40代でケーブルTV会社に出向し、大変なカルチャーショックを受けました。外に出てみて初めて東京電力がいかに「お役所」かということに気づいたのです。前例主義、たらい回し。コスト感覚も、メーカーから出向してきたほかの同僚とは全く違う。これまでのやり方は通用せず、ちょっと慌てましたね。
そのときにも、前述の禅の言葉を思い返して、「いや、仕事の表面上のやり方や職場の体質は違っても、仕事の基本は変わらないはずだ。今自分がすべきことは何か」と自分に言い聞かせました。ジタバタしそうなときほど足元をしっかり固めることが大切だと痛感しました。
変革期に必要な「3Cの精神」とは
――かつては役所的な体質だったとのことですが、現在の東京電力が求める人材像はどんなものですか?
00年に電力の自由化が行われたため、これが最大のインパクトとなって、求める人材像が変わってきました。
自由化とは、当社にとって、規制産業だったものが市場のメカニズムによって競争するようになるということです。そのため仕事を徹底的に見直す必要がありました。自由化に向かう時期、私は資材部長として発電所施設の部品・部材の一品一品の価格や調達方法まで徹底的に調べる方向に舵を切り、コスト削減を図りました。それまでは必要なコストを積み上げてから利潤を上乗せして料金設定していたので、コスト削減といっても従来とは内容が全然違います。
現在では、こういった自由化・市場化の時代に向けた人材が求められるようになっています。
ただ、企業像を考えた場合、うちは公益事業であることが最上位にきます。電力の安定供給。嵐になれば現場にみんな駆けつける。パブリックユーティリティであるという点が会社のDNAです。その組織の原動力となる人材には高い倫理観や社会的使命感が求められます。
そのうえで、自由化が求めるエクセレントカンパニーであるためにチャレンジングな精神も欠かせない。これらを兼ね備えた人材の揃うエキサイティングカンパニーでありたいと考えています。
とくに変革期には「3Cの精神」が大切。チェンジ、チャレンジ、そして、臨戦態勢になるほど重要性が増すコミュニケーションです。社内研修でも一つの柱として「変革リーダー研修」というものを階層別に行っています。従来の延長線上にこだわらず、物事を変えていく変革型リーダーの養成です。
――自由化の「前」と「後」とでは、入社する側の意識も変わっていますか?
明らかに違いますね。昔は「東京電力に入りたい」という安定志向が強かったのは否めません。現在は、「東京電力に入って、こういう仕事をしたい」と職種に対する意識が明確です。燃料調達など「商社的に国際舞台で活躍したい」とか「自分の専門の法務の仕事を」など答えが具体的です。昔は「何をやりたいの?」と聞くと、「まあ企画あたりを」などと漠然としていましたからね。
――自由化以降、人材確保で力を入れている分野はありますか?
さまざまな分野において、プロやベテランを通年採用(中途採用)の形でかなりの人数を獲得しています。たとえば、販売分野では現在、IHやヒートポンプなど提案営業を重視していますので、各種業界の営業経験者やゼネコン出身、コンピュータ関係者など幅広い世界から。ダイバーシティ推進室長には外資系化粧品会社からプロを招いたり、PR施設には飲料会社から転職した女性、あるいは料金不払いの世帯に対する債権回収のプロ等々も採用しています。
現業技術の部門でも金属絶縁の分野で学会レベルの人材も多数いれば、土木や建築技術にも女性が進出しています。
――今回の景気悪化による人材像や採用数の変化はありますか?
当社の採用のトレンドを申し上げますと、「失われた10年」と呼ばれた1992~2003年の長期不況期に、最高の人数を採用しています。減らしたのはむしろ回復期に入ってから。
つまり、不況を理由に採用数や人材像は変えてはいません。変化の最大の要因は前述のとおり事業環境の変化、すなわち自由化です。
今回の不況期も、製造業などは採用減の方向なのでしょうが、当社は逆です。今後の事業展開、成長戦略、環境問題対策を考えたとき、人材確保の必要性は高まっています。原子力分野や海外展開(コンサルティング事業や案件投資)などのための要員増が見込まれます。
- 2011/03/28(月) 20:29:50|
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頭がクラクラするニュースが立て続けに出ている。
現状を整理すると、
(1)圧力容器に穴があいており、
(2)そのために水がたまらないで炉心が半分むき出しの状態で、
(3)格納容器も完全にはとじておらず、
(4)高濃度の放射能をもつ水があふれてはタービン室に膨大に溜まっており、
(5)その上、その水は周辺の溝にも溢れている。
(6)多分、海にも流れ出している。
という事態である。これはもう大変なことだと私は考える。一刻も早く、石棺か何かしらないけれど、何らかの方法で外部への放射性物質の漏出を防ぐ大規模な対策をとるべきである。このままチンタラやっていたら、とてつもない規模の放射能汚染が生じ、全員、撤退になってしまいかねない。
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福島原発、建屋外の水たまり 高い放射線量
2号機地下通路、1000ミリシーベルト以上
2011/3/28 17:58 (2011/3/28 18:39更新) 日経新聞
東京電力は28日、福島第1原子力発電所1~3号機のタービン建屋の外に水たまりがあり、2号機付近で表面から毎時1000ミリシーベルト以上の放射線を確認したと発表した。
水たまりはタービン建屋とつながる地下通路にあり、放射線管理区域の外側。放射線量は1号機付近では同0.4ミリシーベルト。3号機はがれきなどがあり、測定出来なかったという。
東電によると、水たまりが見つかったのは27日午後3時半ごろで、同日中に放射線量を測定した。目視では水位の変化は確認できないという。水たまりが出来た経緯などは調査中としている。
地下通路は各号機の冷却用にくみ上げた海水を送る配管が敷設され、人間も通れる。タービン建屋から地下を通って海側出入り口につながる構造で、両端は立て坑。通路の長さは1号機が162メートル、2号機が76メートル、3号機が74メートル。深さはそれぞれ1号機が16.1メートル、2号機が15.9メートル、3号機が25.7メートル。
放射線量は海側出入り口に近い通路で測定した数値という。
福島第1原発を巡っては、26日の調査で、2号機タービン建屋地下のたまり水からも毎時1000ミリシーベルト以上の放射線量を測定している。
- 2011/03/28(月) 18:42:16|
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とんでもなく恐ろしい知らせだと私は思うが、なぜか東電は平気な様子である。信じられない。燃料棒を閉じ込めている圧力容器に穴が開いているなら、もう半ば露出しているようなものである。しかも、下の方に空いていれば、水を入れるとどんどん溢れて、汚染された水が出てくる。それがタービン室の下や周辺の溝に溜まっているようである。
穴が開いている理由は二つ挙げられている。ひとつは、
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底部には、計測装置などを外部から差し込む貫通部などがある。その周辺から漏れている可能性が考えられる。
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である。もうひとつは、
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東電は、水面から露出した核燃料が過熱して損傷した可能性を認めている。専門家によると、核燃料を束ねた燃料棒が損傷して崩れ、圧力容器下部に落下してかたまりになると、表面積が小さくなって効率よく水で冷やせなくなる。極めて高温になった燃料が圧力容器の壁を溶かして穴を開けた可能性もある。
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これはいわゆるひとつのメルトダウンというやつである。
圧力容器に穴が空いていれば、冷却装置を作動させても、水が漏れるので、きちんと冷やすことはできない。圧力容器の穴を塞ぎに行くような、危険な作業は決してできないだろう。
極めて危機的な状態にあると言わざるを得ない。どこをどう考えたら「健全性は維持」などと言えるのか、私には理解できない。
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東電、核燃料の圧力容器損傷に言及「健全性は維持」
2011年3月28日15時0分 朝日新聞
燃料棒とペレット、たまり水の場所
東日本大震災で被害を受けた福島第一原発1~3号機について、東京電力は28日未明の会見で、核燃料を入れた鋼鉄製の圧力容器が損傷して容器の外と通じた状態になっている可能性を認めた。東電は「穴が開いているイメージ」と説明。燃料を冷却するために注がれた水に放射性物質が溶け込み、外部に漏れ続けているとみられる。
1~3号機は津波で非常用の電源が失われ、圧力容器内の水を循環させて冷やすシステムを動かせなくなった。このため圧力容器につながる配管にポンプを接続し、水を注入する作業が続いている。核燃料を水没させ、発電停止後も出続ける崩壊熱を直接、冷やすのが狙いだ。
しかし1~3号機いずれでも、圧力容器の水位計の数値は思うように上がっていない。東電は28日未明の会見で、注水しても圧力容器が満杯にならない原因を、「(圧力容器の)下の方に穴が開いているイメージだ」と認めた。穴が開いた理由は「わからない」という。
圧力容器は燃料ペレット、燃料被覆管、格納容器、原子炉建屋と合わせた5重の放射能閉じ込め機能の中で、最も重要な位置づけだ。福島第一原発の圧力容器は厚さ16センチの鋼鉄でできており、底部には、計測装置などを外部から差し込む貫通部などがある。その周辺から漏れている可能性が考えられる。
東電は、水面から露出した核燃料が過熱して損傷した可能性を認めている。専門家によると、核燃料を束ねた燃料棒が損傷して崩れ、圧力容器下部に落下してかたまりになると、表面積が小さくなって効率よく水で冷やせなくなる。極めて高温になった燃料が圧力容器の壁を溶かして穴を開けた可能性もある。
東電は一方で、内部の圧力が大気圧より高く保てているため「(圧力容器は)完全に壊れているわけではない」とも説明。「チェルノブイリのように破裂して(燃料が)外に出ている状態ではない」とし、容器の「健全性」は保たれている、という見解は変えていない。
この状態で注水を続けた場合、放射能を高濃度に含む水の外部流出が長引く可能性があるが、東電は、核燃料を冷やすには注水しかないとの立場だ。汚染水を外部に流すのではなく、本来の循環による冷却システムを再起動させる作業も進んでいるが、電源の確保などで難航している。
一方、原子力安全委員会(班目春樹委員長)は28日午前、臨時会を開き、2号機のタービン建屋地下1階にたまっている通常の10万倍の濃度の放射能を含む水について、一時溶融した燃料と接触した格納容器内の水が、何らかの経路で直接流入したと推定されると発表した。
ただ、屋外では極端に高い量の放射線は計測されていないとし、今後も水の漏出が続くとしても、炉心に注水し、蒸気を放出して冷却するという現在の冷却方法は継続可能と結論づけた。
- 2011/03/28(月) 18:33:17|
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天野事務局長の、
「福島第1原発の原子炉の炉心と使用済み核燃料棒が冷却のための水に浸っているかどうか、当局がまだ確認できていない」
という発言は重要である。これが出来ていなければ、燃料棒がむき出しになっていることを意味するからである。
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福島第1原発事故、終息には程遠い状況=IAEA事務局長
2011年 03月 28日 09:07 JST
[ニューヨーク 26日 ロイター] 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙によると、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は、東日本大震災で被災した東京電力福島第1原子力発電所について「事故の解決には依然程遠い」状況との認識を示した。NYTの電話インタビューで明らかにした。原発の危険な状況があと数週間は続く可能性を示した。
天野事務局長は、NYTに対し、福島第1原発の原子炉の炉心と使用済み核燃料棒が冷却のための水に浸っているかどうか、当局がまだ確認できていないと述べた。
電力系統が一部回復したことを数少ない「前向きな兆候」と評価したうえで「事故終息に向けさらなる努力が必要」と指摘。ただ、日本の対応を批判しているわけではない、と述べた。
天野事務局長は、冷却用プールにある使用済み核燃料棒の状況を最大の懸念要因に挙げ、プールへの給水作業の効果は分からないとしている。
プールに十分な水があっても、冷却システムが復旧しなければ「温度が上がり」、新たな放射線漏れの恐れがあると指摘した。
- 2011/03/28(月) 15:31:00|
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未だに、「原発事故なんか、たいしたことはない」とお考えの方が多いのに驚きます。そういう人に説明する必要を感じたので、以下にまとめておきました。
私が事態を憂慮している理由は、以下の三点です。
================
(1)放射能が健康に与える被害は、放射性物質が拡散しても変わらない。
(2)燃料棒は冷却し続けない限り、暴走する。
(3)現在対応している人々は、正常な言語を用いていない。
================
この三点から、私は非常に恐ろしい事態が生じると恐れています。
(1) 第一点は放射能の健康に与える被害に関してです。
(1-1)放射性物質が人に与える被害は、拡散しても変わらない、と考えるべきなのです。
http://ameblo.jp/anmintei/entry-10831487863.htmlで詳しく説明しましたが、放射線から病気になるのは、放射線が遺伝子に当たってそこを壊してしまうからです。これには「安全な下限」というものはありません。たとえば、次の3つの場合を考えてみましょう。
===========
(1)1人に1シーベルトの放射線が当たった場合
(2)1000人に1ミリシーベルトの放射線が当たった場合
