
ようやく出版にこぎつけた。
難産したのは、
(1)内容が巨大化しそうになった。
(2)スリムにしようとしたら、思想辞典みたいになった。
(3)それをなんとかしようとして、「オプショナル・ツアー」を企画するのが大変だった。
(4)たくさんの見取り図を入れたり、導入をつけたりした。
という理由である。
本書は二部構成になっていて、第一部は、以下の図に出ている24人の思想家の「合理的な神秘主義」の系譜をたどっている。第二部は、それらを踏まえた上で、「合理的な神秘主義」という戦略を説明している。どういう戦略かというと、我々の命や地球が、神秘的な力に支えられていることを受け入れた上で、その発揮を阻害しあるいは破壊する暴力について、合理的に考察し、それを排除するための学問を構築しよう、ということである。
本書の第一部は、元来、私が複雑系科学を研究していた頃に構想した『複雑系学説史』を起点とする。学問分野というものは、「学説史」が成立することでできあがる、というのが私の考えで、たとえばアダム・スミスは「経済学」なんか研究しているつもりは全然なかったのだが、それが後に、「アダム・スミスを始祖とする学説史」が説かれることによって、「経済学説史」が成立し、それによって「経済学」というものがある、ということになった(と私は考えている)。その手口を使って、「複雑系学説史」を書いたら、「複雑系」という分野が確立するんじゃないか、と思ったのである。その意見を言うと、池上高志氏が、「それは安冨さんが書くしかないよ」と言った。これが本書の起点である。
しかしそれから私は、複雑系科学の研究が、全然進展しない、と認識するようになった。そこで何がおかしいのかを考えていて、複雑系というのは、ヴィットゲンシュタインの言う「語りえぬもの」を語ろうとしているのではないか、という結論に至ったのである。そこで、「語りえぬもの」を語ろうとしない形で物事を考えなおそうとした。そのときに、ではいったい、何を考えたらいいのか、と考えて、「語りえぬもの」を破壊する暴力について語れば良い、と思いついた。これで私は、複雑系研究から離脱した。
それで、語りえぬものを語らない学問を構想し、それが紆余曲折を経て、「魂の脱植民地化」に至った。本書は、『複雑系学説史』ではなく、『「魂の脱植民地化」学説史』となった。しかしこのタイトルでは、何がなんだかわかんないので、『合理的な神秘主義〜生きるための思想史』としたのである。
いや、それだけではなく、『「魂の脱植民地化」学説史』とするにはあまりにも不十分だからでもある。というのも、たとえばガンディーが入っていない「魂の脱植民地化」学説史はありえない。最初は、もっとたくさんの人を網羅した本を構想していたのだが、そうなると千ページを超えることが明らかであり、出版不能なので、テーマを「合理的な神秘主義」に絞ることにした。なのでやはり、『合理的な神秘主義〜生きるための思想史』という名が体を表している、と今は思う。
そういうわけで、構想以来、20年が経過した。
この本は、私自身にとって、特別な重みがある。
本ができあがったときに、これを書いておけば、誰かがこれを使って、もっと先へと行ってくれるだろう、という確信が得られたからである。
そういう感覚は、これまでに感じたことがなかった。
オプショナル・ツアーというのは、時系列順に書かれた第一部を、内容順に読むための手引きである。本書は各パラグラフに通し番号が振ってあり、パラグラフの終わりに、次にどのパラグラフを読むべきかが指示していある。その指示に従って、時空を経巡って、本のあちこちを読んでいく、という読書体験を提供するものである。これはこれで、楽しんでいただけるものと思う。
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- 2013/04/23(火) 14:04:47|
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amazonで予約済みです。でも届くのが土曜日予定だとか・・・。うう!待てない!こんな書籍は小学生の時のジャンプ以来かも。
- 2013/04/23(火) 19:40:34 |
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