(3)百万人に1マイクロシーベルトの放射線が当たった場合
===========
当たり前のことですが、いずれの場合も、
破壊される遺伝子の数は同じです。遺伝子を破壊された細胞が大人しく死んでくれれば問題ないのですが、細胞は遺伝子を無理にでも修復して生き延びようとします。運が悪いと細胞が変な修復をしてしまい、それが癌細胞になります。ですから、破壊された遺伝子から癌死などが生じる確率もだいたい同じです。つまり放射能が拡散して薄まっても、
被害の確率が下がるだけで、被害の総数は変わらないのです。少なくとも、遺伝子に対する被害は厳密に同等です。
この場合、どんなに一人当たりの放射線被曝量が少なくとも、人数が多くなれば被害は生じます。それゆえ人間が放射線の悪影響を防ごうと考えて行動する場合、
「ある程度以下なら安全と考えてはならない」
というのが科学的に合理的な行動基準です。実際、ICRP(国際放射線防護委員会)の2007年の勧告も、この立場を維持しています。詳細は、
http://ameblo.jp/anmintei/entry-10832471175.htmlを御覧ください。これは保守的な基準ですが、放射能の長期的影響がわからない以上、この基準で判断するのが合理的なのです。
(1-2)この基準を採用すると、原発から離れて放射性物質の濃度が下がっても、全然、安心できません。なぜなら、拡散して濃度が下がっても、ただ広がるだけですから、被害に合う人の数が増えてしまうからです。宝くじ一枚一枚の確率が下がっても、発行枚数が増えたら、当たりの金額が同じなのとまったく同じ原理で、放射性物質は拡散しても、まったく安全にならないのです。誰が当たったかが、わからなくなるだけです。首都圏に薄い放射性物質が広がると、三千万人が宝くじを買わされるので、被害は拡大します。また、子供の宝くじは当たり率が大人よりも遥かに高いのです。
「健康に影響はない水準です」
というのは、
「健康に影響が出てもバレない水準です」
の意味です。
(1-3)これは、生態系についても同じことが適用されます。たとえば、海に落ちた放射能で汚染された水は、拡散してもダメなのです。
(1-4)被曝には、外部被曝と内部被曝とがあります。身体の外にある放射性物質から出てくる放射線を浴びるのが外部被曝で、この場合は離れれば良いのです。しかし、身体の内部に放射性物質を取り込んでしまった場合、逃げようがありません。身体は至近距離から放射線を浴び続けます。
(1-5)公衆の健康に関する問題は、内部被曝が問題です。ごくわずかの放射性物質を、鼻や口や傷口から取り込むだけで、長期にわたって放射線を浴び続けてしまうことになれば、長期的には身体に悪影響があります。
(1-6)自然に存在する放射性物質からも、我々は外部被曝や内部被曝を受けており、健康に悪影響を生じています。それ以外の人工放射性物質から余計な放射線を浴びるのは、たとえ微量でも、余計な死の宝くじを買わされることになります。
(2)第二は、燃料棒の状態です。
(2-1)原子炉の炉心は、運転時の1%くらいの発熱を何年も何十年も継続します。福島第一発電所には、3機の原子炉が使っていた核燃料(千本以上)のほか、6機の原子炉が溜め込んだ、一万本の使用済み核燃料があります。100万キロワットの原発は、効率が悪くて三割しか電気になりませんので、300万キロワット相当の熱量を出します。稼働中の三つの原子炉の合計で600万キロワットの熱量を、千本程度の燃料棒で出していました。その1%は6万キロワットで、一本あたり、ざっと60キロワットくらいあるわけです。ということは、60キロワット×1万本=60万キロワットというオーダーになります。計算はいい加減ですが、だいたいの桁数としてはあっているはずです。
こんなすさまじいものを、マッチポンプでいつまでも冷やし続けるのは無理です。使用済みといっても、未使用のウランや生成されたプルトニウムがたっぷり入っているので、持っているエネルギーはさほど変わりません。
(2-2)ですから、冷却系を回復しない限りは、原発は落ち着きません。しかし、原子炉のような複雑なシステムが、地震と津波と水素爆発でやられたのでは、どう考えても復旧は困難です。
(2-3)その上、タービン室周辺は高濃度の放射性物質を含む水で汚染されてしまい、人が近づけないので、ポンプなどの修理も困難です。
(2-4)以上のことから、いずれかひとつの原子炉あるいは使用済燃料プールが、再臨界などの事態になる可能性は排除できません。そうなると、放射能濃度が急激に上昇するため、すべての原子炉に接近できなくなります。できなくなったら、すべての燃料棒・使用済み燃料棒が加熱して暴走します。
(2-5)菅首相が25日の会見で「悪化を防ぐという形で対応しているが、予断を許す状況にはなっていない」と言いましたが、これは、そういう事態が起きないと保証できない状態だ、という意味だと私は解釈しました。
(3) 第三に、原子力安全欺瞞言語を恐れるからです。これは、テレビをご覧になっていただければわかりますが、みんな、きわめて欺瞞的な言葉を使います。
(3-1)彼らは、
「事故」を「事象」と言います。
「爆発」を「爆発的事象」と言います。
「危険性」を「安全性」と言います。
「健康に被害があっても原発のせいだとバレません」を「健康に影響はありません」と言います。
こういう欺瞞的な言葉を使っていると、頭の作動が狂ってきて、マトモな思考ができなくなります。原子力関係者はほぼ全員、この異常な言語で思考するので、あたまが作動しなくなっていると私は考えます。みんなウソツキであると言わざるを得ないのですが、ウソツキにこんな深刻な事態を収拾できるとは思えません。
(3-2)なぜ彼らがウソツキになったかというと、原子力の利用が正気の沙汰ではなないからです。使用済み核燃料のなかに含まれるプルトニウムは、極微量で人を殺す危険な物質ですが、その半減期は2万6千年です。数万年にわたって強い毒性を持つ物質を創りだして、それを「安全に管理」するのは不可能です。古くなった原子炉を廃炉にしようとしても、原子炉も格納容器もパイプも、放射線を浴び続けて放射性物質となっていますから、処理をしようにも容易に近づけません。こんなものを作り出しながら、電気を取り出して、それで楽しく暮らす、というのは正気の沙汰ではありません。それを、「原子力は今後も、安定的かつクリーンなエネルギー源」(国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長)などと言わないと、原子力は使えません。それゆえ、原子力は存在そのものが、ウソツキを産み出してしまうのです。
(3-3)事故が起こったときには、こういうウソツキに対応してもらうしかありません。それはとんでもなく恐ろしいことです。
- 2011/03/28(月) 10:50:26|
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『東洋経済』のオンライン版に以下の記事が出ていた。津波の犠牲者が数万人に達するのではないかと恐れていたが、それどころか、十万人規模になるようである。
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犠牲者は10万人規模のおそれ、厳しい状況認識を持ち長期的支援体制を(1) - 11/03/27 | 18:25
戦後最悪の災害となった東日本大震災。3月13日から26日まで福島県いわき市や宮城県気仙沼市で医療活動支援にあたった、永田高志医師(日本医師会救急災害医療対策委員会委員、九州大学病院救命救急センター特任助教、姫野病院勤務)に、被災地での医療支援の状況について聞いた。
――現場の医療支援活動の状況はいかがですか。
いわきでの支援活動のあと、3月24日の朝に気仙沼に入りました。日本医師会災害支援活動(JMAT)としては支援を被災地にランダムに送るのではなく、拠点ごとに集中して支援を投下する必要があると考えています。気仙沼はそのひとつで、私は適正な支援をするための情報収集の役割もありました。
気仙沼には東京医師会をはじめ、関東の大学病院など各地域からの支援チームが入り、気仙沼市民病院を拠点に医療活動を展開しています。東京医師会のチームが中心に、統率力を持って支援活動を円滑に運営していると感じました。
大震災発生から約2週間たって、もっとも厳しい時期は脱しつつあるようです。しかし、10日以上たった24日でも、気仙沼から仙台に向けて患者さんを広域搬送する必要があるなど、これまでの災害時にはこれだけ時間がたって広域搬送を要することはなく、それだけ状況が厳しいといえます。
気仙沼の厳しいところは、市街地が広範囲に被災し、医療活動にあたるべき地元の医師・医療関係者も被災してしまったことです。まずは、地元医師が自らの診療所を立て直さなければ医療活動に携われません。地域医療のことは地元の医師がもっとも知っています。患者さんもかかりつけの医師のほうが安心です。徐々に活動は回復していますが、通常であれば、外部からの緊急支援は、徐々に地元の医療機関に引き継いでいくのですが、こちらでは2~3カ月は外部の支援が必要になると思います。
――これから必要になる医療活動はなんでしょうか。
いま懸念していることのひとつは、医療支援が届いていない場所が多数あるということです。三陸地域は小さな集落が広範囲に点在しています。今の体制ではこうした小さな集落を回りきれていません。これを解消する必要があります。
今回、私は通常の緊急災害支援時の2倍の期間にあたる約2週間活動をさせてもらいましたが、それでも広大な被災地に対して何も出来ていないという「ある種の無力感」を感じています。
もうひとつ、日常の薬を届ける必要があることです。2週間が経過し、日常的に飲んでいる薬が切れてしまった人が増えています。こうした被災者たちを探して薬を届けていかなくてはなりません。
避難所の環境もとても危惧しています。過密、衛生状態により、インフルエンザや胃腸炎を起こすノロウイルスなど感染症が懸念されます。
私が訪ねた避難所のひとつは、公民館でしたがスペースに比べて人数が多すぎました。避難所では1人あたり4平方メートル以上のスペースが必要とされていますが、遥かに不足しています。トイレも大幅に足りません。また手洗いやお風呂など衛生用の水が圧倒的に不足していました。洗う水が不足していますから、アルコールで殺菌していますが、ノロウイルスはアルコールでは死にません。感染者が出ても隔離するスペースがありません。女性の生理用品の不足も問題です。
通常時であればさほど懸念するようなことがないことが問題になります。衛生環境の確保には保健師が努力していますが、医師にもトイレの数や密度など避難所のざっくりとした状態に注意してほしいとお願いしています。これらの感染症問題は普通の生活環境を取り戻せれば自然になくなります。水の供給や仮設住宅の建設などを一刻も早く進めるしかありません。
――気仙沼といわきで必要な支援に差はありますか。
やはり被災地の置かれた状況により差はあります。いわきは沿岸部の津波被害は厳しいですが、市域が広く、被災の程度が低い医療機関もあり、そうしたところでの対応ができました。しかし、水道が不足し、また物資も拠点となる集積所から、各避難所などに届ける末端の物流が混乱するなどの課題がありました。ただ、現時点では状態はよくなっています。一方、気仙沼は電力・通信も途絶し、街全体が被災したため、地域だけでの対応が困難です。
阪神淡路大震災は被災地域が狭かったので、必要とされる支援の内容がある程度似ていました。しかし、今回は被災地が非常に広い地域にわたっているので、地域ごとに必要なことが大きく違います。地域のニーズを把握して支援する必要を強く感じました。
いわきで特徴的だったのは、原発事故による放射線被曝問題です。被爆そのものが問題になる環境ではもちろんないのですが、一時現地には原発の情報がはっきりとは伝わらず、支援スタッフにも動揺がありました。私自身、専門的な教育を受けているにもかかわらず、恐怖を覚えました。医師として、平常心を保ち、正しく情報を得て的確に判断する重要性を改めて感じました。いわきは一時的に非難していた人たちも戻り始め、支援のシステムはできていると思います。
また、目立たない活動ですが、災害時には亡くなった方の死因を特定して死亡を確定する検案もとても大きな仕事になります。気仙沼で検案に当たっていた法医学の先生によれば、震災後3~7日ごろがピークだったそうですが、私が行った24日にも断続的にご遺体が運ばれてきました。
先生によれば、気仙沼では90~95%が溺水、5%が焼死だそうです。家屋の倒壊などいわゆる地震による被害がほどんどなく、津波の被害が圧倒的だったことがわかります。
復旧作業が進むにつれ、まだまだご遺体は見つかると思います。この状況では、私の経験では、10万人規模の方が犠牲になっていると想定するのが妥当だと思います。現地で活動している方に取材してもその程度という認識を持つ方が多かった。
救急医療にはオーバートリアージという考えがあります。緊急を要する場合には、症状を悪い方に想定し、治療を施すという考え方です。結果的にそんな治療までする必要はなかったとしても、治療が手遅れになるよりはいいということです。震災発生直後から大規模な救援体制を投入していればもっと救えたのではないかと残念です。
東京では死者・行方不明者で3万人弱という災害規模の認識があるように感じますが、そうした認識では被災地の支援・復旧活動が不十分になる恐れがあります。今までの災害の経験は通用しないような厳しい状況という認識で対応に当たる必要があります。細く長い支援を継続していかなければなりません。
(聞き手:丸山 尚文 =東洋経済オンライン)
- 2011/03/28(月) 02:17:16|
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毎時1シーベルト以上の放射線というのは、とんでもないことである。もう絶対に人は近づけない。これは何を意味するかというと、冷却ポンプを回復する工事ができない、ということである。既に何度か指摘したように、本格的な冷却系を回復できない限り、炉心の溶融は進んでいく。
何れかの原子炉から放射性物質がもろに漏れ出す事態になれば、いずれの原子炉にも近づけなくなる。人間が近づいて、冷却し続けてやらない限り、原子炉は暴走する。チェルノブイリでやったような、コンクリートの石棺で固める用意を始めねばならないのではなかろうか。
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福島第1原発:2号機の水で高い放射線量 排出作業を中断
東京電力は27日、福島第1原発2号機のタービン建屋地下で見つかった汚染水の水面から、毎時1000ミリシーベルト(1シーベルト)以上の放射線量が検出されたと発表した。測定限界を超えたため正確な値が分からないという。3号機でも水面の放射線量が毎時750ミリシーベルトと高い値だった。東電はこの日、2号機の汚染水を復水器へ排出する作業を始める予定だったが、放射線量が高いため作業員の安全確保が困難と判断し、作業を中止した。再開のめどは立っていない。【酒造唯、足立旬子、山田大輔】
汚染水から検出された物質の放射能濃度は放射性のヨウ素131(半減期8日)が1300万ベクレル、セシウム134(同2年)とセシウム137(同30年)がそれぞれ230万ベクレルなど(単位は1立方センチあたり)。いずれもウランやプルトニウムが核分裂してできる。
毎時1000ミリシーベルトという放射線量は、人が浴びると吐き気などの症状が表れる高い数値。3000~4000ミリシーベルトで約50%が死亡、6000~7000ミリシーベルト以上で99%以上が死亡するとされている。2号機では今月15日、原子炉格納容器につながる圧力抑制プールで爆発が起き、同プールの圧力が急激に低下。同プールが損傷して穴が開いている可能性がある。
27日会見した東電の武藤栄副社長は高い放射線量が検出された原因について「原子炉由来だと考えている。原子炉格納容器や圧力容器が破損しているとは考えにくく、弁やポンプが高温高圧で損傷した可能性が高い」と話した。東電によると、1~4号機のタービン建屋地下全てで放射性物質に汚染された水が見つかり、通常運転時の冷却水と比べた放射性物質の放射能濃度は1、3号機が約1000倍、4号機はほぼ同程度。水面での放射線量は1号機が毎時60ミリシーベルト、4号機が毎時0・5ミリシーベルトだった。
また、東電は27日、福島第1原発1~4号機の放水口南側約330メートルで26日午後に採取した海水から、基準の約1850倍もの放射性ヨウ素131を検出したと発表した。前日に採取した海水より数値が上昇している。
他に、セシウム134が約197倍、セシウム137は約133倍などで、いずれも前日より高かった。
保安院は「海の生物が放射性物質を吸収した後、人が食べるまでには希釈されることから、健康上の被害を考える必要はない」との見解を示した。
毎日新聞 2011年3月27日 20時34分(最終更新 3月27日 23時01分)
- 2011/03/27(日) 23:05:19|
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保安院の発表によると、ヨウ素131などの他に第1原発の放水口付近ではモリブデン99(半減期66時間)が、3号機タービン建屋地下で見つかった水たまりからはバリウム140(同13日)やランタン140(同2日)など、半減期が比較的短い放射性物質が検出されている。
とのことだが、半減期が66時間の放射性物質が放水口付近の海から見つかるということは、原子炉から海へと直行しているということではないだろうか。
これはつまり、冷却水がどこかで大きく漏れている、ということである。可能性が高いのは冷却水の循環パイプのどこかが亀裂を生じているということである。あんな複雑でやっかいなシステムなのだから、地震と津波と爆発とで、そうなっていない方が不思議なので、当然といえば当然だが、非常に恐ろしい事態である。
>定住している海藻類は問題が生じるかもしれないが、一般に広い海域を回遊している魚では無視できるレベルだとは思う
と眠たいことを平気で言う、野口邦和・日大専任講師(放射線防護学)の神経が恐ろしい。
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東日本大震災:福島第1原発事故 海水汚染、損傷燃料が発生源か--専門家分析
◇モニタリング強化へ
東京電力福島第1原発の放水口近くで25日に採取した海水から基準の約1250倍の放射性物質、ヨウ素131(半減期8日)が検出された問題で、枝野幸男官房長官は26日、海水の汚染状況の調査を強化する考えを示した。また、海水などから検出されている放射性物質の種類から、専門家は発生源を「原子炉の燃料が損傷したもの」と分析している。
枝野氏は26日の記者会見で、「より広範な地域で海水のモニタリングは強化しなければならない」と述べた。ただ、「海洋生物に影響を及ぼす可能性は低い」と強調した。
24日午前に同じ地点で実施した調査結果は、ヨウ素131は基準値の103・9倍で、1日で10倍以上に急増している。枝野氏は「1日で同じ地点の放射線量が大きく伸びていると報告を受け、東電、原子力安全・保安院に検討、分析をお願いした」と述べた。
また、国の原子力安全委員会は26日の会見で、「ただちに健康に影響するものではない」とする見解を示した。
保安院の発表によると、ヨウ素131などの他に第1原発の放水口付近ではモリブデン99(半減期66時間)が、3号機タービン建屋地下で見つかった水たまりからはバリウム140(同13日)やランタン140(同2日)など、半減期が比較的短い放射性物質が検出されている。
これらの放射性物質は核分裂によって生成されるため、11日の原子炉の緊急停止以降は減り続けている計算になる。
野口邦和・日大専任講師(放射線防護学)は発生源について「モリブデンやバリウムなどあまり外に出ないものまで検出されている。明らかに原子炉の燃料が損傷し、冷却水と混ざったものだ。定住している海藻類は問題が生じるかもしれないが、一般に広い海域を回遊している魚では無視できるレベルだとは思う」と話している。
東電は「放射性物質を含んだ水が海水に漏れだしている可能性が高い。(1~3号機のタービン建屋地下で見つかった)水たまりから出ている可能性も否定できない」とし、海水の調査を1日1回から2回に増やす。
福島第1原発では26日、1、2号機を中心に復旧作業が進められた。2号機では中央制御室の照明が点灯、原子炉に注入する水の真水への切り替えにも成功した。【小山由宇、日野行介、河内敏康】
毎日新聞 2011年3月27日 東京朝刊
- 2011/03/27(日) 22:09:30|
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広瀬隆はむかしむかしから、こういう事態が起きることを指摘してきた人である。ケーブルテレビでのみ、こういう見解が出ていることは、全く許しがたい事態である。
- 2011/03/27(日) 20:59:38|
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この方の見解は、説得力があると私は考える。
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「放射能被害を過小評価」 ロシアの科学者 福島原発を懸念
2011年3月27日 00:10
旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原発事故について、人や環境に及ぼす影響を調べているロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士が25日、ワシントンで記者会見し、福島第1原発事故の状況に強い懸念を示した。博士の発言要旨は次の通り。
チェルノブイリ事故の放射性降下物は計約5千万キュリーだが、福島第1原発は今のところ私の知る限り約200万キュリーで格段に少ない。チェルノブイリは爆発とともに何日も核燃料が燃え続けたが、福島ではそういう事態はなく状況は明らかに違う。
だが、福島第1はチェルノブイリより人口密集地に位置し、200キロの距離に人口3千万人の巨大首都圏がある。さらに、福島第1の3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電だ。もしここからプルトニウムが大量に放出される事態となれば、極めて甚大な被害が生じる。除去は不可能で、人が住めない土地が生まれる。それを大変懸念している。
チェルノブイリ事故の最終的な死者の推定について、国際原子力機関(IAEA)は「最大9千人」としているが、ばかげている。私の調査では100万人近くになり、放射能の影響は7世代に及ぶ。
セシウムやプルトニウムなどは年に1-3センチずつ土壌に入り込み、食物の根がそれを吸い上げ、大気に再び放出する。例えば、チェルノブイリの影響を受けたスウェーデンのヘラジカから昨年、検出された放射性物質の量は20年前と同じレベルだった。そういう事実を知るべきだ。
日本政府は、国民に対し放射能被害を過小評価している。「健康に直ちに影響はない」という言い方はおかしい。直ちにではないが、影響はあるということだからだ。
=2011/03/27付 西日本新聞朝刊=
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レベル6以上と海外専門家 スリーマイル超す事故(3/25 17:31)
【ワシントン共同】福島第1原発事故で、経済産業省原子力安全・保安院は国際的な評価尺度で「レベル5」の事故とする暫定評価結果を発表した。だが、周辺への影響は同レベルの評価を受けた米スリーマイルアイランド原発事故を既に上回っており「最終的にレベル6以上になるのは確実」との見方が海外の専門家に広がっている。
レベル5は、0から7までの8段階の尺度のうち上から3番目。「発電所外へのリスクを伴う事故」を意味する。
スリーマイル事故では、半径80キロ圏内に住む人が受けた放射線量は平均10マイクロシーベルトとされ、一般人の年間被ばく限度、千マイクロシーベルトの100分の1。健康に与えた影響は小さかった。
一方、福島では、周辺の水や食物などから国の基準を上回る放射性物質が検出されていることから、外部に漏れた量はスリーマイル事故を大きく上回るとみられる。事故後3~4日の間に放出されたセシウム137の量は、レベル7の評価を受けた旧ソ連チェルノブイリ原発事故後10日間の量の20~50%に相当するとの試算もある。
このため、フランス原子力安全局のラコスト局長は「レベル6の事故であることは明らか」と強調。米シンクタンクの科学国際安全保障研究所(ISIS)はレベル7に達する可能性もあるとした。
チェルノブイリ事故の人や環境への影響を調べたロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士は「福島事故はチェルノブイリ以上に深刻な事故になる恐れがある」と指摘。その理由として、燃料がチェルノブイリよりも多いことや、毒性の強いプルトニウムを含んだ燃料を使った原子炉があることを挙げている。
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- 2011/03/27(日) 20:47:44|
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下の記事は
日経新聞の「三つの可能性」という様式に従った解説記事である。ここでは可能性を以下の三つに分類している。
■可能性(1)消防ポンプ継続
■可能性(2)冷却機能が回復
■可能性(3)燃料棒溶け出す
しかし、これはおかしいのではないだろうか。というのも、消防ポンプによる循環だけでは、炉心の燃料棒を完全に水に浸すことはできないからである。圧力容器のなかの、熱くなった燃料棒に水をかけると、直ちに蒸発してしまう。すると、容器内の圧力は非常に高くなり、水を入れようとしても入らなくなる。それゆえ、どんなに頑張ろうとも、消防用ポンプでは、燃料棒のかなりの部分が露出する。露出すると、燃料棒は溶解する。それゆえ、
可能性(1)=可能性(3)
のはずである。
ところが、下の記事を読むと、消防ポンプで頑張っている限りは燃料棒が溶けず、それが止まると溶け出して大変なことになる、という印象を受ける。正確に言うなら、消防ポンプが止まると、燃料棒の全体が露出して、急激に溶ける、ということだと思う。それゆえ、三つの可能性とは、
■可能性(1)消防ポンプ継続=燃料棒の溶解が徐々に進む=その間、放射能汚染が広がり続ける
その1=幸運にも徐々に冷えて安定する。(1ヶ月以上掛かる)
その2=不運にも燃料棒の溶解によって圧力容器・格納容器が破損する
■可能性(2)冷却機能が回復=燃料棒の溶解が止まる
■可能性(3)燃料棒が急激に溶けて圧力容器・格納容器が破損する
ということになる。
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汚染水が状況好転阻む 福島原発、3つの可能性
2011/3/27 4:00 日経新聞
東日本大震災で甚大な被害を受けた東京電力福島第1原子力発電所では、冷却に使っていた海水を真水に代え、外部電源の復旧作業も少しずつ進んでいる。ただ、タービン建屋内に放射性物質に汚染された水がたまるなど作業環境は過酷さを増しており、計画通りに作業できず関係者にはいらだちも募る。膠着状態は続くのか、打開のきっかけはつかめないのか。今後の展開を考える。
■可能性(1)消防ポンプ継続
2号機で26日、原子炉冷却用の海水を真水に切り替え、25日から真水を注入している1、3号機と併せ、緊急停止した1~3号機すべてが本来の冷却の姿に近づいた。原子炉が備える多重の冷却系の稼働へわずかに前進したが、放射線量は依然として高い。これらの冷却系に電源を通じさせる作業は好転せず、燃料棒の過熱をかろうじて抑える現在の状況が当面、続きそうだ。
冷却水を真水にした点は不安材料の一つをなくせる。海水だと蒸発後に塩が残り弁や配管に詰まったり電気配線をさび付かせて電気を通した際にショートを起こしたりする心配があった。出光一哉・九州大学教授は真水への切り替えは「海水による悪影響を抑える望ましい対策」と解説する。
だが、ほかの作業が滞っている。外部電源を受ける体制は1~3号機で整い中央制御室の照明もついたが、その先へ電気を通す作業は進んでいない。特に冷却水を循環させるポンプの再稼働が遅れている。3号機のタービン建屋でその作業を進めようとした矢先に、たまった水から高い放射線量が検出され、除去する必要が生じた。
■可能性(2)冷却機能が回復
排水作業はいつまでに終えられるのか見通しが立たない。しばらく消防ポンプで冷却するぎりぎりの状態が続きそうだ。
期待される次の段階は、外部電源とつながった冷却用のポンプが復帰し、圧力容器内の温度を下げる体制が整うことだ。原子炉内の水は膨大な熱量をもつため、消防ポンプで水を送り込むだけでは簡単に冷えない。まず、強力な冷却系の回復を関係者は望んでいる。
さらに外部電源が復活し様々な計器類が動作すれば、事態の好転に弾みがつく。一部の計器で炉の状況がつかめるだけでも大きい。「どこが壊れているのかを明確にできれば、次の戦略を立てる際にも有効」(出光九大教授)という。このためにも建屋内にたまった水の除去が不可欠だ。
■可能性(3)燃料棒溶け出す
最も懸念される事態の可能性もまだ残る。燃料棒が溶けて放射性物質が外部に漏れ出すことだ。京都大学原子炉実験所の宇根崎博信教授は「消防ポンプの停止などのトラブルが起きれば圧力容器の温度が急に上がる恐れもある」と指摘する。その場合は格納容器の温度も高まり、水蒸気を逃がさなければならず、放射性物質を大気中に放出する事態を避けられない。
厚い金属製の圧力容器は頑丈なので溶けた核燃料が外部に漏れる恐れは極めて低い。だが、これまで経験したことのない事故の連鎖で、厳しい局面を迎える可能性も否定できない。
- 2011/03/27(日) 09:36:28|
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小出さんの講演がアップされた。意味のわからないことは一切、言っていない。
- 2011/03/27(日) 01:36:59|
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私がもしも首相だったらどうしたか、について書いておこうと思う。後知恵と言われかねないが、事故が起きた直後から、私は同じことを考えていて、知り合いには話していた。
(1)福島瑞穂議員を「原子力事故担当大臣」とする。彼女は「原発事故が起きる起きる」と以前から騒いでいた人だからである。それに、こないだまで大臣をやっていたのだから、適任であろう。小沢議員を「原子力事故担当大臣補佐」に任命する。このくらい豪腕の人でないと、役に立たないであろうから。なぜ小沢氏を補佐にするかというと、福島氏を補佐にしたのでは、小沢氏は言う事を聞かないからである。それから、原発が津波でやられる、と予言していた吉井英勝衆議院議員を同じく補佐にする。
(2)原子力委員会、原子力安全委員会に、熊取六人組をはじめとする、「原発事故が起きる」と主張していた学者を入れて、原子力安全欺瞞言語を操る人々と半々にする。双方の議論を首相と原子力事故担当大臣・補佐が聞いて、意思決定する。
(3)日本全国の原子炉を停止させる。そんなことをしてどうするのかというと、作業員を調達したいのである。一人当たり250ミリシーベルトにしようが、500ミリシーベルトにしようが、作業員は恐らく、急速に払底するので、日本中から、原子炉に詳しいひとを掻き集める必要がある。
(4)原子炉OBを集める。老人は被曝しても影響が低いので、彼らを主役にする。
(5)福島原発の処理に当たる人には、1ミリシーベルト当たり、10万円くらいのボーナスを奮発する。100ミリシーベルトで1000万円もらえるなら、頑張るだろう。もちろん、東電持ちである。
(6)IAEAに直ちに救援を依頼して、世界中の原子炉技術者、作業員で、福島第一原発と同型の原子炉に精通した人々を日本に呼び集める。作業に必要な資材も持ってきてもらう。彼らは、1日、100万円くらいのボーナスを払う。もちろん、東電持ちである。
(7)アメリカからスリーマイル島の経験者を、ウクライナ・ロシアから、チェルノブイリの経験者を呼び集める。
(8)アメリカ、中国、ロシアから、原子炉の作業員を掻き集める。彼らにも、1ミリシーベルト10万円くらいの賃金を払う。もちろん、東電持ちである。
(9)福島第一原発から出てくる数値は、すべてリアルタイムでインターネット上に公開する。
(10)放射線などの状態から、炉心内部を推定することのできる物理学者を掻き集めて、常時解析させて、現場に伝える。おそらく、勝手にネット上でやってくれるのではないかと想像する。
(11)100キロ圏内から子供と妊婦と若者を移動させる。
(12)退職した老人を再雇用して勤務してもらって、都市機能を維持する。
こういうことを、事故初日からやって、なんとか事態を収拾できるかどうか、というレベルの話だと私は思っていたし、今も思っている。
- 2011/03/26(土) 23:15:40|
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下の記事は22日のものでもはや旧聞に属するが、重要なことだと思うので論評しておきたい。新たに内閣官房参与に任命されたのは、
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有冨正憲東工大教授(同大原子炉工学研究所長)(63)、
斉藤正樹東工大教授(62)
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の二人である。同研究所のHPで見たところ、有冨教授の専門は、
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社会的受容性の向上を目指し、信頼性の高い次世代の原子力エネルギーシステムの構築に資する研究と、その基盤となる学問の体系化を図るために気液二相流の流動・伝熱特性に関する実験的、解析的な研究を中心とする基礎研究を行っている。
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というものであった。現在主流の大型原子炉は、放っておくと暴走する危険なシステムなので、中小型原発を「未来型」と言っているようである。しかし、本当に関心があるのは気液二相流(つまり気体と液体との混合)の流動・熱伝導のように思える。
一方、斉藤教授は、
==============
21世紀における人類の生存基盤を脅かす地球規模の人類共通の危機(エネルギー危機、地球環境危機、水・食糧危機、生命・医療危機等)に対し、「地球とその家族をどう護るか?」を原子力の科学技術を基にして、その戦略を科学する。さらに、新しい未来型原子力が未来の文明(未来の人間社会や地球環境、さらに人類の宇宙への進出等)に対してどう貢献するかを科学する。
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であった。具体的テーマを見ると、
==============
1. 核拡散抵抗性の高い原子炉システムの研究(平和と持続的発展を目指して)
2. 人間社会や地球環境と調和する原子力システム(放射能消滅を目指して)
3. 医療用超ミニ原子炉システムの研究(医療への応用)
4. 未来の宇宙開発を支える宇宙用原子力システムの研究(宇宙開発への応用)
==============
というものである。誠に結構なテーマであるが、軍事転用可能なプルトニウムが出ない「平和利用」専用の原子炉という1以外は、実現性が乏しいように私は感じる。特に、4は怖い。原子力ロケットが、打ち上げに失敗したらどうなるというのであろう。
いずれにせよ、二人とも、「より安全・安心な原子力」という方向性の基礎的な研究をしている。こんな人びとを、この非常時に官邸に呼んできたところで、おそらく大した役には立たないと私は思う。
役に立つのは、過去の原子力重大事故に精通している人で、以前から「日本でもこういう事故が起きる」と警告してきた人々である。東京工業大学の原子炉工学研究所の研究室一覧を見てみたが、そんな研究をしている人はいない。なぜそんなことになるのか、というと、原子炉重大事故に関心を持つような人は、学会でつまはじきにされるからだと私は考える。たとえば
日本原子力学会の和文雑誌の論文タイトルを見ても、そういう感じの論文は見当たらない。事故のことを「異常事象」と言ったりして、事態を糊塗する論文が関の山である。
そういうわけであるから、東電や原子力危険・隠蔽院が信頼できないからといって、「ちゃんとした学者」を呼んできても無駄である。結局のところ彼らは、原子力安全欺瞞言語に習熟した人びとだからである。そういう言語を使っていると、脳のニューロンの接続がおかしくなって、まともな言語を使えなくなるのである。「事故」と言おうとしても無意識のうちに「事象」と言ってしまうくらいでないと、この業界では学者としてやっていけないのだと思う。
もし、官邸がいま本当に役に立つ人を必要としているのであれば、京大の原子炉実験所の「熊取六人組」のような、原子力の推進に反対しつづけて、出世できなかった人を呼んでくるしかない。彼らを呼んできて、原子力安全欺瞞言語を話す連中と、両方の意見を聞き、場合によっては論争させて、それを菅直人首相が見ていれば良いのである。どちらが正しいか、彼が決めて、それにしたがって行動すれば良い。
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官邸肥大化、参与が14人…組織も増殖
巨大地震
東日本巨大地震を受け、菅首相を取り囲む組織は増殖、肥大化する一方だ。
「既存の省庁の縦割りで物事が全く進まず、官邸が仕切るしかない」というのが首相周辺の説明だが、民主党側の組織も合わせると、相当な数が増えた。
地震直後に発足させた緊急災害対策本部、原子力災害対策本部はいずれも首相が本部長。17日には緊急対策本部の下に「被災者生活支援特別対策本部」、22日には同対策本部を各府省次官らが支える「被災者生活支援各府省連絡会議」が発足。このほか、13日には「電力需給緊急対策本部」、15日には東京電力と連携するための「福島原子力発電所事故対策統合本部」も発足。「この混乱時にとても機能的に動いているとは言い難い」(民主党筋)との指摘も出ている。
首相のブレーン的な役割を担う内閣官房参与の任命も相次いでいる。地震後に5人が追加され、態勢は総勢14人に膨張した。
首相は地震発生後、放射線、危機管理、情報通信の専門家を参与に迎え、22日には原子炉工学を専門とする2人を任命。2人は首相の母校・東工大の教授だ。
東京電力や経済産業省原子力安全・保安院に原子力の専門家がいるにもかかわらず、外から放射線や原子炉工学に詳しい学者らを次々参与に任命したのは、「これまでの経緯で、首相が東電や保安院に対する信頼を失ったため」(内閣府幹部)との見方が強い。
民主党内からは「首相が表に出ず、側近ばかり使って危機をしのごうとするのは、余裕のなさの表れだ。リーダーシップを持って官僚機構を使いこなし、民間と連携してオールジャパンで対策に取り組まなければこの危機は乗り越えられない」(中堅議員)との不満の声が出ている。
(2011年3月23日22時25分 読売新聞)
- 2011/03/26(土) 22:12:28|
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下の記事で東電を批判している元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さん(原子核工学)と、同実験所の小出裕章助教(同)のお二人は、例の
熊取六人組である。漸くにして御用学者ではない人びとの見解が大手メディアに出るようになってきた。遅すぎるのだが。
なぜ汚染情報が共有されなかったのか。東電の担当者が「現場の混乱」のせいにしているが、それはちがう。しつこいようだが、これも原子力安全欺瞞言語のせいなのである。原発において本当の情報を皆が知ったら、みんな怖くなって逃げ出してしまい、運営できなくなる。それゆえ、情報は細分化して無意味化し、目の前の操作に必要な知識・情報以外は、決して流通しないようにしておかねばならない。
平井憲夫さんの言われた「絶対安全」という「5時間の洗脳教育」もそのために必要とされるのである。
原子力安全欺瞞言語は、この目的のために構築された。危険性についての情報を、細分化して無意味化し、「安全性」に関する情報に変換することが、この言語の機能である。
福島第一原発においては、恐るべき事故によって、危険性は極限的に増大している。それゆえ、本当のことに目を向けたら、心底恐ろしくなって全員逃げ出さざるをえない。それが人情というものである。しかし、そんなことをしたら東電は終わりである。そこで、原子力安全欺瞞言語を更に強化して用いているものと推定される。
かくして福島第一原発では、情報は以前にも増して、細分化され、流通しなくなっているのではなかろうか。限られた報道からも、互いに口もきかないで、黙々と作業し、黙々と休憩しているような印象を受ける。つまり、「現場が混乱」しているから、情報が流通しなくなっているのではなく、
現場を混乱させないために情報が流通しなくなっているのである。それは政府やマスコミが「パニック」を恐れて情報を出さないように、出すにしても無意味化して出るように加工しているのと同じ理屈である。
ハイパーレスキュー隊は、相互に声を掛け合いながら、必死で助けあって作業していた。あのような状態にならなければ、危機を乗り越えるのは難しいだろう。それが東電に可能であろうか。また、日本国民も、彼らに倣って情報を蜜に交換しながら、助け合っていかなければこの危機を乗り越えられないだろう。「パニック」を恐れてばかりの政府やマスコミには、その実現は不可能である。
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「汚染情報なぜ共有しない」東電の対応、専門家ら批判
2011年3月26日17時0分 朝日新聞
東京電力福島第一原子力発電所3号機のタービン建屋内で起きた作業員3人の被曝(ひばく)事故をめぐり、東電側が1号機の同建屋でも同様の放射線量を6日前に把握しながら、注意喚起していなかったことが判明。東電側は26日、後手にまわった対応への釈明に追われた。専門家らは、ずさんな安全管理を批判している。
同日午前の東電本社。連日の記者会見に姿を見せた福島第一原発の藤森昭彦・環境担当は、注意喚起がなかった理由を問われ、言葉に窮した後、「十分な情報共有がなされていなかった。現場の混乱があったと思われる」。絞り出すような声だった。1号機関連の高い放射線量の公表が遅れたことについても、吉田薫広報部部長が「申し訳ない」と述べるにとどまった。
経済産業省原子力安全・保安院も、東電から1号機関連の報告を25日未明に受けながら、公表したのはほぼ1日後。西山英彦審議官は「3号機に神経が集中していたという事情があった」と釈明。ある保安院職員は「バタバタした状況が続いて、保安院でも情報整理ができていないのだ」と混乱ぶりを嘆いた。
元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さん(原子核工学)は、「情報共有されていなかったことは非難されるべきだ。一義的には放射線管理担当者の責任だと思うが、組織としてずさんだったと言われても仕方ない」と東電の対応を批判。同実験所の小出裕章助教(同)は、「作業員は非常に困難な状況で、一刻も早く冷却ポンプを復活させようと水に入ったのだろう。これを教訓に、東電側は情報を共有させ、作業員一人一人の身を守ることを考えないといけない」と話す。
また、宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子炉工学)は、「長靴を履いていれば、水につかって作業してもやむを得ない放射線量だった。直接肌に触れることの危険性が、現場で作業する人にどの程度伝わっていたのか。東電が協力会社側にも十分に注意し、管理する必要があった」と指摘した。
- 2011/03/26(土) 17:27:55|
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3号機でも1号機でも、高濃度の放射性物質によって汚染された水が見つかっている。また、放水口から少し離れた海から、うんざりするような濃度の放射性物質が検出された。
原子力安全欺瞞言語を使う人びとの認識はこうだった。
(1)原子炉から出る配管は丈夫だから割れないはず。
(2)すべての配管は自動的に弁が閉まっているから漏れないはず。
(3)だから周辺の水はさほど汚染されていないはず。
しかし実際には、とんでもない濃度の放射性物質を含む水が発生し、海にダラダラ流され続けた。
普通の考えでは、これだけの異常事態が起きているのだから、どこかで配管が壊れて水が漏れるのではないか、と考えるはずだ。最初に掲げておいた読売新聞の記事に、地震直後に「やばい水」が漏れてきたという作業員の証言があるくらいだから、私はそう思っていた。私の判断力が優れているというのではなく、それが普通の判断というものである。
それができなくなる原子力安全欺瞞言語を使用し続ける限り、事態は収拾されないだろう。こと原子炉に関する限り、収拾されないということは、最悪の事態になる、ということである。なぜなら炉心は放っておくとドンドン熱くなり、崩壊していくのだから。
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ずれた配管、やばい水!…原発作業員の恐怖証言
福島原発
強い横揺れで天井のパイプがずれ、大量の水が漏れてきた――。
東日本巨大地震が発生した11日、東京電力福島第一原子力発電所で、稼働中だった1号機棟内にいた男性作業員の証言から、建物内が激しく損壊した様子が初めて明らかになった。
この作業員は、同原発の整備などを請け負う会社に勤務。昨夏からたびたび同原発で作業しており、地震があった11日は、稼働していた1号機の建物内のうち、放射能汚染の恐れがなく防護服を着用する必要がないエリアで、同僚数人と電機関係の作業をしていた。
「立っていられないほどの強い揺れ。横向きに振り回されている感じだった」。地震発生の午後2時46分。上階で作業用クレーンや照明などの機器がガチャンガチャンと激しくぶつかり合う音も聞こえた。「これは普通じゃない揺れだと直感した」
建物内の電気が消え、非常灯に切り替わった。「その場を動かないように」という指示が聞こえたが、天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきた。「これはやばい水かもしれない。逃げよう」。誰かが言うのと同時に、同僚と出口がある1階に向けて階段を駆け降りた。
建物内で漏水を発見したら、手で触ったりせず必ず報告するのがルール。だが、この時は余震が続いており、放射能に汚染されているかもしれない水の怖さより、このまま原子炉といっしょに、ここに閉じこめられてしまうのでは、という恐怖の方が強かった。
1階は作業員でごった返していた。外に出るには、作業服を着替え、被曝
ひばく
量のチェックを受けなければならないが、測定する機器は一つだけ。細い廊下は長い行列ができていた。
激しい余震はその後もさらに続き、「早くしろ」とあちこちで怒声が上がった。被曝はしていなかったが、「水素爆発した後の1号機の建物の映像をテレビで見た。あそこに閉じ込められていたかもしれないと思うと今でも足がすくむ」。(影本菜穂子)
(2011年3月16日14時37分 読売新聞)
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汚染水除去を最優先 福島原発、破損場所の特定急ぐ
2011/3/26 15:41 日経新聞
東京電力福島第1原子力発電所では1、3号機タービン建屋地下の水たまりで高濃度の放射性物質が検出され、1号機で水を取り除く作業を急いでいる。原子炉とタービン建屋をつなぐ配管が損傷して水が漏れた可能性が指摘されており、破損場所の特定も必要。今後漏水が拡大する恐れもあり、復旧作業は厳しい状況が続いている。
1、3号機の水で検出された放射性物質は、通常運転時の炉心の水の1万倍という高い濃度で、復旧作業の妨げになる。このため1号機では汚染された水をポンプでくみ上げ、とりあえず復水器にためておく排水作業を進めている。復水器は本来、タービンを回した水蒸気を冷やして水に戻す設備。2、3号機タービン建屋の水は量が多すぎて排水方法を検討中という。
たまっていた水について東電は放射性物質の種類と濃度を25日に分析、3号機ではセリウム144とヨウ素131の濃度が特に高かった。1号機も同様にヨウ素131などが高かった。
経済産業省原子力安全・保安院は、原子炉内の水が漏れ出た可能性が高いとの見解を示している。使用済み核燃料プールの水では高濃度の放射性物質は想定しにくいからだ。
また、ヨウ素131の濃度が高かったことも理由。使用済み核燃料プールだとしたら半減期が8日と短いヨウ素131はすでにほとんどなくなっているはずで、地震発生直前まで運転していた原子炉の水とみるのが自然なためだ。
原子炉内の水が漏出した原因は定かではないが、保安院は「圧力が保たれているので、原子炉にひびが入っていることはない」とし、配管や弁から漏れた可能性が高いとみている。原子炉からタービン建屋には水蒸気を送る管などがあり、これらの一部で破損し、水が漏れた可能性がある。
通常、原子炉でつくられた水蒸気は「主蒸気管」と呼ぶ配管を通ってタービンに送られる。冷やされた水は復水器から「復水管」という配管を通って原子炉に戻る。これら2つが主要な配管だが、ほかの配管の可能性もある。
ただ、本来、配管は地震対策が施され「非常に頑丈で壊れるとは考えにくい」(東京工業大学の沢田哲生助教)ものだという。
北海道大学の奈良林直教授は配管の破損のほかに、「格納容器のどこかに破損があってそこから漏水し、なんらかの原因でタービン建屋へ水が流れ込んだ可能性もある」とみている。格納容器の本体と圧力抑制室をつなぐ接続部は以前から弱いと指摘されており、そこが壊れたかもしれないという。格納容器の破損で漏水しているなら「現段階では放射線量が高いので、すぐに直して水漏れを止めるのは不可能」とみる。
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原子力発電の配管とは
2011/3/26 15:41 日経新聞
▼原子力発電の配管 原子炉が入っている原子炉建屋の機器と、水蒸気から電気をつくるタービン建屋の機器をつなぐ様々な配管がある。原子炉で発生した蒸気をタービンに運ぶ主蒸気管と、水に戻してから再び原子炉に届ける復水管が主体。
このほか、ごみを除去したり、余分な熱を取り除いたりする管など複数種類のものが建屋の中を網目状に走っている。
通常の運転時、配管を通る水蒸気や水には、核分裂反応で生じた特定の放射性物質がわずかに含まれているものの、核燃料棒の中にあるコバルトやテクネチウム、セリウムなどの放射性物質は含まれていない。
管には弁やポンプがついており、流れる量などを細かく調節できる。地震などで原子炉が緊急停止すると、弁を自動的に閉める設計になっているため、放射性物質を含んだ水や蒸気が外部に漏れることはないとされている。
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福島第1原発:海水から1250倍のヨウ素 放水口付近
2011年3月26日 11時44分 更新:3月26日 14時54分 毎日新聞
海水を採取した場所
体に影響する被ばく線量の目安
経済産業省原子力安全・保安院は26日、東京電力福島第1原発の放水口から南へ330メートル離れた場所で25日午前8時半に採取した海水から、放射性物質のヨウ素131が法律で定められている値の1250.8倍の放射能濃度で検出されたと発表した。東電は「放射性物質を含んだ水が海水に漏れ出している可能性が高い。(1~3号機のタービン建屋地下で見つかった)水たまりから出ている可能性も否定できない」とし、海水の調査を1日1回から2回に増やす。
保安院によると、同濃度の水を500ミリリットル飲むと、一般人の1年間の人工的な被ばく限度と同等の1ミリシーベルトになる水準。ほかにセシウム134については117.3倍、セシウム137は79.6倍だった。24日午前に同じ場所で実施した調査結果(ヨウ素131で基準の103.9倍)と比べると、10倍以上に上昇している。
保安院は「潮流に流されて拡散するので、海洋生物に取り込まれるまでには相当程度薄まる。周辺は避難区域に指定されており、住民への直接の影響はない」として、人体への直接的な影響を否定した。
一方、海、魚と放射性物質の関係について詳しい水口憲哉・東京海洋大名誉教授(資源維持論)は「1250倍とは非常に大きな値だ。海では希釈されるが、10~100倍に薄まったとしても懸念の残る濃度ではないか。現状では、放射性物質を多く含む水を海に捨てるなということは言えないが、千葉県沖などを含めた広い範囲の海水の調査をする必要がある」と話す。【八田浩輔、日野行介、大場あい】
- 2011/03/26(土) 16:47:31|
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菅首相は昨夜の会見で、以下のように述べた。
「悪化を防ぐという形で対応しているが、予断を許す状況にはなっていない」
という表現は、原子力安全欺瞞言語の影響を受けていてわかりにくいが、事態を正確に伝えているように感じる。普通の言葉で言えば次のようになると私は解釈する。
「炉心溶融による圧力容器や格納容器の破砕、あるいは水蒸気爆発といった、極めて深刻な放射性物質の散布という最悪の事態を防ぐという形で対応している。しかし、状況は一進一退であり、そうならないと保証できるようにはなっていない。最悪の事態になったりしたら、内閣がふっとぶどころか、日本の将来が危ぶまれる事態であるから、責任者として非常に緊張する。最悪の事態を回避するためには、すべての原子炉の冷却系を作動させて炉心を100度以下にせねばならない。しかしそれにはやるべきことが山積している。放射性物質の濃度が高い現場で、それら全てを実現するという困難な任務を、一つ一つやっていかねばならない。」
こういう風に言ってくれたら、何が起きているのか、よくわかると思うのだが。
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菅首相の会見全文〈25日午後7時半〉(朝日新聞)より引用
――首相は現段階での原子炉、福島第一原発の現状をどのように認識しているのか。また、収束させるメドについてどう考えているのか。さらに、避難指示の範囲を拡大する考えはないのか。
今日の福島第一原子力発電所の状況は、まだまだ予断を許す状況には至っていない、悪化を防ぐという形で対応しているが、予断を許す状況にはなっていないという認識を持っている。引き続き、極めて高い緊張感を持って一つ一つの事態にあたっていかなければならない局面が続いている、このように認識している。
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- 2011/03/26(土) 16:05:31|
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京都大学大学院 人間・環境学研究科 自然環境動態論講座 宇宙論・重力グループ の阪上雅昭教授からコメントをいただいた。阪上さんは物理学者であるから、私よりも原子炉内外で生じている物理過程を理解する知識をお持ちである。ご専門は原発ではなく、ブラックホールの動態とか魚の群体の運動とかの非線形科学である。このブログを毎日読んで下さっている、とのことであった。
(1)阪上教授も、「浜岡原発の運転再開はすべきでない」とお考えである。川勝平太知事はよく考えて欲しい。
(2)”
チェルノブイリの10%~50%の放射性物質"に関して、阪上教務も「こんなに出ているとは思いませんでした.驚きました.」とのことで、これについて以下のコメントを頂いているので、ご参考にしていただきたい。(※)は私の註釈。
============
オーストリア気象当局
http://www.zamg.ac.at/aktuell/index.php?seite=1&artikel=ZAMG_2011-03-18GMT09:52のシミュレーションに基づいて推定しているようです.
念のため,私の見解を述べておきます.
シミュレーションはそれなりに信頼できると思います.もちろん,安冨さんなら容易に理解できるように,流れの上での拡散ですから,カオティックで,計算された濃度の空間パターンの精度は高くないと予想されます.(※つまり、ここで描かれている絵は、かなりいい加減だ、ということである。それはやり方が悪いのではなく、原理的なもので、どんなに頑張っても正確にはならない。)
いい加減な言い方ですが,ある場所の放射性物質の濃度は,計算に用いた空間差分より大きいスケールで平均した統計的な意味でしか信頼できないと思います.(※いい加減な計算をたくさんやってみて、その平均をとったような、そういう程度のものだということ。)
このシミュレーションでは,初期の放出量,従って濃度分布の絶対値は決められません.絶対値は観測データから決めているようです.3月18日~19日あたりの計算の場合は群馬の高崎やPetropavlovsk(ロシア)にある CTBTO の観測所のデータで濃度分布の絶対値を決めているようです.(※どれだけいつ放射性物質が放出されたかを決められないので、周辺のデータをとって、それに合うように計算している、ということ。)
ただ,元々のシミュレーションが本質的に不安定で精度の期待できない計算なので,分布の絶対値を決める観測点の数が少なすぎるという印象を受けます.(※もともといい加減な計算を、ろくなデータもなしにやっているので、かなりいい加減ということになる、ということ。)
その意味では SPEEDI の試算
http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf
の方が局所的計算であるかつ観測点が多いので信頼性は高いと思います.
その意味では
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103240465.html
の3万~11万テラベクレルという推定値の方が信頼性が高いと思われます.ただ朝日新聞以外が記事にしていないようなので,気になっています.
- 2011/03/26(土) 12:11:03|
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静岡県知事の川勝平太は、経済史が専門の学者であるが、とんでもない馬鹿であることを露呈した。
(1)浜岡原発は60キロヘルツなので東京へは送電できない。
(2)中部電力は別に発電能力の不足をきたしていない。
(3)マグニチュード9.0の巨大広域地震という「想定外の事態」が起きた今、「今の事態を想定して対策を立てれば十分」という論法はおかしい。
(4)たとえば今回の地震の影響で、富士山が噴火するおそれが指摘されている。プレートが三つ出会っているこの場所にある浜岡原発で何が起きるのか、誰にもわからない。
(5)東京と名古屋との中間にあるこの原発に、もしものことがあった場合の被害を想定すべきである。
この前提に立って思考することがなぜできないのだろう?浜岡原発が被災すれば、名古屋と東京とは、間違いなく大きな被害を受ける。この世界最悪の場所にある原発を、しばし止めるくらいのことが、なぜできないのだろうか。
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浜岡原発の4月上旬再開、静岡知事が容認
中部電力の水野明久社長は24日、静岡県庁に川勝知事を訪ね、非常事態訓練を行うなどの安全対策を講じたうえで、定期検査中の浜岡原子力発電所(同県御前崎市)の3号機の運転を早ければ4月上旬に再開するとの方針を説明した。
川勝知事も「安全対策をしっかりしたうえで決断すれば、尊重したい」と述べ、安全措置をとったうえで運転を再開することを認める考えを明らかにした。
会談後、水野社長は「知事の力強い言葉は大変ありがたい。東日本で計画停電が行われている緊急事態のなかで、3号機を間もなく立ち上げ、(中電の)管内の電力の安定供給と東日本の応援に全力を挙げて取り組みたい」と語った。
3号機の運転を再開するには地元4市の同意も必要となるが、水野社長は「安全対策を丁寧に説明して理解をいただく。今回は緊急事態ということもあり、そのことも合わせて説明して理解を得たい」と述べた。
◆「津波対策説明を」地元自治体◆
中電の方針に対し、浜岡原発の地元自治体からは厳しい声が相次いだ。
同県牧之原市の西原茂樹市長は24日、読売新聞の取材に「(運転を再開しないと)エネルギーが逼迫する事情は理解できる」としながらも、「(中部電力が津波対策として示した)防波壁ができていない現状で、想定を超える津波が来たらどうするのか。津波対策に不安が残るなかでは、できれば原発を止めてほしい」と語った。
同県菊川市の太田順一市長も「今の段階で運転再開を認めるわけにはいかない。『原発は安心、安全だ』と言っていたのが根底から覆り、住民の不安は大きい。中電は津波対策などをきっちりと説明すべきだ。今は運転を止めてくれたらいいと思っている」と述べた。
同県掛川市の松井三郎市長は「津波であれだけの被害があり、市民から『浜岡原発は大丈夫か』という声が出ている。中電の津波対策については具体的な説明を受けていない。市民感情からも、運転再開を認めるとは簡単には言えない。中電には津波対策の方針をしっかりと示してもらいたい」と強調。同県御前崎市の石原茂雄市長は「現段階では、近く行われる外部電源接続などの訓練を現地で見て確認し、詳しい説明を聞いてから判断したい」と語った。
(2011年3月25日09時54分 読売新聞)
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浜岡原発「福島とは対策違う」 中電、新たな津波対策も
2011年3月19日
海水ポンプを指さしながら、機能や安全性を説明する中部電力の社員=御前崎市の浜岡原発
阪神大震災を上回る死者が確認された東日本大震災の発生から、18日で1週間。福島第一原発は依然として危機的状況を脱していない。東海地震の危険性を抱える県内にある浜岡原発は大丈夫なのか。周辺自治体の不安が募るなか、中部電力は新たな津波対策に取り組み始めている。
■「10m以上の砂丘が津波防ぐ」
県の小林佐登志・危機管理監らが18日、浜岡原発を視察。福島第一原発で、津波により作動しなくなったとされる海水ポンプや非常用ディーゼル発電機を見て回った。
対応した水谷良亮・浜岡原子力総合事務所長らは「福島第一原発とは地震対策が違う」と強調。図や写真を用いながら、二つの原発の地震対策を比較してみせた。
中電によると、福島第一原発の津波対策は高さ5メートルまで。一方、浜岡原発は海岸との間に高さ10~15メートルの砂丘があり、この砂丘が津波を防ぐとした。また、非常用ディーゼル発電機の設置場所について、福島第一原発はタービン建屋内だが、浜岡原発は強固な構造で水を通さない原子炉建屋内にあると説明した。
小林危機管理監は「東海地震に備えて、地震対策はしっかりやっているという印象を持った」と話すとともに、「あらゆる事態を想定し、地震対策を見直して欲しい」と中電に要望した。
■説明会、質問1時間以上
中電は「これまで住民が不安にならないような対策を取ってきた」と繰り返す一方で、大震災を受けて新たな対策に取り組み始めている。
福島第一原発は、緊急炉心冷却システム(ECCS)が働かなくなった。電源が落ちても非常用のディーゼル発電機で動くはずが、「想定外」の津波で故障したとされる。
大震災後、中電は砂丘と原子炉建屋の間に、高さ12メートル以上の防波壁を設置する計画を公表。冷却用の海水を取り込むポンプの周囲に防水壁も設けることにした。これまで浜岡原発にはなかった発電機車2台も確保した。
18日午後、中電が御前崎市役所で開いた町内会長への説明会は、これまでにない切迫感が漂った。「子どものころに波が砂丘を超えて池ができたことがある」「6、7回津波が起きても砂丘は耐えられるか」「住民をどう退避させればいいか不安が募る」……。質問は1時間以上も続いた。
川勝平太知事は17日の定例会見で、「想定外の事態が起きた。対策を抜本的に見直さねばならない」と述べ、あらゆる想定や対策を改める必要があると訴えた。さらに、浜岡原発で計画中のプルサーマルや6号機の建設について、現在の計画のままでは認めない意向を示した。
■「20~30キロ圏内にも意見聞くべき」
福島第一原発の事故では、半径20キロ圏内に避難指示、20~30キロ圏内に屋内退避要請が出ている。一方、浜岡原発はこれまで、10キロ圏内の御前崎、掛川、菊川、牧之原の4市を周辺自治体とし、避難訓練などを行ってきた。
国の原子力安全委員会は「防災対策を重点的に充実すべき地域」の目安を10キロ圏内としており、浜岡原発はこれに従ったかたちだ。同安全委は「今回は念のための措置。直ちに指針を変更するということではない」とする。
菊川市内のうち、10キロ圏外の旧菊川町は防災計画外。しかし、大震災後、住民から「どこへ逃げれば良いのか」という問い合わせが寄せられているという。20キロ圏内の袋井市の原田英之市長は「これからは言うべきことは言う」。吉田町の田村典彦町長も「原発神話が崩れた。20~30キロ圏内の自治体にも意見を聞くべきだ」と話す。
さらに、30キロ圏内からも、「今まで隣接4市だけだったのがおかしい。事故が起きれば、市内でも市民が逃げまどうことになる」(清水泰・焼津市長)、「市長会全体で、これまで以上の安全追求と住民説明の徹底を申し入れたい」(北村正平・藤枝市長)などの声が上がっている。
- 2011/03/25(金) 10:34:27|
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昨日、作業員の深刻な被曝事故があった。理由は、
「作業を開始してからアラームが鳴りましたものの、故障と思って勘違いをしてしまって、作業を継続してしまったということでございます」
というものである。東京消防庁のハイパーレスキュー隊は、放射能の恐ろしさを熟知し、心のそこから恐怖しつつ、冷静な思考によって立案した対策によって安全を確保して、恐怖心を克服して作業した。これに対して原発の作業員は、「安全神話」に依拠しつつ、「大丈夫だろう」という思い込みによって作業していることが明らかとなった。
平岡憲夫氏の『原発がどんなものか知ってほしい』によれば、
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原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間かけて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消のためです。原発が危険だとは一切教えません。国の被曝線量で管理しているので、絶対大丈夫なので安心して働きなさい、世間で原発反対の人たちが、放射能でガンや白血病に冒されると言っているが、あれは“マッカナ、オオウソ”である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと、五時間かけて洗脳します。
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ということが行われているそうである。こういう風になっていなければ、あれだけの事故が起きている現場で、「アラームがこんなに早く鳴るはずがない」と思い込むことは無理であろう。
二番目に引用した記事に出ているように、安月給の下請け会社の社員までがこのひどい事態に立ち向かっている理由は、
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断ったら後々の立場が悪くなるというか。今の会社で、またこういう仕事を続けていきたい気持ちなんで、少しでも協力し、会社の指示にできることは従って(やっていきたい)
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というものである。日本社会は、「人間」ではなく「立場」から出来ている、というのが私の説なのだが、それを立証してくれる証言である。「立場」上必要があれば、原発事故現場にでも行くのである。この心情があればこそ、事故対応が続けられているのであるが、この心情があるから、こんな事態にもなるのである。というのも、原子力安全欺瞞言語を使って喋っているのは、「人間」ではなく「立場」だからである。
3つ目に引用した記事で東電社員の家族は、
「いま体を張っているのは、家庭を持つ、普通の市民であることもわかって欲しい」
と言っている。その通りである。最初からそのことに、気づくべきだったのである。普通の市民に、原発などという危険なシステムを運営できはしないのであるから。そんな無茶ができるのは、「普通の市民」ではなく、「立場」の集合体である。このことを意味を我々はしっかりと認識しなければならない。
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福島第1原発3号機・作業員被ばく事故 線量計のアラームを誤作動と思い込み作業
フジテレビ系(FNN) 3月25日(金)6時31分配信
福島第1原発の3号機で24日、3人の作業員が被ばくした事故について、東京電力は、3人は線量計のアラームが鳴っていたにもかかわらず、誤作動だと思い込み、作業を続けていたと説明した。
25日午前4時半ごろ、東京電力は会見で「作業を開始してからアラームが鳴りましたものの、故障と思って勘違いをしてしまって、作業を継続してしまったということでございます」と話した。
東京電力によると24日、3号機のタービン建屋の地下でケーブルの敷設を行っていた協力会社の男性作業員3人から、17万3,000マイクロシーベルト~18万マイクロシーベルトの高い放射線量が確認され、このうち2人は「ベータ線熱傷」の可能性もあるとして、病院に搬送された。
東京電力の説明では、この作業現場では前日、放射線量が低かったため、3人は事故当日、線量計のアラームが作業開始直後に鳴ったにもかかわらず、「アラームがこんなに早く鳴るはずがない」として、誤作動だと思い込み、高い放射線量の中、作業を続けたという。
東京電力は、今回の事故を受け、現場の環境が変わりやすい状況にあるため、被ばくの可能性が高い現場は、専門の社員を同行させる方針を示した。
一方、東京電力は、作業員が踏み入れた水たまりの放射性物質の濃度が、通常運転中の原子炉内の水が含む量のおよそ1万倍の濃度であることを明らかにした。
水たまりからは、コバルト60、ヨウ素131、セシウム137、セリウム144などの放射性物質が検出されており、1立方cmあたり、あわせておよそ400万ベクレルになるという。
検出されたセシウムやセリウムは、核分裂反応の生成物であることから、東京電力は、高濃度の放射性物質が検出された原因について、燃料が破損して原子炉の外部に流出したためではないかとしている。
最終更新:3月25日(金)6時31分
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福島第1原発:英雄でも何でもない…交代で懸命の復旧作業
災害時のために造られた免震重要棟内の「緊急時対策室」=東電福島第1原発のホームページから
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発では東電だけでなく原子炉メーカーや下請け企業の作業員らも懸命に復旧作業を続けている。水素爆発や構内火災で一時は約50人にまで減った作業員を、一部の海外メディアには「フクシマ・フィフティーズ」と英雄視した報道もあるが、実際は多くの作業員が交代で危機回避に取り組んでいる。近く現場に入るという下請け会社の30代の男性社員が毎日新聞の取材に応じ「不安はあるが、少しでも(事態の)沈静化に協力したい」と話した。【袴田貴行、日下部聡】
東電によると、原子炉建屋内は20日午前も照明が消えたまま。安全性を考慮して放水時は放水だけ、電気工事の際にはその作業だけを行い、19日現在の従事者は約500人。一方、3号機周辺の放射線量は19日午後2時の3443マイクロシーベルトが、放水後の20日午前3時40分に2758マイクロシーベルトに下がったものの依然高い。20日午前5時現在、以前の制限値だった100ミリシーベルト以上の放射線を受けた作業員は7人。このため東電は交代要員集めを進めている。
取材に応じた下請け会社の30代男性社員は「東電から元請けに話がきて、そこから1次、2次と下請けに要請があった。私も準備が整い次第向かう」という。海外メディアなどの注目については「残っている人がずっと放射線を浴びながら作業していると思われるかもしれないが、実際は法にのっとった管理で人を入れ替えながら作業を進めているので、英雄でも何でもないと思います」と冷静だ。
一方で「不安は当然ありますね。それだけ高い放射線の中でやっているし、現場もどうなるか分からないですから。また爆発が起こるかもしれないし、放射線量が上がるかもしれない。断る選択肢もありますよね。家族からそういうこと言われますけど。すごく難しい判断で、みんな考えていると思います」。
◇「今後も原発で働きたいから」
それでも現場行きを決めたのは「原発の仕事をしてきた職業人としてのプライドより、沈静化した後のこと」だという。「これからもこの仕事で食べていきたいという気持ち。断ったら後々の立場が悪くなるというか。今の会社で、またこういう仕事を続けていきたい気持ちなんで、少しでも協力し、会社の指示にできることは従って(やっていきたい)」と淡々と話した。
現在、現場で作業に携わっているのは東電と子会社の東電工業、原子炉メーカーの東芝、日立のほか、鹿島、関電工やそれらの関係会社など。電源復旧では送電で4社、変電で5社、配電で3社という。地震発生直後に約800人いた作業員は15日の4号機の爆発による退避で一時約50人まで減ったとされるが、それ以降は300~500人で推移。18日に米軍に借りた高圧放水車で3号機に放水したのも、東電工業の社員2人だった。
現在の急務は原子炉冷却に不可欠な電源の復旧作業だが、東電によると、実際に作業できるのは技術を持つ70人程度。しかも高レベルの放射線を長時間浴びるのを避けるため、20人くらいずつ順番に作業せざるを得ない。「真っ暗な中、投光器や懐中電灯を使いながら、防護服と顔を全部覆うマスク、ゴム手袋での作業になる。大変時間がかかり苦労している」(東電の担当者)
作業員の「命綱」となっているのが、原発の敷地中央付近にある免震重要棟だ。07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発の事務本館が被災したことを教訓に昨年7月完成した。2階建てで延べ床面積約3700平方メートル。震度7に耐えられる免震構造で、内部には災害時のための「緊急時対策室」が設置されている。
1~4号機の中央制御室は放射線レベルが高すぎて誰もいない状態。普段は緊急時対策室にいる作業員が、定期的に交代で制御室に行き、監視や操作をしている。作業に出る時はやはり防護服を着て現場へ向かい、作業を終えると免震重要棟に入る前に脱ぎ捨てる。大量の防護服が必要とされている。
毎日新聞 2011年3月21日 13時41分(最終更新 3月21日 14時40分)
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原発、過酷な現場 食事はカロリーメイト・椅子で睡眠(1/2ページ)
2011年3月25日8時1分 朝日新聞
福島第一原発の復旧作業から休憩に戻り、線量計の測定を受ける東京電力の作業員=23日、福島県いわき市の小名浜港、河合博司撮影
震災から25日で2週間。東京電力福島第一原発は予断を許さない状態が続く。一方で、現場の作業環境も劣悪さを増している。その一端を、東電社員の家族が明かした。
「睡眠はイスに座ったまま1、2時間。トイレは水が出ず、汚れっぱなし」
今週初め。神奈川県に住む女性のもとに、第一原発で復旧作業にあたっている夫から初めて電話があった。夫は40代、東京本社の原発部門の社員だ。11日の震災発生後からほぼ連日、対応のため会社に泊まり込んだ。16日、ようやく自宅に戻ったが、出勤すると、そのまま第一原発行きを命じられた。
「ヘリに乗る。福島に行く」
こんなメールを最後に、メールも電話もつながらなくなった。
16日は3号機から白煙が上がり、放射線量が上昇。自衛隊は上空からの放水を断念した。東電の会見では、夫の旧知の同僚がつらそうな顔で対応を迫られていた。
「お父さん大丈夫かな」。2人の小学生の子どもも不安を口にした。
夫は原発部門を希望したわけではなかった。理系の大学を出て入社し、「たまたま配属された」。以後、原発の現場と本社勤務を繰り返した。2007年の中越沖地震の際、柏崎刈羽原発で火災が起きた時も現地に2週間ほど詰めた。当時はメールや電話で様子を知ることができたが、今回は音信不通。自衛隊が接近をためらうほどの放射能の中で、「いったいどうしているのか」。
20日、ようやく本社の専用線を経由して自宅に電話があった。「食事は“カロリーメイト”だけ。着替えは支給されたが、風呂には入れない」。あまり感情を表に出さない夫は淡々と語り、2分ほどで電話を切った。
23日の電話では、「そろそろ被曝(ひばく)量が限界のようだ」。交代はまだか。もし夫が健康を害したら、家族はどうなるのだろう。政府に頼りたいが、新聞やテレビのニュースによると、菅直人首相は東電幹部に「撤退などありえない。覚悟を決めて下さい。撤退した時は、東電は100%つぶれます」と怒鳴ったという。不安と、悲しさがこみ上げた。
24日、原子力安全・保安院が、3号機のタービン建屋地下1階で作業員3人が被曝したことを明らかにした。
国民の、電力会社への厳しい視線は理解できる。でも、「いま体を張っているのは、家庭を持つ、普通の市民であることもわかって欲しい」。(佐々木学)
- 2011/03/25(金) 08:32:42|
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福島原発:気になること+真宗大谷派の英断という21日に書いた記事に、以下のように書いた。
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(1)2号機になんだか穴が空いていて、白煙が出ていること。
(2)既に述べたように、アメリカが4号機のプールが破損していると言っていること。
(3)3号機の格納容器の圧力が一時期上がっていたこと。
(4)1号機が何の音沙汰もないこと。
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その後、事態はどうなったかというと、
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(1)2号機は配電盤が残っているから一番可能性がある、と言っていたのに、実際には一番、壊れていた。
(2)4号機のプールの話が出なくなった。
(3)3号機の格納容器はなんとか持ったが、冷却系の起動は一進一退。
(4)1号機の中央制御室が回復したら、最も危険な状態であることが判明。
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というわけで、外部電源が回復した以外は、事態が改善していない。特に、1号機の音沙汰が無くなっていたことが、予想通りに悪い知らせだったことは、非常に不愉快である。私がなぜこういうことを言ったかというと、こういう連中の行動パターンとして、
都合の悪いことは無視するというのがあるからだ。これは典型的な東大話法でもある。それゆえ、報道が無くなったことが非常に不気味だったのであるが、図星だった。
1号機は燃料棒が相当に壊れているようである。圧力容器が上も下も400度というのは、怖い。というのも、海水注入を続けて冷却していたのだから、下の方には水が溜まって、上よりも温度が低いはずだからである。それが両方400度というのは、水がない状態がずっと続いていたことを意味する。水を入れたら260度程度になったと言うが、今度は、上と下の温度が出ていない。これも感じが悪い。
いずれにせよ、1~3号機で燃料棒の崩壊は進んでいる。これが圧力容器の下に落ちてきて、容器を直接熱する状態になると、容器が壊れることになる。そうすると、格納容器も壊れる。それが非常に危険な事態であるが、その状態が接近している。
下の記事で、近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「原子炉本来の冷却機能を早く稼働させることが不可欠」と言っている。この困難な課題を、炉心が圧力容器を壊してしまうまで達成できるかどうか。際どい勝負である。
ひとつの希望は、さすがに「原子力安全欺瞞言語」を平然と使う人が、徐々に減ってきたことだ。はやく撲滅しないと間に合わない。
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福島第1 遅れる冷却機能復旧 3号機、真水注入が難航
1号機、温度抑制に不安
2011/3/24 15:27 日経新聞
東京電力の福島第1原子力発電所では予断を許さない状況が続いている。1号機の圧力容器の温度が一時、高くなり、注水量を増やしたため、今度は格納容器の圧力が上昇した。専門家は燃料の一部が溶けている可能性もあるとみている。外部電源を使った「補給水系」による真水の注水を計画していた3号機では23日夕に再び原因不明の黒煙が上がり、作業が長時間、中断した。1~4号機すべてが通電可能になったが、東日本大震災で失った冷却機能の本格的な回復は遅れそうだ。
地震時の津波による影響を最も受けたとされる1号機は、多くの専門家が危険な状態と指摘している。近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「(地震後、海水注入を継続してきたが)圧力容器内の温度制御がうまくいっていない可能性が高い」と話す。燃料棒の一部が溶融し、原形をとどめていない公算もあるという。
1号機では23日、一時的に圧力容器の上部と下部でセ氏約400度まで温度が上昇した。通常の運転時の温度より100度以上高く、設計温度を大きく上回る。高橋実・東京工業大学准教授は「水がほとんどなくなって、水蒸気が大量にたまっている可能性が高い」という。
東電などは圧力容器内に注水する量を8~9倍に増やし、急速に温度を下げた。24日朝には230度前後まで下がった。ただ、海水注水時には圧力容器の圧力を逃がす弁は開いており、注水によって大量に発生した水蒸気は格納容器にどんどん出ている。圧力容器の温度は下がるが、格納容器の圧力が上がるというジレンマに陥る。
エネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「原子炉の状態が不安定な場合、消防ポンプによる注水の冷却では限度がある。原子炉本来の冷却機能を早く稼働させることが不可欠」と指摘する。
3号機は22日夜に中央制御室の照明が点灯し、本格的な復旧作業が進むと期待されていた。安定的な冷却に向けて原子炉に真水を入れて冷却するシステムである補給水系を復旧する計画だったが、23日夕の黒煙の発生で作業が中断し、遅れている。
補給水系は原子炉や使用済み核燃料プールを冷やすために備わっている冷却システムで、圧力抑制室の水などを出し入れするポンプを使い炉心に真水を入れる。
これまでは緊急手段として、非常用ポンプで海水を注入して冷却していた。ただ、海水は塩分を含んでおり、ポンプなどに悪影響を及ぼす恐れがある。今後、本格的な冷却機能の復旧を目指す上で、真水に切り替えなければならない。
- 2011/03/24(木) 20:15:17|
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こんなに出ているとは思わなかった。
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福島第1原発の放出量 チェルノブイリの2~5割 オーストリア試算
オーストリア気象当局は23日、福島第1原発の事故後3~4日の間に放出された放射性物質のうちセシウム137の量は、旧ソ連チェルノブイリの原発事故後10日間の放出量の20~50%に相当するとの試算を明らかにした。
ただ当局は福島ではチェルノブイリのような原子炉の爆発事故は起きていないとして、放射性物質による汚染はチェルノブイリほど大規模にならないとの見方を示している。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長もこれまで「福島とチェルノブイリの事故は別物だ」としている。
フランスの放射線防御・原子力安全研究所(IRSN)は22日、福島の事故で放出された放射性物質の量はチェルノブイリの事故の約10%との考えを明らかにした。
福島第1原発から放出されたとみられる放射性物質は太平洋を越えて米国や欧州などでも検出されており、オーストリア気象当局はこうした測定値などを基に試算。チェルノブイリ事故については経済協力開発機構(OECD)原子力機関のデータを参照したという。
同当局の専門家は福島から出た放射性物質の多くはチェルノブイリのように陸上ではなく「太平洋上で拡散している」と述べ、人口密集地への影響は、より抑えられるとの見通しを示した。(共同)
- 2011/03/24(木) 11:15:40|
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不安解消へ「汚染地図」を 福島第一原発事故
2011年3月24日 朝日新聞
原子炉が小康状態を続ける一方で、汚染の値が深刻度を増している。政府が「ただちに健康影響がでるわけではない」と繰り返すだけでは住民の不信や不安を消すことはできない状況になりつつある。
原発から30キロ離れた福島県浪江町の大気の汚染は、平常時の自然放射線の1500倍ほどの値だ。65キロ離れた福島市でも100倍ほど。同程度の場所は多い。「胃のエックス線の何分の1」のたとえでは、もはや安心できない。計算上は福島市でも屋外で数日間過ごせば、1枚撮る量になる。
原発から放射性物質の放出が続いていること、風に乗って流れていることを示している。汚染地では、空中や地表にある放射性物質からの被曝(ひばく)が蓄積されていく。
身体への被曝、野菜や水道水の汚染。ふるさとに、このまま住み続けることができるのか、住民たちは毎日、悩み、苦しんでいる。
次の対策を考えるときがきている。地震発生の翌日に政府は「20キロ圏内からの避難」を指示した。驚くような素早い対応で、初期対応としては有効だった。
今は同心円状の画一的な対策だが、今後は「きめ細かい対策」が必要になる。各地の汚染は風の方向や地形、雨に左右されて大きくばらつき、まだら状になっていることがわかってきた。そのことも考慮し、住民の被曝を最小に抑えなければいけない。
新たな対策には、地域ごとの詳細な情報が欠かせない。どの地域が、あと何日で、あと何カ月で「避難を考えるレベル」の50ミリシーベルトに達してしまうのか。土壌や野菜、水の汚染データもさらに集め、素早く公表する。驚く数字がでれば、動揺も広がりかねないが、合理的で有効な対策をとるには、厳しい現実と向き合うことも必要だろう。
国は23日になってようやく、緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)を使った汚染地図の推測結果を公表した。原発から北西、南の方向に汚染が広がっていた。
避難地域は拡大すればいいものではない。広い地域で人の営みを消してしまうマイナスははかり知れない。自宅を離れ、慣れない生活環境下で暮らすストレスは大きい。避難先で何人も死亡している。
一方で、妊婦や甲状腺がんを発症しやすい子どもは、優先的に守らなければならない。
さらに広い範囲で測定点を増やし、「汚染地図」を作る。それを開示しながら新たな対策を考えるときだ。(編集委員・竹内敬二)
- 2011/03/24(木) 10:57:26|
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今回の事故を通じた放射性物質の散布によって、「発がんの確率がわずかに高まる」というのは正しい。しかしなぜ朝日新聞の社説は「ほんのちょっと高まる」という変な表現を使うのだろうか。これもまた、原子力安全欺瞞言語の一種と思われる。「ちょっとの癌死なら~、なんとかや~れ~る~」というわけである。
もし、3千万人が非常に微細な被曝をして、癌による死亡率が 0.1% 増えたとしよう。これではおそらく、疫学的に観測できないので、「影響はなかった」と評価されるのではないだろうか。朝日新聞のいう「ほんのちょっと」の範囲内であることは間違いなかろう。
しかし、もともと三分の一、ジャスト1千万人が癌死していたとすると、0.1%の増加は、1万人の不必要な癌死を意味する。1%なら10万人である。一回の事故で1万人とか10万人が死亡し、更に長期にわたる遺伝的影響の生じるような、そんなシステムを許容する気は、私にはない。
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放射性降下物―長い闘いを覚悟しつつ
福島第一原子力発電所の大事故は、地元の福島県内はもちろん、近隣の県に住む人々の前にも、気がかりな数字をいくつも突きつけている。
文部科学省が公表した環境放射能の調査では、この原発から約120キロ離れた茨城県ひたちなか市や200キロ以上の距離にある東京都新宿区で、上空から降ったとみられる放射性のセシウム137やヨウ素131が、相当量測定されたという。これらの値のなかには、国の放射線管理区域の基準値を超えるものもあった。
菅直人首相が一部の農産物の出荷停止を指示したのも、ホウレンソウなどの品目で規制値を超える放射性物質が見つかったからだ。
原発の外へ漏れ出た放射性物質が大気中を漂い、大地に降っている実態がわかる。
一つひとつの数字を見てパニックに陥るのは禁物だ。だが、甘くみるのはもっといけない。政府は急いで詳しいデータを集め、打つべき手を考えて適切な判断を下さなくてはならない。
忘れるべきでないのは、原発災害などで漏れる放射能の影響は長い目でとらえる必要があることだ。
いったん環境に放たれた放射性物質は回収が難しい。種類によっては長く大気にとどまり、土壌に残って放射線を出し続ける。セシウム137ならば半減期は約30年だ。それに接したり、体内にとり込んだりすると、悪さをする。環境中の値が基準より低くても、影響がまったくないわけではない。
しかも、人々が放射線に長い間少しずつさらされる場合、健康被害は時間がたって表れることが多い。
たとえば、人体のDNAを傷め、がんを起こす可能性は数年から10年以上の時間尺度で考えなくてはならないといわれている。微少とはいえない放射性の降下物が広い範囲に散ると、長い年月を経て、人々の発がんの確率がほんのちょっと高まる。その幅はきわめて小さいので、一人ひとりはあまり神経質になることはない。
だが、社会全体をみると、何人かが本来ならかからなくてもよいがんを発病する計算になる。だから、この「ちょっと」の上げ幅はできる限り小さくしなくてはならない。降下物が検出された地方の住民が受ける心理的な負担にも気を配る必要がある。
私たちは、そんな現実と向き合うことになったのである。
政府が、住民の避難などをめぐる決定をするときは、人々にもたらされる長い時間幅のリスクを考慮しなくてはならない。
いま最も重要なのは、事故炉から大量の放射性物質が出ることを食い止めることだ。そしてその先には、環境と健康の被害を最小にするための長い闘いが待っている。
朝日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2011年03月23日
- 2011/03/24(木) 10:20:01|
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1号機の炉内の温度が400度を超えていたことが、通電によって判明し、海水の注入量を増やした、という報道を聞いて、嫌な予感がしていた。
というのも、海水注入を増やすと、蒸気発生が増えて、圧力容器や格納容器の圧力が高まって来るからである。既に述べたように、原発は、ギンギンに運転しているときでも、水蒸気の温度が300度までしか上がらないはずなので、圧力容器が400度というのは怖い。炉心はいったい、どうなっているのか、と不安に思っていたのだが、以下のように、今頃になって、斑目(不適格)委員長でさえ、「かなり溶融している」と言っているのだから、これは相当な事態だと思わざるを得ない。その下の三人の「専門家」は、それよりも強い表現で心配している。事態は、二三日前よりも、悪化していると思ったほうが良いだろう。
圧力を下げるために、現在、開いている弁以外の弁を開けると、それは直接、外気に圧力容器内の蒸気を放出することになるので、相当の放射性物質の放出が起きる。これによって爆発を回避し、海水の注入量を増やすして炉心を少しでも冷そうということなので、やむを得ない。しかし、また放射性物質の漏洩による被害を拡大することになる。
また、さらにその下につけた朝日新聞の記事では、どこから放射能が漏れているのかわからないことを示している。ということは、今後もかなりの量の放射能汚染は続く。春は風が不安定で四方八方に吹くので、関東平野を含む東本州全体に拡散する。また、西日本や北海道にも、早晩拡散してくるだろう。
地球には既に、米ソの激しい核実験や、チェルノブイリによって、膨大な量の放射性物質がばらまかれており、我々一人ひとりの身体に、人工の放射性物質が取り込まれてしまっている。今回の事故は、更にこれを増加させ、地球のすべての生命をおびやかしている。
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福島第一原発1号機、核燃料溶融の可能性も
福島原発
国の原子力政策の安全規制を担う、原子力安全委員会の班目春樹委員長は23日夜、東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所の事故後初めて記者会見を開いた。
原子炉の被害について尋ねられた同委員長は「(水素爆発した)1号機の核燃料はかなり溶融している可能性がある。2、3号機に比べて、最も危険な状態が続いている」と指摘。原子炉内の温度、圧力の異常上昇が続き、危険な状況にさしかかっているとして、「(炉心が入っている)圧力容器の蒸気を放出する弁開放を行い、炉の破壊を防ぐ検討をしている」ことを明らかにした。
同原発1~3号機の原子炉の燃料棒は露出し、海水の注水作業が続けられている。23日、1号機の炉内の温度は一時、400度と設計温度(302度)を上回ったが、注水によって温度が下がっている。しかし、圧力の上昇が続き不安定な状態になっているため、班目委員長は「24日にも、圧力容器内の蒸気を放出するかの判断をする」と述べた。
(2011年3月24日01時21分 読売新聞)
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1号機の炉心、一時400度に…燃料棒露出続く
福島原発
原子炉内の温度が、一時400度まで上昇した福島第一原発1号機に関して、東電は23日未明から仮設ポンプで、海水の注水量を増加、冷却作業を進め、午後6時現在で温度を306度まで下げた。
しかし、燃料棒は水面から露出したまま高温になったとみられ、圧力も上昇し、炉内の状態は不安定なままだ。専門家も炉心の一部が溶けた可能性があるなどとし、十分な警戒が必要としている。
元原子力安全委員の住田健二・大阪大名誉教授(原子力工学)は、「同じように原子炉内に注水し続けている2号機の温度(約100度)と大きな温度差があるのが気になる」と指摘。「炉心の一部が溶け、炉内が高温になったと考えられる。圧力容器を溶かすほどではないが、炉内が落ち着いていない。温度は今後、急上昇する危険性がある。細心の注意が必要だ。最も重要なのは、炉の近くで中性子線の有無を確認し、核分裂反応が連続して起きる臨界がわずかでも起きているのかどうかを知ることだ」と話す。
「異常な高温状態だ」と話すのは杉山亘・近畿大原子力研究所講師(原子力安全学)。約70気圧になる通常運転中でも水温は280度程度にとどまるとし、「冷たい水を高温の原子炉内に入れると、(原子炉につながる)給水配管が急な冷却で、破損するおそれもある」という。
宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)は「原子炉の上部と下部で同じ約400度を示したのは、燃料の上部が冠水していないというより、水がほとんど入っていないのではないか。圧力容器を壊すような数値ではないが、深刻な状況が続いていると言える」としている。
(2011年3月24日09時23分 読売新聞)
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放射能漏れ、どの部分から? 特定遅れれば放出長期化も
2011年3月24日0時38分 朝日新聞
東京電力福島第一原発では、爆発が起きて以降、人体に有害なレベルの放射線が敷地内で観測され続けている。放射性物質は、どこからもれているのか。考えられるのは使用済み核燃料の貯蔵プールと、原子炉やその周辺部分の破損だ。漏出部分を突き止めるのが遅れれば、放射性物質の放出は長引くことになる。
同原発4号機では15日に核燃料プール付近で火災があった。プールの水位が下がって使用済み核燃料が露出し、水素が発生して爆発したとみられている。このとき外部に放出された放射性物質が、敷地内にとどまって放射線を出し続けている。これが考えられる一つのシナリオだ。
プールでなく、原子炉からもれている可能性もある。
東電は、水素爆発が起きて建屋が壊れた1、3号機について、「格納容器の健全性は保たれている」との説明を続けている。格納容器につながる圧力抑制室で爆発が起きた2号機も、大きく壊れているとは考えにくいとの立場だ。損傷が大きければ「放射線量はこんなものではすまないはず」(東電)だからだ。
だが、部分的な破損の可能性を示すデータはある。その一つが、核燃料のウランが核分裂してできる放射性のセシウムが外部で検出されていることだ。
内部の圧力が高まった格納容器が壊れないよう、蒸気を外に逃す措置もとられている。ただ蒸気はいったん水の中をくぐっているため、この措置でセシウムが外部に出た可能性は低い。
では、破損部分はどこなのか。可能性が高いのは、検査の際などに人間が内部に出入りするときにつかう「パーソナルエアロック」というドアだという。関係者によると、ドアと格納容器のすきまを埋めるパッキンが「一番弱い」とされているからだ。
東電はこのほか、接続部分などの小さな箇所が破れている可能性も認めている。たとえば、圧力容器や格納容器から外部へ通じる配管だ。配管には弁があり、地震を感知して発電が自動で止まると同時に、弁は閉じられる。仮に弁から先の配管が破れても、炉内部と外部が直接つながるわけではないが、もともと配管の中にあった放射性物質を含む水などが、漏れだした可能性はあるという。
- 2011/03/24(木) 09:31:41|
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原子力資料情報室は、2007年に、班目春樹原子力安全委員長が不適格として、更迭を求める文書を出している。このような人物が原子力の「安全」を司るというのだから、その欺瞞性に開いた口が塞がらない。
この人物も私が勤務する東京大学の元教授である。東京大学の今回の事態に対する責任は重い。
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http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=558
原子力安全・保安院長 薦田 康久 様
班目春樹氏は委員長として不適格 交代をもとめる
2007.7.31 原子力資料情報室 共同代表 山口幸夫、西尾漠、伴英幸
7月16日に起きた中越沖地震により被災された人々は大きな不安の中で避難生活を余儀なくされている。加えて、柏崎刈羽原発への不安も高まっている。報道によればアンケートの結果は、一番の不安要因が柏崎刈羽原発だと伝えている。このことは、ヨウ素剤を子供たちに飲ませた人たちがいること、東京電力(東電)の発表が信頼できないといった声からも裏付けられる。
同原発を視察したところ発電所施設のいたるところで、道路は大きく波打っていた。また、そこかしこに道路の陥没あるいはその補修後が見られた。6号機建屋前のろ過水タンク(1000kリットル)はほぼ全周囲にわたって挫屈していた。
東電の発表した資料によっても柏崎刈羽原発の被害はすざましいものがある。6号機天井のクレーンの駆動機構軸のジョイントが折れた。号機によってばらつきはあるが、今回の地震動はすべての号機でS2を上回る加速度が観測されている(基礎版上)。とりわけ1号機では2.5倍の680ガルという値が記録されている。また、7月30日に東京電力が発表した最大加速度の応答値比較ではタービン建屋1階(ペデスタル)において設計時の最大加速度の応答値を1号機では7倍を超え、3号機では約2.5倍の2058ガルを観測している。
地元の人たちはこのような「想定外」の揺れを被った原発は二度と動かすことのないように願っている。
このような状況の中で貴院は「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会(仮称)」を設置することを決め、「具体的な影響についての事実関係の調査を行うとともに」、「国及び事業者の今後の課題と対策を」取りまとめるという。そして、班目春樹氏を委員長に20名の委員を選出し、第1回の会合を31日に開催する。
原子力安全・保安院の立場は原子力の安全を確保することであり、このことは、現状で確保できない場合には耐震安全向上の対策を、それでも確保できない場合には原子炉の閉鎖を求めるという立場であることを意味する。
ところが、班目委員長は、想定外の揺れにB,Cクラスは壊れても仕方がない、Aクラスは壊れず原子力の安全は確保されていると早々と安全宣言をしている。さらに、1~2年で運転再開ができるような見通しを繰り返しコメントしている。まだ、格納容器内部を見ていない段階で、このような発言をすることは学者としての倫理を疑わざるをえない。氏のこのような発言から、設置される委員会すらもお座なりな調査・対策しか行えないとの批判を免れないだろう。
言うまでもなく、今回の揺れは弾性変形の上限であるS1を大きく超え、塑性変形を許容しているS2をも大きく上回る揺れが観測されている。外観上は影響がないように見えても、安全を脅かすひずみが残っている危険性があり、これをどのように確認するかが最大の問題である。これを調べつくすことが最大の問題である。にもかかわらず、調査の前に安全が確保されているなどと発言することは言語道断である。
以上の理由から班目氏は委員長として不適格であり交代を求める。
なお、参考として、不適格であることを示す同氏のこれまでの発言録を添付した。
■『六ヶ所村ラプソディ』 斑目春樹教授発言
技術の方はですね、とにかく分かんないけれどもやってみようが、どうしてもあります。
で、だめ、危ない、となったら、ちょっとでもその兆候があったら、そこで手を打とうと。
おそるおそるですよ。
原子力もそうなんですね。
原子力もそういうところ絶対あります。
だって、例えばですね、原子力発電所を設計した時には、応力腐食割れ、SCCなんてのは知らなかったんです。
だけど、あの、まだいろんなそういうわかんないことがあるから、あの、えーと、安全率っていうかですね、余裕をたーくさんもって、でその余裕に収まるだろうなーと思って始めてるわけですよ。
そしたら、SCCが出てきちゃった。
で、チェックしてみたら、まあこれはこのへんなんか収まって良かった、良かった。
今まで、良かった良かったで、きてます。
ただし、良かったじゃないシナリオもあるでしょうねって言われると思うんですよ。
その時は、原子力発電所止まっちゃいますね。
原子力発電に対して、安心する日なんかきませんよ。
せめて信頼して欲しいと思いますけど。
安心なんかできるわけないじゃないですか、あんな不気味なの。
核廃棄物の最終処分をすることに技術的な問題はなくても、そこを受け入れる場所が、なければ、今、困っちゃいますもん。
ないですよね、探せても、イギリスまで、
うん、ないですよ。
それは、大きな問題じゃないですか
え、いや、だから、あのー、えーと、基本的に、その何ていうのかな、今の路線で、今の路線がほんとに正しいかどうかは別として、今の路線かなんかで、替えがあるだろうと思ってるわけですよ。
というのは、最後の処分地の話は、最後は結局お金でしょ。
あの、どうしても、その、えーと、みんなが受け入れてくれないっていうんだったら、じゃ、おたくには、今までこれこれっていってたけど2倍払いましょ。それでも手を挙げないんだったら、5倍払いましょ。10倍払いましょ。どっかで国民が納得することがでてきますよ。
それは、経済的インセンティブと、そのー、
あの、処理費なんてたかが知れているから、えー、たぶん、その、齟齬は来さないですね。
今、たしか、最終処分地を受け入れてくれるボーリング調査させてくれるだけで、すごいお金流してますね。
20億円ですよ
あれがたかが知れてるらしいですよ、あの世界は。
そうなんですか。
原子力発電所って、ものすごい儲かっているんでしょうね、きっとね。
そりゃそうですよ、原子力発電所1日止めると、1億どころじゃないわけですよね。
だから、そういう意味からいくと、今動いている原子力発電所をつぶす気なんてアメリカ毛頭ないし、日本も電力会社、あるものはあるもの、できる限り使いたいというのがこれが本当、本音ですよ。
■ 浜岡原発での班目証言
事故・トラブルについて、制御棒落下事故が明らかになる前に、「これは, かなりの知見が蓄積されています。したがって, これから先, 新しい知見が出てくることはないとは, やっぱり思いません。これから先も, 新しい知見は出てくると思います。だけれども, 大きな知見については, もう, 大体出たんではないかなというのが, 実は,私の, これは個人的な考えです。」(第13回班目主尋問114項)と述べている
制御棒の2本以上の同時の落下について、「起きるとは, ちょっと私には思えません。どういうふうなことを考えるんですか。それに似たような事象があったら, 教えてください。」(班目反対尋問109-112項)
「非常用ディーゼルが2台動かなくても, 通常運転中だったら何も起きません。ですから非常用ディーゼルが2台同時に壊れて, いろいろな問題が起こるためには, そのほかにもあれも起こる, これも起こる,あれも起こる, これも起こると, 仮定の上に何個も重ねて, 初めて大事故に至るわけです。だからそういうときに, 非常用ディーゼル2個の破断も考えましょう, こう考えましょうと言っていると, 設計ができなくなっちゃうんですよ。つまり何でもかんでも, これも可能性ちょっとある, これはちょっと可能性がある, そういうものを全部組み合わせていったら, ものなんて絶対造れません。だからどっかでは割り切るんです。」
問い「どっかで割り切るということは, ものを造るために, この程度を考慮すれば造ってもいいだろうという感じですね。」
答え「そのとおりです。」
問い「非常用ディーゼル発電機2台が同時に動かないということは, それ自体は,地震が発生したときに, 非常用ディーゼル発電機に寄り掛かっている, 動かさなくちゃいけないものが止まってしまうということがあり得るわけですから, 非常用発電機2台が同時に動かないという事態自体は, 大きな問題ではないですか。」
答え「非常用ディーゼル発電機2台が動かないという事例が発見された場合には, 多分, 保安院にも特別委員会ができて, この問題について真剣に考え出します。事例があったら教えてください。ですからそれが重要な事態だということは認めます。」
問い「重要な事態であれば, 非常用発電機2台が同時に止まったときに, ほかに何か, 別の重要な事態が加わって, それで事故が発生するというのは, 幾つか想定しなくてはいけないことではないんですか。先ほどから証人は, それに加えるのは小さなこと小さなことを加えなきやいけないから大変だと言って, ここは割り切るとおっしゃっていますけれども, 足す別の重大な事象ということが, 大きいことがあり得るんだということは, お認めにはならない。」
答え「我々, ある意味では非常に謙虚です。こういう事態とこういう事態とこういう事態の重ね合わせくらいは考えたほうがいいかなということについては, 聞く耳を持っております。是非こういうことについては考えてほしい, それはなるほど問題視したほうがいいということだったらば, 当然, 国の方でもそういうことについて審議を始めます。聞く耳を持たないという態度ではないんです。ただ今みたいに抽象的に,あれも起こって, これも起こって, これも起こって, だから地震だったら大変なことになるんだからという, 抽象的なことを言われた場合には, お答えのしようがありません。」(第17回 班目反対尋問224~228項)
- 2011/03/24(木) 09:24:41|
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